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中国国有企業改革の最新動向(3):ガバナンスシステムの進化

発行日 2007年11月30日

上席主任研究員 金 堅敏

 

現行国有企業ガバナンスシステム

  • 中国の現行国有企業に対するガバナンスシステムは、2003年5月27日に公布された『企業国有資産監督管理条例』によって確立されている。中央政府と地方政府に属する特別機関である国有資産監督管理委員会が国有株主(出資者)を代表して国有企業(金融関連除く)をガバナンスする責任にある。そのガバナンスシステムは、資産管理、人事管理、重要経営事項管理からなる。
  • 例えば、国務院国有資産監督管理委員会は、中央企業(現在155社)に対して経営者の人事権、経営上重要事項の管轄権、財産の処分権などについて監督・管理の責任を持つとされている。しかし、実際の運営上、中央企業のうち戦略的企業と指定されている55社前後の企業トップは共産党中央組織委員会で決定されている。「党管幹部」(共産党が幹部を管理する)の原則が、国有企業のガバナンスシステムの中でも徹底されている。また、財政権は財政部に握られている。つまり、株主の代表としての権限は分散され、二重構造になっている。
  • また、株主利益の最大化を理念とする民間企業と違い、国有資産監督管理委員会は、国有企業の重大な投融資計画や発展戦略・計画を国家発展計画や産業政策に基づいて認可するとされている。つまり、国有企業を国の手足として使う発想から抜け出ていないのである。
  • にもかかわらず、国務院国有資産監督管理委員会は、国際的に通用するコーポレートガバナンス制度を確立しようとしている。これはセカンドベストと言える。

国有企業ガバナンスの新展開

  • 持ち株会社の上場による出資者の多様化を図る。これまで中国は、国有企業改革を進めるために国有資産の上場を奨励してきた。しかし、これらの上場企業の上に集団公司(いわゆる中央企業、100%国有の持ち株会社)を置いて子会社である上場企業などの数多くの子会社をガバナンスしてきている。このような集団公司もまたガバナンス体制の欠如など様々な問題が顕在化し、改革の必要性が出てきた。そこで、中国政府は、これらの集団公司全体も上場させ、株主構成の多様化を図っている。中国核工業集団公司、中国航空集団公司など30社の中央企業はすでに上場の候補としてリストアップされ、上場準備段階に入っている。上場によって会社法に基づいて株主総会、取締役会、監査役会などガバナンス機関が100%国有株主による単一機関に取って代わり、出資者の多様化によりガバナンス強化を期待されている。これまで、19社の中央企業に関して会社法に基づく取締役会などの設置に取り組んでいるが、外資など戦略投資家を迎える出資者の多様化が本格的に始動する。今後、国有資産管理監督委員会は、企業の経営管理に直接管理監督を行わず、出資者(株主)として取締役会に対してのみ権利を行使する方向にある。しかしこれらの権限委譲への懸念や現経営陣からの抵抗があり、道のりは平坦ではない。
  • PDCA方式の業績考課制度(年度考課と任期考課)の導入。中央企業147社に対する2004年~2006年までの第一期任期業績考課(最高A~最低Eの階評価)によると、Aランク企業32社(21.8%)、Bランク67社(45.6%)、Cランク(30.6%)、Dランク3社(2.0%)の結果となった。中国石油天然ガス集団などAランクに評価された中央企業は、今後の国有経済再編の主導的な存在となろう。逆にランクの低い企業は整理統合される可能性が高いと思われる。2007年11月に国有資産監督管理委員会は、まず中央企業30社の経営トップと第2期(2007年~2009年)の経営業績目標責任書を交わした。
  • 経営目標のKPI(原則4つ以内)には、年度考課では利益総額、純資産収益率ROEなど、任期(3年)考課では、純資産の増加率、主業の任期内平均成長率などを基本とする。業種によっては省エネルギー・廃棄物減少の指標も盛り込まれている。国有資産監督管理委員会は、経営者に投下資本コストを計算に入れた経済的付加価値EVA、イノベーション指標などのKPIに対するコミットを奨励しているという。
  • コミットしたKPIに照らして年度評価及び任期評価を行う。評価の結果は、奨励金(Dランク以上、基本給の0~3倍の範囲内で、中長期奨励を支給する(60%は即支給、40%は任期満了支給)。任期評価D、Eランクを受けた経営者は40%の残存支払金から減額するとともに、ポスト調整・解雇などのアクションを伴う。
  • 市場から経営者募集活動。これまで中国の国有企業の経営者(役員)は、すべて内部昇進か行政機関の派遣であった。しかし、2003年から毎年グローバル人材市場から募集する活動が開始され、これまでCEO、COO、CFOや法律顧問などを含め71人の経営幹部を外部から調達した。実際、中央企業の経営幹部・上級マネジャーの30%は公開募集で外部から調達した。現在、国務院国有企業監督管理委員会の経営者人材データバンクに1,400人が登録されている。ただ、このような経営幹部の人材募集を出資者(株主)である国有資産監督管理委員会が行うのはおかしいという批判も多い。会社法に基づくガバナンス体制が整えば、会社の取締役会に移されると推測される。それよりも「党管幹部」原則と外部募集の矛盾が解消していくのかが注目される。