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中国のイノベーション・ベンチャー活動拠点の実態:深圳市

中国のイノベーション・ベンチャー活動拠点の実態:深圳市

発行日:2020年1月21日

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要旨

  • 深圳市におけるイノベーション(創新)活力の最大の特徴は、地場民間企業が主役であることである。例えば、研究開発機関の90%以上、研究開発要員の90%以上、研究開発費の90%以上が民間企業によって設立・採用・投入されているのである。
  • 深圳市の中小企業は約200万社も存在し、ベンチャー(創業)活動が活発である。うち、技術志向のベンチャー企業(中国で言う認定ハイテク企業)は14,415社(2018年末現在)で北京に次ぐ有力な創業拠点となっている。中国科学院、清華大学などの内外大学や研究機関、多国籍企業も、開発した技術を、深圳で産業化する動きが活発である。大学資源が少ないので、ノーベル賞受賞者をはじめ、全世界から人材や大学、研究機関の誘致にも注力している。
  • ハード製品のベンチャーが多く存在するが、ネット系ベンチャーの多い北京、上海、杭州と比べ、ベンチャー企業の市場評価額が相対的に小さく、ユニコーンの数は少ない。ただ、深圳市は、ベンチャー企業のスケールアップ政策もとっている。

筆者は度々深圳市におけるベンチャー活動の実態調査に訪れるが、2019年12月下旬にも再度訪問し、市役所のイノベーション担当部署やベンチャー企業を訪問した。そこで得た情報にもとづいて、深圳市における創新・創業の最新実態を以下のようにまとめる。

民間企業中心の創新・創業活動

  • 深圳市におけるイノベーション活動は、民間企業主導である。例えば、90%以上のイノベーション型企業が地場企業であること、90%以上の研究開発機構が企業で設立されていること、90%以上の研究開発要員が企業にあること、90%以上の研究開発投入が企業からの支出であること、73%以上の発明特許は民間ベンチャー企業からもたらされていることなどが特徴となっている。
  • 深圳市の中小企業は約200万社も存在し、創業活動が活発である。うち、技術志向のベンチャー企業(中国で言う国レベルの認定ハイテク企業)は14,415社(2018年末現在)で北京に次ぐ有力な創業拠点となっている。2018年には3,427社のハイテク企業が創出されている。
  • ちなみに、2018年末現在、国レベルの認定ハイテク企業数で、トップ10は、①北京2.5万社、②深圳市1.44万社、③広州市1.1万社、④上海9206社、⑤東莞市5798社、⑥蘇州市5416社、⑦天津市5038社、⑧杭州市3919社、⑨佛山市3900社、⑩武漢市3527社の順となっている。

大学や研究機関、一流人材の誘致に全力

  • 深圳市のイノベーションは民間企業に主導されている反面、大学や研究所の研究開発の比率が低いことで、基礎研究力の不足が懸念され、イノベーションの持続性が問われている。したがって、深圳市は国内外有名大学や研究所の誘致に努力している。
  • ちなみに、現在、深圳市には、深圳大学、南方科学技術大学、深圳技術大学の三大学があるが、ハルピン工業大学、香港中文大学、中山大学、中国科学技術大学も深圳市で学部生の教育を開始した。また、清華大学などは、大学院生の教育を深圳で行っている。
  • また、深圳市政府の認定した研究機関(深圳市の財政支援を受けられる)は13ある。 認定はしていないが、自主的に設置されている研究機関(主に大学による)は数十ヵ所ある。これらの研究機関は、大学で開発された技術の産業化・製品化を行うものが多い。例えば、中国科学院深圳先進技術研究院、清華大学深圳大学院はすでに数百社の企業を育成しており、数多くの上場企業も生まれているという。
  • また、深圳市では、国内外の一流の人材誘致にも全力を挙げている。うち、9名のノーベル賞受賞者の誘致に成功し、これらのノーベル賞受賞者のためのラボが設立されている。ちなみに、発光ダイオードのノーベル物理学賞受賞者である中村修二教授の名前を付け実験室も存在している。また、2018年末現在、世界のトップレベル(各国科学アカデミー会員)の科学者41人が深圳においてフルタイムで活動しているという。

