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中国の新たな産業政策が始動

発行日 2012年11月30日

上級研究員 趙 瑋琳

 

要旨

2010年10月に、中国政府は産業構造の転換及び持続的な経済発展の実現を目指した新たな産業政策である「戦略性新興産業の育成と発展の加速に関する決定」を打ち出した。この決定は中国国民経済と社会発展の第12次五ヵ年計画(2011~2015年)の重点ポイント(産業構造転換・環境配慮型社会構築)と呼応する。

決定が公布されてから過去2年間の動きを振り返ってみると、着実に推し進められたことを評価できる。中国がこれら戦略性新興産業を将来のリーディング産業に成長させる意図と決意も読み取れる。GDPに占める戦略性新興産業の割合(現在5%以下)を2020年までに15%に達成するには様々な課題を克服する必要があるが、今後の動向、特に重点分野の成長に注目したい。

戦略性新興産業とは

  • 戦略性新興産業(以下7大産業)とは省エネ・環境産業、次世代情報産業、バイオ産業、ハイエンド装備製造産業、新エネルギー産業、新素材産業、新エネルギー車産業を指しており、これら7大産業は未来の科学技術と産業発展の新たな方向を代表し、世界的な潮流になっているナレッジ経済、循環経済、低炭素経済発展にも同調する。また、中国経済成長の持続的発展のためには、いうまでもなく、産業構造の転換と新たな経済発展モデルの構築が喫緊な課題になっている。その実現に寄与することが大いに期待されるのはこれら7大産業である。2020年に7大産業の売上に占めるR&D支出は5%以上、売上2000万元以上の企業は1%以上とする目標も明示された。国全体の自主開発能力の向上にも貢献させることを目指しており、経済成長と産業構造のグレードアップにおける7大産業の位置付けは一目瞭然である。
① 省エネ・環境産業高効率省エネ製品開発、資源の循環利用
② 次世代情報産業次世代通信技術、物聯網(The Internet of Things、中国版ユビキタスネットワーク、ものともの、ものと人をインターネットでつなぐ)、三網融合(通信網、インターネットと放送網の融合)、新型ディスプレイ、高性能集積回路とハイエンドソフト
③ バイオ産業バイオ製薬、バイオ農業、バイオ製造
④ ハイエンド装備製造産業航空機、宇宙、海洋資源開発用装備、ハイエンドスマート装備
⑤ 新エネルギー産業原子力、太陽光、風力、バイオマスエネルギー
⑥ 新素材産業新機能と高性能複合素材
⑦ 新エネルギー車産業プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車、電気自動車
  • 決定の発表から2年の間、上表が示す分野を中心とした産業育成を重点的に推進するための政策が展開されることになっている。三網融合モデル都市や新エネルギー車発展モデル都市を指定し、良好な市場環境を創出することを狙っている。資金面でも政策支援を図り、2011年まで中央政府及び24の省市は7大産業支援専用資金等を設け、社会資本として70億元(約860億円)を調達したといわれる。イノベーション能力を向上させる支援として、知的財産権保護、知的財産を担保にする融資制度の整備や特許申請の支援、国際標準規格の作成への関与などが挙げられる。国際協力の強化を狙いに、国内における多国籍企業のR&Dセンターの設立や中国国家プロジェクトへの参画を奨励して、中国市場でのプレゼンスを高める機会も与える。同時に、中国企業による海外市場の開拓や海外進出も積極的に支援している。

これからの動向

  • 7大産業の中で、情報産業は規模が大きいものの、これからはより上流工程でのハイエンドな製品を設計、生産することにより、国際市場におけるプレゼンスをいかに高めていくかが課題である。国内において、より良いブロードバンドサービスの普及、次世代通信技術の開発と自主標準規格の推進・応用が急務であり、同時に物聯網プロジェクト及び三網融合を着実に推進発展させ、情報化による工業化の実現を達成できるかどうかが今後注目すべき点である。
  • 第11次5ヵ年計画以来、中国政府は省エネを積極的に推進して、循環型社会建設や排出削減による低炭素社会の実現等相次いで目標を掲げたが、産業規模も技術力も未成熟である。一般民衆の環境保護意識が高まってきている一方、地方政府が環境を考慮せず、GDP目当ての投資プロジェクトを重視する傾向は未だに強い。このギャップを埋められるのは環境関連の法律整備である。また、新エネルギー産業において、太陽光発電の発展を有力視し、中国企業の海外進出への支援も行ったが、先進国の経済停滞で、過剰生産/在庫を抱え、問題になっている。その過剰在庫を解決するためには国内市場に目を向けると思われるが、市場規模が小さい国内市場の需要を改めて刺激する政策及び長期的なマーケティング戦略がない限り、問題の解決にはつながらない。
  • 中国自動車産業の発展の遅れを挽回できるチャンスと捉えられる新エネルギー車産業の場合、産業全体のバリューチェーンは未形成であり、産業化の基盤を更に固める必要がある。国務院弁公庁が2012年7月に新たに打ち出した「省エネと新エネルギー自動車産業発展計画(2012-2020)」によると、2015年にプラグインハイブリッド車と電気自動車(中国語でいわゆる新エネルギー車)の生産販売台数の目標は50万台である。政府調達のみでは絶対消化できない数字であり、消費者市場の育成と拡大が急がれる。既に2010年6月から一部のモデル都市において、公共サービス分野及び個人による新エネルギー車購入への補助金支給が試験的に始まり、今後全国的に展開されるだろう。また、賛否両論あるが、新エネルギー車におけるコア部品の場合は、現在の自動車産業と同様に、外資の参入は50%までと定められた。かつて外資参入制限がない自動車部品分野に規制が設けられたのは新エネルギー車を国産化しようという中国政府の期待の表れである。一方で、コア技術の獲得及びイノベーション能力の向上には技術パートナーが不可欠である。外資活用は有効な一策と思われるので、「以市場換技術」路線を変え、win-win関係を構築する立場を強調すべきである。
  • 産業構造転換と新たな経済発展モデルの構築の重要性が益々高まる中で乗り出した7大産業の育成策は、今後の経済成長の柱と期待される。これからの長期的な発展を確保するためには戦略構想、具体的な目標設定と共に客観的な評価の仕組みが必須であり、今後も政策制度や発展・進展状況から目が離せない。