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  4. 2018年の災害を振り返る(2)2018年の災害を受けて重要インフラの機能確保に向けて

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【シリーズ】2018年の災害を振り返る(2)

2018年の災害を受けて重要インフラの機能確保に向けて

通信、エネルギー、水道、交通などの重要インフラは、人命や生活を守るために欠かせないものであり、災害時においても早期復旧、継続が求められます。重要インフラを管理する側の備えがどうあるべきか、また重要インフラの利用者側として備えられることについて考察します。

2018年12月27日

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電力、ガス、燃料、水道、道路等は私たちの命や生活を守るために欠かすことができない「重要インフラ」です。今後発生することが予想されている首都直下地震や南海トラフ地震といった大規模災害に備えるために、重要インフラ事業者やそれを支援する政府は、これまでも災害対策の強化に取り組んできました。

一方で、今年発生した災害は、政府や重要インフラ事業者の事業継続計画(BCP:Business continuity plan)で想定して対策を進めている首都直下地震や南海トラフ地震といった大規模災害と比較すると、いずれもその災害の規模は限定的でした。それにも関わらず、重要インフラの停止による影響が拡大しました。例えば、7月に発生した西日本豪雨(平成30年7月豪雨)では西日本を中心とした広い範囲で道路や鉄道等の交通インフラが寸断し、他の重要インフラの復旧や支援物資・燃料の輸送に大きな影響を及ぼしました。また、北海道胆振東部地震では、これまで私たちが経験したことがない「ブラックアウト」により北海道管内全域で長時間にわたって停電が発生しました。

今年は、この様な重要インフラの機能停止への対応を立て続けに迫られたことにより、重要インフラを管理する側の重要インフラ事業者やそれを支援する政府にとっても、また、重要インフラを利用する需要家側にとっても今後必要な備えを考えるうえで、多くの気付きがあったのではないでしょうか。

ここからは、重要インフラがその機能を維持するために供給側で必要な備えとは何なのか、また、重要インフラの機能が確保できない事態も想定した需要家側で必要な備えとは何なのか、今年発生した災害の事例を踏まえて考察します。

1.重要インフラの機能確保に向けた政府の動向:重要インフラの緊急点検

大規模災害発生時における重要インフラの機能確保に向けては、政府においても、今年発生した災害への対応の振り返りと対策の検討を急ピッチで進めています。その中の一番大きな動きとしては、電力施設や空港、病院等を対象にした「重要インフラの緊急点検」があげられます。その点検項目としては、大規模災害発生時に、重要インフラの機能を維持するために必要となる施設・設備の安全点検(耐震対策の実施状況の確認)、および停電の発生を想定した非常用電源設備の確保状況などの、最低限必要となるハード面の対策の実施状況の確認が中心となっています。

この重要インフラの緊急点検をうけた危機意識の高まりや予算措置により、重要インフラ事業者のハード面の対策が一層進むと考えられます。しかし、ハード面の対策を完璧に実施することは、時間的にもコスト的にも現実的ではありません。そのため、ハード面の対策を効果的かつ効率的に進めるためには、重要インフラの機能を確保するためにどうしても必要な部分から対策を実施していく、つまり「対策の優先順位付け」が必要となります。では、その優先順位付けは何を基準に行うのか、これは大規模災害発生時におけるハードの活用の優先順位が判断基準となります。具体的な例としては、限られた電源をどの設備から使うのかの優先順位です。このハード面の対策の優先順位付けを行うために必要となるのがBCPです。

2.重要インフラの機能確保に向けたソフト面での課題

各重要インフラ事業者では、ソフト面の対策としてBCPの整備が進められています。しかし、その多くが大規模災害の発生により「何が」、「どの様に壊れて」、「それをどうやって戻すか」というアプローチを取って策定されたBCPになっているという感覚を持ちます。このアプローチで策定されたBCPには、重要インフラの機能確保に向けて大きく2つの問題があります。

1つ目は、BCPの整備を進めていくにつれて、「何が」、「どの様に」の設定が細かくなっていくことです。BCPの粗をなくすために様々なパターンを考えて、そのパターンに対して対策を打っていくことにより、一見すると災害対応能力が強化されている様にも見えます。しかし、このタイプのBCPを整備している組織の多くが、実際の災害時に想定通りのことが起きればBCP通りに対応ができますが、想定していたパターンと少しでも異なること(想定外)が起こると、途端に対応ができない、または、大きく遅れることになってしまいます。つまり、「何が」、「どの様に」の設定を細かく作り込むことで、それが当てはまらない想定外を自ら作り出してしまっているのです。災害の発生時に想定外が必ず起こってしまう実際の災害現場において必要となる、その場での代替手段での対応を含むダイナミックな判断や対応を阻害してしまっているのではないでしょうか。先日の台風21号で発生した関西国際空港の孤立では、空港と対岸を結ぶ連絡橋にタンカーが衝突して大破することなど想定していなかった、つまり想定外だったと聞くことがあります。もしかしたら、このケースが当てはまっているのかもしれません。

