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SDGs実施指針の改定とSDGs関連施策の強化

SDGs実施指針の改定とSDGs関連施策の強化

発行日:2020年1月31日

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要旨

  • 持続可能な開発目標(SDGs)達成のための国家戦略であるSDGs実施指針が3年ぶりに改定された。構成自体に大きな変化はないが、優先課題における「ジェンダー」の強調や、連携が望まれるステークホルダーの多様化などに、初版との違いが見られた。
  • SDGsの浸透と地域課題解決を目指す地方創生SDGsが、2020年度からの第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に明記された。SDGsに取り組む自治体の割合を60%とする2024年度目標に向けて、SDGs未来都市・自治体モデル事業、地方創生SDGs官民連携プラットフォームに加えて、新たに地方創生SDGs金融の施策が開始される。
  • 大手企業に比べてSDGsの取り組みが遅れている中小企業に対する政策支援が求められる。地方創生SDGs金融における地域企業の登録・認証制度が注目されており、インセンティブ設計と全国展開のスピードが実効性のカギを握る。

SDGs実施指針が3年ぶりに改定

  • 2019年12月20日、政府のSDGs推進本部が「SDGs実施指針改定版(以下「改定版」)」を公開した(注1)。SDGs実施指針は、2030年を目標年とするSDGsを達成するための中長期的な国家戦略として位置付けられている。2016年12月に最初の実施指針(以下「初版」)が策定されてから3年ぶりの改定である。
  • SDGs達成に向けた日本の取り組みは、分野によっては、まだ十分な成果が上がっていない。SDGsの目標5(ジェンダー)、目標12(生産・消費)、目標13(気候変動)、目標17(実施手段)の国際的評価は低く、目標1(貧困)、目標10(不平等)、目標11(都市)についても課題があると評価されている。
  • 今回の改定の目的は、最新の動向を踏まえた日本のSDGsの取り組みの方向性を示すことであり、実施指針の構成自体に大きな変化はない。変更部分の大半は「初版」からの3年間の状況変化や取り組み内容などを反映したものであるが、一部に「改定版」の新たな傾向を示す変化が見られる。
  • 「初版」との違いの一つが「ジェンダー」の強調である。実施指針は8つの優先課題を掲げているが、優先課題1「あらゆる人々の活躍の推進」(初版)が「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」(改定版)に修正された(注2)。日本のジェンダー分野の達成度が低いことが、課題認識として反映されたものである。
  • 連携の推進が望まれるステークホルダーの多様化も顕著な違いである。「初版」では6種類のステークホルダーが記されたが、「改訂版」では11種類に拡大した(図表1)。新たに加えられた「ファイナンス」は取り組みの資金確保の必要性を反映したもので、「次世代」「市民社会」「新しい公共」「教育機関」などは担い手の拡大が意図されている。

(図表1)SDGs実施指針改定に記されたステークホルダーの多様化

(図表1)SDGs実施指針改定に記されたステークホルダーの多様化
出所:内閣府資料を基に富士通総研作成

  • 実施指針の改定に合わせて、「SDGsアクションプラン2020」も公開された(注3)。アクションプランは、今後の10年を2030年の目標達成に向けた「行動の10年」と位置づけ、日本のSDGsモデルの3本柱「ビジネスとイノベーション」「地方創生・まちづくり」「次世代・女性のエンパワーメント」のさらなる推進を図るための施策を網羅している。

