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デジタル化と働き方改革

デジタル化と働き方改革

2018年10月5日

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「働き方改革」の本来の目的は社員のモチベーションを上げて生産性や創造性を高めることであり、そのためにハードだけでなく企業文化や人事制度も変える必要があります。

本対談では、「デジタル化と働き方改革」というテーマで、三菱地所株式会社 経営企画部の伊東投資戦略室長、長谷川グループIT企画室長、総務部の竹本ファシリティマネジメント室長、人事部の安達専任部長と、富士通総研(以下、FRI)の小田シニアコンサルタント、シュルツ上席主任研究員に語っていただきました。進行役は浜屋研究主幹です。

1.三菱地所様新本社移転の狙いは働き方改革とオフィスの未来模索

【浜屋】
今日は、新本社の見学もさせていただいて、素晴らしいと思いました。最初に、この新本社に移転した背景や狙いをお話しいただけますか?

【竹本】
新本社移転には2つの大きな狙いがあります。1つは、「時代の変化を先取りするスピードで、競争力溢れる企業グループに変革する」という中期経営計画の目標を達成するために、業務効率化によって「時間を創出」し、新規ビジネスを生み出したり、既存ビジネスを強化したりするといった「新たな価値創出」につなげ、かつそれを推進するための企業風土改革を同時並行で進める「働き方改革」の推進です。つまり、単なる「残業削減」ではなく価値のある時間の使い方へのシフトですが、旧本社は、7フロアに跨って分断して入居し、かつ部署ごとに壁があり部署間コラボがし難いという物理的な問題がありました。もう1つは、オフィスを本業とする我々ならではの視点ですが、オフィスを取り巻く急速な環境変化への強烈な危機感です。ITの急速な進化やテレワーク等による働く場所の多様化により、決まった時間にオフィスに来る必然性は薄れており、これからのオフィスの在り方を真剣に考えなければなりません。そこで導き出した仮説は、自然に人が集いコラボして価値を生むという仕事の本質は不変であり、ちょっとしたFace to Faceのコミュニケーションが生まれやすい空間を造り、自らそこで働いてみて、将来のオフィスの在り方を模索しながら、十年後、二十年後のオフィスの在り方や、さらには自然に人が集まりたくなる街づくりの在り方を考えていきたいと思っています。

0006 竹本

竹本 晋(たけもと すすむ)
三菱地所株式会社 総務部 ユニットリーダー 兼 ファシリティマネジメント室長
入社以来、主にオフィスビルの営業セクションが長く、リーシング戦略の立案や、マスターリース物件の契約見直し交渉等に関わる。また、商業施設用地の取得・開発や、過去には労組委員長も担当。17年4月より現職。

【浜屋】
このプロジェクトの中での小田さんの役割についてお話しいただけますか?

【小田】
私は昨年4月から1年近く経営企画部様に常駐して支援させていただいています。私たちはICTの活用だけでなく、ルール・制度、空間の運用を含めて働き方をデザインする支援をしています。コンサルは入口の支援だけで実行はお客様だけでというパターンもありますが、今回はスピード感をもって目線を合わせながら共に実行に移すことが重要だと考え、移転関連で様々なお手伝いをさせていただきました。関係者と具体論まで議論するため、富士通の一級建築士やICTスペシャリストも入れ、企画構想からICT環境の整備、関連工事のマネジメントまでトータルコーディネートする点を常に意識しました。移転事務局(経営企画部、総務部、人事部、ビル事業グループ)の方々と外部の移転関係者をうまく橋渡しする役割が求められ、ICTだけではなく、移転全般に裾野を広げて支援させていただけたことは、良い経験になりました。

