GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. バングラデシュ市場の魅力 第6回 バングラデシュに進出するための基礎知識

入力不要

バングラデシュ市場の魅力

第6回 バングラデシュに進出するための基礎知識



2020年6月10日

opinion2018-10-2_1280-800

1.はじめに

中国に拠点を置く多くの外資系企業は、中国だけに依存する事業能力や資産を代替地に移転したり、バックアップ拠点を設置したりすることを計画している。これは「チャイナ・プラス・ワン」戦略として知られる。ここ数年、中国経済は、人件費の上昇を中心とした要因のために変化しており、かつては人件費の安さを理由に中国に進出していた海外企業の多くが、今では中国での事業展開を見直し、製造戦略を多様化させている。COVID-19の発生は、中国への依存度の高さからサプライチェーンの深刻な混乱を招き、「チャイナ・プラス・ワン」の流れを加速させている。

関連して、日本政府は新型コロナウイルスの感染拡大で製造業のサプライチェーンが寸断したことを受け、生産拠点が集中する中国などから日本への国内回帰や第三国への移転を支援するとし、緊急経済対策の一環として総額2435億円を2020年度補正予算案に盛り込んだ。また米アップルは、今期初めて人気のワイヤレスイヤホン「AirPods」をベトナムで数百万個生産する予定で、サプライチェーンを多角化している(注1)。

中国は大きな小売市場である。そのため多くの企業は中国からの反発を望まない。製造拠点を中国からあまり移動させないように考える。そのため企業は東南アジア、南アジアなどでの製造とセットにしたプロセスの合理化の可能性を探ることになり、最有力候補はバングラデシュ、インド、ベトナム、マレーシア、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピンなどとなっている。新型コロナウイルス後の産業変化も踏まえて、直近34の日本企業が自社のユニットを中国からバングラデシュに移転することに関心を示している。(注2

ここでは発展途上国の中でも外国企業や外国人投資家が進出するための条件が整いつつある、バングラデシュへの進出について説明したい。

既にこのシリーズをお読みの方はご存じかもしれないが、バングラデシュは東南アジアの新興国で、人口は約1億6440万人。現在、国民の年齢の中央値は27.6歳で、総人口の約8割が国の経済の中心的な労働力となっている(注3)。バングラデシュ政府が掲げる国全体のデジタル化のビジョンは「デジタル・バングラデシュ」と呼ばれ、この計画によって、バングラデシュは2024年までに中所得国に到達することが期待されている(注4)。また、バングラデシュ政府は、スタートアップ、IT産業、研究者、高等教育などの連携拠点となる「ハイテクパーク」を地区レベルで設置することに取り組んでいる(注5)。

バングラデシュ政府は、バングラデシュをビジネスがしやすい環境とすることに強い意欲を示している。現状世界銀行のビジネスのしやすさランキングでは下位に甘んじていることをよしとせず、多くの関連政策を推進している(注6)。BHTPA(Bangladesh Hi-Tech Park Authority:バングラデシュ・ハイテクパーク庁)は、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)産業がハイテクパーク内でビジネスすることを奨励し、様々なインセンティブを提供している。例えば、ビジネスがSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に沿ったものであれば、BHTPAは事業用地を無償で貸し出してくれるほか、ハイテクパーク内で事業を開始した場合には当初10年間は法人税に相当する税金が安くなる制度が存在する(注7)。

以降は、バングラデシュでの新規事業設立のため流れを説明したい。外資系企業のバングラデシュ進出にあたっての課題と解決策についても触れる。

2.バングラデシュ進出の基礎知識

おそらくこの記事の読者の方の多くは日本の企業の方と思われる。日本企業の方が読まれているという前提で、いくつか基礎知識を説明したい。

関係する主要政府機関

BEZA(Bangladesh Economic Zones Authority:バングラデシュ経済圏庁)とBIDA(Bangladesh Investment Development Authority:バングラデシュ投資開発庁)はバングラデシュの二大投資促進機関である。両機関とも、外国からの投資を誘致し、「チャイナ・プラス・ワン」戦略の機会をつかむための取り組みを行っている。

