GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. ナレッジ >
  3. オピニオン >
  4. バングラデシュ市場の魅力 第2回 バングラデシュのIT市場とビジネス機会

入力不要

バングラデシュ市場の魅力

第2回 バングラデシュのIT市場とビジネス機会

新興国ビジネスは、ITビジネスのアウトソーシング先を求める日本にとっても、インフラ発展と資金調達の課題を持つ新興国にとってもメリットがある。
バングラデシュのIT市場の魅力について説明する。

2018年12月21日

opinion2018-10-2_1280-800

1.はじめに

少子高齢化による人口動態の変化、低金利の長期化など、日本国内市場環境は厳しさを増している。また、昨今では日本国内の労働力不足も大きな問題になっている。このような市場背景のもと、海外市場への参入や事業の拡大が日本企業の大きなビジネスチャンスとなっており、また海外のリソースをうまく活用しながら利益を拡大することが求められている。例えば、現在の日本のITビジネス環境では、アウトソーシング先として、インド、ベトナム、マレーシア等が多く挙げられている。

一方、現在成長率が高い新興国にとっては、インフラの発展と、そのための資金調達が重要な課題である。日系企業が持つ高い技術力・ノウハウは新興国のインフラ発展の力になるため、日本企業と取引を求める海外企業は多い。

新興国ビジネスは双方にメリットがある。もはや先進国から発展途上国への支援・下請けといった一方通行のイメージではなく、日本経済の発展につながるものだと筆者は考えている。

第1回は、筆者の出身国でもあるバングラデシュという国の情勢、ビジネス環境について説明した。今回はバングラデシュのIT市場の魅力を説明したい。

2.基礎情報・他国との比較

ゴールドマンサックスは、バングラデシュをNext11 の1つと考えている。Next11とは、BRICs(ブラジル、ロシア、インドそして中国)に続き、世界経済において大きな経済圏に成長する可能性が非常に高い11か国を指しており、投資および将来性に関してかなり確実性の高い展望が期待できる国々である。

バングラデシュは過去10年間、安定して6%程度の成長を維持しており、2018年時点で1人あたりGDPが1,670ドル(2009年:703ドル)となり、2020年には2,000ドル近くになると予測されている。2017年時点の名目GDPは2,500億ドルとなっており、ベトナムの2,240億ドルを上回っている。インド、ミャンマー等と比較しても、バングラデシュの1人あたりのGDP、平均年齢、インターネット普及率は同水準である。

日経経済新聞によると、バングラデシュのハシナ首相は、同国内に経済特区を100か所設けて外資誘致を推進し、2~3年以内に整備すると述べ、足元8%程度の実質成長率を2021年までに10%へ高めると意欲を示した。100か所の経済特区のうち11か所はすでに整備済みで、79か所は工事が進行中である。また、ハシナ首相は日本、中国、インド、中東が関心を示しているとし、日本側には2区画を提示したと述べた(注1)

【表1】アジア各国との比較、2017年(名目GDPベースで経済規模が大きい順)(注2)
アジア各国との比較

バングラデシュのインターネット利用者数は約8000万人で、アジアでは日本に次ぐ5位である。総人口は1億6000万人であることから、今後は普及率の上昇とともに利用人口が増えていくと見られる。また、バングラデシュのモバイル契約者は約1.3億人であり、モバイル金融サービス利用者は2017年時点で約6,000万人と、日本と比較しても進んでいる面もある。

インターネット利用状況
【図1】インターネット利用状況(注3)

3.バングラデシュの豊富な労働力

バングラデシュには優秀な人材が多数いるが、ビジネス機会が不足している。2016年時点でバングラデシュの労働人口は約7,204万(日本:約7,696万人)であり、そのうちIT・ITアウトソーシング分野の雇用者数は100万人以上である。総人口の約50%が25歳以下であり、労働人口は毎年増加している。バングラデシュでは、毎年数万人の大学工学部卒業生が生まれている。2017年のJETROの調査によると、バングラデシュでの従業員の質の高さ・優秀な人材の豊富さ、従業員の定着率ならびに人材の安さ・労働力の豊富さはアジアでも高水準である(注4)。一部の優秀な学生は米国や欧州、日本の大学に進学・留学しており、IT分野ではシリコンバレーで起業する者もいる。日本に留学した学生は日本語を話し、国際化が進む日本の大学では、バングラデシュの学生を見かけることは珍しくない。

これまで優秀なバングラデシュのIT人材の多くはインドと同様、アマゾン、アップル、インテル、グーグル、マイクロソフト、IBM、オラクル等の米国の大手IT企業で就職しており、特にアメリカ航空宇宙局(NASA)には30人のIT人材が勤務している。今後、労働人口が減り続ける日本と、増え続けるバングラデシュとで、ビジネス協力の機会は増え、お互いにかけがえのないパートナーとなることが期待されている。

日本とバングラデシュ労働人口の比較
【図2】日本とバングラデシュ労働人口の比較(注5)

