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「養老サービス業の発展を加速するための若干の意見」を読み解く

発行日 2013年12月27日

上級研究員 趙 瑋琳

 

「養老サービス業の発展を加速するための若干の意見」を公布
―中国が抱える人口高齢化の悩み

  • 2013年9月に「養老サービス業の発展を加速するための若干の意見」(以下、「意見」)が中国国務院から発表された。中国では、2012年末時点で60歳以上の高齢者人口が1.94億人であり、総人口の14.3%を占めている。その数字が2020年には2.43億人に達し、2025年には3億人を突破、総人口の21.4%を占めると予測される。高齢化が進む中国では、養老関連産業の発展が遅れている。今回打ち出された「意見」の背景は、養老サービス業の発展を通して、高齢化の進行に積極的に対応しようとすることである。
  • 実は、今現在中国国内では、高齢化の進展やその影響について、様々な議論がなされている。最近話題になった定年年齢の引き上げや社会保険基金(日本の年金に相当)の流用問題、社会保障制度の改革などにおいても、養老問題が焦点である。
  • 中国では、昔から、「養児防労(子供を育てて、老後の頼りに)」という考えが一般的で、老人ホームなどの施設より家族の中で老後の生活を送ることが伝統だった。しかし、1978年からの人口計画生育政策、のちの一人っ子政策の実施で、家族構成に変化が起き、「養児防労」に対する意識も現実の状況も変わりつつある。さらに、一人の子供に老後生活を頼むのはリスクが大きい。子供に頼めるどころか、最近「コウ老族(親のすねをかじる人たち)」が増えてきて、社会問題にもなっている。こうした状況では、大勢の高齢者が老人ホームなどの施設に入居せざるを得ない現実に直面する可能性が高くなってきている。
  • 現在の中国では、老人ホームや養護施設を含む養老関連サービスセンターが4.5万あり、総ベッド数は431.3万床で、高齢者千人当たりの老人ホームベッド数は22.2床となっている。この現状を踏まえ、「意見」には具体的な発展目標が定められている。すなわち、2020年までに、デイケアセンターや老人活動センターなどのサービス施設のカバー率を都市部100%、郷鎮(日本の町村に相当)90%以上、農村部60%以上に高め、高齢者千人当たりの老人ホームベッド数を35~40床までに増やす。在宅サービス分野において、新しく1,000万以上の就業ポストを作り出す。さらに、高齢者を対象とした介護用品、デイケアサービス、健康サービス、娯楽関連サービス、金融サービス及び観光サービスなどを含む養老サービス関連産業チェーンの構築と発展を目指している。このような目標の実現は政府の社会保障負担の低減、サービスセクター全体の健全な発展の強化及び消費促進につながると思われる。

「意見」の“持ち味”、ビジネスチャンスとは?

  • 前述した目標の実現には、主なタスクとして、養老施設の増設や農村部での養老サービスの強化、医療サービスと養老サービスの融合発展の促進などがあげられる。具体的な政策措置について、「意見」は養老施設用の土地供給量の増加や民間資本、外資参入の許可と支援、税金優遇、補助金増加及び人材育成を明言している。
  • ここで特に注目したいのは、外資による投資を積極的に促進し、外資の「資(資金)・智(知恵)」を取り入れることである。近年、中国政府はサービス産業の発展と市場化を図り、サービス産業分野の対外開放を推し進めている。2011年12月に国家発展改革委員会と商務部が「外商投資産業指導目録(2011年改訂版)」(以下、「投資指導目録」)を公布した。その中に新たな許可類として、外資による家事サービス業(高齢者向けサービス業)及び医療機関の設立が追加された。今回の「意見」は「投資指導目録」の関連部分に呼応する形で、より明確に許可開放の方針を打ち出したと考えられる。また、サービス産業における外資参入規制について、2013年11月12日に閉幕した共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が発表した決定全文にも盛り込まれており、今後の一層の規制緩和が期待される。
  • 企業にとっては、このような一連の動きをビジネスチャンスと見なすべきである。中国では、既に他業種から参入を検討している企業や外資企業が養老サービス市場への参入を狙っている。養老サービス市場は巨大な潜在市場とはいえ、サービス対象者の所得によって求められる商品やサービスが大きく変わる。企業が参入する前に、十分な現地調査をしたうえ、マーケットニーズを適切に把握することが望まれる。また、外資参入の許可範囲、外資が受けられる優遇政策の動向、及び一人っ子政策の緩和や経済のさらなる発展をもたらす社会風土、慣習の変化に注意を払うべきである。