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バングラデシュ市場の魅力

第5回 バングラデシュのスタートアップ企業の紹介とコロナ禍の中での取り組み



2020年6月1日

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1.はじめに

バングラデシュでは、ICTを推進分野と位置付けている。ICTには改革の成功、雇用創出、産業成長、他のセクターへの波及効果、ガバナンスの改善、インクルージョンの促進などの可能性があるからである。現在の世界銀行のバングラデシュ向け国別援助戦略でも、バングラデシュの成長、競争力、ガバナンスの課題を解決する上でICTの重要な役割が認識されている。

UNCTAD(国際連合貿易開発会議)の評価報告書(注1)では、総人口1億6000万人のバングラデシュで35歳未満の1億1000万人のために雇用を創出するという同国の開発目標に、ICT産業が適合していると評価されている。バングラデシュ政府の「デジタル・バングラデシュ」構想では、ICTを成長の原動力と位置づけ、最新技術の効果的な利活用を通じて持続可能な開発を促進することを目指している。

すでにバングラデシュでは、ビッグデータ分析、サイバーセキュリティ、クラウド等の様々な分野で数々のICTスタートアップ企業が活躍しており、バングラデシュ政府が目指している「デジタル・バングラデシュ」の実現を促進している。また、ICTフリーランサーが50~60万人いると言われており、コーディングスキルを持つ人材が豊富で人件費も安い。2018年時点でバングラデシュにある4,500社のICT企業の約35%が2011年以降に設立された新しい企業である。

本記事では、バングラデシュのような新興国のスタートアップと、ポスト・コロナでの貢献可能性について述べたい。

2.COVID-19パンデミックとバングラデシュのスタートアップエコシステム

バングラデシュのICT産業の成長にスタートアップは多大な貢献をしている。過去5年間、多くの若者(主に工学系、情報系、経営学系の卒業生)は、企業で就職するよりも、自分たちのベンチャーを育成することに注力してきた。現地政府の新規ビジネスの立ち上げ支援、ベンチャーキャピタルの資金調達、ブートキャンプ、インキュベーションや資金調達の機会、スタートアップのアイデアを育てるための政府の長期的な取り組みが、スタートアップの若者たちが創出したアイデアに対して時間、努力、資金を投資すること促進したのである。

バングラデシュのITスタートアップのエコシステムは安定したレベルにあったが、COVID-19(注2)の世界的流行は、その過程で最大級のハードルとなった。2019年12月以降、COVID-19の感染者曲線は指数関数的に上昇した。世界中の多くの国では本稿執筆時点でも、封鎖、ロックダウンなどを実施し、頻繁な手洗い、マスク着用ソーシャルディスタンスの確保などの慎重な措置を取ることで、感染拡大を阻止しようとしている。このパンデミックの全体的な状況と、新たに出現したウイルスに対する適切なワクチンや治療が利用できないため、日本同様、世界中の多くの企業は「在宅勤務・テレワーク」などの取り組みを実施している。

多くのスタートアップにとって、COVID-19は事業全体に悪影響を及ぼしている。バングラデシュ政府はまだスタートアップに対する具体的な対策を打ち出していないが、今後6カ月の間にスタートアップにライフラインを提供するための政策提案をまとめようと、起業家やステークホルダが活動している。

一方、スタートアップは、ダッカでのコロナ・パンデミックとの戦いで積極的な役割を果たしている。コロナ流行以前もダッカは世界で最も人口密度の高い都市と知られ、恒常的な交通渋滞に悩まされてきた。スマートフォンが既に普及していても、先進国と比較して都市インフラが脆弱であることがテレワークに限らずオンラインを活用したサービスを日本以上に日常的に利用する土壌として作用している。

以下で分野別にいくつかの代表的なスタートアップの活躍事例を紹介したい(注3)。

在宅サービスのマーケットプレース

ダッカでもロックダウンが行われ、STAY HOMEが呼びかけられている。そのため家にいながら利用できるサービスが重宝されている。

オンデマンドサービスマーケットプレイスを提供するShebaというスタートアップは、ダッカ市内などを対象に様々な住宅向けサービスSheba.xyz(BETA)を提供している(注4)。

Shebaが提供している主なサービスは、掃除、修理、水道工事、家の移動、洗濯、救急車の緊急支援、食料品、害虫駆除、車と運転手のレンタル、家での美容とサロンなどだ。日本の水回りや生活トラブルを解決する業者と比較しても多岐にわたるサービスをワンストップで提供する。24時間対応で経歴チェック済みの業者がアプリから呼び出せる。

図1:Shebaアプリ画面
図1:Shebaアプリ画面 (注5)

また、Rokkhi IT Solutions Ltd.という別のICTベンチャーは、アパート、ビル、ゲーテッドコミュニティ(壁で囲まれた住宅街)のためのアプリベースのセキュリティと管理ソリューション提供している。コミュニティに関連する様々なタスクを管理するためのソリューションでもあり、また塗装、掃除、電気工事、エアコン設置、CCTVライブストリーミング、車両追跡、生体認証、子供の追跡などIoTを含む住民向けサービスがラインナップされている。