バングラデシュ経済圏庁(BEZA)

BEZAはバングラデシュ国内で100箇所の経済特区の建設に取り組んでおり、そのうち日本向け、インド向け、中国向けの3つの特区では、製造業がバングラデシュに生産拠点を設置しやすくなるようなサポートを行っている。日本の投資家を受け入れるための専用ゾーンでは、100%日本向け輸出ビジネスに対して特別な優遇措置を用意している。BEZAでは、輸出ゾーン内での免税措置(現在は3年間の100%免税を含む10年間の免税措置)の延長、機械類(中古品含む)の免税輸入の許可、保税施設の提供、サービスの迅速化などに取り組んでいる。

バングラデシュ投資開発庁 (BIDA)

BIDAは、投資の促進、外国人投資家への現地支援、定住後の戦略面での専門的な支援を行っている。BIDAは事業体に対するライセンス発行機関である。BIDAはOSS(One Stop Service:ワン・ストップ・サービス)を導入しており、オンラインで事業者登録の手続きを可能とするなど、バングラデシュのビジネスフレームワークの改善に継続的に取り組んでいる。

バングラデシュ市場参入への選択肢

外国人投資家がバングラデシュで事業を行う方法として、以下の選択肢がある(注8)。

図1:外国人投資家の参入選択肢
図1:外国人投資家の参入選択肢

事業形態を選ぶ際のヒント

外国人投資家がバングラデシュで新たに事業参入するにあたって事業形態を選択する場合、様々な基礎情報収集(法制度、許認可、外資規制、税務等)、新会社の登録手続き、現地関連省庁および現地企業とのコネクション形成などのため、コンサルテーションを受けることをおすすめしたい。投資家は事業内容や形態によって異なる優遇政策の内容、人脈等を踏まえた上で、事業形態を選択することになるが、同じようでも日本とは勝手が異なる。

基本的な事業形態の選択肢としては以下のものがある。

  • 連絡事務所(リエゾンオフィス): 外資系企業が人脈を持ち、情報を収集し、母体企業のアカウントの情報を提供し、またはその広告を引き受けることを目的としたスタッフを1名雇用したい場合は連絡事務所の設置という選択ができる。
  • 支店・営業所: 外資系企業が上記の活動と並行して、限られた規模の商業活動を行うことを目的とする場合には支店や営業所を設立すべきである。
  • 完全子会社: 外資系企業が自ら本格的な商業活動を行いたい場合は現地子会社を設立する。
  • 合弁会社: 外資系企業が現地企業の支援を受けて本格的に事業を行いたい場合、現地企業との合弁会社を設立することが多い。

3.バングラデシュにおける新規事業の立ち上げ

バングラデシュでの事業立ち上げに必要な基本的な書類やステップはそれほど複雑ではない。進出企業の国籍で異なる要件を理解しておくことで、より効率的にプロセスを踏むことができる。(注9)。

事業形態を選択したら新会社の設立プロセスを踏むことになる。新会社の設立登録手続きは、RJSC(Registrar of Joint Stock Companies and Firms:会社登記官)やBIDAなどへ多くのオンラインおよびオフラインの登録を行う。登録手続きが完了した後、新会社が営業を開始するためには、TIN(Taxpayer Identification Number:納税者識別番号)、VAT(Value Added Tax :付加価値税)、貿易ライセンスを申請する必要がある。なお、ハイテクパーク内で事業を開始した場合には当初10年間は日本の法人税に相当する税金が無税となる。

必要な場合には土地の取得を行う。外国企業がバングラデシュの土地を購入できるよう、BEZAでは、外国人投資家向けの経済特区(EZ)の開発を進めている。日本、中国、インドには国別に経済特区を開発しており、日系企業がバングラデシュで事業を行いやすいよう配慮がなされている。BEZAは、経済特区内で異なる規模の免税措置を提供することで、外国人投資家にインセンティブを与えている。

事業用地を借りる場合も最新の注意を払いたい。事業用地を借りる場合には信頼のおける業者や機関を通じ、所有権の検証を行い、賃貸する土地の重大な欠陥や所有権の欠陥がないか、また賃貸条件を十分に確認する必要がある。