【浜屋】
次に、シュルツさんから、ドイツの働き方改革や日本との比較について紹介ください。

【シュルツ】
私は2000年から富士通総研で研究しています。前は大学でマクロ経済を、今は社会と経済のトレンドを比較する研究をしています。例えば、高齢社会で長く働くことになるため、個人の人生設計から会社の人事制度まで大きな変化が必要です。デジタル化のトレンドについても、社内に閉じたICTシステムからオープンな社外との連携をサポートするシステムも必要になります。デジタル革新や新しい働き方と言えば、最初の段階では皆、米国の動向を見ます。しかし、ドイツなどヨーロッパの動向も参考にすべきです。ドイツではIndustrie4.0が有名ですが、それを支える働き方や労働者のスキルについても、Work4.0という改革が進んでいます。

2.企業の働き方改革の狙いは生産性や創造性を高める動機づけ

【浜屋】
日本では働き方改革と言えば当初は労働時間削減が中心でしたが、本来は生産性やスピード、創造性を高めていくことが目的だと思います。人事から見て、今回の本社移転と働き方改革は、どのような意味があったのでしょうか?

【安達】
当社も初めは長労働時間の削減からでしたが、それと並行するようにフレックス勤務制度や時間単位有給休暇制度のほか、育児・介護関連制度の充実化などにより、より働きやすい職場環境づくりに取り組んできました。本社移転はそのようなときに立ち上がった話ですが、社員の行動が抜本的に変わるきっかけにもなると思ったため、これを機に事務所以外の外出先や出張先での細切れの時間も有効に使えるよう、テレワーク制度を整備しました。
意識を変えるのは簡単なことではありませんが、これまでの様々な取り組みで働く時間と場所の自由度が格段に上がり、社員の行動が変わったことで、生産性や創造性を上げる意識も高まってきていると思います。

0026 安達

安達 憲瑞(あだち のりみつ)
三菱地所株式会社 人事部 専任部長 給与・厚生・働き方改革推進ユニット ユニットリーダー
オフィスビルの営業、運営管理、オフィス事業のラインスタッフ業務、グループ会社の経営企画支援業務などを経て、2013年4月より現職。

【浜屋】
ファシリティが変わったことによって人事的に大きく変わったことはありますか?

【安達】
大きな環境の変化が意識変革のきっかけになっていると思います。
また、働く場所と時間の自由度が上がったことで、マネージャーの役割も変わってきているように感じています。以前の職場は席も島型配置でマネージャーが「管理」するのには向いていましたが、今はこれまで通りの考え方とやり方で管理することは難しくなっています。今のオープンでフラットな職場では、「管理」だけでなく、むしろメンバーがより活き活きと働くためのサポートやモチベーション向上、そしてマネージャーとして社内外の様々な人や情報をつなげて「新しい価値を創り出す」という役割も大切になってくると思います。

【浜屋】
シュルツさんが先ほど言ったように、ドイツではWork4.0も取り沙汰されています。最初は企業の生産性を高めることが目的で、個人は必ずしもハッピーではなかったのが、最近それが変わってきたということでしたね。

【シュルツ】
1200社の社員を対象にドイツと日本の比較調査を行いましたが、業務のデジタル化のスピードとレベルはドイツの方が高いです。ドイツではデジタル化によってビジネスの生産性が向上し、GDPも増えましたが、社員の働き方が問題になりました。今年4月にストライキが起きましたが、争点は柔軟性でした。育児で2~3年、親の介護で1~2年間パートタイムになっても、正社員に戻れる柔軟性が欲しい。子供の問題があれば1~2時間外出して戻り、家で問題があれば夜に仕事して朝は出社しないという場所の柔軟性も欲しい。業務はデジタル化されているので、社員は自分で働く時間や場所を柔軟に選ぶことができます。日本の利点は、デジタル化のスピードが速くなかったので、海外の先行例から学んで、初めからデジタル化と働き方改革とを調和をとりながら進められることではないでしょうか。

0067 シュルツ

マルティン・シュルツ
株式会社富士通総研 経済研究所 上席主任研究員
1996年 ベルリン自由大学で博士号(経済学)取得。1998年まで同大の政治経済研究所助教授。1998年~2000年 東京大学社会科学研究所および経済学部研究員。1998年~1999年 日本銀行金融研究所滞在。2000年7月 富士通総研経済研究所入社。

3.新しい働き方を支えるICTツールで良いものを一緒に作っていくスタイルへ

【浜屋】
新しい働き方を実現するにはICTが不可欠ですが、セキュリティ等の制約もあって、IT部門は新しい技術を入れにくいところがあると思いますが、今回の本社移転や働き方改革プロジェクトでは、どのような考え方で進められたのですか?

