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エクストラネットの現状と先進事例


2.エクストラネットの先進事例




2章では、前章で紹介した導入パターンにそって、エクストラネットの先行事例をご紹介します。

[事例1]アパレルメーカー、Fruit of the Loom Inc.



フルーツ・オブ・ザ・ルーム(FTL)は、Tシャツや下着などを作る米国のアパレルメーカーで、日本でもお馴染みの下着メーカーBVDを子会社に持つ会社です。全米約100社の卸売業者を通じて、再加工を行うプリント業者や小売店などに出荷しています。



この会社は、自社と取引のある卸売業者約100社を結ぶエクストラネット「アクティブウェア・オンライン」を構築しました。

このシステムでは、アクティブウェアWWWサーバー上に、FTLと取引のある卸業者100社分のホームページを設置してあります。それぞれの卸業者につく顧客は、このホームページを使えばオンライン・カタログを通して注文を24時間行なえます。各卸業者のホームページを在庫情報のデータベースと連動させ、卸業者で在庫切れの場合でも、注文が入ればFTLに連絡が入り、FTLが補充出荷する仕組みまで完備しています。

FTLの目的は、製品流通を一括管理することで効率化を図るとともに、品切れなどによる機会損失を削減していくことにあります。

エクストラネット導入前のFTLでは、卸や小売店の間の受発注や在庫確認を電話やFAXで行っていました。従って、メーカー内の各部署や卸業者ででは、受発注における処理にかなりの時間的ロスがあったそうです。また、リアルタイムの在庫状況がつかめないために、追加生産や出荷が間に合わないこともあったといいます。

しかし、エクストラネット導入後は、1件当たりのオーダー処理コストを10-20%削減することに成功したそうです。

[事例2]自動車メーカー、Ford Motors Co.



大手自動車メーカーのフォード社は、世界1万5千ヶ所以上のディーラーを結ぶ、世界規模のエクストラネット構築を進めています。
このエクストラネットでは、フォードのサーバーからインターネット経由で、ディーラーのパソコン上に、自動車のカタログや価格表、販促資料、在庫情報などを自動配信する、いわゆる「プッシュ型」の情報提供を計画しています。さらに、車種ごとの修理・メンテナンス履歴なども一括管理し、顧客サービスに役立てていくそうです。

この機能が完成すれば、例えば、出掛けた先で車が故障して、最寄りのサービスステーションで修理を受けることになっても、修理履歴を参照して、より適切な処置が期待できるようになるそうです。

フォードのエクストラネットは、ディーラー支援を目的としたものです。


各ディーラー毎に顧客サービスの質や販売力にばらつきが生じがちな点に着目し、これを、エクストラネットによってサポートしていこうとしています。

つまり、どのディーラーやショールームに出掛けても、接客員が訪れた顧客に対し、タイムリーかつ新鮮な情報提供を行ったり、適切な対応ができるようにしようというものです。
これにより、フォード車全体のブランド・イメージの向上という効果を狙っているのです。

[事例3]旅行卸、ビッグホリデー

図11



中堅旅行会社のビッグホリデーは、パッケージ旅行などの旅行商品を旅行代理店に供給する、ホールセラーの会社です。この会社は、主な取引先となる中小旅行代理店70社を接続するエクストラネットを立ち上げました。

このエクストラネットでは、「余った」「足りない」といった旅行商品のリアリタイムな販売動向を電子掲示板の上で情報交換しあったり、航空券やホテルの空き情報の共有、団体航空券申込の予約、旅行商品の発注などを主に行っているそうです。また、これまで電話やFAXを使っていた見積もり依頼なども電子化し、大幅な業務の効率化を図る方針だそうです。

会員となる中小代理店は、IDとパスワードを発行してもらい、ビックホリデーのWWWサーバーにアクセスする形でエクストラネットを利用します。従って、中小代理店ではインターネットにアクセスさえ出来れば、新たなシステム投資は全く必要ないということです。
また、ビッグホリデーでは、それぞれの代理店によって、ITスキルが違うことも考慮し、利用教育なども積極的に行っていくそうです。

ビッグホリデーのエクストラネットの最大の効果は、中小企業が大手にも負けない組織力を生み出す原動力となっているところです。
例えば、積極的に情報交換を行ったり、旅行商品の融通を行うことで、グループ全体で販売ロスをなくし、「売り切る力」を最大限に発揮することができます。それに伴って、航空会社やホテルなどからの信頼も高まり、バイイングパワーもさらにアップするという相乗効果が見込めるのです。

将来的には、こういった相乗効果をバネに、会員企業を増やし(目標1000社)、業界での影響力を高めていきたいと考えているそうです。

[事例4]物流サービス、Federal Express Inc.



