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企業のSDGsの取り組みの浸透と課題

2016年1月に国連の持続可能な開発目標(SDGs)がスタートしてから4年目を迎えた。企業のSDGsの取り組みが急速に進むなか、企業活動がSDGsに及ぼす影響を厳格に評価する動きも進んでいる。

2019年1月29日

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大手企業を中心にSDGsが急速に浸透

2016年1月に国連の持続可能な開発目標(SDGs)がスタートしてから4年目を迎えた。SDGsは、持続可能な開発のために2030年までに達成すべき目標として国際社会が合意したものである。今後10年以上、すべての国・地域に適用されることから、社会課題解決の取り組みに関するグローバルな「共通言語」とみなされている。日本政府は、2019年9月に国連本部で開催されるSDGs首脳級会合で、取り組み状況を報告する予定である。

企業にSDGsへの対応が義務付けられたわけではないが、SDGsに取り組む日本企業は急増している。東洋経済新報社「CSR企業総覧2019【ESG編】」(2018)によると、掲載企業1,501社のうち、SDGsを参考にしている企業が472社、検討中の企業が164社であり、合わせると全体の42%の企業がSDGsを参考あるいは検討中であった。一昨年の同調査(対象企業1,408社)では、SDGsを参考・検討中の企業数が317社(全体の23%)であったことから、2年間でSDGsを参考・検討中の企業数が倍増(全体の比率で19ポイント増加)したことになる。

大手企業の取り組みに注目すると、SDGsはさらに浸透している。図1は、国内大手企業の取り組み状況を精査するために、2018年版のフォーブスグローバル2000にランクインした日本企業224社(注1) について、ウェブなどでの公開情報(2018年12月末現在)を基にSDGsについて言及しているかどうかを調べたものを、2017年12月末時点の調査(注2) (対象企業225社)と2016年12月末時点の調査(注3) (対象企業219社)と比較したものである。2018年12月末時点でSDGsについて何らかの言及をしていた企業は181社(全体の81%)であり、2年前の72社(全体の33%)から増加の一途をたどり、今やSDGsについて言及する企業が大多数を占めるほどである。

【図1】フォーブスグローバル2000日本企業のSDGsへの言及
(図表1)フォーブスグローバル2000日本企業のSDGsへの言及
(出所)フォーブスグローバル2000(2016年版・2017年版・2018年版)と各社公開情報を基に富士通総研作成

SDGsの取り組みが遅れていたランク下位企業や非製造業においても、SDGsが浸透し始めている。図2に示した通り、前回(2017年末)調査では、SDGsに言及した企業の比率が製造業75%に対して非製造業37%であったが、今回(2018年末)調査では、製造業86%に対して非製造業76%というように差が大きく縮まっている。同様に、前回調査ではランク上位(1000位以内)企業のSDGs言及比率76%に対してランク下位(1001位~2000位)企業が37%であったが、今回調査ではランク上位企業91%に対してランク下位企業71%というように差が縮小している。

【図2】フォーブスグローバル2000日本企業のランク別・業種別のSDGsへの言及
(図表2)フォーブスグローバル2000日本企業のランク別・業種別のSDGsへの言及
(出所)フォーブスグローバル2000(2016年版・2017年版・2018年版)と各社公開情報を基に富士通総研作成

企業のSDGsの取り組みも具体的になってきた。図3は、SDGsへの言及内容を分類し、過去の調査結果と比較したものである。今回(2018年末)調査では、企業トップのメッセージの中でSDGsについて言及している企業が133社と最も多く、SDGs言及企業の7割を超えていた。続いて、CSR方針や考え方などにSDGsを反映する企業(116社)やSDGsと自社事業を総合的に関連付ける企業(110社)もSDGs言及企業の6割を超えている。前々回(2016年末)調査では、両者に該当する企業が10社程度だったことを考えると、企業の取り組みがより総合的かつ具体的になっていると言える。企業トップのメッセージを見ても、前々回調査では、SDGsを認識していることや自社がSDGsに貢献する意思を表明するものがほとんどであったが、今回調査では、SDGsに関する社内の検討内容やビジョン・方針を語る企業が増えており、より具体的になっている。

