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中国の新しい「外商投資産業指導目録」を読む

発行日 2012年1月13日

主席研究員 金 堅敏

 

【要旨】

  • 新たに公表された中国の「外商投資産業指導目録」は、「第12次5ヵ年計画」に沿ったもので外国企業の対中投資やM&Aプロジェクトを認可する根拠となる。その特徴として、1) 奨励分野が増え、制限する分野や禁止する分野は減ったこと、2)在来製造業分野に関してメリハリをつけたこと、3) 「戦略的新興産業」育成に外資誘致の重点を置いたこと、4) サプライチェーン構築を重視していること、5) サービス産業の市場開放は限定的であること、6)民生を重視したことが挙げられる。
  • 日本企業は、エコ・有機農産物や食品の生産、ハイエンドの環境・省エネ・リサイクル技術やサービス、ITを活かした物流システムの構築、宅配便などの宅配サービス、ホームサービス等の新たな優遇分野や民生サービス分野に優位性があり、対中ビジネスのチャンスを活かすべきである。

「第12次5ヵ年計画」に合わせた「外商投資産業指導目録」2011年改訂版

  • 2011年12月24日に中国は、新しい「外商投資産業指導目録」(2011年改訂版)を公布し、2012年1月30日を施行する運びになった。この指導目録は、1995年に初めて制定され、1997年、2002年、2004年、2007年の改定版を経て第6版となった。
  • 全体的に新しい「外商投資産業指導目録」も2007年改訂版に沿った構造となっており、指導目録の内容(政策対象産業の製品・技術リスト)を奨励グループ、制限グループ、禁止グループの三つに明示的に分けたほか、リストに載せていない分野は特別な政策が適用されない、投資可能な許可グループとなる。新しい「外資投資産業指導目録」で示された中国の新たな外資政策は、「第12次5ヵ年計画」に沿ったもので、外国企業の対中投資やM&Aプロジェクトを認可する根拠となる。

新しい「外商投資産業指導目録」の特徴

1) 市場開放分野が増えたこと

  • 新たに開放された分野(例、宅配サービス、金融リース、医療サービス、音楽のインターネットサービスなど)もあれば、新たに制限する分野(小規模火力発電所、高級別荘の建設・経営)もあるが、全体としては奨励分野が増え、制限する分野や禁止する分野は減った。また、一部分野の外資出資制限(例:天然食品添加剤、新エネルギー発電設備生産)が緩和された。出資制限項目総数は11項目が少なくなった。

2) 在来製造業分野に関してメリハリをつけたこと

  • 新たな外資政策は、伝統製造業(例えば、紡績業、化学産業、機械製造業など)における新材料、新技術、新設備、新プロセスを使用するハイエンド製造業の投資促進は重視されたが、ローエンドの製品技術分野、中国で技術がすでに確立された製品技術分野、生産能力過剰となっている製品技術分野、産業セキュリティー懸念のある分野は奨励リストから外されるか(例:自動車完成車の組み立て生産、石炭化学品生産、多結晶珪素生産、民生用運搬ロケット、船舶用ディーゼルの設計、遠洋漁船の設計・製造、脱硫・除塵技術・設備)、制限リスト(ピーナツ油などの食用油生産、米・小麦粉の加工、小規模の石油加工、400トン以下の吊上げ機械など)に追加された。また、原子力発電の将来性は不確実性が高いので、奨励政策の必要性がなくなり、原子力発電設備関連分野はすべて奨励リストから外された。
  • 完成車生産を奨励リストから外したことは、海外メーカー優遇から地場メーカー優遇に政策を変更したのではないかと言った見方がある。ただ、ルノーを除く海外の自動車メーカーはほとんど中国進出済みで、在来完成車優遇政策から新エネルギー車優遇への政策転換はごく自然であるという意見も聞かれる。今後、政策変更の効果が注目される。

3) 「戦略的新興産業」育成に外資誘致の重点を置いたこと

  • 2010年に中国は、省エネ・環境、次世代情報技術、バイオ技術、ハイエンド設備製造業、新エネルギー、新材料、新エネ自動車を含む7つの戦略産業を優先的に育成する産業政策を打ち出した。これら「戦略的新興産業」の付加価値が、2015年にGDPの8%、2020年には15%を占めることを目指している。現行の産業育成奨励政策に加え、新たな優遇政策が検討されている。「戦略的新興産業」の製品・技術を新しい「外商投資産業指導目録」の奨励リスト(例、重金属含有処理設備、大型ゴミ焼却プラント、廃棄物リサイクル・総合利用、次世代ネット技術IPv6関連分野、航空・宇宙関連新素材、新エネルギー車のキーパーツなど)に多く新たに載せており、出資比率制限の撤廃などがなされている。

4) サプライチェーン構築の重視

  • これまでの単純な製造工程に対する政策を改め、技能人材の育成、知財サービス、ベンチャーキャピタルの誘致、情報サービス(IT応用)、物流、自動車充電ステーション、電機電子製品・自動車・機械電機設備・ゴム・金属・電池のリサイクルなどが新たに奨励リストに載せられ、法人向けサービス業の育成やサプライチェーンの構築が重視された。

5) サービス産業の市場開放は限定的であった

  • 上述した産業育成上で必要な法人向けサービス業やサプライチェーン構築に必要なサービス業を奨励リストに載せたが、商品オークションサービス、金融リースサービス、医療サービスは制限リストからは外され、100%の外資投資が可能となった。

6) 民生重視の姿勢

  • 食の安心・安全(有機野菜の栽培、生鮮農産物の冷温配送など)、生活環境の改善(ホームサービスなど)など民生関連の奨励項目が増えた。また、炭酸飲料の生産、使い捨て注射器、輸血器、ローエンド、ミドルエンド超音波映像分析機器の生産も制限リストから外された。国民皆保険や医療制度改革に合わせた政策の変更であると考えられる。

日本企業にとってのビジネスチャンス

  • 日本企業は、新しい外資政策に合わせて対中ビジネス戦略を調整する必要がある。エコ・有機農産物や食品の生産、ハイエンドの部品・素材、ハイエンドの環境・省エネ・リサイクル技術やサービス、宅配便などの宅配サービス、ホームサービス等の新たな優遇分野や民生サービス分野に優位性があり、対中ビジネスのチャンスを活かすべきである。