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中国の所得格差の拡大とジニ係数

発行日 2013年2月8日

主席研究員 柯 隆

 

所得格差を表す統計上のツールとしてジニ係数がよく使われる。ジニ係数はイタリアの統計学者コッラド・ジニが考案したもので、その値は0から1で、0はみんなが同じ所得を得ており完全に平等であることを意味する。逆に、1に近いほど格差が大きく、一般的に、0.4は社会騒乱が起きる警戒ラインと認識されている。

危険水域にある中国社会と中国のジニ係数

  • 中国では、所得格差が拡大しているといわれているが、長い間、中国政府はジニ係数を公表していなかった。かつて、中国国家統計局は1回だけ2000年のジニ係数を0.412と推計し発表したが、明らかに過小評価されているといわれている。ちなみに、世界銀行は2008年の中国のジニ係数について0.47と推計している。
  • 今年の1月、中国国家統計局は2003年以降のジニ係数を発表した。それによると、2003年のジニ係数は0.479だったが、2008年に0.491とピークに達し、それ以降徐々に低下し、2012年のジニ係数は0.474だったといわれている。
  • 統計局が推計したジニ係数の値でも、警戒ラインを超えている。中国政府は正式に所得格差の拡大を認めたことになる。振り返れば、2003年は胡錦濤政権が誕生した年だった。胡錦濤政治の目玉の一つは「和諧社会」(調和のとれた社会)作りだった。しかし、統計局が公表したジニ係数が2008年以降低下しているとはいえ、中国社会は依然として調和が取れていない。
  • 中国国内の一部の専門家は2008年以降、ジニ係数が低下に転じているという推計の結果を疑問視している。それについては、温家宝首相が推進し実現した農業税の廃止によって農民の実質所得が上昇したことが背景としてあげられている。それに対して、都市部の所得格差がさらに拡大しているのは明白であるが、このことは考慮されていないようだ。
  • 実は、中国政府は長い間、ジニ係数を公表していなかったが、中国国内の大学と非政府系の研究機関は独自にジニ係数を推計し発表している。そのうちの一つは四川省にある西南財経大学研究チームが行った推計であり、それによると、2010年のジニ係数は0.61だったといわれ、今回、統計局が行った推計(2010年0.481)よりも遥かに高い値になっている。

図 中国のジニ係数の推移(2003-2012年)

図 中国のジニ係数の推移(2003-2012年)

資料:中国国家統計局

習近平政権にとっての試練

  • 国家統計局の馬建堂局長は記者会見で、「民間研究機関の(ジニ係数に関する)研究成果と統計局の推計結果はいずれも所得格差の実態を表す有機的な部分を成している」と述べ、統計局の推計よりも高い値になっている国内の大学と非政府系研究機関の推計結果を否定しなかった。
  • なぜジニ係数の推計結果についてこれほど大きなばらつきが現れているのだろうか。それは、各々の研究チームが推計に使う所得統計に違いがあるからである。統計局の所得統計は地域別の所得統計にサンプリング調査の結果を加味したものを使っているのに対して、西南財経大学の研究チームは独自のサンプリング調査で得られた家計所得の推計結果が使われているようである。
  • 結論的に、統計局の推計と国内のそのほかの研究チームの推計にばらつきがあるにせよ、その結果を見る限り、いずれも社会騒乱が起きる警戒ラインを遥かに超えている。このことは中国社会と政治当局に対する警鐘と受け取るべきであろう。
  • 胡錦濤政権は自らが掲げた公約を実現できないまま引退するが、新たに誕生する習近平政権がいかに所得格差を縮小するか、注目される。所得格差を縮小し、ジニ係数を低下させるためには、格差を拡大させた諸要因を一つずつ取り除かなければならない。具体的には、低所得層の所得をボトムアップするために、現在40%程度しかない労働分配率を50%以上に上昇させる必要がある。そして、富裕層に対する課税を強化するために、資産課税を強化する必要があり、そのなかでとりわけ相続税の導入が求められている。それに加え、現行の所得税制を改革し、賃金所得とその他の所得(資産所得と移転所得)の分離課税を総合課税に一本化する必要がある。
  • 無論、これらの改革はいずれも簡単に実現するものではない。低所得層の所得をボトムアップさせるために、財源の確保が必要である。富裕層に対する課税強化は必ずや既得権益を持つグループの抵抗を受ける。しかし、習近平政権にとって、改革をしないという選択肢はもはや存在しない。このまま行くと、中国社会は間違いなく大混乱に陥ると思われる。最近、次期首相に就任するとみられる李克強第一副首相は「中国経済にとり、人口ボーナスこそ終わりつつあるが、改革は経済発展にとっての新たなボーナスになる」と発言している。まったく正しい見方である。