図2:Rokkhiアプリ画面
図2:Rokkhiアプリ画面 (注6)

本稿執筆時点で、COVID-19パンデミックにより、Rokkhiは他社と協力して、バングラデシュの貧困層を対象とした寄付型資金調達キャンペーンを実施している。

食料品や生活必需品を宅配するe-コマース

バングラデシュには、まだAmazonのようなグローバル大手が進出しておらず、ローカルのショッピングサイトが人気を集めている。Chaldal、Shohoz、Meenaclickなどのオンラインショッピングサイトでは、食料品や生活必需品の配達を確保するためのリスクが高まってる中、操業を続けている。Chaldalはダッカ地区で即日宅配を行うオンライン食料品ショッピングサービスを提供している。同社のマーケット・ブランディングは他社と比較的スマートであり、サービス面で最も人気がある。Meenaclickは、バングラデシュ最大のスーパーマーケットチェーンの1つであるMeena Bazarのオンラインプラットフォームである。Shohozは、バングラデシュを拠点とするオンラインライドシェアリングおよびチケット発行プラットフォームである。 MeenaclickはShohozと協力し、ダッカとチッタゴン市内で困っている顧客にアプローチし始めた。COVID-19の世界的流行の最中のこの困難な時期に、Meenaclickの商品はShohozスーパーアプリのフード部門経由で即時配達が可能になった(注7)。

ライドシェアから物流サービスへ

COVID-19の開始以来、バングラデシュでのライドシェアリングサービスは停止した。一方で、Uber、Pathao、Shohozのようなライドシェアリング関連のスタートアップは、ロックダウン後食料品や医薬品の宅配に力を入れている(注8)。

ロックダウンすれば自ずと食品配達会社の注文が発生する。しかし、ダッカの食品配達会社は配達人を見つられず、レストランの閉鎖など困難な状況に追い込まれていた。一方、Pathaoは、バングラデシュで最も人気のあるオンラインライドシェアリングプラットフォームの1つであり、Pathao Food(フードデリバリーサービス)、Pathao Parcel(宅配便)などの他のサービス部門がある。

買い手を引き付けるために、Foodpanda、HungryNaki、Uber Eats、Shohoz Foodのようなアプリ利用したフードデリバリーサービスは配達料金なしで宅配している。FoodpandaとPathao Foodは、現在バングラデシュで最も流行している2大フードデリバリーサービスである。Pathao Foodは他のサービスよりも比較的高速で、乗車アプリ内で共通に提供されるため、多くの人はPathao Foodを好むようだ。

Fintech / Mobile Financial Services (MFS)

bKash、Rocket、Nagad、DBBL Pay、などは、モバイル機器でお金の取引をより簡単に管理できるサービスを提供する現地のスタートアップである。

bKashは現地のBRAC銀行が設立し、バングラデシュ国内で最も広く使われている。オンライン決済や国内外からの送金、プリペイド式携帯のリチャージ、貯蓄サービス等を提供している。bKashのユーザー数は2,400万人以上で、全国3万以上の店が加盟している。

bKashの使い方はシンプルでとても便利である。国全体で利用できるため最大のMFSとなった。アプリを利用するにはbKashのアカウントが必要だが、スマホアプリがなくても近くのbKashの代理店でいつでも無料で電話番号のアカウントを開設でき、フィーチャーフォンでも利用できる。bKashアプリを活用し、他のbKash番号に送金したり、お金を受け取ったり、請求したり、携帯電話の通話時間を購入したり、全国の販売店で支払いをすることができる。

日本で非常事態宣言後に実店舗で電子決済の利用が推奨されているように、バングラデシュでも政府が新型コロナウイルス感染防止の非常事態とした間、多くの人々が毎日の取引を携帯電話の非接触金融サービスに依存している。

bKashによれば、3月26日に緊急事態が発生した後、3月30日には、このプラットフォームを通じて約590万件の取引があった。コロナウイルス感染者の発生により、ほとんどの商業施設は閉鎖され、活動は停止されたたままであったが、その日の取引量は55億BDTに及んだ(注9)。(1BDT=約1.3円)

24時間365日いつでもどこからでも利用できることが、緊急時にMFSを使用することに対する人々の肯定的な反応の理由である。請求書の支払い、携帯電話の充電、送金、入金、オンライン決済などのサービスは、ロックダウン後も便利に利用されている。

Rocket、Nagad、Nexus Payなどの他のサービスは、モバイルウォレットの管理を容易にするためにそれぞれの民間銀行と提携している。Nagadはバングラデシュ郵便局のデジタル取引サービスのための政府ベンチャーである。Rocket、Nexus PayはDutch Bangla銀行 (DBBL)が提供している。

