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共創ツールとしての活用を検討すべきふるさと納税とクラウドファンディング

2019年、ふるさと納税制度に係る法改正により、自治体は返礼品競争に別れを告げ、ふるさと納税の原点を見つめ直すことが求められる。特に、クラウドファンディングを活用したふるさと納税は、資金調達手段としてだけではなく、地域の新しい価値を共創するツールとしての位置づけを検討する時期に来ている。

2019年3月20日

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1.原点回帰すべきふるさと納税

2019年はふるさと納税の大きな転換期となる。ふるさと納税制度の見直し等に向けた地方税法改正案が、3月2日未明、衆議院本会議で可決した。総務省は、制度を拡充しながらも、行き過ぎた返礼品競争に歯止めをかけるべく、全国自治体に対し、2015年から毎年、ふるさと納税は「経済的利益の無償の供与」である旨の通知を繰り返している。さらに踏み込んだ指摘となった返礼品の調達割合「3割ルール」や、調達先を地元に限定する「地場産品ルール」を守らない自治体名の公表にも踏み切った。2018年末の時点で、3割ルールは52団体、地場産品ルールは100団体が、それぞれルールを逸脱していると指摘されている(注1) が、ルールを遵守すべき法的な根拠はなかった。そこで改正案では、この2つのルールを守らない自治体を、ふるさと納税制度の対象から外すことを柱としている。

そもそもふるさと納税は、納税者が納税先の「ふるさと」への愛着を深め、自治体とともに地域に活力を与える存在となっていくことが期待され、創設に至った。制度創設前に検討された、ふるさと納税研究会の報告書(注2) によると、自治体等が強制的に徴収する税制に対し、納税者の判断で納税先や税金の使い道を決めることが第一の意義として書かれている。さらに、ふるさと納税を通じて、納税者は「ふるさと」の大切さを認識し、自治体は自治意識の進化に努め、双方が相互に高め合う新しい関係性の構築により、地域活性化につなげていくことへの期待が示されている。

残念ながら現状では、この原点から外れ、ふるさと納税者の興味や納税先を選ぶ判断基準は、「ふるさと」ではなく、豪華な返礼品にのみ集中している。返礼品の規制強化となる今回の改正により、ふるさと納税者は旨味が少なくなったと感じるため、今や4,000億円に迫る勢いのふるさと納税市場の減退が懸念される(図表1)。ふるさと納税額の減少となれば、特に、大きく財源を確保してきた地方の自治体にとって、かなりの痛手となる。しかしこれを好機と捉え、返礼品重視の傾向により霞んでしまったふるさと納税の原点を見つめ直すべき時期なのだと、自治体は覚悟を決めることが必要である。そうすれば、返礼品ばかりに眼がいっているふるさと納税者の考え方を変えることもできる。

【図表1】ふるさと納税における寄附額および寄附件数の推移
図表1:ふるさと納税における寄附額および寄附件数の推移
(出所)「ふるさと納税に関する現況調査結果(平成29年度実績)2018.7.6」(総務省)
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000562702.pdf)をもとに富士通総研作成

2.共創ツールにもなり得る『プロジェクト型ふるさと納税』

2008年に創設されたふるさと納税制度は、その3年後にクラウドファンディング(Crowd Funding:CF)の活用が解禁された。2011年の地方自治法施行令の改正により、第三者が自治体の寄附等を集めることができるようになり、クラウドファンディングのサイト運営事業者が、代行してふるさと納税を集めることが可能になったのである。今では、ふるさと納税の多くがクラウドファンディングを活用している。ある大手のふるさと納税サイトを運営する事業者の話によれば、全自治体の約8割にあたる1,400以上の自治体が契約しているそうだ。