【長谷川】
ドイツと日本の働き方改革は共通する部分があって、シュルツさんが指摘されたとおり、企業のベネフィットから社員のベネフィットへと徐々にフォーカスが変わってきたように思います。ICTが社員や会社に与える最大の利点は物理的・空間的な制約が少なくなることでしょう。今回の本社移転も、無線LANやモバイルPC、VPNなどの技術によって、従来オフィス内の特定の場所でしかできなかった仕事を、別のスペースや社外、自宅などでも可能にすることが一番のポイントでした。また、ストレージサービスのBoxや名刺管理のSansanなど、SaaS型クラウドサービスの採用も推進しました。構築したタイミングから陳腐化が始まる従来型の自前システムと異なり、SaaSは導入時点から少しずつユーザーにとって有用な機能が追加される拡張性があります。特にデジタルネイティブと呼ばれる若手社員はこういったデジタルプラットフォームに普段の生活から慣れ親しんでおり、その感覚を当社グループ全体に拡げていくことが2つ目の方向性でした。

0043 長谷川

長谷川 義博(はせがわ よしひろ)
三菱地所株式会社 経営企画部 ユニットリーダー 兼 グループIT企画室長
オフィスビルの営業管理、人事業務、海外事業企画、上海駐在等を経て、2017年4月より現職

【小田】
本社移転でICTが変わるのと同じスピードでテレワークなど新しい制度のトライアルが進んでいくのに驚きました。一般的な企業はどちらかが後追いになるものです。実行に向けて試行錯誤される中で、スピード感への意識と、チャレンジを会社として後押しすることが重要で、改革が進む組織とはそういうところなのだと実感しました。石橋を叩いて渡る企業も多いですが、御社はドラスティックにでも変えるべきものは変え、それが次の糧になるという発想もあり、チャレンジを推進しているから先進的なITも積極的に導入され、それを次に繋げられているのだと思います。

【長谷川】
急激な変化によりシステムのインターフェースも大幅に変わるので、社員の戸惑いは大きかったですが、その点は小田さんをはじめ、富士通グループの皆さんにかなり支援を受けましたし、今でも継続してサポートいただいています。IT部門ではユーザーフレンドリーの視点が特に大切だと思っています。どの会社も社員のITリテラシーにはバラつきがありますので、近年「ITの広報」という概念の重要性が増している気がします。

【浜屋】
新しく導入されたシステムの使い方を、わかりやすく広報していくことが重要だという意味ですね?

【長谷川】
はい。例えば全社に向けて発信する新システムのマニュアルや説明資料は、小田さんのチームにポイントを捉えてわかりやすく整備していただきました。人事部では社員全体のITリテラシー底上げを目的にした研修を実施しました。それ以外にも、若い人たちが参加するWGや社内SNSなどで、今後のシステム構築のマイルストーンを共有してきました。いろいろなやり方を組み合わせて、少しずつ社内への浸透を進める感じですね。

【浜屋】
三菱グループというと、日本有数の伝統的な会社で、企業文化も日本的なイメージでしたが、一気にジャンプされている気もします。そこにギャップはないのですか?

【安達】
歴史と伝統のある会社ですし、公開企業として果たすべき責任もあります。変えるべきものは変えますが、個人の自由度を上げていくということと、会社のガバナンスやこれまで大切にしてきたものとのバランスは、これからもきちんととっていく必要があると感じています。

【浜屋】
文化的に変わったことはありますか? 「慮り」のような文化は、ある意味日本的な良さかもしれませんが、逆にスピードを高めるためには不要なのかもしれませんが。