2つ目は、目標設定が自己満足になってしまい、社会から求められているレベルとズレが生じることです。「何が」、「どの様に壊れて」、「それをどうやって戻すか」にフォーカスした場合、そこに投入できるリソース(要員、予算等)には限りがあるため、どうしても限界が目についてしまいます。そうなると自動的に自らが決めた限界が目標となってしまうため、社会から求められているレベルとはズレが生じる可能性があります。BCPを整備する際に忘れてはいけないことは、求められているのは「壊れたものを元に戻すこと」ではなく、「価値提供(電気を供給する、物資を運ぶことができる等)を継続すること」だということです。自己満足な目標設定では、重要インフラを提供する事業者としての責任を果たしているとは言えないのではないでしょうか。

3.重要インフラの機能確保に向けた備え:機能保証の考え方に基づくBCPの見直し

それでは、重要インフラ事業者のBCPはどの様に考えれば良いでしょうか。重要な視点として「機能保証」の考え方があります。重要インフラの機能保証とは、大規模災害発生時に求められるレベルである「機能」を提供することであり、「いつ」、「どの程度の量が必要となるか(災害発生時の需要)」を具体的にイメージして目標設定するアプローチになります。このアプローチでは、自分達が何をしなければいけないかが先にあるため、災害時に起こった事象が事前に想定したどのパターンに当てはまるのかという考え方にならず、機能の提供に欠けているものは何で、それはどの様に確保するのかという思考の順番になり、想定外の発生を包含する柔軟な発想を組織として持つことができます。

この機能保証の考え方に基づいてBCPを見直す際のポイントは大きく2つあります。

1つ目は、被害想定のレベルの検証です。機能保証の考え方で設定した目標の達成に向かって、具体的な被害想定のもとでどう振る舞えば良いのか、必要な対応を考えてBCPに落とし込んでいくことになりますが、既存のBCPで設定している目標が、大規模災害発生時に求められるレベルを意識したものになっているか、もう一度見直してみてください。また、前提としている被害想定が自社に都合が良い軽微なものになっていないか、必要な対応が具体的に洗い出せているかを確認してみてください。少なくとも、今年に発生した災害よりもシビアな状況を想定しておく必要があります。

2つ目は、機能保証の考え方に基づき必要な対応を洗い出した後に、その対応に紐づくハード面の対策を合理的に優先順位付けしていくことです。ハード面の対策の優先順位を見直し、ハード面の対策を効果的かつ効率的に進めていくことが必要です。

これらの2つのポイントを踏まえ、既存のBCPを見直してみていただきたいです。今年に発生した災害への対応でうまく対応できた(課題はない)と考えている組織については、さらにステップを上げていくことが望ましいです。首都直下地震、南海トラフ地震といった大規模災害発生時のシビアな状況を具体的にイメージし、その様な状況下においても自社の機能を保証することができるのか、具体的に振り返りを行っていただきたいと考えます。

4.重要インフラの機能が確保できない事態も想定した需要家側の必要な備え

 ここまで、重要インフラの機能確保に向けた備えとして、機能保証の考え方に基づくソフト面の対策の見直しについて言及してきました。しかし、重要インフラの機能確保に向けた取組みが具体的になっていくにつれて、政府や重要インフラ事業者がどれだけ対策を実施したとしても、首都直下地震や南海トラフ地震といった大規模災害発生時に重要インフラの機能を完全に維持することは非現実的であり、供給側の努力だけではどう頑張っても災害時の需要全てをカバーすることができないことが明確になってくると思います。そのため、需要家側でも備えを進める必要があります。

具体的には、需要家側でも燃料備蓄等のいわゆる「自助」を進めること、需要家側が自らの需要に優先順位を付け、重要インフラの途絶に備えること、加えて重要インフラの機能の維持のために、必要な関係者が連携して実施すべき対策を、コミュニケーションをとりながら高度化させていくことが必要だと考えます。

5.まとめ

 政府から公表されている首都直下地震や南海トラフ地震の被害想定をみると、死者が最大で約32万人、経済被害が約220兆円など、被害の規模が大き過ぎるため、実際に発生した場合には、いくら対策を実施していたとしても対応できないのではないかと思う時があります。しかし、機能保証の考え方でそのギャップを適切に認識し、ギャップを埋めるための知恵を働かせながら、地道に能力を強化していくことが必要となります。あわせて、今年発生した様な災害であっても応用できるように能力を効率的に身に付けていく。こういった取り組みが重要インフラ事業者には求められます。

山田 昌和

本記事の執筆者

コンサルティング本部 ビジネスレジリエンスグループ
チーフシニアコンサルタント

山田 昌和(やまだ まさかず)

 

2008年株式会社富士通総研入社以来事業継続マネジメントに関するコンサルティングに従事。最近は、中央省庁や石油業界などの重要インフラ事業者を対象とした災害対応能力強化に関するコンサルティングを中心に活動中

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