ベンチャー企業のスケールアップを図り、ユニコーン企業を育成

  • 深圳のベンチャー活動は盛んになっているが、これらのベンチャー企業がスケールアップしてユニコーンなどの巨大ベンチャーまで成長するには課題が残る。ちなみに、深圳のユニコーン数は18社で、北京の82社、上海の47社にははるかに及ばないが、杭州の19社にも負けている(注1)。これは、深圳のベンチャーに多いハード中心の事業構造では市場評価の金額を融資によって膨らませにくい側面がある。一方、その他の都市はネット系ベンチャーが多く、市場で評価されやすい。
  • 深圳市政府としては、評価額よりも、ニッチ市場/産業におけるリーディング企業の育成を重視していると深圳市の担当者は政府の創業・創新政策を解説している。ただし、スケールアップ政策としてユニコーン企業育成の政策も存在しているようである(注2)。2019年から毎年1~3社の新規ユニコーンを育成して、2022年にはユニコーン企業総数で30社を目指すとともに、評価額3億ドル以上の準ユニコーン企業を50社、評価額1億ドル以上の潜在ユニコーンを100社以上育成することを目指して、財政、人材、市場アクセス改善など数多くのサポート政策を展開するという。
  • 実際、民間資本を主役とする深圳市は、中小企業が多く大企業が少ない現状にある。例えば、Fortune Global 500(2019)でランクインした深圳企業(本部が深圳にある)は7社で上海の7社、民間資本を主役とする杭州の4社には負けていないが、国有企業中心の北京の56社にははるかに及ばない。そこで、深圳市はFortune Global 500級企業の育成も図っている。

深圳における創新・創業活動の日中協力

  • 近年、創新・創業活動における深圳の台頭に日本のメディアや産業界も注目しはじめた。一部の日本企業はすでに深圳でイノベーションセンターを設立して現地ベンチャーとの協創を図っている。
  • また、日本の産業所管官庁や外郭団体の関係者も深圳の創業・創新所管部署を訪問し、日本のベンチャー企業と深圳ベンチャーとの協業や、日本で生まれた技術の深圳での産業化について話し合ったという。
  • 実際、筆者が深圳を訪問したときも、日本の大学が開発した技術の説明会が深圳で行われていた。今回の訪問では、ハード分野に長けている深圳の創新・創業活動を活かす環境は生まれつつあると感じた。



写真(深圳)

筆者撮影

注釈

  • (注1)
    評価機関によって都市ごとのユニコーン数は異なっている。ただし、深圳市のユニコーンが少ないのは、中国で一般的に認識されている。ここで引用したデータは、Hurun Global Unicorn List 2019による。
    https://www.hurun.net/CN/Article/Details?num=E7190250C866Open a new window
  • (注2)
    《深圳市培育独角兽企业行动方案》(深圳市のユニコーン企業育成行動プラン)
    http://www.sohu.com/a/239279802_100014682Open a new window
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本記事の執筆者

経済研究所
主席研究員

金 堅敏(Jin Jianmin)

中国浙江大学大学院/横浜国立大学国際開発研究科修了。博士。専門は、通商政策、中国経済・産業、ニューエコノミーとIoT時代のイノベーション政策/活動。

主な著作に『図解でわかる中国有力企業と主要業界』、『華人エコノミストの見た中国の実力』(共著)、『中国 創造大国への道-ビジネス最前線に迫る-』(共著)、『米中貿易戦争と日本経済の突破口』(共著)、「中国のネットビジネスの革新と課題」、「産業の高度化を狙う中国製造2025を読む」、「IoT時代で活発化する中国のベンチャー活動は持続可能か」、“The Changing Currents of Transpacific Integration: China, the TPP, and Beyond”、ほか。

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