【図3】フォーブスグローバル2000日本企業のSDGs言及内容
(図表3)フォーブスグローバル2000日本企業のSDGs言及内容
(出所)フォーブスグローバル2000(2016年版・2017年版・2018年版)と各社公開情報を基に富士通総研作成

企業への期待と要請の高まりと厳格化する影響評価

SDGsの対応を重視する企業が急増している理由は何だろうか。確かに、国際社会がSDGs達成を目指すうえで、人材・技術・資金を有する企業の役割に対する期待は大きい。日本政府も、2016年12月に策定した「SDGs実施指針」において、民間セクターの貢献が決定的に重要との認識を示している(注4) 。産業界もSDGsの取り組みを促している。日本経団連は、新たな経済成長モデル「Society 5.0」を通じたSDGs達成への貢献を掲げて、2017年11月に「企業行動憲章」と「企業行動憲章の実行の手引き」を改定し、さらに2018年7月にはSDGs特設サイト(日本語・英語)を開設して、先行取り組み企業の事例を公開している(注5) 。

SDGsの取り組みは中小企業にとってもヒトゴトではない。大手企業の取り組みはバリューチェーンに及ぶことになり、取引関係のある中小企業にも影響を与える。中小企業の取り組みを促す動きも活発である。2018年6月に環境省が作成した「SDGs活用ガイド」は中小企業を主対象としている。政府のSDGs推進本部が2018年12月に発表した「SDGsアクションプラン2019」においても、具体的な取り組みの一つに「中小企業におけるSDGsの取り組み強化」が挙げられている。グローバルには業種別ガイドラインの検討も活発で、業種単位でバリューチェーン管理が進行しそうだ。国内でも、2019年2月に日本建築センターが建築産業向けのSDGsガイドラインを発行予定であり、中小企業を多く含む建築業界の取り組みに影響を与えるだろう。

リスク管理の観点からは、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資がSDGsと関係付けられるようになってきたことが注目される。企業活動がSDGsに及ぼす影響に対する投資家の関心は高まっている。日本では、2017年7月に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、日本株のESG指数を選定して運用を開始したことが、大手企業のESG対応を促すことになった。GPIFは、ESG投資とSDGsの関係について「社会的な課題解決が事業機会と投資機会を生む」と明確に示している(注6) 。

SDGsに関する企業情報の内容にも厳格性が求められるようになりそうだ。国際的なガイドラインの整備も進んでいる。IIRC(国際統合報告評議会)は、2017年9月にSDGs達成への貢献とコミュニケーションのあり方に関するレポートを公開している(注7) 。また、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)と国連グローバル・コンパクトは、SDGs関連情報開示に関して、企業向けに2017年9月(分析編)と2018年8月(ガイド編)、投資家向けには2018年7月に、それぞれレポートを公開している(注8) 。さらに、2018年9月には、企業のSDGsパフォーマンスを評価するための指標を開発してグローバル大手企業のランキングを行うことを目的として、2018年9月にWBA(ワールド・ベンチマーキング・アライアンス)が設立された(注9) 。

ビジネス開発にもSDGs貢献の精査が重要に

事業機会の観点からすれば、17目標169ターゲットから構成されるSDGsには国際的な社会課題のほとんどが網羅されており、企業が社会課題解決と事業機会を検討するヒントの宝庫ともいえる。ビジネスと持続可能な開発委員会(BSDC)によれば、2030年時点で、世界全体で12兆ドル/年、アジア域内でも5兆ドル/年の市場機会が見込まれている(注10),(注11) 。日本政府の「SDGsアクションプラン2019」(注12) に示された8つの優先課題と具体的施策にも、国内外の市場機会のヒントが含まれている。国内市場を見ても、政府が「SDGsを原動力とした地方創生」を掲げ、2018年から「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」を開始したことから、地方自治体においてもSDGsへの関心が急速に高まっている。SDGsを共通言語として、地域の課題解決に資する事業の構築を視野に、自治体と企業、大学、NPOなどとの連携・協働の動きも活発になっている。

