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中国の「第12次5ヵ年計画」提案を読む(前篇)

発行日 2010年11月12日

主席研究員 金 堅敏

 

【要旨】

  • 2010年10月の中国共産党大会で経済社会発展の新5ヵ年計画(2011~2015年)の骨子が決定された。中国では、「第11次5ヵ年計画」(2006~2010年)の実施期間中は、四川大地震、チベットでの政治騒乱、北京オリンピックなどの大イベント、世界金融危機の時期と重なったが、大部分の経済社会発展目標は達成可能となった。
  • しかし、中国政府は、経済成長のパフォーマンスに喜べず、「不協調、不均衡、持続不可能」と言った深刻な構造問題への危機感を強めている。これらの国内構造問題に加え、世界金融危機のさらなる影響やグローバル競争の激化という国内外の環境を認識し、新5ヵ年計画の主戦場を経済発展方式転換の加速に設定した。具体的には、輸出志向から内需志向へ、第1次産業から第2次・第3次産業へ、労働・資本投入と資源多消費から全要素生産性の向上と資源節約・生態保全への三つ転換を目指すことにした。

2010年10月27日に中国共産党17回5中全会で決定された「国民経済と社会発展の12次5ヵ年計画」(2011年~2015年)の制定に関する中国共産党中央委員会の提案が公表された。中国政府(国務院)は、この提案に基づいて実際の計画を制定し、2011年3月の全国人民代表大会(国会に相当)の承認を受けなければならない。今回の提案から新5ヵ年計画の方向性を読む。

「第11次5ヵ年計画」の総括

  • 第11次5ヵ年計画の期間中は、四川大地震などの自然災害、雪害などの大規模な自然災害、チベットや新疆自治区などでの政治騒乱、北京オリンピックや上海万博などの大きなイベントの開催、百年一度の世界金融危機と重なり、中国経済社会が厳しい試練を乗り越えてきた時期であった。これまで中国が直面した政策環境はもっとも厳しかった。
  • にもかかわらず、5ヵ年計画期間中の経済成長率は二桁で、もっとも高い期間となりそうだ。図表が示しているように、当初設定された単位GDPのエネルギー使用削減率と研究開発支出対GDP比の指標については実現が厳しいかもしれないが、その他の指標を達成することに疑問の余地はなさそうだ。特にマクロ経済成長指標は目標を大きくクリアして達成されることは確実となった。中国当局も「第11次5ヵ年計画」の目標と任務は達成できたと総括している。
  • しかし、中国当局は、逆に目標を超えた経済成長のパフォーマンスには喜べず、逆に経済社会発展における「不協調、不均衡、持続不可能」な構造問題への危機感を深めている。この「3不」問題には、経済成長におけるエネルギー・環境の逼迫問題、投資と消費のアンバランス問題、所得格差の拡大、技術革新能力の脆弱さ、不合理な産業構造、脆弱な農業基盤、都市部と農村部や地域間格差の深刻化、強まる雇用問題のプレッシャーと深刻な雇用ミスマッチ問題、多発する社会問題、拡大する制度的・体制的な歪みなどの問題が含まれている。

「第11次5ヵ年計画」の主要目標とこれまでの実績一覧

指標05年(実績)09年(実績)10年(目標)
経済成果GDP成長率(%)11.39.1年平均7.5
GDP総額(名目、兆元)18.534.126.6
一人当たりGDP(元、名目)14,18525,5752000年の2倍
(15,716)
経済産業構造GDPにおけるサービス業の比率(%)40.5 43.443.3
研究開発支出対GDP比(%)1.321.702.0
人口・資源・環境都市化率(%)40.346.647.0以上
全国総人口(億人)13.0813.3513.60以下
単位GDPのエネルギー使用削減率(%)-15.620.0
主要汚染物質排出削減率(%)-13.210.0
国民生活都市部基本養老金保険カバー率(%)1.742.352.23以上
新型農村共同医療カバー率(%)23.594.080.0以上
都市部登録失業率(%)4.24.35.0以内
都市部家計一人当たり可処分所得(元)10,49317,175平均5%増
(13,392)
農村部家計一人当たり純収入(元)3,2555,153平均5%成長
(4,154)

出所:「中国統計年鑑」などより著者計算作成

 

「第12次5ヵ年計画」をめぐる国内外環境への認識

  • 上述した国内の構造問題に加え、世界金融危機の影響による世界経済の減速で先進国市場の需要が大きく阻害され、各種の貿易保護主義が蔓延し、その影響は「第12次5ヵ年計画」の半ばまで続き、これまでのような輸出主導の経済成長が持続不可能な状況になっていると中国当局は認識している。また、市場、資源、人材、技術、基準などを巡る世界的な競争がより激しくなっていくと判断しているのだ。
  • ただし、30年間にわたる「改革開放」政策の実施により中国の経済社会における工業化、情報化、都市化、市場化と国際化が進展し、技術、資本、人材の蓄積は厚みを増しており、世界ではグローバル化がさらに進行し、技術革新による新産業育成の可能性が高まってきているとも見ており、中国政府は新5ヵ年計画を通じて中国の経済社会や国力を新たなステージに上げることができると確信している。

今後活動の主戦場となる経済発展方式転換の加速

  • 上述した「第11次5ヵ年計画」実施の総括と中国国内外環境への認識から、新5ヵ年計画の主戦場は経済発展方式転換の加速に設定した。経済構造調整については、「第11次5ヵ年計画」においてもうたわれていたが、既得権益による抵抗や世界金融危機、の対応で目立った進展はなく、むしろ悪化していた側面もあった。
  • 新たな取り組みを目指した構造調整は、需要サイドの「輸出志向から内需志向へ」、供給サイドの「第1次産業から第2次・第3次産業へ」、成長方式の「労働・資本投入と資源多消費から全要素生産性の向上と資源節約・生態保全へ」の三つを目指している。