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中国銀行業の躍進と加速する海外進出

発行日 2007年11月30日

上席主任研究員 金 堅敏

 

台頭する中国銀行業

  • 2000年初頭、膨大な不良債権を抱えていた中国の銀行は技術的にすでに倒産に瀕したと言われた。中国政府の公表されたデータでも2003年6月に中国主要銀行の不良債権比率は19.6%であった。これらの不良資産は中国銀行資産の大半を占める国有商業銀行(工商銀行、中国銀行、建設銀行、農業銀行、交通銀行)に集中していた。
  • 2003年末から中国政府は、専門資産管理会社による不良債権処理の実施、外貨準備などによる資本注入、株式会社への再編、海外戦略機関投資家の迎え入れと内外株式市場への上場などの矢継ぎ早の改革(財務再建、コーポレートガバナンスの改善、株式公開上場という三つのステップによる改革)が推し進められた。改革は目に見える成果を収めた。農業銀行を除く4つの国有商業銀行は香港市場のH株と上海のA株を同時に上場した。これら上場4行は、「引資」(資本の導入)・「引知」(人材・ノウハウの導入)・「引制」(制度の導入)の戦略に基づいて外国9金融機関の戦略投資家を迎え入れた。2007年6月期にこれら4上場銀行の総資産利益率ROAは1.10%、株主資本利益率ROEは16.82%であった。自己資本率は12.91%に達し、不良債権率は3.23%までに低下し、平均貸出損失準備率は123.90%に達している。銀行の健全性や収益性は国際上位優良銀行の平均レベルまで改善された。
  • 2007年7月に英国の「Banker」誌が公表した“Top 1,000 World Banks '07”によると、世界銀行の中核自己資本(ティア1)のトップ25では中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行はそれぞれ第7位、第9位と第14位にランクインした。因みに、日本の三菱UFJ、みずほグループ、住友三井はそれぞれ第6位、第15位、第22位であった。また、2006年6月12日~07年6月12日までの平均時価総額トップ25では中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行、交通銀行はそれぞれ第4、6、7、19位にランクインした。日本の三菱UFJとみずほはそれぞれ第9、22位にランクされた。中国銀行業の躍進振りは目を見張るものがある。

豊富なキャッシュフローを生かした海外買収攻勢へ

  • このように中国の国有商業銀行には、国による資本注入(例:中国銀行は国から196億ドルと29億ドル相当の金による資本注入を受けた)、外国戦略投資家の受入(例:中国銀行は67.75億ドルの戦略資金を手に入れた)、上場による資本調達(例:中国銀行は123.7億ドルの資金調達ができた)、高収益による利益留保(これまで主要な出資者である国への利益配当は必要でなかった)により手元に潤沢なキャッシュフローが溜まってきた。因みに、2007年9月30日現在中国銀行、中国建設銀行の現金と現金性資産の合計額はそれぞれ6,55億ドル、211億ドルを持っている。2007年6月30日現在、中国工商銀行のキャッシュフローは571億ドルである。
  • 豊富なキャッシュフローを手に入れた中国の銀行業は、中国のグローバル戦略の担い手としての役割を果たしながら、海外市場開拓にも乗り出してきた。中国の「走出去」(国際化)戦略の金融面でのサポートや過剰とも言える外貨準備の海外還流政策への支援、グローバル市場における経営の分散化(市場分散)と海外市場で調達した外貨資産のリスクヘッジ、海外の進んだ金融技術やマネジメントノウハウの獲得などが中国銀行業海外進出の目的と言えよう。
  • 銀行業の海外進出は、支店設立、法人会社設立、M&A(買収・出資)などの手法が挙げられる。支店開設と法人会社設立は、ゼロから出発し時間がかかるとともに、中国の金融監督能力や金融機関の健全性に対する海外金融監督官庁の対応は厳しいが、大型買収も社会的・政治的な抵抗にぶつかるケースが多い。したがって、中国の銀行業は支店開設・法人会社設立と買収・出資の両面作戦を展開している。

最近の中国銀行業の海外M&A事例

銀行時期ターゲット買収金額出資比率業務
中国工商銀行2006年12月インドネシアHalim銀行未公開90%商業銀行
2007年8月マカオ誠興銀行5.9億ドル79.93%商業銀行
2007年10月タイACL銀行未合意19.26%商業銀行
2007年10月南アフリカStandard Bank55億ドル20%商業銀行
中国銀行2006年12月シンガポールSALE9.65億ドル71%リース会社
中国建設銀行2006年8月米州銀行(アジア)12.5億ドル100%商業銀行など
中国建設銀行2007年8月英Barclays30億ドル3.1%商業銀行など
民生銀行2007年10月米UCBHHoldings約3.2億ドル9.9%商業銀行

出所:報道などによりFRIまとめ。

  • 中国の金融機関による対外投資の拡大には、2007年6月に米PEファンドBlachstoneに対する外貨運用会社である中国投資公司の30億ドル投資(出資比率10%)や米証券会社Bear Steansに対する中信証券の10億ドル投資(同6%)の事例もある。加速される中国金融業の海外進出は益々注目される。