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【シリーズ】2018年の災害を振り返る(4)

2018年の災害から考える大都市被災時の危機管理

2018年に発生した災害の事例を教訓として、都市が大規模災害に見舞われた場合の課題について改めて検討し、これから備えるべき対策を整理します。

2018年12月27日

opinion 2018-12-6

1.改めて考える大都市の帰宅困難者対策とは

大都市が大規模地震に襲われたときに、その場に直面した私たちはどのような判断を迫られるのでしょうか。今年頻発した災害の事例から、見落されてきた視点で再検討し、そこから見える課題に備えるための対策について考察しました。

2.2018年に起きた災害から考える大都市の課題

今年の災害は大阪府北部地震や台風21号など、近畿地方を中心に都市部が被害を受け、大勢の人の行動に影響を与えたことが特徴と言えるでしょう。

6月18日月曜日7時58分に発生した大阪府北部地震では、大阪を中心として鉄道網が止まり、長時間復旧しませんでした。地震の発生が多くの企業にとっての出勤時間帯であったため、相当数の人が出勤途中で移動手段を失いました。しかし、相当数の人々は、仕事をするため徒歩や鉄道以外の手段で会社に向かったと言われています。結局、鉄道は帰宅時間になっても復旧していなかったため、出勤した会社員が多数、徒歩で帰宅する様子がマスコミで報道されました。

また、9月4日火曜日の午後に日本に上陸した台風21号の場合では、近畿地方の鉄道各社は、台風上陸に備え、4日の朝から順次計画運休を実施し、台風のピークに合わせ列車の運行を取りやめました。一方で、関西国際空港では、4日午後に起こった連絡橋へのタンカー衝突事故によりアクセスルートが寸断されて孤立、多くの外国人旅行客を含む7800人以上が空港に取り残されました。さらにターミナルは電気設備の水没により停電し、空調も止まり暗く蒸し暑い中、全員が救出されるには、翌5日の夜中まで待たなければなりませんでした。

2つのケースはいずれも、非常に多くの人が移動手段を失い、帰宅途中の路上、空港の待合室などで、群衆の中のひとりとして不自由な行動を強いられる状況になりました。近年の日本では、大きな災害の直後であっても、さらに新たな自然災害(大きな余震や風水害)に見舞われることは珍しいとは言えず、徒歩帰宅者がひしめく歩道や、行き場のない数千人規模の利用客でいっぱいになった施設など、非常にリスクの高い状況であると言えるでしょう。

大都市が被災した場合の問題は、存在する人の数の規模が大きすぎるため、思いがけない場所で人の集中が起き、連鎖的にリスクが拡大する可能性が無数にある、という点にあります。

例えば、駅の通路や、主要道路沿いの歩道などに多くの滞留者が集中すると、物理的に将棋倒しや圧死などの事故発生の危険性が高まることが指摘されています。また、行き場を失った人が、1か所に集中してしまい、さらに災害で電気や水道などのライフラインも停止し、1人当たりが使用できる物資が不足する状況になれば、通常時に比べて、感染症、熱中症、低体温症、脱水症などのリスクは格段に高くなります。

大都市では、オフィス街や主要駅の周辺、大規模施設などに、非常に多くの人が滞在しています。例えば、東京の23区のうち最も昼間人口が多い、千代田区、中央区、港区を見ると、平日の日中帯の人口密度は、世界で最も人口密度が過密と言われるムンバイなどの都市の2~3倍はあります。これだけ多くの人がいて、何事もなく毎日の活動が維持できているのは、交通手段や、環境維持のためのインフラ機能が働いているおかげです。しかし、ひとたび、これらの機能が止まってしまうと、どうなるでしょうか?

都市部は、建築物の耐震性能や防火性能が高いため、地震による直接被害は受けにくいと言えます。しかし、異常なほど人の集中が進んだ首都圏では、発災から数時間、あるいは数日といったタイムラインで、どのようなことが起こるのかについては、未知数と言ってよいのではないでしょうか。

大都市は、大規模災害の発生により、思わぬ時間帯、思わぬ場所で、想定外の二次被害が発生する、そういった危険性を潜在的に持っていると考えるべきでしょう。では、今できることとして、どのような対策が必要か考えてみましょう。

3.大都市を襲う災害に備えて今行うべきこと

(1)従業員を守る ⇒ 自分の身を守る知恵を身につけさせる

従業員の安全確保のための対策については、「当然行っている」、という企業がほとんどかと思います。しかし、大阪府北部地震では、交通機関が止まっているにもかかわらず出社を命じられたとか、逆に何の指示もなかったなどの事例がマスコミで多数報道されています。多くの企業で行われている安全確保対策の実態は、通常業務時間内で社内にいる社員を想定したものではないでしょうか。

社外にいる従業員の安否確認は対策に盛り込まれていたとしても、在宅中、出勤途中、出張中、帰宅途中、業務時間外など様々な状況に対応して、各社員がどのように振る舞うべきかを指示することが可能な企業はどれだけあるでしょうか? 仮に指示を出すことを前提としていたとしても、災害の被害状況の収集・分析を行い、当日の営業継続の判断を行い、従業員に指示を伝達するまでに、どれだけの時間が必要でしょうか?