教育・eラーニング

教育分野では、Robi 10 Minute School、Shikhbe Shobai、Online Sohopathiのようなスタートアップ企業がCOVID-19パンデミックの間、通常通り運営を続けている。これらの企業は完全にeラーニングに基づいているため、パンデミックの悪影響はほとんどなかった。Robi 10 Minute Schoolは、モバイルアプリケーション内のオンライン試験施設と共に、学校や大学の学生の間で、その多様でインタラクティブでありながら、簡単に学べるコンテンツで非常に人気がある。学習内容は、数学、物理、化学、生物学など、バングラデシュの伝統的なカリキュラムを網羅している。Robi 10 Minute Schoolは現地の大学1年生にとっておなじみの存在になっている。

Shikhbe Shobai とOnline Sohopathiは、大学入学志願者のための学習コンテンツと、ソフトウェアの開発分野でのスキルアップトレーニングで成長している。特にShikhbe Shobaiは、Responsive Web Development、Graphic Design、Digital Marketing、Basic Computer Course、Android App Developmentなどのコースコンテンツとeラーニングの提供環境を十分に用意しており、これらはバングラデシュのICT分野の卒業生がソフトウェアのアウトソーシング分野で成功を収める上で非常に重要になっている。このようなコースでは、オンラインアウトソーシング市場に参入するための準備をする人が、単に教育を受けるだけでなく、新たに習得したICTスキルを紹介しながら、経済的な支援を受けることもでき、人材育成とビジネス開発がつながっている。

3.バングラデシュ・スタートアップの課題と可能性

バングラデシュのような発展途上国では、スタートアップの概念は新しいものに見えるかもしれないが、デジタル化のスピードが加速するに伴って、かつてはハイリスクと見なされていた起業家精神のような概念に慣れてきている。バングラデシュのスタートアップのエコシステムは、他の近隣諸国とは異なり、適切なインフラと資金調達のサポートがまだ不足している。これらの課題を克服するために、多くの政府及び民間の取り組みが進みつつある。

バングラデシュでは、新型コロナウイルスの大流行により、アパレル、観光などのセクターが最も大きな打撃を受けた。教育 (EdTech)、金融(Fintech)、医療 (Healthtech) セクターは当初おおきなダメージを受けたが、現在の状況が続けば、消費者ニーズが高いため部分的には回復するだろう。物流セクターの企業は20%の収益の損失を報告しているが、eコマース企業との提携によって事業を改善すれば、この部門は立ち直る可能性がある。今回のロックダウンの開始に伴い、eコマース業界の企業の中には、50%も事業規模が増加したと報告しているところもある(注10)。

多くの新興企業は、COVID-19の世界的大流行の影響が拡大する中で厳しい見通しに直面している。一方で、乗り越えられない課題に直面しても人々が回復力を維持できるという希望を与えている。 スタートアップ企業は自社の事業をよく理解する必要がある。なぜならば各スタートアップはその違いにより、COVID-19のパンデミック期間中の市場提供と価値提案に基づいて生存戦略をカスタマイズしなければならないからである。

本稿ではバングラデシュのスタートアップ企業の紹介とコロナ禍の中での取り組みを紹介した。バングラデシュのデジタル化はまだ発展途上ではある。しかし実はバングラデシュのスタートアップが提供するサービスは、日本のポスト・コロナに際して参考になる事例も多いのではないかとも考えられる。なぜならば、冒頭で述べたとおりダッカのインフラは脆弱であり、その分ここ数年スマートフォンやICTサービスを活用するスタイルが生活やビジネスに浸透してきているからである。段階的に成長してきた日本のビジネスシーンでハンコやFAXがテレワークを阻害しているのは皮肉なことである。古い制約を持たないリープフロッグであるバングラデシュ・スタートアップのノウハウに是非注目してもらいたい。

注釈

  • (注1):
    The Financial Express、2019年7月26日
  • (注2):
    Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)、Wikipedia、2020年4月23日
  • (注3):
    Future Startup、 COVID-19 Tech Updates、2020年3月30日
  • (注4):
    Sheba.xyz Mission “Save Bangladesh”、2020年4月6日
  • (注5):
    Sheba.xyz、 Google Playstore、 Last Updated: 2020年5月14日
  • (注6):
    Rokkhi、 Google Playstore、 Last Updated: 2020年5月13日
  • (注7):
    The Dhaka Tribune、2020年4月6日
  • (注8):
    The Financial Express、 Online food delivery business takes a big hit 、2020年3月30日
  • (注9):
    The Kaler Kontho、 MFS gains reliability during COVID-19 crisis 、2020年3月30日
  • (注10):
    The Lightcastle Partners、2020年7月11日
ミトロスリ デボ

本記事の執筆者

株式会社富士通総研 政策支援グループ
(データサイエンティスト、海外リサーチ担当)

ミトロスリ デボ(Mitrasree, Deb)

 

バングラデシュ・ダッカ出身。Human-Computer Interactionという学際的分野の研究を経て、戦略的なプランニングと開発、データ分析に従事。2019年、バングラデシュ政府が出資した主要なプロジェクトの一つであるe-GRP(e-Government Resource Planning)に参加。現在、富士通総研にてバングラデシュの情報通信・エネルギー産業を中心に、各種調査、新しいサービスの提案、オフショア開発の支援など行っている。

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