また、現地生産をするために機械をバングラデシュ国内に輸入しようとする場合など、必要に応じて機械輸入手続きを行う。この場合は、商務省からIRC(Import Registration Certificate:輸入登録証明書)を取得する。

いよいよ現地で事業を開始した際は、バングラデシュ現地の法律を遵守し、規制に従う必要がある。現地の法律をよく理解している弁護士等のリソースを確保し、違法行為に及ばないように注意する。なお、バングラデシュの法律では、契約で紛争解決を第三国のフォーラム(シンガポールなど)に照会して解決することが認められている。また、紛争解決のためにBIAC(Bangladesh International Arbitration Center:バングラデシュ国際仲裁センター)を利用することもできる。

4.登録手続き

事業形態が異なれば手続きが異なってくるが、ここでは現地子会社を設立する一般的なプロセスについて簡単に紹介したい。図1で示したバリエーションのうち、完全子会社の設立プロセスフローと一般的なタイムラインは、図2のようになっている。

RJSCから会社名の認可を得るところから、BIDAへの登録まで、バングラデシュでLimited Companyを設立するのに必要な平均的な日数は45~60日である(注10,11)。特にBIDAの登録は約30日と、比較的時間がかかる部分なので手戻りのないように行いたい。

図2:完全子会社設立の手続き
図2:完全子会社設立の手続き

5.撤退する場合

希望を持ってバングラデシュに進出したとしても、必ずしも事業が成功するとは限らない。不幸にも撤退を余儀なくされる事態もあるだろう。進出前にはある程度撤退場合のシナリオも想定して置くべきである。現地での事業を撤退する場合、ポイントは現地の資産をうまく引上げ、次の投資先に振り向けられるようにすることである。バングラデシュでは、バングラデシュ銀行の承認を得て、清算後の国際送金が可能になっている(注12)。

外国企業完全所有の子会社の場合、外国企業は、海外に送金する前に、税金を含むすべての負債と会費を支払わなければならない。裁判所が会社を解散させた後、外国人株主は中央銀行の承認を得て国際送金が可能となる。

6.バングラデシュでの事業立ち上げの課題と政府の支援策

過去数年間、バングラデシュのFDI(Foreign Direct Investment :海外直接投資)が促進される中で、インフラや社会構造の関連するいくつかの課題が指摘されている(注13)。

例えば、ユーティリティ供給の不備、または不安定さが代表的な課題である。バングラデシュ全体の現在の電力とガスの供給は先進国と比較してまだ不十分である。途切れることのないユーティリティが提供されることは大規模産業にとって主要な関心事である。ダッカでも停電が少なくなりつつあるものの、まだまだ改善の余地は大きい。

現在の道路事情など非効率なインフラも課題である。バングラデシュでは道路、鉄道網や通信網はインフラ整備の最中である。まだまだ技術が貧弱であり、標準化の視点が欠けている。

日本でも官僚的な仕事はお役所仕事として批判されることがあるが、バングラデシュでもこれは同様かもしれない。長くて複雑なオンラインおよびオフラインの登録手順は多数ある。さらに課題なのはバングラデシュではしばしば政治不安の状況があること、また、政府および非政府組織の多くで汚職が指摘されていることである。

地元の企業の課題も多い。多くの場合、外国の企業の仕事のやり方に慣れていない。また、分野に限定した場合、事業分野固有の人材のリソースマネジメントは、近年重要な課題となっている。地元の企業間での支払など、信用力とデリバリーの信頼性は、ビジネスに混乱をもたらすリスクとしてコントロールが必要である。

既存の課題に対しては政府も対策を講じつつある。前述のように、BIDAは、OSSを実装しており、これにより、会社名称のクリアランス、会社の登録、TIN、VAT、および貿易ライセンスを含むいくつかの登録手順を簡単に取得できる。今後もBIDAによって OSS を利用したサービスの拡充が予定されている。