クラウドファンディングのながれは、資金調達者(起案者)が、インターネット上のクラウドファンディングサイトに「プロジェクト」を起案・登録し、そのプロジェクトに共感したり、応援したいという資金支援者が現れれば、クラウドファンディング成功となる(図表2)。資金支援者は、リターンと呼ばれる返礼品にも興味を示すが、それはあくまでプロジェクトから派生したリターンであり、基本的にはプロジェクトの魅力そのものが資金提供につながる。クラウドファンディングを成功させるには、資金支援者予備軍であるCrowd(群衆)の“心を揺さぶるプロジェクト”が必要不可欠なのである。

【図表2】プロジェクトがキモとなるクラウドファンディング
図表2:プロジェクトがキモとなるクラウドファンディング
(出所)富士通総研作成

しかし、ふるさと納税の場合、その多くがクラウドファンディングを活用しているにも関わらず、肝心のプロジェクトがほとんど存在しない。特に、返礼品重視であると、その魅力だけでふるさと納税が集まってしまうため、プロジェクトが無くともクラウドファンディングが成功してしまうのである。返礼品の魅力のみでふるさと納税を集めると、ふるさと納税者(資金支援者)の中に、地域に対する思いは生まれにくい。

一方で、地域課題やその解決に向けたプロジェクトを起案し『プロジェクト型ふるさと納税』としてクラウドファンディングを実施すると、プロジェクトの魅力を感じてくれたふるさと納税者が集まる。クラウドファンディングの特徴として、単なるプロジェクトへの応援の気持ちが、そこに関わる人々や地域や活動に対する愛着へと深化していくことがある。ある大手クラウドファンディングサイトの運営事業者の話によると、東日本大震災からの工場再建のために、気仙沼市の製麺工場がクラウドファンディングを活用した。資金支援者は、地域外の会社員達であったが、資金支援だけに留まらず、工場再建後の新しい麺メニューの開発に、ボランティアとして自ら加わったそうだ。

さらに、ふるさと納税者を、一プロジェクトファンから地域ファンへと深化させるためには、ふるさと納税を受け入れた後、自治体がふるさと納税者に何もアプローチしないのではなく、ふるさと納税によってどのように地域を変えようと思っているのか、また変わったのか等丁寧なフォローをしていくことが重要である。このようなフォローを通じて、地域ファンとなったふるさと納税者は、地域に寄り添い、地域がより良くなるようなアイデアを出してくれる地域の応援団となってくれることが期待できる(図表3)。

ここまでくると、クラウドファンディングを活用したふるさと納税は、単なる資金調達手段を超えて、地域内外の人々とともに、地域の新しい価値を創り出す共創ツールへと変貌を遂げる。旨味(返礼品)のみに重点を置いていたふるさと納税者も、プロジェクトを通して地域に関わることで、自身が地域を元気にしているような気持ちとなる。特に、地域外の人々は、第二のふるさとに里心がつき、ふるさと納税の本当の価値に気づくことだろう。

自治体にとって、ふるさと納税者を資金支援者と見るのか、あるいは未来の地域ファンと見るのかが、ふるさと納税を共創ツールまで昇華していけるかどうかの分かれ道となる。自治体が返礼品競争に身を投じた背景には、ふるさと納税を単なる資金調達手段としてだけ捉えてしまったということがあるが、その枠を超えられるかどうかは、自治体がふるさと納税をどう捉え、どう使うかにかかっている。

【図表3】ふるさと納税者を地域に引き込み、ふるさと納税を「共創」ツールへ
図表3:ふるさと納税者を地域に引き込み、ふるさと納税を「共創」ツールへ
(出所)富士通総研作成

3.資金の色による行政事業への使い分け

共創ツールとしても機能し得る『プロジェクト型ふるさと納税』に取り組む自治体は、年々増えている。プロジェクト型ふるさと納税にはどのような事業が向いているだろうか。成果が眼に見えやすいという意味では、インフラ整備は向いている事業のひとつであるが、問題もある。

インフラ整備は、地域にとっては必要不可欠な事業である。しかし、地域外の人々にとっては、その事業の意義は理解できても、共感を呼ぶことまでは難しい。そのため、地域外からの資金の確保は望めなくなるが、地域色を際立たせた面白味のあるインフラ整備とすることで、うまくふるさと納税を活用している自治体もある。

