GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. 中国通 >
  4. 中国政府系投資ファンドCICの正体

中国政府系投資ファンドCICの正体

発行日 2007年12月7日

上席主任研究員 金 堅敏

 

中国投資有限公司(The China Investment Corp.CIC)の設立

  • 近年、拡大する貿易黒字や安定している高額な対内直接投資を背景に中国の国際収支は急速に拡大してきている。他方、輸出競争力の維持やリスクマネジメント能力の弱い金融機関の保護を目的に人民元の為替相場を安定化させるためや金融危機に備えるため、中央銀行は市場から大量の外貨を吸収している。その結果、中国の外貨準備は、2002年末の2,864億ドルから2007年6月末の13,326億ドルまでに膨らんだ。通常、為替市場安定を図るために中国は、流動性の高い外貨準備7,000億ドルを必要としているが、2005年半ばから中国の外貨準備は通常の額を超えて増え続けてきた。外貨準備の「超過」部分約7,000億ドルの運用が課題となった。
  • これまで中国の外貨準備資産は、安全性や流動性を前提に国家外貨管理局がその運用責任を持ち、主に米国債に投資してきている。しかし、膨大な外貨資産を運用部門や運用先に集中しすぎるリスクや為替リスクなどが高まり、高収益の長期運用するためのポートフォリオの再構築や運用先の多様化が必要となってきた。2006年半ばごろから中国政府は、「超過」外貨資産の運用について研究調査を重ね、2007年9月に登録資本2,000億ドルの100%国有の政府投資ファンド:中国投資有限公司(CIC)を設立した。
  • 中央銀行である人民銀行が直接CICに出資することや、財政部門と中央銀行とが直接資金上譲り合うことは法律上、不都合であり、それを避けるため、財政部に起債させた国債を中国農業銀行に買わせ、農業銀行は購入した特別国債で中央銀行から2,000億ドルの外貨を購入し、この2,000億ドルをそのまま財政部に特別国債購入の代金として支払った。つまり、中央銀行は特別国債の利息収入を得る代わりに、CICは、利息支払いの必要な資本金を財政部に注入させた。
  • 歴史的に、CICを先取りに中国は、中央匯金投資有限責任公司(Central Huijin Investment Company Limited.CHICL。中央銀行が直接出資して設立された100%国有の投資会社、国有金融資産管理委員会の性格を有する)を設立して、外貨準備資産670億ドルを使って倒産寸前の国有金融機関への資本注入を行った。中国国内でCHICLの設立プロセスに批判が集中したため、CICの設立は全人代(国会)の批准を得て行われた。今回、CICは、中央銀行から670億ドルの出資分を買い取り、CHICLを子会社化した。
  • 実際、CICの役割は、1)「超過」外貨準備の運用と2)国有金融機関への出資・管理の二つであると設定されている。過日、CICの役員は、投資資金(資本金)2,000億ドルのうち1/3ずつ(約670億ドル)を、CHICL買取の資金、中国農業銀行と国家開発銀行への資本注入、海外ポートフォリオ投資に当てるとアナウンスしている。

CICの運用

  • 「政企分離」(政府と企業の分離)、「自主経営」、「商業目的」を目指すCICは会社法に基づき設立された有限会社であり、取締役会、監査役会、運営管理委員会などのガバナンス機関が設置される。しかし、構成メンバーはすべて政府高官である。
  • 投資戦略は、1)資本市場のポートフォリオ投資、2)海外のエネルギー・原材料などの戦略投資、3)中国企業の海外M&A戦略への支援などであると政府関係部門や各界から提言されている。しかし、CICの投資収益率は、資本金となっている特別国債への5%前後の金利支払い、年平均5%前後の人民元上昇による為替差損及び内部管理費を合わせた10%前後のコストを上回らないと、経営赤字になってしまうので、利益最大化の商業目的に徹すべきであると反論する意見も多い。実際、CICの投資政策がいまだに明確になっておらず、「商業目的」ではなく「政府の戦略」の実施ではないかと海外から警戒されているゆえんである。
  • 実際、CICを正式に設立される前に対外投資は行われた。2007年5月に米国最大のPEファンド:ブラックストンに、無投票権、売却禁止期間4年という条件で30億ドルの投資(出資比率10%)が行われた。ブラックストンの成長性(管理資産の年成長率41.1%)と収益性(投資収益率25%)及びIPO直前のチャンスを見込んだ投資であった。純粋な財務投資で米国からの反発はなかったが、ブラックストンの株価下落に伴う大きな評価損(直近約7.5億ドル評価損)などで国内の批判は高まっている。第2回目の投資は、自国の国有大手エンジニアリング会社「中鉄」の香港市場IPOで1億ドルのH株投資(出資比率約1.6%)である。市場での取引段階になっていないので、投資の効果は未知である。
  • 最近、CICは、欧州市場、北米・日本市場及び新興市場の3市場での投資マネジャーなど24人をグローバル市場から公募している。資金運用会社選別人材も募集しているので、自身による直接投資だけでなく、ファンドによる間接投資も行われると推測される。
  • 過日、海外からの買収防止を目的とする香港取引所株式への投資(政治目的)や日本株式市場への投資が取りざたされ、株式市場の値動きに大きく影響した。今後も外貨準備資金の運用を追加すると見込まれる巨大政府系ファンドCICの投資行動に政府も市場も目が離せない。