地方創生SDGsの推進

  • 国内の様々なステークホルダーのSDGsの取り組みを促すためには、地域レベルでの働きかけが不可欠である。政府は、SDGsの浸透と地域課題の解決を目指して、SDGsを原動力とした地方創生を強く推進している。
  • SDGs実施指針改定と同日に第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(対象期間:2020年度~2024年度)も公開された(注4)。この第2期「総合戦略」に新設された横断的な目標の中に、「地方創生SDGsの実現などの持続可能なまちづくり」が明記された。
  • SDGs達成に向けて取り組む都道府県・市区町村の割合は、2020年度目標の30%から2024年度までに60%とする目標に引き上げられた。政府の調査では2019年11月時点の自治体のSDGsの取り組みの割合は13%であり、2020年度目標の達成も決して容易ではない。地域の取り組みを促す地方創生SDGsの施策が推進される。
  • 自治体の成功事例の普及施策として2018年度から開始された「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」は2024年度まで継続されることになった。2019年度まで60の「SDGs未来都市」が選定されているが、2024年度まで累計で210の「SDGs未来都市」を選定することがKPI(重要業績評価指標)として設定された。
  • 官民連携の取り組みの促進を目的に2018年8月に設置された「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」には、2019年9月末現在、関係13省庁に加えて423自治体と653企業が参加している(注5)。同プラットフォームを活用した官民連携マッチングが2024年度までの累計で1,000件に達することが、KPIとして設定された。
  • 新たな施策となる「地方創生SDGs金融」は、地方創生SDGsに取り組む地域企業と地域金融機関を自治体がつなぎ、地域における資金の還流と再投資を生み出すことが期待されている。地域企業に対する登録・認証制度、地域金融機関等に対する表彰制度、様々なステークホルダーによる事業の取り組みに対する評価手法の構築が目指されている。
  • 「地方創生SDGs金融」は、2020年度に一部自治体をパイロット地域として制度の運用が開始される予定で、最終的には全国展開が目指されている。2024年度まで累計で100自治体が地方創生SDGs金融に取り組むとするKPIが設定されている。

中小企業対策として注目される地方創生SDGs金融

  • 大手企業にとってSDGsの取り組みは「当たり前」になりつつある。富士通総研では、フォーブスグローバル2000にランクインした日本企業のSDGsに関する言及状況を調査しているが、2016年末時点でSDGsに言及した企業の比率が33%であったのに対して、2019年末調査では対象企業の93%がSDGsに言及していた(図表2)。

(図表2)フォーブスグローバル2000ランクイン日本企業のSDGsへの言及

(図表2)フォーブスグローバル2000ランクイン日本企業のSDGsへの言及
出所:フォーブスグローバル2000(2016年版・2017年版・2018年版・2019年版)と各社公開情報を基に富士通総研作成

  • 大手企業の自発的なSDGsの取り組みが進展する一方で、中小企業の取り組みは遅れている。2018年12月に公開された関東経済産業局の調査では、SDGsに対応・検討している中小企業の比率は2%にとどまっていた(注6)。SDGs実施指針改定版でも、国内企業数の99.7%を占める中小企業へのSDGsの浸透が課題として認識されている。
  • 中小企業へのSDGsの周知拡大と取り組みを促すためには、大手企業のサプライチェーン管理を通じた要請とともに、政策支援が求められる。中小企業の取り組みを促す政策支援として注目されるのが、「地方創生SDGs金融」のフレームワークに基づく地域企業に対する登録・認証制度である。
  • 登録・認証制度では、企業の取り組みのレベルアップを促すために、取り組みに応じて3段階のレベル設定が計画されている。企業が取り組みの自己評価を行う「登録」レベルと、「認証」については、自治体等による一定の評価基準を満たすレベルと、優れた取り組みを行う企業に対して第三者機関等が専門的に評価するレベルが想定されている。
  • 登録・認証制度の実効性のカギを握るのが企業のインセンティブ設計である。登録・認証による企業イメージの向上だけでなく、競争入札での加点や補助金等支援、金融機関からの資金調達優遇、ビジネスマッチング機会などのインセンティブが考えられるが、具体的な設計は地域の実情に応じて自治体等で検討されることになる。
  • 登録・認証制度に企業が関心を示すポテンシャルは高そうだ。2019年度4月に独自の「長野県SDGs推進企業登録制度」を開始した長野県では、同年11月現在で登録企業数が162社となっている。中小企業へのSDGsの浸透は、「地方創生SDGs金融」の全国展開のスピードにも依存するだろう。
  • SDGs実施指針の次回見直しは、改定版策定から4年後の2023年が予定されている。次回見直しの程度と内容は、2023年秋の国連SDGsサミットで日本政府が報告するSDGs達成の進捗状況に大きく依存するだろう。
  • SDGs関連施策の強化は、自治体や企業のSDGsの取り組みを促し、企業や地域の価値向上につながることが期待できる。しかし、それらの取り組みが、政府が国際社会にコミットしたSDGs達成に直結するかは別問題である。政府にとっては、2030年のSDGs達成の進捗という観点から、SDGs関連施策の実効性を検証する必要があるだろう。

注釈

生田 孝史

本記事の執筆者

経済研究所 主席研究員

生田 孝史(いくた たかふみ)

専門領域:環境・エネルギー政策、環境・CSR関連事業・経営戦略、社会イノベーション、自然資源活用型地域戦略など、企業や地域の持続可能性をテーマとした研究活動

1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社

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