例えば、福井県鯖江市は、2017年、地場産業であるメガネをモチーフとした歩道整備「メガネストリート」事業にクラウドファンディングによるふるさと納税を活用した(写真1)。今では、全国から視察が相次ぐなど、話題スポットとなっている。

【写真1】ふるさと納税などを活用して整備した鯖江市「メガネストリート」
写真1:ふるさと納税などを活用して整備した鯖江市「メガネストリート」
(出所)富士通総研撮影

当初、街路樹の根上りなどにより歩道の修繕が必要な状況だったが、普通に修繕するのではなく、何か面白いことをしたいという若手職員からの提案により、メガネの聖地を具現化するようなメガネストリートを作ってはどうか、という話になったそうだ。鯖江駅から「めがねミュージアム」をつなぐ全長1km程度の歩道に、メガネ型のベンチや植樹桝、鉄蓋など、眼鏡産業111周年にちなんで111個の隠れメガネをしのばせた整備となっている。職員の方でも、全ては見つけきれておらず、整備担当者しか分からない隠れメガネもあると聞く。

実は、鯖江市は、地域住民はもちろんのこと、地域外の人々からも積極的にまちづくりへの意見を求め、特に若者からの提案を広く受け入れている(注3) 。クラウドファンディングの担当職員のお話によると、鯖江市ならさまざまな意見を取り入れて、面白いことをしてくれるだろうという期待が、プロジェクトの支援につながったのでは、ということであった。面白味あるアイデアへの共感と、それを実現していく力を持っている鯖江市だからこそ、メガネストリートという新しい名所づくりに参画してくれる支援者を募れたのだろう。

さらに特筆すべきは、ふるさと納税(クラウドファンディング活用)だけでなく、“税控除が一切ない”通常のクラウドファンディングも併用した点である。公費であるふるさと納税で歩道を改修し、使途の自由度が高い通常のクラウドファンディングで歩道を彩るタペストリーの設置などを実施した。結果、ふるさと納税で942万円、通常のクラウドファンディングで315万円を集めている。このように、公共性の高い事業をふるさと納税で、公共事業としての意義は少ないものの地域を彩る事業は通常のクラウドファンディングでというように、「資金の色」による使い分けにより、無味乾燥となりがちなインフラを観光資源としていくことは、他自治体も参考となる。

インフラ整備の中でも、下水道事業の整備・施設などは、眼につきにくい上に地域色が出しづらい。そのため、ふるさと納税やクラウドファンディングでこれらを整備していくことは、共感を呼び込みにくいという点で、かなり困難を極める。ただ、雨水流出抑制や空きスペースの有効活用、減災としてのグリーンインフラ(Green Infrastructure)の整備は、観光資源にもなり得ると同時に、生物多様性の観点から地域外からの共感を呼びやすく、プロジェクトとして成立する可能性がある。さらに、人口減少時代に伴う都市のコンパクト化が進む中で、インフラを“畳んでいく”という視点とも合致する。クラウドファンディングでグリーンインフラの整備(写真2)をしたという話はまだ耳にしていないが、検討段階にある自治体はある。今後、自然環境に関心の高い全国の人々からクラウドファンディングを活用して資金を集め、保全活動の一環となるようなイベントの開催により、資金支援者が現地に足を運んでもらう工夫をすれば、地域への応援の気持ちが高まるだろう。

【写真2】グリーンインフラの事例 上)南池袋公園、下)上西郷川
写真2:グリーンインフラの事例 上)南池袋公園、下)上西郷川
(出所)富士通総研撮影
(注)これらの整備にクラウドファンディングは利用されていない。

