Skip to main content

English

Japan

エクストラネットの現状と先進事例


1.エクストラネットとは



エクストラネットの定義



イントラネットの次はエクストラネット、だと言われています。このエクストラネットとは何でしょうか。

イントラネットはインターネット技術をベースした社内ネットワークとされており、利用範囲は一つの企業又はグループ企業内に限られています。これに対し、エクストラネットはインターネットの技術をベースとした企業間ネットワークと定義され、イントラネットの利用範囲を特定の企業にまで広げたものです。

インターネット利用の効果



企業間のネットワーク化は今までも専用線やVANで行われてきました。インターネット技術を企業間ネットワークに活用する大きな理由は次の3点です。

まずコスト削減です。取引先の数が多い場合、製品の価格表などを印刷して配付するコストと、エクストラネットを利用してこれらの情報を配付・共有するコストを比較すれば、明らかにエクストラネットが安くなります。インフラとしインターネットを使うことにより、専用線より安くネットワークが構築できます。

次に柔軟性です。インターネットの技術は基本的にオープンであり、OSの選択幅が広がります。今までのように、企業間ネットワークの専用端末が必要、といったことがなくなり、中小企業の導入も容易になります。

最後にシームレスな環境があげられます。社内外のネットワークが技術的に同じになると、ユーザー教育が簡単になります。エクストラネットで業務処理するときもインターネットと同じブラウザーでよくなり、新たなソフトを覚える必要がありません。

企業ネットワークの領域



次に、エクストラネットと従来の企業ネットワーク・システムがどう違うのかについて考えてみます。

この図は、企業の業務を企業間と企業内、そして、その内容を定型・フォーマットと手順が決まった業務(非定型連絡や問合せ、情報交換などのコミュニケーション的業務や会議など)に分けたものです。

これまでの企業ネットワーク・システムでは、それぞれのネットワークの特徴や限界によって、処理できる領域が分かれていました。特に、企業間で行う非定型業務は、これといった決定的なネットワークは存在せず、大抵の企業が電話やFax、または印刷物を郵送するといった形で大抵の企業が業務を行っていました。

エクストラネットの領域



ところが、インターネット技術の進歩により、この4つの分野の業務は、全てインターネットを基盤とするひとつのネットワーク・インフラで対応できるようになります。

ファイアウォールによってセキュリティを確保し、社内はイントラネット、社外はエクストラネットとして利用する方法です。

この場合、エクストラネットの対応する領域は、従来のEDI.VANや対応していた業務処理の分野、そしてネットワーク化が進んでいなかった非定型の企業間コミュニーションの分野にまで及ぶことになります。

つまり、エクストラネットでは、インターネット技術を使ったEDIをはじめ、電子メールやニュースグループ、電子会議といった各種ツールを使うことで、企業間で発生する様々な業務を電子化することが可能となります。

エクストラネットの利用形態



エクストラネットの利用形態は、大きく分けると次の3種類があげられます。 まず第1に「情報共有」です。従来、社内で蓄積してきたデータベースを特定の外部企業に公開し、共有する形態です。例えば、商品カタログをメーカーや卸、小売業者が共有することで、各社におけるマスタ登録作業の重複を減らすことができます。

2つめは「コミュニケーション」です。通常、電話やFAXなどで交わされる企業間の非定型なコミュニケーションを電子掲示板などで行う形態です。タイムリーかつ正確な情報を取引企業間で相互に交換しあい、業務のスピードアップを目的とします。 R&D分野でのコラボレーション作業、電子会議、スケジュ,ル管理などもこれにあたります。これまでの企業間ネットワークではありえない、より柔軟な企業連携の実現が期待できます。

3つめは「トランザクション」です。受発注や在庫情報のチェック、決済情報のやりとり、見積もり依頼・回答といった企業間の業務をエクストラネットを通じて行います。これまでEDIとして取り組まれてきた業務処理はインターネット技術を用いることで、よりコスト削減につながります。

企業間ECはエクストラネットで実現



トランザクションは、言葉をかえると、インターネットにおける企業間EC電子商取引ということができます。つまり、インターネットを使って企業間で物やサービスを取引することです。

