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Japan

中国におけるコスト上昇で外資系企業の撤退が続出

発行日 2008年4月25日

主席研究員 朱 炎

 

コスト上昇で五重の圧力

  • 中国の経済発展に伴って、中国における経営環境も大きく変化し、さまざまな面でコストも大幅に上昇した。これは、外資系企業、とくに労働集約型の輸出企業の経営に大きなマイナス影響を与えている。
  • 第1に、賃金コストの上昇である。持続的な経済成長により、沿海地域において労働力、とくに農村からの出稼ぎ労働者の供給が厳しくなったため、賃金の上昇が激しい。例えば、深セン市の最低賃金は2006年に17.4%、07年に4.9%引き上げられたが、上海市では同8.7%、12%引き上げられた。加えて、今年から新しい「労働契約法」が実施され、また、労働者を引き止めるために福利厚生を充実せざる得なくなり、結果として人件費負担を重くさせている。
  • 第2に、世界的な需要増加と価格上昇の影響で、中国国内でも原材料とエネルギー価格が高騰し、企業の生産コストを押し上げた。
  • 第3に、経済発展による環境破壊の状況に対応して、中国政府は環境対策を重視する姿勢が鮮明になった。そのため、企業は環境保護のコストも負担しなければならなくなった。
  • 第4に、外資、輸出に関する優遇策の見直しは結果的に企業の経営コストを上昇させた。外資に関しては、優遇の範囲をハイテクに集中し、労働集約的な産業は優遇対象から除外された。外資への法人税優遇が撤廃され、税率が国内企業と一本化された。輸出への奨励策も大幅に見直された。例えば、輸出を奨励する税還付の比率を引き下げ、加工貿易の適応範囲も狭めた。
  • 第5に、人民元高への為替調整が加速し、輸出コストを大幅に上昇させた。2006年の1年間の元高幅は3.2%だったが、07年は6.5%へと拡大し、08年の1~3月は3.9%も上昇した。

企業経営への影響とその対策

  • 外資系企業、とくに輸出企業にとって、上記の諸要因によるコスト上昇によって利益が圧迫され、経営が苦しくなる。アパレル、靴、玩具、家具などの労働集約的、しかも低付加価値の輸出産業が受けた影響がとくに大きい。こうした産業は、大量の出稼ぎ労働者を使って大量生産し、コストぎりぎりの価格で大量輸出しているため、価格の上昇にとくに敏感である。
  • コスト上昇の圧力に対して、外資系輸出企業はさまざまな対策をとっている。例えば、低付加価値の製品の生産・輸出を減らし、より高付加価値の製品に切り替え、すなわち製品の高度化を図る。また、労働力の供給不足や賃金上昇の影響を和らげるため、生産工程の自動化を推進し、低賃金の労働力への依存からの脱出を図る。さらに、輸出が困難になったことを避けて、販売を国内市場に切り替える。
  • 注目に値するのは、生産工場を沿海地域から労働力を確保しやすく、コストが安い地域に移転することである。沿海地域にある工場を閉鎖して移転することもあるが、従来の工場を維持し、生産能力拡張のための工場を移転先で新規建設することもある。移転先はおもに周辺の内陸部地域、もしくはベトナムなどの東南アジア諸国である。ただし、移転先にも問題がある。中国の内陸部では輸出のための輸送コストが高く、通関上の不便もある。ベトナムでは部品供給とサービス提供などの関連産業の未発達が問題である。
  • 移転もできない企業にとっては、沿海部にある工場を閉鎖し、廃業して中国から撤退することは残された選択となる。

中国からの撤退が続出

  • こうした背景のもとで、中国の沿海地域にある労働集約型、低付加価値産業における外資系輸出企業、とくに加工貿易の経営形態をとっている外資系企業では大規模な撤退が始まった。
  • 広東省ではおもに香港系と台湾系企業が加工貿易の形で労働集約型の製品を生産・輸出しているが、工場閉鎖と移転が増えている。例えば、広東省では、昨年の1年間、香港系と台湾系を中心に輸出向けの靴生産企業約1,000社が閉鎖された。そのうち、約50%は内陸地域に移転し、約25%はベトナムなど東南アジアに移転した。
  • 山東省では、装飾品、アパレル、かばん、靴などの労働集約的分野において、韓国系輸出企業の閉鎖が目立つ。そのなか、賃金を支払わず、債務も残して、経営者が突然消えて、いわゆる「夜逃げ」も大量に発生している。
  • 中国において日系企業も他の企業と同様に労働集約的製品の生産・輸出も行っているが、比較的高付加価値の分野に集中している。日系企業もコスト上昇の影響を受けているが、現段階に撤退することがまだ少ない。コスト上昇が今後も続くため、コスト削減策と移転を含めて、対応策を早急に講じなければならない。