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中国の輸出優遇策の見直しとその影響

発行日 2007年1月5日

主席研究員 朱 炎

 

輸入の急増で貿易摩擦を引き起こす

  • 中国では、輸出の急増と貿易黒字拡大によって、貿易摩擦などの問題を引き起こしている。2005年の輸出伸び率は28.4%、貿易黒字は1,020億ドルであったが、2006年1~11月の輸出は前年同期比27.4%増、貿易黒字は1,565億ドルまで膨らみ、通年では1,800億ドルに迫る勢いである。
  • 中国政府は低付加価値製品の輸出の急増を抑制するため、輸出税還付、委託加工の免税、為替レートなど、従来の輸出奨励策を見直し始めた。

輸出税還付比率の引き下げ

  • 輸出税還付は、輸出奨励策の一環として、94年から実施した制度である。生産段階に徴収された税率17%の増値税(一種の付加価値税)は、輸出段階に全部もしくは一部が還付される。製品によって優遇の程度も違い、還付率は17%、13%、11%、8%、5%の5段階に設定されていた。2005年に1ドルの輸出は平均して0.44元の税還付を得られ、実質5%の補助金に相当する。輸出税還付制度は、輸出拡大に大きく貢献してきたが、低付加価値製品の輸出急増や財政負担増という問題ももたらしている。
  • 輸出税還付比率は、1~2年に一度調整される。2006年9月には、新たに輸出税還付比率の調整が実施され、12月から完全に新しい還付率に移行した。
  • 今回の調整の重点分野は、海外市場で貿易摩擦に遭っている繊維、雑貨、金属製品、およびエネルギー多消費型製品など合計1,130品目の還付率が大幅に引き下げられた。例えば、鉄鋼製品の還付率は従来の11%から8%に、非鉄金属材料は従来の13%から5%~11%に、繊維製品、家具などの雑貨製品は従来の13%から11%に引き下げた。
  • また、エネルギー製品、鉱産物、木材などの資源製品合計255品目に対しては、輸出税還付の適用が中止された。
  • 同時に、プラント、一部のIT製品とバイオ製品、及び農産品加工品など合計191品目の還付率は逆に引き上げた。
  • このような還付比率の調整は、中国の輸出構造の改善に大きな効果がある。還付率の引き下げと税還付適用の中止により、企業の輸出収益が減ってしまうため、低付加価値の輸出が抑制され、貿易摩擦の発生を防ぐと同時に、資源製品の輸出も抑え、国内の資源不足をある程度緩和できる。一部の製品の還付率の引き上げは、ハイテクと農産関連製品の輸出がさらに奨励される。

委託加工の優遇範囲も縮小

  • 委託加工という制度も中国の輸出振興に大きな役割を果たしてきた。輸入した原材料・部品を用いて加工した製品を輸出すれば、輸入関税と増値税を免除する保税制度が適用される。委託加工関連の輸出はすでに輸出全体の5割強を占めるようになった。しかし、委託加工は低付加価値の輸出までも奨励してしまうという問題点を抱えている。
  • 今回の税還付の調整において、税還付の適用が中止した品目は委託加工の禁止品目となり、原材料と部品の輸入関税免除(保税)が取り消された。また、11月に、委託加工の輸入原材料804品目を免税の奨励リストから除外した。このような措置には、低付加価値の委託加工を抑制するほか、現地調達を促す目的もある。

人民元為替レートの調整が加速

  • 金融当局は人民元高への為替レート調整も加速している。元高も輸出の急増を抑制すると期待できる。
  • 2005年7月の人民元切り上げ後の1年間には、わずか1%の元高調整に止まったが、2006年7月に元レートが1米ドル対8人民元の大台を突破した後、調整がスピードアップし、10月には7.9人民元を割り込み、12月半ばには7.82元台まで上昇し、4ヶ月間で2%強の元高となった。
  • 金融当局は人民元レートの調整にさまざまな要因を配慮するが、貿易摩擦から生じた米国からの元高圧力はもっとも影響が強い。11月から12月にかけての大幅な元高は、12月14~15日に開催される米中経済戦略対話(かつての日米構造協議に相当)に合わせて、強くなる米国から元高圧力を和らげるためであった。しかし、今回の戦略対話では中国から大きな譲歩を引き出せず、加えて中間選挙で民主党が国会の多数派になったため、人民元高への米国の圧力がさらに強くなる。今後、元高への調整はさらに加速するであろう。

日系企業にも影響

  • このような輸出奨励策の見直しは、在中国日系企業にも大きな影響を及ぼす。中国で展開する日系企業の多くは製品を輸出しており、委託加工の経営形態をとっている日系企業も少なくない。日系企業にとって、輸出奨励策の見直しは、輸出のコスト増など、経営にマイナス影響を受ける。日系企業は輸出奨励策の見直しを構造転換のチャンスとして捉え、コスト削減、輸出製品の高度化、国内販売の強化などの対策をとる必要があろう。