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Japan

大連・上海から見た対日オフショア開発の課題

発行日 2005年1月14日

主任研究員 金 堅敏

 

労働集約工程に徹する日本企業と不満募る中国企業

  • 現在、日本企業が中国にオフショア開発を発注しているのは、ソフト製造工程のコーディングやテスト等労働集約部分である。100人月以内のプロジェクトがほとんどである。例えば、過日、訪問した日系開発拠点の大部分は、本社サイドのソフト開発量の1%~5%しか発注していない。大連においてオフショア開発を15年近く行った東和システムでさえも、本社の人月ベースで6%弱しか発注していない。
  • これは、エンドユーザとの対話をしながら開発プロセスを完成していく受注ソフトを中心とする日本のソフト業の特質によるところが大きいが、中国にあるオフショア開発企業の未熟さにもよる。例えば、中国では、プロジェクト管理(PM)、納期管理、品質管理、セキュリティ管理等の面で日本企業の満足に行く開発企業はまだ少ない。実際、中国のオフショア開発企業の経営者も、「100人月前後のプロジェクトを中国のソフト企業に発注するのが最適である」と言っている。
  • ただ、中国の対日オフショア開発企業は、「対日オフショア開発は労働集約の工程に特化せざるを得なく、オフショア開発を通じてプロジェクト管理ノウハウの蓄積や技術レベルの向上ができない」と不満を募らせている。実際、上海では、プロジェクトの全体像や目的背景を理解できず、頻繁な「仕様変更」への対応に苦労するという話が多く聞かれる。
  • 中国政府やマスコミも最近になって、「限られた日韓市場への過当競争にこだわらず、付加価値や技術レベルの高い欧米市場に果敢に挑戦しよう」と、対外オフショア開発企業にハッパを掛けている。

中国でのオフショア開発を強める米企業へのあこがれ

  • 対日オフショア開発への不満は、対米オフショア開発へのあこがれと裏腹の関係である。現地にある米系オフショア拠点の受注単価も高いし、自由度もある。日本企業は中国オフショア企業を「生産工場」として位置付けているのに対して、米系企業は、ビジネスの戦略パートナーとしている。大連市情報産業局の政策担当者は、以下のように米系企業と日系企業の違いを説明していた。
    1. 米系企業の成長は早く、人的な現地化も進んでいる。大連市にあるGE(大連)は2000年の十数人から1300人以上に、IBM(大連)は2003年スタートから一年足らずに400以上までに成長したのに対して、日系A社(大連)は2000年の数十人から現在でも100人前後に止まっている。しかも、主要ポストは日本人が就いている。
    2. 米企業は、日本企業のように系列階層を通じて発注していないので、単価が高い。米系企業は、本社のアジア地域本部の責任で中国に拠点を設置し、企業経営者が直接サポートする。下請け、孫受け、ひ孫受けといったように天引きされないので、発注単価が高い。ちなみに、米系オフショア開発拠点要員の給与も日系より20%~30%高い。
    3. 米系企業は一括発注が多く、プロジェクト全体像が理解しやすく地場オフショア開発要員のやる気を引き出せる。日系企業のようにソフト製造の労働集約工程だけに特化しておらず、目的、目標をはっきりさせ基本設計から任される。対米オフショアはリスクも高いが、利益も高く、開発スタッフのやる気を引き出せるメリットがある。

納期・品質管理、ジョブホッピング問題

  • 日本のソフト開発はプロセス重視で、個々の開発要員の納期遵守意識や品質意識に依存している。したがって、一部の日系企業の現地拠点では、日本人SEを張り付け納期遵守や品質保持を「強要」し、現場主義を徹底している。或いは、チェックポイントを沢山設定して進捗を確認する。現場主義或いは属人性が強いがゆえに、現地ソフト企業や開発要員に対する不満や苦労も多い。納期に関するインセンティブ(奨励金或いは罰金)を契約書に取り入れるのも一案であろう。
  • CMMやISO9000等の組織的品質向上策、プロセス管理策を重んじる中国ソフト開発企業と、属人性や現場の「カイゼン」運動を重んじる日系企業との間にずれが見られる。例えば、品質定義について、日本企業では契約書には何も規定されなくとも、顧客が満足するよう納品まで最善を尽くすが、中国地場企業では必ずしも最善を尽くさない体質がある。現地企業との間では納品時の揉め事が多い。品質について事前に数量化目標を合意しておく必要があろう。
  • 人材流動性の高い中国で、人材流出をいかに防ぐかも大きな課題である。契約時に契約履行保証金か違約金として3~5万元を要求するというやり方もあれば、(1)成果主義の徹底、(2)教育チャンスの提供、(3)プロジェクトごとのボーナス制度、(4)予防措置としてのドキュメント化の徹底、等のプラスのインセンティブを与える手法もあろう。