4.バングラデシュのICT市場予測

バングラデシュは、年間平均成長率(CAGR)21%であり、インド12%、フィリピン11%、ミャンマー15%と比較しても最も急速に成長する市場である。ローカルICT支出額は2017年時点で10億ドル、2025年には50億ドルに達し、そのうち公共セクターが75%と予測されている。公共セクターでは、スマートグリッド、デジタルコネクティビティ、スマートシティ等への支出額が多く、また鉄道デジタル化などインフラ全般でのICT改革が進む。民間セクターでは、金融、テレコムならびに産業分野を中心に成長すると予測されている。

バングラデシュICT市場予測
【図3】バングラデシュICT市場予測(注6)

バングラデシュICT市場予測(公共セクター2025年)
【図4】バングラデシュICT市場予測(公共セクター2025年)(注6)

5.デジタルバングラデシュ

バングラデシュ政府は2021年までに生活に関わるすべてのデジタル化を実現するという「デジタルバングラデシュ」を推進している。これは2021年までに高い経済性によってバングラデシュを中所得国に仲間入りさせるための8つの重点分野の1つである。IT分野の成長を通じて、国民へのデジタルアクセス提供、ビジネス新興、人的資源開発等の戦略を掲げている。

デジタルバングラデシュ
【図5】デジタルバングラデシュ(注7)



「バングラデシュ政府によるデジタルバングラデシュ」

デジタルバングラデシュを背景に、IT分野ではバングラデシュ政府から以下のような様々なインセンティブ(バングラデシュ政府からご支援)が存在する。

  • バングラデシュでは、2024年までソフトウェアおよびITアウトソーシングは100%税が免除される(タックスホリデー)
  • 投資資本および利益の完全償還が可能
  • 外国在住者、外国人技術者の所得税を50%免除(3年まで)
  • IT/ITアウトソーシング企業によるスペースレンタルは100%付加価値税免除
  • IT/ITアウトソーシングの輸出による収入に10%のキャッシュインセンティブ付与
  • ITインキュベーションプログラムや全国各地域でIT企業を受け入れられるハイテクパークを設置
  • 液晶パネル関連業務開始10年目まで20~100%減税等

「IT人材・企画・育成」

ダッカはアジアの各都市と比較して最もオペレーションコストが低く、労働人口も多い。特に労働力については政府による大規模な若手スキルアッププログラムが実施されており、このプログラムを受けた大学卒業生が年間40万人以上供給されている(注6)。若手スキルアッププログラムでは、 以下のプログラムが実施中である。

  1. 基礎スキル:デジタルマーケティング、グローバルスタンダードをベンチマークとしたスキル
  2. 雇用とトレーニング:IoT、分析、ビッグデータ、AI、ブロックチェーン、モビリティー等
  3. スキルの引き上げ:JAVA、.NET、PHP等
  4. JICA B-JET:日本語、ビジネスマナー、ITEE認定(情報処理技術認定試験)等

2017年6月時点のIT輸出額は700.2百万ドル(2012年6月時点には349.6百万ドル)であり、6年間で2倍となった(注8)。米国、英国、デンマーク、カナダ、ドイツが主要な輸出先である(注8)。バングラデシュのスタートアップに投資するケースも増えているため、日系企業による投資の検討も考えられる。

アジア各都市において500FTEの年間オペレーション指標 (バンガロールを100とした場合)
【図6】アジア各都市において500FTEの年間オペレーション指標
(バンガロールを100とした場合) (注7)
※FTE→Full-time equivalent(フルタイム当量)



「成長中の国内市場」

2016年にバングラデシュ中央銀行でサイバー銀行強盗事件が起き、直近ではモバイルバンキングに関する行為事項(不正アクセスやお年寄り・リテラシーが低い方を対象としたオレオレ詐欺等)、重要データの漏えい、ソーシャルメディアへの風評など事件が増加している。今後、バングラデシュ政府の電子システム化、民間企業のデータ保護、国民のデジタルアクセス等によるデジタルバングラデシュの実現に向け、サイバーセキュリティも重要な課題となっており、1つのビジネス機会にもなっている。

6.バングラデシュのITビジネスのハブ「BASIS」

バングラデシュ政府は、同国における活発なソフトウェア&ITサービス産業を発展させるというビジョンを掲げて取り組むため、1997年にBASIS (バングラデシュ・ソフトウェア情報サービス協会)を設立した。バングラデシュには4,500社以上のIT企業がある。そのうちBASISの会員は1,076社である。

BASISは、ソフトウェア&IT対応サービス業界の国内市場や国際的な市場の発展の貿易機関でもあり、産業リサーチやプロモーションのため、ITビジネス促進議会とコラボレーションを行っている。BASISの会員企業のうち約400社は海外向けにオフショア開発等のサービスを提供している。効率的なプロモーションを行うため、在外バングラデシュ人とのネットワークを推進している。また、BASISは2018年、日本向けに「ジャパンフォーカスグループ」を立ち上げた。ジャパンフォーカスグループのメンバーとなっているバングラデシュの企業数は2018年時点で43社である。

