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新型肺炎の中国ICT市場へのインパクト(2)~経済社会のデジタル化加速とビジネス機会~

新型肺炎の中国ICT市場へのインパクト(2)

~経済社会のデジタル化加速とビジネス機会~

発行日:2020年3月2日

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要旨

  • 新型コロナウイルス蔓延やその後の対策に伴う施設閉鎖、隔離、移動の制限などで中国の市民は在宅を余儀なくされた。中国のネット普及は、現在は都市部の若い人たちが中心だが、今後は、農村部や年配者等へと浸透し、普及率は現在の約60%から先進国平均の85%に近づくと見込まれる。これらの新規ネットユーザーは、デジタル消費者に変身する可能性が高い。
  • 企業サイドでは、テレワークやデジタル技術を生かしたビジネスが急展開されている。中国政府も補助金や利用クーポンなどを提供して企業にクラウドコンピューティングの活用を促している。また、アリババ/テンセント等の有力IT企業も新規アプリ開発等を加速している。
  • 政府自身もデジタル・ガバメントにおける地域格差と能力格差の解消に動き出し、有力IT企業との官民協力に積極的になっている。
  • グローバルなサプライチェーンのリスクヘッジや最適化などの視点を含めると、IDCは、10分野に新たな機会が生まれると見て、IT企業に早期に準備するよう促している。

ネット普及のさらなる加速

  • 中国では、企業や政府の情報化よりも個人(消費者)の情報化が進んでいる面が多い。2003年のSARS蔓延は、ネット普及や電子商取引の拡大をもたらす契機となった。アリババやテンセントは、当時のこのような社会的な背景を踏まえ、ビジネス形成への積極的な対応で巨大化したのである。

(図表1)関係国などのネット普及率
(2018年)

(図表1)関係国などのネット普及率
出所:ITU

  • 今回の新型肺炎の対策において1月下旬から地域の閉鎖、隔離、人々の移動制限が中国全土にわたって余儀なく行われ、SARSの時よりかなり徹底されている。都市部・農村部、老若男女を問わず、ネット経由の「在宅」生活を強いられる環境で、ネットの普及や様々なアプリケーションの利用がさらに加速している。消費者サイドのデジタル化は、都市部から農村部や辺境の地域へ、高齢者の方へ浸透していく。中国のネット普及率は、現在の60%前後から先進国平均の85%近くまで急上昇する可能性が高いと筆者はみている(図表1を参照)。この新規ユーザーは2~3億人に達すると見込まれる。

企業サイトもクラウド化、デジタル化が加速

  • 新型コロナウイルスの蔓延は、企業の事業活動のオンライン化への移行を加速させている。アリババのビジネス向けのオンラインアプリ「釘釘」(DingDing)やテンセントのビジネス向けアプリケーション「企業微信」のユーザー数は通常より数百万から数千万単位ほど急増し、システム容量を増強せざるを得ない事態も生じていたほどである(注1)。
  • 肺炎対策とともに経済の損失を最小限に食い止めようと企業の事業再開を促し始めた中国政府も、企業にオンラインビジネスを奨励し、サポートしている。例えば、上海市や北京市などの地方政府は、補助金や利用クーポンなどを給付して企業にクラウドコンピューティングの活用を促している(注2)。地方政府の政策を追認するように、中国政府の産業所管官庁(工業信息省)も、企業の事業再開で次世代デジタル技術の活用を促すとともに、民間企業にCDN(Content Delivery Network)免許付与を増やすとともに、通信キャリアに5Gネットワークの整備加速を促している(注3)。

(図表2)新型肺炎終息後のビジネス機会の多い分野
(予測調査、複数回答)

(図表2)新型肺炎終息後のビジネス機会の多い分野
出所:http://www.ec100.cn/detail--6544465.htmlOpen a new window(2020.02.11)

  • このような環境変化の中で、中国デジタル産業界は、肺炎の影響を最小限に食い止める努力を行っているだけでなく、新しいビジネス機会が到来すると捕らえているようだ(図表2参照)。実際、2003年のSARS期間中、アリババの毎日の新規会員増加数は3,500社にも達し、ビジネスの急拡大をもたらした実例もある。

