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中国国有企業改革の最新動向(1):負の遺産処理から戦略的再編へ

発行日 2007年11月22日

上席主任研究員 金 堅敏

 

目処の付いた負の遺産処理

  • 中国は、1992年に「社会主義市場経済体制」確立を掲げ、市場化に向けた国有企業改革に着手し、国営企業を国有企業への名称に改めた。特に、1996年に登場した朱溶基首相は、国有企業改革を金融改革、行政界改革と並べていわゆる3大改革に取り組んできた。2005年までの十年間の任期中に行われた国有企業改革は、国有企業の整理統合、過剰債務、過剰人員などの負の遺産の処理であった。
  • 例えば、国有企業数は1998年の23.8万社から2007年の約11.6万社までに整理統合された。国有企業の不良債務と裏腹の関係にある商業銀行の不良債権の処理額(主に国有商業銀行から四大金融資産管理会社に移転され、処理された不良資産)は、2.4兆元(約35兆円)に達した。その後、行政手段による不良債権処理の手法は終わりを告げた。また、1997年に634万人であった国有企業からのレイオフ者は、2000年にはピークの657万人に達したが、2005年には61万人までに減少し、2006年には国有企業からのレイオフ者に適用される特別扱い制度も社会保障制度に統一された。因みに、全国国有企業及び国有企業支配企業の従業員は、2002年の4,680万人から2005年の3,819万人に860万人も減少した。これまで破産後の従業員の生活や再就職を国の責任に持たせた「政策的破産」も2007年に終了し、破産法に基づく「法的破産」手続きに統一された。
  • 「抓大放小」(基幹産業は国家が所有、中小企業は民営化)の政策により整理統合で残された企業(金融サービス、郵政、鉄道サービスなどを除く)は、所有と経営の分離で出資者(株主)としての代表である中央と地方の国有資産監督管理委員会に集約され、企業制度改革や株式化改革による上場、海外や民間の戦略投資家の迎え入れによりコーポレートガバナンス強化や収益性向上・競争力強化を図られている。改革の成果が出てきている。
  • 例えば、国務院国有企業監督管理委員会に管轄されている中央企業は、2003年末の196社から2006年末の159社に再編され、3年間で37社も減らされた。これらの中央企業の総資産は2003年の8.32兆元から2006年の12.2兆元(約180兆円)、純資産は同3.6兆元から同5.39兆元(約80兆円)、売上高は同3.25兆元から8.3兆元(約124.5兆円)、純利益は同1,402億元から同3,807億元(約5.7兆円)までにそれぞれ拡大された。期末の資産で単純計算すると、総資産収益率ROAは1.7%から3.1%に、純資産収益率ROEは3.9%から7.1%にそれぞれ改善された。

グローバル競争に備えた国有資産の戦略再編へ

  • 国有企業改革における負の遺産の処理にめどに付いたことやWTO加盟に伴う過渡期の終 了に伴うグローバル競争に備えて中国政府は、2006年12月に個々の国有企業の収益改善というミクロレベルの改革から国有資産の再配置と国有企業の戦略再編という「国有経済の支配力、影響力、牽引力の増強」を重点とするマクロレベルの戦略再編改革にシフトし、国有資産を国家の安全及び国民経済命脈にかかわる重要業種と領域に集中させる政策を打ち出した。これまで中国は、国有企業の支配を必要とする重要業種と領域を明確にしていなかったが、戦略再編政策では、「重要業種と領域は主に、国家安全にかかわる業種、重大なインフラと重要な鉱山資源、重要な公共財・サービスを提供する業種及び支柱産業とハイテク産業における重要基幹企業を指す」とされた。
  • 中央企業を管轄する国務院国有資産監督管理委員会は、次のように重要業種と領域を明確にした。軍事産業、電網電力、石油・石油化学、電気通信、石炭、航空サービス、港運業を含む7つの業種における国有資本は、絶対的な支配力を有し、マジョリティを持つ。次に、プラント・設備製造、自動車、電子情報、建築、鉄鋼、非鉄金属、化学、探査設計、科学技術などの業種について国有資本は、比較的強い支配力を有し、マジョリティか条件付マイノリティを有するとされた。つまり、これら7つの業種やその他の基幹産業は、「国家の安全及び国民経済命脈にかかわる重要業種と領域」と明確にしただけでなく、民営資本や外資の参入を排除して国有資本の支配が強調された。ただし、中国では、このような業種定義や国有資本支配に対して「国家の安全及び国民経済命脈」の名を借りた行政独占的発想であると批判の声も強まっている。
  • 2010年までに現在の155社の中央企業を80社~100社(毎年に14社を減らす)に再編させ、これまで目指されてきた80社~100社前後の国際競争力のある大型企業集団の育成目標を30社~50社に再設定した。実際、国有資本ランキングの80位以内の中央企業は、全中央企業における税引前利益、国有資本額、売上高のシェアはそれぞれ99%、98%、92%を占めており、これらの企業はほとんど「重要な業種と領域」に属している。
  • 具体的な政策手段としては、1)国内外の戦略投資家を迎え入れる資本市場を活用した企業再編、2)国有企業同士のM&A促進、3)中小国有企業の民営化や競争力のない国有企業の淘汰の加速、4)国有株主への利益配当による国有資本再配置の実現などが上げられている。