【竹本】
「慮り」も全くいけないということではなく、し過ぎてはいけないということだと思います。仕事の本質は人とのコラボレーションだと思うので、相手が何を求めているかを考え、独断専行ではなくきちんと議論をしながら仕事を進めるという意味で、相手への配慮は仲間である以上は必要ですが、過度に慮ってしまうと、物事のスピード感が極端に落ちてしまいます。何でも壊せばよいとは思わないので、相手への配慮は大事にしつつも、「あの人はこう思っているのでは」と悩むのではなく、相手の顔が見える環境を作ったので、まず直接話してみればよいと思います。

【安達】
昔は資料をきっちり作ってから上司に説明しなければいけなかったのですが、今の会議は基本的にペーパーレスですし、気軽に集まってラフな資料でもモニターに映して説明してしまいます。部内のコミュニケーションも取りやすくなりスピードも上がってきたように感じます。

【竹本】
役員向けの会議でも資料をモニターに映して、その場で意見を聞き、議論しながら資料を直すスタイルに変わって、スピードはすごく上がりました。「あの人はこう思うだろうから、資料を揃えておこう」ではなく、「こんなものもありますけど、どうですか?」という形で、良いものを一緒に作っていこうというスタイルになったのは良いと思います。

4.社内に閉じない新しい働き方、創造性向上が次の競争力になる

【浜屋】
御社の働き方改革は、社内、ビルの中だけでなく、丸の内エリア全体、グループ会社全体に広がっていこうと、オープンにやられているわけですが、その狙いをお話しいただけますか?

【伊東】
日本で急速な人口減少という環境変化が起こり、不動産を使ってくれる人が減るというのは不動産会社にとって死活問題ですので、新しいビジネスを生んでいかなければいけません。そのためには、従来の考え方ではなく、新しい発想を作っていく必要があります。同様の課題は多くの企業に共通するもののはずで、街づくりを使命とする当社は、そういった企業に対し、一緒に考えたり、提案をしたりすることによって、日本が直面する困難に向かっていかなければならないと考えています。この新本社をテナント様や同業者や異業種の方にもご覧いただいて、その中で何かヒントを発信していければ、ひとつの役割を果たせるのではないかと考えています。

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伊東 隆行(いとう たかゆき)
三菱地所株式会社 経営企画部 ユニットリーダー 兼 投資戦略室長 兼 グループ経営推進室長
共同住宅、オフィスビルの開発事業、丸の内エリアのオフィス運営管理を経て2017年4月より現職。

【シュルツ】
ヨーロッパでは、社内のデジタル統合の次の戦略は「共創」です。お客様や多様なステークホルダーと一緒に、新しいビジネスをどう作っていくか。Amazonはピュアなデジタルビジネスですが、ドイツや日本の会社にはアナログ世界のビジネスに関する知識が豊富にあります。この知識をもとに、デジタル技術を活用して、どのように新しいビジネスを共創していくか、それはすごく大切なポイントです。

【浜屋】
大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアには様々な会社が集まっているので、アナログのビジネスもうまくデジタル化してエリア全体が1つの「共創」のプラットフォームになると、新しい競争力が生まれる可能性は大きいですね。

【シュルツ】
日本は世界で一番ビジネス統合された社会です。これをベースにしたデジタルプラットフォームができれば、もっと競争力は強くなります。Industrie4.0で言われているのは、ドイツの力は、全世界とリンケージを作って、オープンに新しい産業革命を進めていこうということです。日本もオープンに多様なステークホルダーと一緒にアナログとデジタルの統合を進めていくことができれば素晴らしいと思います。

【浜屋】
FRIの社内でも、既存業務の生産性向上だけでなく、クリエイティブな仕事とか、共創とか、新しいビジネスをデザインしていくコンサルティングが増えているようですが、どうでしょうか?