近年では働き方改革により従業員の勤務形態も多様化してきています。このような実態も踏まえると、企業が災害発生後に、どう行動すべきか従業員に示すことは、実質的に困難なのではないかと思います。むしろ、災害時の自分の身の守り方や、危険の回避方法などを正しく理解させたうえで、会社として、一定の範囲内で従業員の判断を尊重することを社内ルールとして定める方が現実的な対策と思われます。

災害発生に自分がどのような場所・環境にいるかを想像し、有事の際に必要な情報を自分で収集して適切な判断ができるよう、自ら事前対策を平時から行うこと。例えば発災直後に大勢の徒歩帰宅者が道路を埋め尽くすような状況を想像し、自分はどう行動すべきか判断できるようにする。あるいは大規模災害が発生している状況で、無理をしてでも出社しなければならないような重要業務が会社のBCPとして自分に課せられているのかという観点で出社の判断をする。すべての従業員がそのような対応ができるように、平時から従業員に対する防災教育を行うことが企業に求められる責務ではないかと考えます。

(2)従業員が長期間留まる準備は十分に 発災後は速やかに帰すことを目標に

(各社のBCPに盛り込むべき考え方)

大都市に事業所を置く企業にとって、「人」は重要な経営資源と言えるでしょう。従業員の命の安全を確保するのは当然としても、資源としての「人」を損耗させない戦略もBCPに必要です。そのための基本的な考え方として、人が密集した状況を極力発生させない、ということが重要であると考えます。

東京都の帰宅困難者対策条例では、従業員を3日間社内に留めることが事業者の責務として求められています。事前対策として、すべての従業員・来訪者が、3日以上社内に留まることができるだけの準備をすることは必要です。しかし、発災後に実際に何日間従業員を留め、どのタイミングで帰宅させるかについては、それぞれの企業が、そのときの状況から判断するものです。

従業員を社内で待機させるということについて、大勢の従業員がオフィス内に数日間滞在し続けるために食糧や水の確保といった分かりやすい対策以外に何が必要なのか、どれだけの企業が具体的に検討しているでしょうか。

まず、オフィスに物理的な被害が出ないことは大前提です。建物の構造部材が新耐震基準を満たしているかといったことはもちろんですが、大阪府北部地震で改めてブロック塀の危険性が社会的に認知されたように、天井、パーティションなどの非構造部材の耐震化は見落とされがちです。

さらに、場合によっては3日経過しても帰宅できない状況が継続することもあるかもしれません。また、交通手段が長期間復旧しない状況下で、企業としての事業継続を考えるなら、そのまま社内で生活せざるを得ないという場合もあります。通勤時間の長い従業員が多い首都圏の企業にとっては、このようなことも現実的にあり得る問題と言えます。発災からどのくらいの期間、社内で滞在することになるのか、ライフラインはどのくらい停止するのか、最悪の状況下で、人間らしく生きられる環境を確保するためには、水や食料だけでなく、衛生管理、健康管理、プライバシー保護など、何をすべきかを真剣に考え、事前対策を実施すべきです。

一方で、社内に多くの人が留まり、オフィスが過密になるほど、良好な環境を維持することが困難になり、様々な問題が発生するリスクが高まります。そのため、実際に災害が起こった後は、安全な帰宅が可能と判断できる状況であれば、3日が経過していなくても極力早く帰宅させることを考えるべきです。従業員の通勤ルート上の被害状況や、被害の甚大な地域の救助活動の進捗状況、代替輸送手段の提供状況、等の様々な情報の収集を行い、適切なタイミングで従業員を帰宅させることができるよう、そのための体制づくりや訓練なども行っておくべきです。

(3)広域な視点で要請を

大都市の被害を拡大させないために国や自治体が行うべきこと

帰宅困難者対策の考え方として、徒歩帰宅者自身が二次災害に巻き込まれるのを防止するとともに、大量の徒歩帰宅者によって被災者の救助活動が阻害されないよう、「むやみに移動を開始しない」ことが重要であるとされています。しかし、「地震による交通機関の停止」は、必ずしも「甚大な被害を伴う大規模災害の発生」と同一ではないため、帰宅困難者となったら3日間は帰宅しない、という行動様式を一律に求めるのは困難です。やはり、そのときの状況に応じて、公的機関から一斉帰宅の抑制を要請すべきと考えます。このような要請を誰が行うのかという問題については、帰宅困難者の発生するエリアと帰宅先のエリアは異なるため、区市町村単独で判断することも困難です。やはり国や都道府県レベルで、被害状況等を速やかに把握し、一斉帰宅抑制の要請が可能な体制を整備することが必要でしょう。

4.発災から時間差でやってくる都市部の危機に備えて

多くの人が集まる都市の生活は、いつでも手に入る豊富な物資、いつでも受けられる多様なサービス、明るく快適な環境、様々な情報にアクセスできるネットワークなど、様々なインフラに支えられて成り立っています。地震や風水害に対して強い堅牢な建物で働いていれば、その直接の脅威から命は守られるでしょう。

しかし、大規模災害により、都市の活動を支えている基盤が停止してしまうと、高度に集積化が進み、ゆとりのない環境において、移動もままならない過密状態の人の存在は、時間とともに危機発生リスクを高めていきます。

都心部に多くの従業員を集め、過密を生み出す推進装置となっている企業は、このようなリスクを理解し、二次被害の防止対策を実践していく社会的責任があるのではないでしょうか。

uemura

本記事の執筆者

コンサルティング本部 ビジネスレジリエンスグループ
マネジングコンサルタント

植村 篤(うえむら あつし)

 

1987年 富士通株式会社入社、ネットワーク設計業務に従事。2000年 株式会社富士通総研出向。自治体向けの業務改革コンサルティングに従事。2013年頃より防災関連、帰宅困難者対策のコンサルティングを中心に活動中。

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