フェデックスは、早期からインターネットのビジネス利用に取り組んできた企業のひとつです。例えば、荷物追跡システムや出荷指示システムをインターネットで構築し、積極的に顧客に提供してきました。そのフェデックスが実験中の最新のエクストラネットが「バーチャル・オーダー・システム」です。

このシステムは、クライアントであるメーカーや卸業者などが、フェデックスのエクストラネットを通じて、WWWでの注文受付から確認、出荷・納品、請求、返品までの一連のデータ処理を企業間で一括して行なえるようにするものです。これまでフェデックスが構築した荷物追跡や出荷指示の個別システムも統合され、顧客側はかなりの業務効率化とコストダウンが見込めるそうです。

利用企業のWWWサイトに顧客から注文が入ると、バーチャル・オーダー・システムで自動的にフェデックスの配送拠点のサーバーに情報が転送されます。その時点で、フェデックスの荷物追跡用ナンバーとリンクした顧客の注文認識ナンバーが発行され、配送用の送り状とバーコードも印刷されます。これにより、自動的にフェデックスによる配送手配が完了し、顧客や利用企業は1つの注文認識ナンバーで、注文内容や配達状況などを確認できるようになる仕組みです。

フェデックスは利用企業に対して、オンライン・カタログの構築と更新を行うツールも無料で提供するそうです。

フェデックスのエクストラネットは、まさに顧客支援システムです。フェデックス自身のコスト削減ももちろん主目的のひとつではありますが、顧客との接点にこだわり、関係を維持するということが、このエクストラネットの大きな目的となっているといえます。

顧客の業務に深く入り込み、企業の枠を超えて、システム・オートメーションを図ることで、顧客の維持・囲い込みを実現しようとしています。

[事例5]紀伊国屋書店



大手書店の紀伊国屋は、大口顧客である図書館や企業の資料室をダイレクトに結ぶエクストラネットを構築しています。このエクストラネットは、基本的に紀伊国屋のイントラネットを顧客にまで開放したものといえます。

そもそも図書館や資料室では、本を買うと同時に目録作成など様々な付帯業務が発生します。通常、図書館では、そのためわざわざ目録データを購入したり、市販アプリケーションを導入することで効率化を図っていました。

「PLATON」は、ネットワークを通じて本の受発注を行うと同時に、こういった図書館の業務を支援するサービスも行っているのです。具体的には、紀伊国屋がもつ書籍データベースや業務システムへのアクセス権を顧客に与えて、選書から発注、受入、予算管理までの一連の業務を紀伊国屋のシステム資産をかりて簡単に行えるようにしました。

紀伊国屋は、接続相手とのシステム調整が難しいEDIを、エクストラネットを導入することで安くかつ簡単に実現することに成功しました。

さしてさらに、顧客側のシステム投資を軽減し、業務効率化の手助けをするという付加価値サービスを提供することで、顧客の心をつかもうとしているといえます。

[事例6]旅行予約サービス、Internet Travel Network



インターネット・トラベル・ネットワークという会社は、インターネットを通じて旅行予約を受けつける仲介業者です。顧客と旅行代理店の間にたって、オンライン予約機能を提供しています。

この会社では、エクストラネットを通じて、企業の出張手配業務をアウトソーシングという形で請け負うサービスを行っています。このサービスに契約した企業は、その会社の出張規約に合わせた旅行予約のホームページを用意され、そこから社内の従業員各自が出張手配を行えるようになるのです。

このサービスを利用することで、企業はホテルや航空券など団体割引が適用されるというメリットがあり、また、社内の各従業員が個別に旅行予約を行っても、総務部には、毎月、部署ごとに整理された一括した請求書が送られるので、業務効率化にもつながるという訳です。

ちなみに、UAウエスト、ネットスケープ、シスコ・システムズ、テキサス・インスツルメンツなど十数社が既にクライアントとして、このエクストラネットを利用しているそうです。


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