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中国における米系銀行のオフショアリングの成功例 State Street Corp.Technology center

発行日 2007年6月15日

上席主任研究員 金 堅敏

 

本件の背景

  • 米国銀行State Street Corp.(SSC)は、機関投資家に金融サービス(ファンド管理、株式・為替売買仲介)を提供する銀行である。2005年9月現在信託資産約10兆㌦に上り、月ベースで270万件の取引が行われる。SSCでは、700のビジネス・アプリケーションが運用されており、ITスタッフも5,000人に上る。銀行のIT関連予算は総予算の20%~25%を占めるという。
  • 技術の進歩とともに1990年代後半に高度技術のスキルが要求されたSSCは、割安で高度な技術スキルの提供を期待してこれまでハーバード大学と実施してきた産学連携プログラムを、1980年代に一時的に技術交流のあった中国の浙江大学と連携することに動き出した。
  • 浙江大学(ZJU)は、現在学生数4.1万人、博士課程院生6,000人を有する中国におけるトップ3の大学である。そのコンピューター学部に在学している学生数は学部生が2,000人を超え、修士課程が700名、博士課程が300名である。
  • SSCがZJUと産学連携を行う目的は、15名の大学院生からスタートし数年後50名のコア人材を有する小規模ハイテクR&D拠点を立ち上げることであった。研究テーマは、クラスタリングやフォールトトレラントコンピューティングなどのITアーキテクチャーであった。その後、ITバブル崩壊後の対応などもあり、2000年9月にZJUで立ち上げた共同技術センター(SSZJTC)は、R&Dに専念する小規模拠点を越えて高度な技術問題に取り組み実質意的なコストカットができる中規模の技術センターであった。つまり、この技術センターの活動は、高度なITエンジニアリングであって、ソフトコードの大量生産ではなかった。

技術センターからさらなる発展

  • 2001年~2002年の間、米国株式市場の10進法化実施や取引量の拡大により在来のITシステムの限界が生じた。そこで新しいシステムを導入するには500万㌦~1,000万㌦かかると見込まれたLatticeと呼ばれる「株式取引デスクのクロスエンジン」のリエンジニアリングをSSZJTCに委託し、10ヵ月、9万㌦で開発に成功した。Latticeリエンジニアリングの成功を契機に、SSCは、オフショアを戦略として開始し、SSZJTCへの委託も急速に拡大してきた。
  • SSZJTCでSSC関連プロジェクトに携わった学生が修了しても引き続き残ってもらうために受け皿が必要となった。資本関係の拠点設立に慎重なSSCは、ZJUが設立したIT会社「浙大網新」(Insigma、「2006年中国ソフト企業トップ100社」の第5位)に受け皿会社の設立に協力を求めた。2003年4月、SSCとInsigmaは、「網新恒宇」(UniverseSoft)というSSCからのオフショア受託専門のInsigmaの子会社の設立に合意した。UniverseSoftが卒業者の受け皿となった。2005年末にUniverseSoftは、300名のスタッフを抱えるSSC向けの受託ソフト会社に成長した。
  • SSCにはUniverseSoftへの他社による買収の懸念や知的財産関連の懸念があり、Insigmaには、SSC一社受託専用の会社運営はリスクであるという懸念があり、また、これまでの技術蓄積を活かして第三者からの受託開発の思惑がある。2006年4月にSSCは、UniverseSoftを買収し、100%資本の技術センター(SSTZ、子会社)として運営される。他方、2007年4月にSSCは、Insigmaが2004年7月に設立した欧米金融機関向けのオフショア受託会社「網新恒天」(Hengtian)の49%の資本参加をし、Insigmaと協力して第三者機関からの受託業務に取り組んだ。
  • 現在、SSCは、
    • 1)R&D機能を果たすSSZJTC(資本関係ないジョイントラボ)
    • 2)SSC内部向けのオフショア開発やサービスを担当するSSTZ(子会社)
    • 3)第三者のオフショア受託を目指すHengtian(JV)
    からなる技術センター(TC)を有する。2006年末に当該TCのスタッフは500名であったが、2007年には700名に増やし、2008年には1,000名になると見込まれている。

成果

  • コストカット効果:米国の25%の人件費で可能となった(発注単価は15,000万元から20,000万元(25万円~35万円)である)。これまでリエンジニアリング或いは新規開発されたアプリケーションは100を超えた。
  • 700に及ぶレガシーシステムから高価な新規システムへの導入を避けることができた。新システム導入コストの2%以下でリエンジニアリングができたので、数百万㌦の支出削減ができた。
  • リエンジニアリングでより性能の高く拡張機能のついたシステムができたので、ユーザーに歓迎される。
  • 中国におけるTCの存在は、中国からの資産運用受託(海外と国内)に間接的に役に立った。