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eマーケットプレイスの実像


第2回:eマーケットプレイスの基盤はリアルのビジネスにある




前回は、eマーケットプレイスのビジネス内容と昨年来の流れについて、簡単に説明した。今回からは、いくつかの個別の事例を見ていくことにする。(富士通総研 下地健一 2001年5月)

売上高トップ企業

調査会社のJupiter Media Metrixは、2000年第3四半期のeマーケットプレイスの売上トップ25を発表している(http://www.nmm.com/kb/topnmms/index.asp)。この調査は、売上高についてランキングしたものであるが、eマーケットプレイスによって、売り手から商品を買いとったうえで買い手に販売する方式をとっているものや、売買額に応じた収入を手数料という形で得ているものがあり、一概に収入規模が大きいeマーケットプレイスが、規模の大きいeマーケットプレスであるとは言いきれない。例えば、第5位にランクされているFreeMarketsの場合は、2000年の収入規模は手数料収入を中心として$91.3million(約114億円(注1))だが、同社の運営したeマーケットプレイスの取引規模は、100億ドル(1兆2500億円(注1))にも達した模様である。一方、対照的に3位にランクされている電子部品分野のVirtual Chip Exchange(VCE)は、売り手と買い手との双方と価格条件を交渉し、売り手から商品を一旦買いとり買い手に売却する形態をとっている。2000年第3四半期といえば、電子部品の分野では、e2Open.comやConvergeなど大企業コンソーシアム系のeマーケットプレイスの設立が相次いだ頃だが、これらのサイトではまだ実際の取引は行われていなかった。この時点では、VerticalNet傘下のNECXが比較的取引量の大きなeマーケットプレイスだった筈である(NECXは、2001年に入りConvergeに売却されている)。Jupiterのランキングで第二位であったVerticalNetの売上高には、おそらくNECXの貢献が大きいものと考えられる。NECXもやはり、売り手と買い手との間に入り、いったん商品を買い取る形式をとっている。

eマーケットプレイスにも不可欠なリアルの業務

NECXやVCEは、商品の売り手・買い手の双方との間で個別に価格交渉を行い、それによって決まる売り値と買い値との差額が収益源となる。いったん買取を行うことによって、これらのeマーケットプレイスは、取引の主体となることで取引の信用を保証することになり、その結果として取引に関わるリスクを負う。また、両者は国境をまたがる取引を行っているので、国際取引に関わる関税や消費税の処理、ココム規制など輸出規制品目への対応などについても責任を持ち、さらに、商品の検査や発送、決済業務も行う。そして、このような諸業務を顧客に代わって行うことを顧客に対する大きな「売り」としているのである。また、彼らが売り手・買い手のそれぞれと行う価格や条件交渉も、オンラインだけでなく、電話などを通じた従来型の交渉手段によって行われる。すなわち、eマーケットプレイスといえども、かなりの部分人手を介したビジネスが行われているのである。この人手を介した部分が顧客に対する付加価値や事業者の利益の源泉となっていることはあまり知られていない。eマーケットプレイスが最初に登場したときは、システムを早期に構築すれば、利用者が集まって自動的に取引が行われるようになるようなイメージが持たれたが、現実はそうではなく、むしろ従来から行われていた現実のビジネスを熟知し、電子化で効率化が図れる部分については電子化し、それ以外の周辺分野をもとり込んだ形でのビジネス展開をしている企業が取引額を拡大している。次回、取り上げるFreeMarketsは逆オークション方式のeマーケットプレイスを提供することで有名だが、現実には個別のeマーケットプレイスを開催するための準備作業段階で、調達における専門性を武器に顧客企業を支援している。

リアルのビジネスをインターネットに移す

NECXやVCEが、上記のような事業形態をとった背景として、両者ともに電子部品取引の実ビジネスに足場を持っていたことを指摘できる。じつは、NECXはインターネットの普及する以前から余剰電子部品などの売買の仲介を行う企業として20年の歴史を持っている。同社のビジネスの主要な部分は現在でもトレーダーを介した取引なのである。NECXは近年その取引の一部、例えば、顧客との売買や、売り買いのデータのマッチングなどを電子化している。NECXのeマーケットプレイスの売上規模と言う場合には、こうした取引の中である部分が電子化されているものの売上規模を示しているということで、必ずしも売買を決定する全てのプロセスが電子化されているわけではない。また、人手によるリアルの取引と併せ持つことで、取引規模を確保することができることが強みとなっている。

一方、VCEの場合は親会社3社のうちのConsumer Electronics AG(独)とArrow Electronics(米)がもともと電子部品関連の企業であり、とくにArrow Electronicsは米国における電子部品の流通大手である。VCEが売上を伸ばすにあたってArrowからの顧客の紹介がかなり貢献していることは間違いない。業績は公開されていないが、同社によれば単独で黒字を確保しているということである。ここでも、商品の売買価格は一律にパソコン画面上に表示されるのではなく、オンラインまたはオフラインでの価格交渉によって決められる。VCEによれば、電子部品の分野ではFastPartsやUSbidなどは、電子部品のビジネスを理解していないために、レイオフに追い込まれるなど苦しい状態にあるという。彼らによると、これらの企業は取引が必ず成立するとは限らないオークション形態による電子部品の売買を行っているが、メーカーにとってはそのような不安定な取引形態は好ましくなく、VCEの行っているようなエクスチェンジ形式の取引こそが望まれているのだということである。

なお、NECXとVCEのビジネス形態には違いがある。VCEが売り手と買い手との条件が1:1で整った場合にのみ、取引が成立するのに対して、NECXは1社の売り手の商品を複数の買い手に販売したり、必ずしも買い手がいない段階で売り手の商品を購入する。このため、NECXでは商品の在庫を抱えることになる。このことについて、VCEは在庫を抱えればその在庫を売りきる必要が生じるために、取引の中立性が失われると主張するが、NECXの主張では売り買いの条件が数量や受け渡し時期、方法などで1:1でマッチすることは、あまり起こり得ないので、NECXのような企業がバッファとなる必要があるという。

VCE

NECX


両社の取引のイメージ(富士通総研作成)

(注1) 本文中で1ドルは125円とした。


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