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eマーケットプレイスの実像


第3回:オークションモデルのビジネス性


第3回:オークションモデルのビジネス性

オークションあるいは逆オークション(以下では両者をまとめてオークションと呼ぶ)という取引形態は、B2Bの分野ではインターネットならではの革新的な取引方法と言えるだろう。インターネットが普及する以前には、一般の企業が自社の調達のために、広く参加者を募ってオークションを行うということは、非常に難しかった。eマーケットプレイスのサービスメニューを見ると、多くがオークションを提供している。また、最近立ち上がってきた業界コンソーシアム系eマーケットプレイスでも、最初に提供し始めたサービスはオークションという事例が多い。しかし、これらのサイトがオークションを事業の柱として期待しているかというと、状況はそうではないのである。(富士通総研 下地健一 2001年5月)

オークションへの疑問−やがて手数料収入は減少へ?

富士通総研では、いくつかのeマーケットプレイスに対してオークションについての考え方を聞いた。前回も述べたが、電子部品のeマーケットプレイスは、メーカーの調達方法としてオークションは望まれていないと考えていた。また、多くの企業がオークションサービスを提供する背景には、オークションのシステムがカタログやサプライチェーンなどのシステムに比べて安価に構築できるうえ、世間に対するアピール材料としては目立ち易いというようなことがあるようだ。実際、多くのeマーケットプレイスは、将来の収入源は企業間のコラボレーションの支援機能だと考えている。この点について、小売大手が出資するeマーケットプレイスであるGlobalNetXchange(GNX)の人物の話は印象的であった。GNXは、シアーズ、カルフール、メトロなど世界の大手小売業が設立した、業界コンソーシアム系eマーケットプレイスであるが、ご多分に漏れずオークションサービスを最初にスタートしている。2000年の3月に事業を開始、1年間でオークションの開催実績は6億ドルになるというので、立ち上がりとしてはかなり順調と言えよう。しかし、GNXではオークションを将来の柱とは考えておらず、逆にオークションから得られるマージンは縮小していくと考えているのである。オークションという取引形態自身が新しいため、現在企業は1パーセントから数パーセント相当の利用料を支払っているが、この調達方法が一般化してくればオークションの開催というサービスに対して、それだけの付加価値を認めなくなるというのである。確かに、一般の証券取引所に見るように市場運営というだけでは、そんなマージンをとり続けることはできないだろう。eマーケットプレイスのビジネスを行う者は、オークションについては、将来的に利用料の料率が低下することを前提にビジネスを考えた方が良い。

FreeMarketsのビジネスは単純なオークションではない

ところで、オークションモデルと言えば、FreeMarketsを思い浮かべる人も多いだろう。同社は、2000年のeマーケットプレイスを通じた取引実績で百億ドル(実に1兆数千億!)を超える有力企業で、一般には工業用部品や材料の逆オークション取引を行うeマーケットプレイスとして知られている。設立は、1995年でいわゆるeマーケットプレイスとしてはかなり歴史があるだけでなく、ドットコム・ビジネスの中でもかなり古手である。未だ赤字だが、オークション取引規模、収入ともにうなぎ上りで、いわゆるドットコムのバブルが崩壊した昨年でさえ大幅に売上を伸ばしている。オークションというと、B2Cの分野のeBayやYahoo!オークションなどを思い浮かべるが、FreeMarketsの場合はそれらのイメージとは全く異なる。同社のオークションは、顧客ごとに参加者、開催方法などを決めるテイラーメイドである。また、他のB2Bのオークションサイトが、基本的に余剰品やMRO、規格標準品等しか扱っていないのに対して、FreeMarketsの場合は専用部品の調達などにも利用されていると言う点でも異なっている。ここで、FreeMarketsのビジネスの流れを説明しよう。

FreeMarkets本社

収入推移



FreeMarkets社の典型的なビジネスは、概略下図に示すような流れとなっている。すなわち、1.顧客の調達内容の分析から始まり、2.最適な調達のためのRFQ(Request for Quotation)作成支援、3.世界中の企業からの調達候補先のリストアップと顧客企業によるサプライヤー候補の選定、4.買い手企業のニーズに応じたマーケットプレイスの設計とサプライヤ候補企業への入札に関する周知・トレーニング、5.逆オークション方式による入札の実施、6.入札結果の評価と報告書作成、顧客企業への提出、といった具合である。全体のプロセスには、数ヶ月の期間がかかり、その間FreeMarketsは顧客企業を様々の形で支援する一方、オークションそのものの開催は、最終段階として2~3時間といった短時間で行われるのである。逆オークションの仕組みは、調達価格を大幅に低減するという効果をもたらすが、FreeMarketsの業務自体はシステムで自動的に行われるようなものは少ない。

FreeMarkets社ビジネスの流れ



また、人材面でも、プラスチック基板、金属加工等の専門分野を持った調達の専門家を揃えているということである。このように見てみると、同社はeマーケットプレイスというよりは、むしろグローバル調達の支援企業、あるいは、日本の総合商社的な企業と捉えるべきかもしれない。彼らのビジネスのコアがシステムに依存したオークションでなく、そのような調達支援機能であるとすれば、オークションであるから利幅が薄くなるだろうという前述の議論は当てはまらないかもしれない。また、FreeMarkets自身が調達の専門性を生かして、他のビジネスモデルに横展開していくかもしれない。いずれにしろ、FreeMarketsのモデルが継続的に黒字を生み出せるようになるか否かは、現時点で判断はできない。

最低価格でも取引は決まらない

もうひとつの逆オークションへの誤解は、最低価格を提示したサプライヤーが、取引を獲得するというものだ。我々が、ヒヤリング調査を行ったeマーケットプレイス(日米)は、いずれも、オークションの最低価格を提示した企業が必ずしも取引を獲得するわけではないという。オークションの結果を買い手企業が吟味し、価格だけではなく、そのサプライヤーの過去の実績、供給可能なキャパシティなど様々な要素が考慮される。ビジネス上の判断は、システムに任せて決めてしまう訳にはいかないないということだ。

今後、インターネットを通じた逆オークションの手法は、企業が世界から取引先を求める手段、あるいは、調達費用の削減手段の一つとして広がっていくだろう。しかし、B2B企業は、システムを用意するだけでは顧客企業のニーズは満たせず、収益を挙げることは困難である。それ以外の、周辺業務で企業をいかに支援し価値を提供していくことが重要である。


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