課題となったデジタル・ガバメントにおける地域格差と
能力の格差解消

  • 今回の新型コロナウイルスの蔓延で、疫病情報の混乱、デジタル技術による救済システムの未整備、デジタル・ガバメントにおける地域格差と能力の格差(440あまりの中核都市では情報システム(レベルは別として)が整備されたが、日本の市町村に相当する2000以上の県行政地域について約2/3はいまだに整備されていない)が存在し、それらの問題は肺炎対策の実施を通じて浮き彫りになった(注4)。
  • 現在では、デジタル・ガバメントの強化策として、①中国の県域以下(市町村レベル)のデジタル・ガバメントの重点整備、②情報提供や行政手続きの効率化という「デジタル・ガバメント1.0」からAI等の次世代デジタル技術を生かして住民に付加価値を提供したり付加価値獲得の能力を助力したりするという「デジタル・ガバメント2.0(スマート版)」への転換が加速している。その中では、様々な行政サービスなどを一気貫通して提供するデジタル・ガバメントプラットフォームの整備へ民間有力IT企業の参加を奨励することが提案されている(注5)。
  • 2020年2月3日の中国共産党常務局の会議では、新型肺炎は中国のガバナンス体系とガバナンス能力に大きな試練をもたらしていると認識された。また、2月14日に開催された「中央全面深化改革領導小組」(中国の改革政策に関する討議調整機関)で習近平主席は、ビッグデータ、AI、クラウドコンピューティング等のデジタル技術の活用を奨励するよう指示した(注6)。肺炎終息後にはデジタル・ガバメントの地域格差と能力格差の解消が加速されよう。

中国社会全体のデジタル化が加速し、ビジネス機会が
生まれる

  • このように、ネット普及率の上昇や教育部門のMOOC化(Massive Open Online Course)など消費者サイドのデジタルの加速、クラウドコンピューティングを生かした新たなビジネススタイルの普及などによるビジネスサイドのDX(デジタルトランスメーション) 加速に加えて、デジタル・ガバナンスの整備を含む中国社会全体のデジタル化が加速されるだろう。新型肺炎は、中国社会に多大なコストを生じさせたが、大きな変革を促すきっかけともなる。
  • 実際、米国の大手IT調査会社のIDCは、新型肺炎後に中国経済社会の営みに大きな変化が生じ、中国のICT市場で大きなビジネス機会が生まれるとみている(注7)。その変化には、①社会ガバナンスの近代化とスマート化、②都市クラスターや中心都市機能の分散化、③ヘルスケアのデジタル化の加速、④(人間の)接触を伴わない商業やサービスモデルの加速、⑤グローバルサプライチェーン構築におけるチャイナプラスワン(China+1)戦略の加速、などが含まれる(図表3参照)。IDCはデジタル企業にビジネス機会をつかむための準備を進めるように提言しているが、ビジネス機会を生かせるかどうかは、企業の戦略的対応次第である。

(図表3)新型肺炎終息後に想定される10分野のビジネス機会

(図表3)新型肺炎終息後に想定される10分野のビジネス機会
出所:IDCニュースリリース
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prCHE46045120Open a new window

注釈

jin

本記事の執筆者

経済研究所
主席研究員

金 堅敏(Jin Jianmin)

中国浙江大学大学院/横浜国立大学国際開発研究科修了。博士。専門は、通商政策、中国経済・産業、ニューエコノミーとIoT時代のイノベーション政策/活動。

主な著作に『図解でわかる中国有力企業と主要業界』、『華人エコノミストの見た中国の実力』(共著)、『中国 創造大国への道-ビジネス最前線に迫る-』(共著)、『米中貿易戦争と日本経済の突破口』(共著)、「中国のネットビジネスの革新と課題」、「産業の高度化を狙う中国製造2025を読む」、「IoT時代で活発化する中国のベンチャー活動は持続可能か」、“The Changing Currents of Transpacific Integration: China, the TPP, and Beyond”、ほか。

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