Skip to main content

English

Japan

エクストラネットの現状と先進事例


3.進化するエクストラネット




2章では個別企業の事例を紹介してきましたが、エクストラネットはどんどん進化しています。3章では、その最も新しい動きである業界エクストラネットについてご紹介します。

企業間ネットワークの標準化の動き



製造業や流通業を中心に導入されてきたEDIは、これまで専用線と独自の通信プロトコルによって実現されてきました。

これに対し、通信プロトコルをTCI.IPに換え、専用線のかわりにインターネットを使うようになったのがエクストラネットです。つまり、EDIのオープン化が進めば、それはエクストラネットといえます。
さらに最近では、エクストラネットのオープン化も進行しつつあるようです。

個別の企業間だけでなく、業界全体で、通信プロトコルからコミュニケーション・フォーマット、アプリケーションまでを標準化し、利用していこうという動きです。それは、いわば業界エクストラネットということができます。

このように、企業間ネットワークのオープン化の動きによって、エクストラネットが生まれ、それにより、従来よりももっと柔軟な企業間取引が可能になりつつあるということができます。

業界エクストラネット



これまで個別企業が独自に構築したエクストラネットを紹介してきましたが、さらに進化したエクストラネットの形態として、「業界エクストラネット」があります。業界内の関連企業が共通のエクストラネットを構築し、利用していくというものです。

業界エクストラネットでは、参加するメンバー企業に対してアクセス権限が与えられますが、それぞれの企業の業務内容によって、アクセスできる情報の範囲が異なるのが一般的なようです。

そして、業界エクストラネットがさらに進歩したとき、業界エクストラネット上が仮想市場となり、企業がより条件のいい新たな企業を探して、取引を開始するといったことも可能なるかもしれません。

[事例7]自動車業界のエクストラネット



米国では現在、特に製造業を中心に業界エクストラネットの構築を試みる複数のプロジェクトが立ち上がっています。
そのひとつが米国の自動車業界のエクストラネット「ANX」です。ANXはクライスラー、フォード、GMのビッグスリーと、その部品供給業者、OEM取引先など1000社以上が参加し、ひとつのエクストラネット「ANX」を通じて、あらゆる情報を交換しようというプロジェクトです。

やりとりされる情報は、資材や部品に調達に関わる商取引情報、受発注情報をはじめ、CAD.CAMの設計データや仕様図面、マニュアルなど。さらに、ANX上でワークフロー管理や仕様変更などの連絡も行われるそうです。すなわち、CALS型の業界エクストラネットといえます。

現在、ANXは先行メンバーによる利用実験を始めたばかりですが、完成すれば非常に最大規模のエクストラネットになると予想されます。

ANXでは、企業ネットワークWANを直接ANXに接続する以外に、メンバー企業がISPプロバイダー経由で接続することも許可しています。これは、専用線を持たない中小企業の参加を積極的に広げるためです。

ただし、ISPはどこでもいいというわけではなく、指定されたANX認定のプロバイダーを経由させる仕組みをとっています。ANXでは、このISPをCSPと呼んでいます。

[事例8]製造業のエクストラネット実験



ERPと呼ばれるプロジェクトは、米国の非営利研究機関インフォテキストが中心になって進めているエクストラネットの実験です。このプロジェクトには、キャタピラ、3M、テキサス・インスツルメンツ、IBMなど主にメーカー15社が参加しています。

実験では、参加企業がいくつかのケースを想定して、エクストラネットが企業の競争力強化にどれだけ貢献するかを調査しています。例えば、エクストラネットを利用することによって、顧客のニーズを受けて製品の仕様を変更し、製品を完成させるまでの時間やコストが、どれだけ短縮・削減できるか、といった実験を行っています。実験では、通常数ヶ月かかる仕様変更を5日以内で完了させることを目標にしているそうです。


ネットビジネスの最新動向は、「サイバービジネスの法則集お知らせメール(登録無料)」でお届けしています。受託調査、コンサルティング、講演も行っていますのでお問い合わせください。