【小田】
ビジネス創出の熱がここ数年で高まっています。最初は自社内でやっていたものの、それだけでは考えられる選択肢が狭まってきて、自分たちで0から作り上げることが必ずしも正解ではないと、価値観も変わってきたのだと思います。「共創」という言葉が流行っていますが、集合知がないとイノベーションは起きないと実感されたのかもしれません。私達は数年前から、「デザイン思考」を取り入れて、お客様のビジネス創出を支援していますが、御社と組んでいくことも、他のパートナーと組んで次に繋げていくことも考えられます。

0124 小田

小田 和樹(おだ かずき)
株式会社富士通総研 ビジネスデザイングループ シニアコンサルタント
富士通総研入社後、製造業、流通業、不動産業などのお客様向けにワークスタイル変革の企画構想や実行、定着化支援のコンサルティングに従事。 昨今ではIoTやAIなど先進テクノロジーの企業内活用、新規サービス開発に向けた構想支援も手掛ける。
著書(共著)「徹底図解 IoTビジネスがよくわかる本」(SBクリエイティブ)

【竹本】
確かに世の中の「すごいイノベーション」と言われるものも、実は0から1を生み出すというより、既存のものを組み合わせているケースが多い気がしますね。大丸有エリアはオフィスワーカーが約28万人、事業所は4300あるので、それらが組み合わさることで、無数の創造やオープンイノベーションを起こしやすい素地があると思います。会社の枠を超えてワーカー同士がつながりやすくなれば、この街は24時間365日あらゆる時も、無数のイノベーションが生まれるかもしれません。まずはこのオフィスをオープンな空間とすることで社内でのイノベーションを生まれやすくして、さらにはこうした働き方をこの街へと広げていくことで、大丸有という「街全体」が、バーチャル空間とは異なるリアルな空間でオープンイノベーションを生み出すプラットフォームになる可能性を秘めていると思います。そのポテンシャルを引き出すための「場」作りやコミュニティ形成を、このオフィスから街全体へ広げていくのが次の我々の役割かと思います。

【小田】
御社ではR&D推進や新事業創造の取り組みに皆さんが意欲的に参加されていますね。いつ頃から始められて、あのような形になったのですか?

【伊東】
新事業提案制度の原型は20年ほど遡りますが、現在の形に近いものは5年前くらいからで、改良を重ねる中で飛躍的に伸びたのは最近です。社内の事業提案制度だけでなく、外部企業からの提案も取り込む形を加えて、パワーも人手も増やしながら浸透させたことで、効果が出始めてきました。会社として様々な形で刺激を与えながら、常にそれが起きる状況を作っていくことが必要かと思っています。

【小田】
提案だけで終わらずに実際に投資もされていますね。

【伊東】
中期経営計画の中で、将来に向けての成長の種を作るために、1000億円をビジネスモデル革新予算として設定しています。また、新規ビジネスがスピード感をもって実施できるように、通常のレポートラインとは違う意思決定の仕組みを作っています。新事業提案の内容が良いと思ったらすぐやりましょう、という制度設計をしました。

【長谷川】
「ビジネスモデル革新やそのためのR&Dに本気で投資する」という発信により、我々と全く違う背景をもった外部のプレーヤーから多様な情報が寄せられ、コラボレーションの機会も増えていると感じます。

5.働き方改革の先の展望

【浜屋】
働き方改革は終わりがないものだと思いますが、働き方改革の先にどういうことをされていきたいか、お聞かせください。

0022 浜屋

浜屋 敏(はまや さとし)
株式会社富士通総研 経済研究所 研究主幹
情報通信技術と企業・社会の関係に関する調査研究に従事。主な論文、書籍に「ネットは社会を分断するのか」(共著、富士通総研研究レポートNo.462、2018年8月)、『IoT時代の競争分析フレームワーク』(共著、中央経済社、2016年6月)、『プラットフォームビジネス最前線』(共著、翔泳社、2013年12月)など。

【竹本】
「働き方改革=生き方改革」と思っています。今までの働き方は、主に組織の中で時間をコントロールされていたのを、これからは自分で自分の時間を自律的にコントロールして、有限の人生の中で本当にやりたい仕事をやろうという能動的に自分をマネジメントする意欲のある人が、組織として集合し会社として強いパワーを持つ時代になると思います。昔のように上意下達型組織でトップランナーの真似をしていれば右肩上がりで成長できる時代ではありません。個人が最大限のポテンシャルを発揮できる環境でコラボし、そうしたコラボを束ねてベクトル合わせをするために組織があり、常に能動的に新たな価値を生み出していくという、個人と組織のパワーバランスがとれた中で自己実現を図ることが大事だと思います。自分の人生を豊かにするための働き方改革であり、生き方改革かと思っています。

