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シンガポールにおける日系地域統括会社の実態

発行日 2007年8月10日

上席主任研究員 金 堅敏

 

2007年7月31日~8月1日にシンガポールにおける日系統括会社3社(A社、B社、C社)と欧州系統括会社3社を訪問した。ここでは日系統括企業3社をまとめる。

統括地域の相違点

  • A社の統括範囲は、アセアン諸国、インド・パキスタンなどの南アジア諸国、オセアニア諸国である。ただし、事業会社は、アセアンに12社(シンガポール3社、タイ5社、インドネシア3社、マレーシア1社)である。中には5社がJVで、その他は本社出資の100%子会社である。
  • B社の統括範囲は、台湾、アセアン諸国、インドの8ヵ国・地域を含む。また、中近東のドバイに事務所を置いてある。B社の業界では一国2拠点の事業所が基本であるので、それに事務所を含むと、21ヵ所の拠点がある。台湾が含まれているのは、政治的な配慮であり、中台関係が前進すればグレーターチャイナに入るだろう。すべて本社出資の100%子会社である。
  • C社の統括範囲は、アセアン6ヵ国のソフトサービス関連6社である。C社は、当社アジア・パシフィック(APAC)総代表のサブリージョナル統括会社の性格を有するので、A社やB社など日系他社の位置づけとは若干異なる。また、当社のアジア・パシフィック統括部門(APAC)が東京に置いてあるのも他社と異なっている。

統括機能の相違

販売関連、生産関連、シェアードサービス関連などの統括機能で見ると、各社の現状は以下のとおりである。

  • 本社製品の輸入販売で設立されたA社は、2年前にバックオフィス部門(法 務、リスク管理など)統合のため機能強化が図られている。ただし、A社と地域内各事業拠点間に資本関係がなく、人事権や財務・資金調達等のシェアードサービス機能はまだ実現されていない。知財管理やブランド管理も本社にあるままである。また、マーケティングや販売管理・企画立案も各事業所が独自で行なっている。原料調達、ITインフラ、物流も統括会社に担当者を配置して各事業拠点をサポートしていることに止まっている。ただし、各生産拠点のメンテナンスサービスにおいては当社エンジニアリング会社の統括会社内への統合によって統一して行われている。
  • 2001年に設立されたB社の統括機能は、1)予算管理、2)コンプライアンス機能、3)同一顧客にかかわる各国拠点間の調整、などである。B社は各国の事業拠点に対する人事権はないが、統括会社の幹部は各拠点の役員を兼任して1)予算管理を強化している。また、キャッシューフロー管理は統括会社によって厳格に管理されている。また、ローカル人材育成のために統括会社内にバーチャルな教育機能を持っている。各事業拠点は、統括会社に一定の管理費を納付するという。
  • C社の統括機能は、1)地域内各拠点のガバナンス機能、2)シェアードサービス機能、3)リージョナルサービス機能を含む。各国拠点に対する人事権は持っていないが、第一義的に評価権限を有する。2) シェアードサービス機能については、ITインフラ、教育、キャッシューフロー管理などである。3)のリージョナルサービス機能については必ずしも枠組みができているわけではなく模索中という。
  • 以上の3つのケースにおいていずれも事業会社が先行進出して、統括会社は後片付けに追われており、洗練された統括機能はまだ確立されていないのが現状である。また、統括機能の強弱は、資本関係や人事評価権限の付与状況によって異なっている。

シンガポールでの経営課題

  • 人材リクルートの難しさが共通の課題となっている。A社本社はシンガポールで生産拠点の拡張を図っているが、労働力の逼迫は大きくリスクになっているという。特に中間管理職の欧米企業への流出が大きな問題になっている。統括会社スタッフの定着率も高くないので、上級管理職にローカル人はいない。B社の業界の離職率は30%以上となっているので、B社はコア人材の離職率を10%以下に抑えようと対策を採っている。IT業界の離職率も20%を越えているので、C社では、経営幹部の採用など給与引上げとともに経営幹部昇進などのキャリアパスを用意している。
  • 経営コストの上昇も大きな悩みである。例えば、IT業界におけるシンガポールの給与水準(大学新卒年収約350万円、大卒約5年目の中間管理職約750万円、経営役員約1,500万円)は相当高い。また、A社ではオフィスの契約更新交渉で現在の3倍の価格が要求されているという。
  • ただし、シンガポール政府の支援やインフラ環境は各社とも評価している。