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中国の外貨準備運用会社の設立とその影響

発行日 2007年11月16日

主席研究員 朱 炎

 

外貨準備の運用会社の設立

  • 中国の外貨準備の運営会社、「中国投資有限責任公司(China Investment Corporate Ltd., CIC、以下中国投資と称する)」は、全人代(国会)の審議を経て、9月末に正式に設立され、業務を開始した。これでチャイナマネーの海外投資は加速される。
  • 中国投資は、海外への金融投資を中核事業とし、国務院(内閣)に直属する国有企業である。国務院副秘書長(内閣官房副長官に相当)の楼継偉氏が董事長(会長)に就任し、同社の役員会が主要経済官庁の幹部で構成される。
  • 中国投資の登録資本金は2,000億米ドル(約23兆円)、中国政府が全額出資する。政府は資本金を調達するため、財政部が3回に分けて合計1兆5,500億元の特別国債を発行し、中国投資はこの人民元資金により、中央銀行から2,000億ドル分の外貨準備を購入する。
  • シンガポールの政府系企業の持ち株会社としての投資会社のテマセク(Temasek)や、対外投資専門の政府投資公社(GIC)が見本となる。
  • 中国投資の設立によって、従来外貨準備を用いて大手金融機関に投資する中央匯金投資公司が吸収される。また、今年5月に、同社の初投資として、米国の投資ファンドのブラックストンに30億ドルを出資した。

設立の目的とおもな機能

  • 外貨準備の運用会社としての中国投資を設立する主な目的と機能は、第一に、経済過熱をもたらす過剰流動性を吸収すること。資本金調達のために発行する1兆5,500億元の特別国債は、通常の年間国債発行額の約2.5倍に当たり、6月に全人代の批准を受けて、8月には一回目の6,000億元を発売した。これは過剰流動性の吸収に貢献できる。
  • 第二に、外貨準備を減らすこと。中国の外貨準備は昨年10月に初めて1兆ドルの大台に乗り、今年9月末にすでに1兆4,336億ドルに達したが、それ以上増やすと、元高圧力が高まり、貿易摩擦がさらに激化する恐れがある。
  • 第三に、外貨準備の運用効率を高めること。従来、中国の外貨準備、例えば米ドル資金は米国の銀行に預金するか、もしくは米国債に投資してきた。安定しているが、収益が低い。自ら外貨準備を運営すれば、より多くの収益を得られる。
  • 第四に、国内の金融機関、重要企業に出資し、政府系持ち株会社の役割を果たす。前述した匯金投資は、大手銀行と証券会社の不良債権処理ため、外貨準備を使って、資金注入で株式を獲得し、金融分野の国有資産管理委員会の役割を果たした。今後、中国投資が金融機関に出資すると同時に、基幹産業の企業にも出資し、国有企業、戦略産業の持ち株会社になるであろう。
  • 第五に、海外での投資は金融分野に限らず、企業買収も行う。油田、鉱山などを持つ資源企業、ハイテク企業は、中国の国策に合致する買収の対象であろう。自らの投資のほか、国有大手企業の対外投資を支援し、資金提供、共同事業なども実施する。

中国経済と世界経済への影響

  • 中国投資の設立、そして巨額投資の始動は、中国経済のみならず、世界経済、とくに国際金融市場に大きな影響を与える。
  • まず、中国の国内経済に対する影響は、過剰流動性を吸収し、外貨準備を減らす効果が大きい。また、金融機関への出資はその経営健全化に貢献し、国有企業への出資は国有企業の改革にもプラスになる。
  • また、中国投資の資産運用は、おもに世界各国の為替、株式、債券などの金融商品に投資することである。2,000億ドルにのぼる資金規模は、世界各国の政府系投資ファンドのなかでも上位に位置し、大手ヘッジファンドに比べても遜色ない。その運用は、世界の為替、株式、債券などの市場に大きなインパクトを与えるであろう。
  • さらに、中国の外貨資産の運用は、世界的資金の流れを変え、世界経済に影響を与える。いままで、中国の外貨準備の一部は米国債(Treasury securities, 財務省証券)に投資し、貿易黒字を還流している。中国の米国債の保有額は2000年末に603億ドル、外国保有者全体の5.9しか占めていないが、07年3月末は4,211億ドル、シェアは19.1%に増えた。日本に次いで第2位である。しかし、07年3月を境に、中国の保有額は減少し始めた。一方、中国の外貨準備は依然として毎月400~500億ドルのペースで増加し続いている。すなわち、中国は外貨準備を自ら運用するため、中国投資の設立に合わせて、米国債への投資を控え始めた。一方、米国経済は国際収支の巨額な赤字により、外国からの資金流入に依存している。中国による米国への資金還流が減少すると、米国の資金不足により長期金利を押し上げる可能性があり、米国経済、そして世界経済にマイナス影響を与えかねない。
  • 最後に、中国投資はあくまでも国策企業であるため、その金融投資や企業買収の投資活動は、商業ベースの運用であっても政治的な行為と受け止められる可能性が高い。加えて、政府系企業が透明性に欠けることが多く、投資の意図が不明確の場合、金融市場に混乱をもたらす恐れもあろう。