【安達】
働き方改革の取り組みは、会社の業績向上だけでなく社員一人ひとりの人生の満足度向上にもつながっていくべきものと思います。社員のモチベーションやエンゲージメントが上がっていくことが業績向上のベースにあると考えていますので、一人ひとりが自分らしく働き、より良い会社にしていこう、この会社でより良い仕事がしたいと心から思えるような職場環境づくりに取り組んでいきたいですね。そこに何か働きかけられる施策を人事としても考えていきたいと思います。

【伊東】
企業は、社会に何か価値を提供して、それが評価されて利益になり、成長していきます。その価値自体の変化が速くなっていますので、それについていくには各個人の視野が広がらないといけません。日々の細かい事務に忙殺されるのではなく、クリエイティブなことを考え、他の人と触れ合い話をして、刺激を得ることが必要です。経営企画としては、働き方改革によって生まれた時間を、どれだけ価値創出に割けたかという点に主眼を置いています。

【長谷川】
ITの目線では、内部のIT化から今後はデジタルトランスフォーメーションに向けたイノベーション創出に視点が広がっていくと思います。外部との垣根をなくし、浜屋さんや小田さんが仰る「共創」がどれほど進められるか。ビジネスモデルの革新は、100の実証実験を重ねて事業化に漕ぎ着けるのは2つか3つ、とも言われます。そのために必要な要素はたくさんあって、それを一生懸命やる人たちを皆でサポートするのも大事ですし、垣根を取り払うための実験場のような仕掛けもないと実現しません。目の前のやるべきことを1つ1つ積み重ねることだと思います。

【シュルツ】
新しいテクノロジーはどんどん出てきていますが、これまではコストカットに使われることが中心でした。マクロ景気に左右されて、会社の成長率も伸びないからです。しかし、テクノロジーは個人の創造力を高めるものです。これからはみんな70歳まで働くようになるでしょうから、新しいアイデアは若者だけでなく、シニアの社員から出てくるかもしれません。新しいプラットフォームでそのようなスキルを共有すれば、次のステップに進むことができると思います。

【小田】
働き方改革も最初は時間と情報の有効活用など、IT寄りの話が多かったのですが、最近はイノベーションに発展して、新しいビジネス創出の話になっています。いかに限られたリソースを有効活用できるか、生き生きと仕事できるかという中で、人が多様化していることを感じます。私にとって働きやすい環境が世代の異なる新人にとってはそうではないかもしれません。価値観や経験が違う人がいる中で、生き生き働ける、楽しく新しいものを考えられる環境を会社や社会が作っていくことが求められ、そうしないと成長は難しいと実感しており、働き方改革は終わりがありません。時代が変われば働き方改革の姿も変わっていくと思います。

【浜屋】
ありがとうございます。新本社も見学させていただき、大変勉強になりました。

(対談日:2018年8月27日)

0099 集合
<三菱地所様新本社ビルにて>

対談者

(前列左から)三菱地所株式会社 経営企画部 ユニットリーダー 兼 投資戦略室長 兼 グループ経営推進室長 伊東 隆行
 人事部 専任部長 給与・厚生・働き方改革推進ユニット ユニットリーダー 安達 憲瑞
 経営企画部 ユニットリーダー 兼 グループIT企画室長 長谷川 義博
 株式会社富士通総研 ビジネスデザイングループ シニアコンサルタント 小田 和樹
(後列左から)株式会社富士通総研 経済研究所 研究主幹 浜屋 敏
 経済研究所 上席主任研究員 マルティン・シュルツ
 三菱地所株式会社 総務部 ユニットリーダー 兼 ファシリティマネジメント室長 竹本 晋

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