GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. 中国の内需拡大策とその効果(2)

中国の内需拡大策とその効果(2)

発行日 2008年12月15日

主席研究員 朱 炎

 

内需拡大策の実施方法

  • 4兆元投資の財源として、中央政府が3分の1弱の11,800億元(いわゆる真水)を拠出し、今後2年間に約1兆元を発行して調達するが、地方政府の拠出と誘発する企業の投資はそれぞれ3分の1を占める。今年内に実施する予定の投資は4,000億元、中央政府は1,200億元を拠出する。
  • 実施に関して、景気刺激の実効性を考慮し、温家宝首相は「快(速やかに)・重(有力に)・準(要所を掴む)・実(実施を重視)」という4文字の方針を打ち出した。
  • 同時に、各地方政府も独自の内需拡大のための投資案件を相次いで公表した。それぞれの投資額を合計すると、26兆元(約370兆円)になり、2007年のGDP(25兆元)を超えた。地方の投資計画には、中央政府の実施案件も一部含まれている。
  • こうした大型投資案件のなか、今回新たに決定した案件のほか、従来の5ヵ年計画で建設を予定したもの、また将来実施する予定の案件も含まれる。
  • 中央政府が実施する投資案件においては、民生重視の案件が多いが、インフラ整備、とくに鉄道(新規建設、高速鉄道網、既存線路の電気化)、高速道路、電力(原子力発電所、送電網の整備)が約半分を占め、生産能力を拡大する投資が含まれていない。一方、地方政府が公表した投資案件のなか、地下鉄、都市間鉄道の建設が多く、石油コンビナート、半導体工場など、産業興しの大型投資も含まれる。

4兆元投資の経済効果

  • 中央政府は実施する4兆元の投資は、極めて大規模な景気対策であり、景気浮揚への効果も大きいと考えられる。
  • 4兆元の投資は、2007年のGDPの16%に相当し、今年11~12月に実施する4,000億元の投資は名目GDPを1.6%押し上げることができる。2009、10年の投資額は年間1.8兆元、2007年のGDPの7.2%に相当する。
  • 一般的に、インフラ整備などの投資は他の産業に波及する効果、すなわち投資の乗数効果は3~4倍もあること、地方の巨額の投資も順次実施することを考慮すれば、経済成長を刺激する効果は極めて大きい。
  • 大規模なインフラ整備は建設、建材、機械などの産業に大きな需要をもたらし、所得の向上、消費の拡大は小売、不動産などの業界にも恩恵を与える。実際、4兆元投資を受けて、株式市場において、不動産、インフラ(主に電力)、小売、建設、金属(鉄鋼)、機械(特に建設機械)などの銘柄の株価は大幅に上昇し、株価全体の上昇幅を上回り、市場の期待が高いと言える。
  • このような大規模投資は、中国国内企業のみならず、日本企業を含む外国企業にも大きなビジネスチャンスをもたらすであろう。
  • 2008年の中国経済は減速がほぼ確実となった。2009年の中国の経済成長については、IMFは8.5%、OECDは8%、世界銀行は7.5%を予測しているが、上述の内需拡大のための巨額投資の経済効果を考慮すれば、世界的不況で輸出の貢献がゼロとなっても、中国経済は9~10%の成長ができるであろう。

景気対策がもたらす新たな問題点

  • ただし、景気刺激策の実施によって、さまざまな問題も生じうる。
  • 近年、中国は「科学的発展観」を提唱し、経済成長のパターンの転換、投資牽引からの脱却を図っているが、この大規模投資の内需拡大策の実施によって、投資牽引の経済成長への逆戻り、低水準での重複投資が避けられない。
  • また、企業の経営難を解消する支援策は、低付加価値の産業と企業も一律救済の対象となるので、産業高度化も一時的棚上げとなろう。
  • 各地方政府が各自の景気対策を策定する際、投資規模で競い合う傾向もあり、一部の地域の投資規模は当該地域の経済規模(GDP)を上回ることもあり、財源の保障もなく、投資案件の実施可能性が問題視される。地方が推進する投資案件のなか、将来の需要に対応する不要不急の箱物づくりが多く、また中央政府が認可しなかった案件を再提出するものも含まれる。実施すれば、新たに無駄、不良債権を作る可能性が高い。
  • このような大規模な投資を実施すれば、経済成長を回復することができるが、投資過熱、インフレ再燃など、再び問題を引き起こしうる。
  • したがって、刺激策の効果が表れ、経済の好転に応じて、積極的財政政策と適度緩和の金融政策からの転換を素早く実施し、タイミングを把握することは重要であろう。