事業機会獲得のためにSDGsの視点をビジネス開発に活かすことが期待されるが、「SDGs起点ビジネス」と「SDGs貢献ビジネス」の違いには留意する必要がある。つまり、SDGs起点で新たなビジネスの発想を得ることと、そのビジネスがSDGsに貢献することが、一致するとは限らないということである。SDGsは政府の目標であり、達成度合いを評価するために開発された232の指標も国レベルの指標である。厳密に言えば、「SDGs起点ビジネス」の成果が政府のSDGs目標達成(指標の数値改善)に貢献することを示せなければ、「SDGs貢献ビジネス」とは見なせない。ビジネスの影響を精査せずに、安易に「SDGs貢献」を掲げることは避けなければならない。もちろん、SDGs貢献を明示できなくても、市場性が見込めれば、新規ビジネス開発としての意義は十分にあり、「SDGs起点ビジネス」の有用性が否定されるものではない。

「SDGs貢献ビジネス」は、既存のビジネスの中にも見出せるかもしれない。これまでの企業のSDGsの取り組みには、既存ビジネスに対して「後付け」でSDGsと関連づけを行う例が多かった。この取り組みは、単なる現状肯定に陥ってしまい、イノベーションによる新規ビジネス開発にもつながらないため、あまり推奨されていない。しかし、既存ビジネスを洗い直すことで、政府のSDGs目標達成に具体的に貢献できそうなものが見つかれば、「SDGs貢献ビジネス」として注力することも考えられよう。一方で、既存ビジネスか新規ビジネスかに関わらず、SDGs貢献を精査する過程で、SDGs達成に悪影響を及ぼすことが懸念される場合、事業の見直し・中止を検討する必要がある。

SDGsを考慮した企業経営は2030年までの長丁場となる。企業のSDGsの取り組みが急速に進むなか、企業活動がSDGsに及ぼす影響を厳格に評価する動きも進んでいる。SDGsへの貢献面だけを表明する「SDGsウォッシュ(いいとこ取り)」を避けることは当然だが、自社の取り組みが本当にSDGs達成に貢献しているか、あるいは阻害していないかということについて、精緻な説明が求められるようになる。すでに一部の先行取り組み企業は、17目標レベルではなく、169のターゲットレベルで、SDGsの取り組みを検討し始めているが、SDGs貢献を示す際には、232指標との整合を考慮した慎重な検討と取り組み成果の精査が求められる。SDGsを企業活動に定着させ、持続的な企業競争力の向上を図るためには、あらためてSDGsと自社の活動の関係性を十分に把握・整理したうえで、事業戦略を検討・実施することが望まれよう。

注釈

  • (注1)
    https://www.forbes.com/global2000/
  • (注2)
    生田孝史 2017 「SDGs時代の企業戦略」富士通総研『研究レポート』No. 437
  • (注3)
    生田孝史 2018 「SDGs定着に向けた日本企業の取り組みと課題」富士通総研『オピニオン』2018年3月16日付
  • (注4)
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/dai2/siryou1.pdf
  • (注5)
    https://www.keidanrensdgs.com/home-jp
  • (注6)
    https://www.gpif.go.jp/investment/esg/
  • (注7)
    IIRC 2017, “The Sustainable Development Goals, integrated thinking and the integrated report”, http://integratedreporting.org/wp-content/uploads/2017/09/SDGs_integratedthinking_and_integratedreport.pdf
  • (注8)
    https://www.globalreporting.org/information/sdgs/pages/reporting-on-the-sdgs.aspx
  • (注9)
    https://www.worldbenchmarkingalliance.org/
  • (注10)
    Business and Sustainable Development Commission 2017, “Better Business, Better World”, http://report.businesscommission.org/uploads/BetterBiz-BetterWorld_170215_012417.pdf
  • (注11)
    Business and Sustainable Development Commission 2017, “Better Business, Better World Asia”, http://s3.amazonaws.com/aws-bsdc/BSDC_asia_web.pdf
  • (注12)
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/actionplan2019.pdf
生田 孝史

本記事の執筆者

経済研究所 主席研究員

生田 孝史(いくた たかふみ)

専門領域:環境・エネルギー政策、環境・CSR関連事業・経営戦略、社会イノベーション、自然資源活用型地域戦略など、企業や地域の持続可能性をテーマとした研究活動

1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社

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