4.ふるさと納税やクラウドファンディングの今後の活かし方

自治体が主導あるいは地域企業等と連携してクラウドファンディングを活用したプロジェクトを実施していくには、地域としての取組み意義だけでなく、新奇性等も取り入れ、全国から興味や共感を得る必要がある。そのため、どのような行政事業でもクラウドファンディングが成功するというわけではなく、ある程度限定される。しかし、うまく “心を揺さぶるプロジェクト”に落とし込めば、成功に導ける。この場合の一義的な成功とは、資金調達となるが、仮に目標額に届かなかったとしても、地域でこんな面白い取り組みをしているというPRになれば、それは成功と言える。

積極的にクラウドファンディングに取り組んでいる自治体に話を聞くと、先に述べたように、クラウドファンディング(ふるさと納税を含む)を資金調達手段としてだけでなく、共創ツールとして活用している、との答えが返ってきた。地域に資金だけでなく、人々を巻き込む手段として、最終的には、緩やかな関係でも、地域を応援し、見守る人々を増やしていくことが、自治体のクラウドファンディングの今後の活かし方だと考える。例えば、大分県別府市では、2017年、地元の民間遊園地に温泉を活用し、「どうせやるならやりすぎたい!温泉×遊園地=前代未聞の『湯~園地』を別府に実現!!」と銘打ったクラウドファンディングを行った。事前に市長が「再生100万回突破で温泉テーマパーク『湯~園地』を実現する」とYouTubeで流したことで話題となり、税金は一切投入しないとしたところ、クラウドファンディングで3,000万円以上集めた。その他、ネット手段を持たない人による支援も受け付ける窓口を設け、8,000万円以上集めている。このように資金調達として大成功を収めたが、人々や企業の巻き込みにも成功している。

『湯~園地』実施に向けて当初市職員等数人でスタートした企画は、最終的には多くの市民が参画し50人体制となり、ボランティアに至っては、開催3日間で延べ1,200人にのぼったと言う。その他、返礼品の提供など、多くの民間企業の協力も得られたと観光課の担当者の方から聞いた。このように、地域の応援隊を作り上げる力も、クラウドファンディングは持っている。

今後の自治体のあり方を考えると、返礼品競争のように、他の自治体との競争を激化させることで、共倒れしてしまっては元も子もない。外部からの資金をもとに、地域固有の資源から新しい地域の特色や魅力を創造していくよう、考え方を切り替えるべきである。

その手段として、クラウドファンディングを戦略的に活用していくことで、次の地域資源への投資を図り、地場産業の創造等、地域内の経済の好循環を作り出すことが重要だ(図表4)。自治体、地域住民、地域企業等地域のステークホルダーの力を結集し、クラウドファンディングによって得た資金をまちづくりへの糧としていくことが期待される。

【図表4】今後の地域発展のあり方
図表4:今後の地域発展のあり方
(出所)富士通総研作成

注釈

  • (注1)
    総務省「ふるさと納税に係る返礼品の送付状況について」(2018.12.27公表)
    http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/topics/20181227.html
  • (注2)
    総務省「ふるさと納税研究会報告書」(2007.10)
    http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/furusato_tax/pdf/houkokusyo.pdf
  • (注3)
    鯖江市は、2010年に「市民主役条例」を制定する等、市民参加による新しいまちづくりを進めている。市内女子高生がメンバーとなった市民協働推進プロジェクト「JK課」の発足や、市民はじめ地域外の大学(東大、早稲田、慶応等)との協働による地域活性化プランコンテストの開催、アイドルグループ「仮面女子」が「めがねのまちさばえ大使」を務める等、ユニークな地域活性化の手法が話題となっている。
渡邉 優子

本記事の執筆者

経済研究所 上級研究員

渡邉 優子(わたなべ ゆうこ)

早稲田大学大学院助手を経て、2005年富士通総研入社。公共分野のシニアコンサルタントとして、自治体や中央省庁における計画策定支援や行財政・行政経営改革に従事した後、2013年同社経済研究所に異動。

専門は、公共政策・行政経営、地域経済活性化、環境・エネルギー分野の事業化検討等。

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