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中国国有企業改革の最新動向(2):配当制度の整備による国有資本の再配置

発行日 2007年11月22日

上席主任研究員 金 堅敏

 

国有企業配当制度の確立へ

  • 近年、中国国有企業の業績が急改善されている。2006年に全国の国有企業は6,252億元(約9.4兆円)の純利益を上げた。2007年に入ってからも業績の成長がさらに進み、上期の純利益は4,715億元に拡大した。膨らむ利益の行方に関心が急速に高まってきた。中国では、国有企業収益の悪化や過剰債務、過剰人員の整理など国有企業改革の支援の立場から1994年から国有企業による利益の上納(配当)を停止していた。
  • しかし、近年、業績が急速に改善されたにもかかわらず、膨大な利益が国有企業内に留保を許したため、過剰投資、資産価格の上昇、国有企業従業員と非国有企業従業員間の収入格差の拡大などの弊害をもたらした。特定利益集団である国有企業の利益配分問題は、「科学的発展」、「調和の取れた社会の実現」を掲げる胡錦濤政権にとって大きな政治課題となってきた。
  • このような背景を踏まえ、2007年9月に中国政府は「国有資本経営予算の試行に関する国務院の意見」を公布した。国有資本経営予算制度は、一般財政予算から独立する予算制度となる。この政策により中央レベルの国有企業では、2007年の試験的適用を経て2008年から全面試行に移す運びになった。当該年度の配当は、前年度の税引後純利益から徴収する。13年以上に及んだ国有企業の配当政策をめぐる議論が結論を見た。
  • 国有資本経営予算の収支は、1)国有企業の配当収入、2)国有資産や国有株式の譲渡に伴う収入、3)国有企業の清算に伴う収入などからなる。暫定的に停止していた国有企業(国有資産管理部門に直接管轄されている集団公司に限る。これらのホールディング企業はほとんど100%国有資本となっている)の税引後利益上納は、国有出資者への配当金の形で再開されるようになった。
  • 国有資本経営予算の支出は、1)産業発展計画の実施、国有経済の再編と構造調整への支援、国有企業の発展や技術開発への支援及び国家戦略、国家安全などに必要な資本支出、2)国有企業改革のコストなどに必要な費用負担支出、3)社会保障のファンドへの支出とされた。
  • 2007年10月からタバコ企業及び国務院国有資産監督管理委員会管轄の155社から配当を徴収しはじめた。配当率(配当性向)は、制度開始初期段階では低目設定の原則に基づいて決定され、現在では、1)石油・石油化学、電気通信、石炭、電力、タバコの五つの業種(独占的産業)は10%、2)研究型企業や国防産業などの特殊業種は3年間免除、3)その他の企業(参入自由な競争分野)は5%となっている。設定された配当率は、20%台となっている日本企業や30%~40%台になっている欧米企業と比べかなり低く抑えられている。因みに、2007年度は、大半が過ぎているので上述の配当率の半減で2006年度税後利益から約170億元(約2,600億円)の配当金が徴収されると見込まれる。
  • 実際、上海市は、2005年から中央政府の配当政策を先駆けて市所管の国有企業から配当を徴収し始めている。中国政府の国有資本経営予算編成の項目も上海市の内容と大きな差がない。ただし、上海市の徴収する配当性向は20%であり、国の倍以上である。その後北京市や深せん市も所管する地方国有企業からの配当徴収政策を打ち出している。

実施に向けての課題へ

  • 中国では、政府が株主収益権行使として国有企業からの配当を徴収する政策に異論は見られないが、配当率の設定や配当金の支出分野などについては意見が分かれている。配当率の確定に当たって中国政府当局は、企業の持続的発展、国の産業政策やマクロ政策動向、異なる業種の収益格差などの視点から三つのグループに分けて配当率を設定するとしている。つまり、株主の収益権を行使するにとどまらず、国家戦略の実現、マクロ経済政策や産業再編の政策手段として生かしたい思惑がある。対して、政府が配当率を恣意的に設定するのは、非効率的でありむしろ市場相場(例えば同業上場企業の平均配当率)と連動していくべきであるという意見がある。
  • 意見がより大きく分かれたのは、徴収された配当金の使い道である。実際、国有企業からの配当徴収制度が長年にわたって確立できなかったのは、財政部と国有資産管理委員会による配当金管轄の主導権争いがあったからである。また、現在の政策では、配当金の主要な使途は、国産業政策の実現や国有企業の再編・改革であり、「国有企業から徴収、国有企業のために使う」という特別会計になってしまうという懸念がある。配当金は主に社会保障基金の充実などに使われるべきであるという主張がよく聞かれる。
  • さらに、国有資本経営予算制度を効率よく機能させることは、配当金徴収や支出の透明性、公正性、効率性をいかに確保するかにかかっている。国有資本経営予算制度が汚職の温床になってしまう懸念が聞かれる。