7.IT企業を受け入れるハイテクパークの整備

バングラデシュのモバイル人口カバー率は99%であり、帯域幅容量は1.7K Gbpsである。バングラデシュ政府は自国をITハブにすべく、ハイテクパーク建設が進行中である。バングラデシュ政府は、ハイテクパークに日系企業を含む外資企業の誘致を進めている(注9)。バングラデシュ政府が首都ダッカをはじめ、各主要都市で直近設置した主なハイテクパークは以下のとおりである。

バングラデシュのハイテクパークの例
【図7】バングラデシュのハイテクパークの例(注6)

バングラデシュテクノロジー企業のご紹介
【図8】バングラデシュテクノロジー企業のご紹介(注7)

また、グーグル、GE、サムスン、テレノール(ノルウェー)、タタ(インド)、IBM、アクセンチュア等のグローバル企業もすでにバングラデシュに進出しており、アマゾン、マイクロソフト等の外資企業のバングラデシュ進出はパイプラインとなっている。

8.バングラデシュのスタートアップ例

バングラデシュでは、ビッグデータ分析、サイバーセキュリティ、クラウド等の様々な分野で数々のITスタートアップ企業が躍進している。また、IT開発に従事するフリーランサーが50~60万人いると言われており、コーディングスキルを持つ人材は豊富かつ人件費も廉価である(注10)。2018年時点でバングラデシュに存在する4,500社のうち、約35%の企業が2011年以降に設立されている。

バングラデシュ最大のモバイルバンキングサービスを提供しているbKashは2010年に設立された。bKashのユーザー数は2,400万人以上で加盟店は全国3万以上である。bKashのサービスとして、初期はバングラデシュ国内送金のみだったが、現在は海外からの送金、プリペイド式携帯のリチャージ、貯蓄サービス等を提供している。

バングラデシュ最大のマーケットプレイスであるbikroyは2012年に設立され、主に携帯電話、電子機器、家具、自動車、アパート等の売買が実施されている。

交通関連のスタートアップとしてPathaoは2015年に設立され、バングラデシュの主要3都市に、ライドシェア、配達、フード調達等のサービスを提供している。(注11)

9.おわりに

バングラデシュでは、ソフト開発、ITアウトソーシング、 e-コマース、金融・決済、リース、小売、物流、教育、医療、防災等の分野で今後、成長が期待できる。また、バングラデシュへのアウトソーシング・オフショア開発等によりコスト削減も期待できる。

バングラデシュへのビジネス展開・進出を考えたとき、インフラの未整備など、様々なリスクはまだ残る。一方で、バングラデシュが一大消費市場に成長することは他国の事例を見ても明らかである。

すでに欧米、韓国、中国、インド等の企業がバングラデシュ国内の様々の分野でビジネスを始めている。日系企業も同国の市場ニーズを把握しながら、速やかにビジネスを検討し、他国企業に市場を席巻される前にアプローチすべきだと筆者は考える。

【バングラデシュリサーチプログラム】
バングラデシュへの進出またはインバウンド市場を検討している企業様向けに、調査・コンサルティングを提供しております。また、現地の政府機関や民間企業など、通常ではアプローチしにくい視察先を訪問する団体ツアー型のプログラムやバングラデシュITセミナーも企画しております。詳細については以下のリンクをご覧ください。
PDFバングラデシュ進出情報収集プログラム

注釈

  • (注1):
    2018年1月7日 日本経済新聞.
  • (注2):
    世界銀行の情報を基に作成(2017年)、Interenet World Status 2018.
  • (注3):
    Interenet World Status, 2018.
  • (注4):
    JETRO, 2017年度日本企業の海外展開に関するアンケート調査.
  • (注5):
    JICA, 「日本市場をターゲットとしたICT人材育成プロジェクト」, 2018年.
  • (注6):
    バングラデシュ通信省, Bangladesh Your Next Destination , 2018.
  • (注7):
    バングラデシュICT省資料を基に作成, 2018年.
  • (注8):
    BASIS, Japan IT Week 2018 Brochure.
  • (注9):
    バングラデシュ価値あるIT提案、バングラデシュICT Division(2018年).
  • (注10):
    JETRO、転換期を迎えたバングラデシュ~進出日系企業動向を踏まえて~, 2018年.
  • (注11):
    各社ホームページ情報.
イスラム モハメド マイドル(Islam Md. Mydul)

本記事の執筆者

株式会社富士通総研 クロスインダストリーグループ  (海外リサーチ、エネルギービジネス 担当)

イスラム モハメド マイドル(Islam Md. Mydul)

 

金融業界にてバングラデシュを中心に、東南アジアでの合弁会社の設立に向け、事業シミュレーション、財務等の各種戦略、海外投資案件の発掘、リスク分析に携わる。バングラデシュでの火力発電所(当時最大規模)に対するプロジェクトファイナンスに従事。
現在、エネルギー業界を中心に海外リサーチ、国内各種調査や新たなサービスの提案等を実施している。

お客様総合窓口

入力フォーム

当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。