ECというと、これまで一般消費者を対象とするEC-B to C(が主にクローズアップされてきました。しかし、最近、企業を相手にする企業間EC-B to Bのほうが実は本命で、今後は取引額も桁外れに急成長を遂げるといわれているのです。 フォレスター・リサーチによれば、インターネットにおける企業間ECの市場規模は、97年で80億ドル、5年後の2002年には3,270億ドルに達するといわれています。もちろん、この中には、特定企業とではなく、インターネットのオープンな環境下で不特定多数の企業と取引するケース、例えば、オークション、入札なども含まれます。しかし、実際のところ、全く取引を行ったことのない企業同志がネット上でいきなり取引を始めるのは難しく、大部分は、既に信用関係を築いている企業同志がエクストラネットを通じてECを行っていく形態が主流となると考えられます。
従って将来、企業間EC市場がこれだけの急成長を遂げるとすれば、エクストラネットは今後、企業活動において非常に重要なインフラとなると言えるでしょう。

ところで、企業間EC市場を内訳で見ると、現在最もECによる取引額が多いのは製造業で、資材や部品の調達に活用する企業など先進事例が報告されています。次いて卸、小売などの流通業。流通業は今後、最も成長し、2002年には企業間EC市場の約5割を占めるようになるといわれています。

業界別に見たエクストラネット



エクストラネットは、各業界がこれまで取り組んできたEDIやCALSといった企業間システム、またはビジネス戦略の概念を取り込んでいくと考えられます。従って、各業界によってエクストラネットへのアプローチも異なり、それぞれ目的に合ったエクストラネットが構築されていくことになりそうです。
例えば、製造業では、提携企業や取引先と連携して、開発・生産時の設計データや仕様書、マニュアルを共有したり、情報伝達の効率化を図るCALSの考え方を汲んだエクストラネット。

一方、流通業界では、メーカー、卸、小売間で商品カタログを共有し、受発注、在庫管理を一元化するサプライ・チェーン・マネジメント型のエクストラネットなどが主流になると考えられます。

また、全業界に共通するアプローチとして、売り手企業が大口の顧客をエクストラネットで接続し、継続的に受注をうけたり、付加価値サービスを提供するケースも多く見られます。この場合、顧客との関係を強化し、長期的にロイヤリティを確保することを目的とするので、顧客リレーションシップ型エクストラネットともいえるのではないでしょうか。

エクストラネットの構築パターン

〔パターンA〕

製造業特有のエクストラネットとして、CALSの流れをくむ「CALS型エクストラネット」があります。
メーカーが中心となって取引先や提携企業をエクストラネットで接続し、主に生産管理におけるトランザクションや情報共有・伝達を行うものです。

具体的には、CAD・CAMの設計データや仕様書、マニュアル等の共有にはじまり、資材や部品の調達、受発注、プロジェクト管理や共同開発などを行います。大きな目的は、製品のライフサイクルコストの削減やリードタイムを短縮することです。

なお、現時点では製造業のエクストラネットが最も進んでいるといわれています。既に、自動車メーカーや一部の製造業では、業界をあげて共通のエクストラネット構築を進めています。

〔パターンB〕

流通業界ではこれまで、メーカーや卸、小売、さらには顧客までをネットワークで接続し、サプライ・チェーン・マネジメントやQR(クイック・レスポンス)、ECR(エフィセント・コンシューマ・レスポンス)といった流通革命に取り組んできました。
従って、流通業界のエクストラネットは、この概念を取り入れたサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)型エクストラネットが主流となると考えられます。
SCM型エクストラネットでは、インターネットEDIを中心に、在庫や出荷・納品など製品流通に関する情報や顧客に関する情報を企業間で共有し、取引関係にある企業グループ全体で効率化を目指します。

〔パターンC〕

全業界に共通するエクストラネットは、企業が大口顧客とダイレクトに接続する形態です。継続的に取引のある大口顧客との関係を強化し、囲い込みを行うことを目的とします。

顧客に対しては、エクストラネットを通じて、24時間受付可能なオーダー機能や問合せ機能の他に、付加価値サービスを提供したりします。また、プッシュ技術を利用して新製品を知らせるなどプロモーション・チャネルとして活用している例もあります。

さらに、このパターンでは、社内教育やシステムサポート、会計など社内業務の一部を、エクストラネットを通じて、専門業者がアウトソーシングとして引き受けるケースも登場しているようです。


ネットビジネスの最新動向は、「サイバービジネスの法則集お知らせメール(登録無料)」でお届けしています。受託調査、コンサルティング、講演も行っていますのでお問い合わせください。