ほかにもビジネス環境指標のうち起業、電力、信用に関連する3つの指標で改善が行われている。起業に関しては、ネームクリアランス、登録料の引き下げ、電子証明書の認証料の廃止により、起業をより安価にした。この改革はダッカとチッタゴンの地域に適用されている。

電力に関しては電力会社のデジタル化と人的資本への投資により、電気の契約を迅速化した。また、ダッカでは新規接続時の保証金を減額することで、電力コストを削減した。国際的なプロジェクトとして発電所建設も行われており、企業に対する安定的な供給を目指している。

ビジネスリスクを低減するために、企業の信用情報についてバングラデシュ政府は信用情報局の対象範囲を拡大することで、信用情報へのアクセスを改善している。

これらの政府による改善は、必ずしも十分ではないかもしれないが、課題は外国企業にとってビジネスチャンスでもある。政府と連携することで特区での大規模な事業開発の機会が得られ、外国企業がビジネスしやすくなっている。競合他社に先んじて現地の信頼できるパートナーシップを構築したり、従業員教育を実施したりすることで解決できることも多いだろう。

7.おわりに

COVID-19の流行が終息した後も経済は厳しい状況が続くと予想される。そのなか、バングラデシュは新規市場開拓や事業移転のための重要な選択肢となる国である。富士通総研(FRI)は、BHTPAとの覚書に基づき日本企業を誘致するにあたって協力するとともに、進出を検討している日本企業の皆さまのバングラデシュでの事業展開を促進・発展させることを支援したいと考えている。

また、バングラデシュでのビジネスをしやすくするため、FRIでは現地のデータを収集・分析し、セクター別のポイントを整理している。我々はBHTPAやBASISなどの関連機関と連携してIT分野での活動を中心に、外国人投資家のためのビジネスフレンドリーなエコシステムを構築したいと考え、バングラデシュへの進出を希望する企業の皆様に一貫した支援を行っていきたい。

この記事では、バングラデシュでの新規事業の設立手順について簡単に説明した。より詳細なバングラデシュビジネスのプロセスに関心がある場合は、FRIのバングラデシュチームにお問い合わせください。

参考文献

  • (注1):
    Nikkei Asian Review, Apple to produce millions of AirPods in Vietnam amid pandemic, 2020年05月08日
  • (注2):
    The Financial Express, China exit: Japanese firms keen on moving to BD, 2020年05月23日
  • (注3):
    Worldometer, Bangladesh population, Last updated: 2020年05月21日
  • (注4):
    Centre for Policy Dialogue (CPD), Policy Brief (2018), Bangladesh Becoming a Middle-Income Country, Ceasing to be a Least Developed Country: Clarifying Confusion, 2018年03月
  • (注5):
    BHTPA, ホームページ
  • (注6):
    The World Bank, Doing Business 2020: Bangladesh Improves Business Climate, but More Remains to Be Done, 2019年10月24日
  • (注7):
    NBR, Income Tax at a Glance, Fiscal Year 2015-16
  • (注8):
    Ogrlegal, Foreign Investment in Bangladesh
  • (注9):
    Doing Business 2020, Economy Profile of Bangladesh
  • (注10):
    BIDA, ホームページ
  • (注11):
    RJSC, ホームページ
  • (注12):
    LegalSeba, Exit Policy for the foreign investors in Bangladesh
  • (注13):
    International Journal of Economics & Management Sciences, Foreign Direct Investment (FDI) in Bangladesh: Trends, Challenges and Recommendations, 2015年07月21日
ムハッマド アブラル フセイン

本記事の執筆者

株式会社富士通総研(FRI)
コンサルティング本部 政策支援グループ

ムハッマド アブラル フセイン (Muhammad Abrar Hussain)

 

ノース・サウス大学(バングラデシュ)の「Data Structure」、 「JAVA」 、 「Database」 、 「Computer Architecture」 などの講座で教鞭をとった後、バングラデシュICT人材育成プログラムでデータサイエンティスト教育を受けたのち現職。バングラデシュの産業を中心に、新たなビジネス機会、戦略的実施、プロジェクト管理ソリューションの確立に取り組んでいる。

お客様総合窓口

入力フォーム

当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。