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中国AI産業の優位性、短所、課題

中国AI産業の優位性、短所、課題

発行日:2019年10月28日

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要旨

  • 中国のデジタル産業の発展や米中貿易紛争の激化により、世界は中国のAI産業の台頭に注目し、様々な視点から中国AI産業の特徴や優位性、弱点などについて報告を出している。これらの調査研究を総合すると、中国のAI産業には米国と大きな差が存在しており、中国は米国へのキャッチアップのスピードを上げていることがわかる。
  • 中国のAI産業市場の発展には、政策の推進、活発なベンチャー活動、AIフレームワークのオープンソース化、デマンドサイドの受け入れやすさ等の背景が存在する。特に、中国にはデータや応用シーンの豊富さ、デマンドサイドの技術実用主義等のAI発展の優位性も存在する。
  • また、米国との比較において、AIチップ、アルゴリズム、トップ人材などの高度な技術力については課題も多い。

米中のAI産業力に関する比較評価研究

  • 中国のAI産業は、政府によるAI産業政策の推進や企業の努力で急速に拡大しているとは言え、産業発展の視点からは成長の初期段階にあると言わざるを得ない。昨今、米中間でAI競争が激しく展開されており、各種の論文やレポートも出されている。これらの比較研究の結論をまとめてみると、AI分野における米国の優位性は明らかである。
  • 比較研究論文のうち、代表的なものには、オックスフォード大学のJeffrey Ding教授らがまとめた“Deciphering China’s AI Dream”がある。これは、米中のAI産業力を指数化して比較したものである。図表1が示すように、この論文は、米中のAI能力を、①Hardware(ハード(計算能力))、②Data(データ(ビッグデータ))、③Research and Algorithms(ソフト(アルゴリズム))、と④Commercial AI Sector(AIの産業応用の度合い)という4分野で指数化して評価している。結果として、AI Potential Index(AI指数)は、中国の場合は17で米国の33の半分ぐらいにしか達していない現状が見えてくる。

図表1:米中のAI能力の比較指数

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出所:Ding, J. (2018) “Deciphering China’s AI Dream”, University of Oxford
https://www.fhi.ox.ac.uk/wp-content/uploads/Deciphering_Chinas_AI-Dream-1.pdfOpen a new window

もっとも弱い分野はAIチップ等のハードであり、
基盤ソフトも弱い

  • 上記Ding教授らの評価では、中国のAI産業力がもっとも弱い分野は、計算能力のICチップにある。ICチップのグローバル生産シェアでは、米国の50%に対して中国は4%しかない。端末サイドにおけるオーダーメイドのAIチップ(DPU、XPU、TPU等)では一部ベンチャー企業が台頭してきているが、汎用AIチップ(GPU、FPGA等)とクラウドサイドのAIチップ(IBMが開発した人間の脳を模倣したプロセッサ-TrueNorth、Qualcomnが開発したZeroth等)では、大きな存在感のある企業はない。
  • ただ、他の調査レポートや筆者の現地調査では、華為技術のチップ設計子会社HisiliconやアリババのICチップ開発子会社Pingtougeの開発能力は高いと評価できる。また、中国では、一部のベンチャー企業(例えば、CambriconやYituTechnologyなど)もAIチップの開発に力を入れており、技術力がキャッチアップしてくるのではないかと考えられる。
  • また、AI基盤ソフトであるAIフレームワークについて、米系大手IT企業がオープンソースで世界の開発者に数多く提供している。例えば、GoogleのTensorFlow、FacebookのPyTorch、マイクロソフトのTognitive Toolkitは、世界のAI開発者に人気がある。
  • 中国企業では、百度はPaddle-paddle、テンセントはncnn、Sence TimeはParrotsを公開しているが、近年では、中国のAI開発者も、GoogleのTensorFlowをはじめ米系企業のオープンフレームを好んで使うようになっている 。

データの豊富さに優位性、人材面では今後に期待

  • 次に次世代AIの発展に必要なデータについて、膨大な人口規模、高いネット普及率、および裾野の広い産業発展などにより、中国は世界の約20%前後のデータを有すると推定されている。
  • 膨大なデータを基礎とする画像認識や音声認証、語彙理解などに関するアルゴリズムが発達し、Sence Time、Face++、Yitu、iFlytekなどの有力なベンチャー企業や上場企業が成長している。
  • AI人材については、具体的な人数については報告によって異なるが、図表2は、Nature誌が中国清華大学から出たレポート『中国人工知能発展報告2018』(注1)のデータを掲載したものである。2017年末現在、中国のAI専門人材(論文発表や特許を有する人材)は18,232人で米国の28,536人につぐ第2位のAI大国になっている。ただし、上位10%のトップAI人材における中国人のシェアは約5%しかなく、米国の18%にははるかに及ばない。ちなみに、上位6か国の中には日本はない。

図表2:中国のAI人材数と主要国との比較

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出所:O’Meara, S., “Will China lead the world in AI by 2030? ”, nature, 21 August 2019
https://www.nature.com/articles/d41586-019-02360-7Open a new window

AI企業の数は米国の半分ぐらいで中国ユニコーンの数は
米国と同等

  • AIの商業応用は、供給サイド側のAI企業や人材、技術とデマンドサイドの両方に関わっている。供給サイドでは、中国情報通信研究院のモニタリング資料『全球人工知能産業データ報告』によると、2019月3月末現在、世界にAI企業は5,386社が設立されているが、国別では米国の2,169社に続き、中国は1,189社、英国404社、カナダ303社、インド169社の順になっている。
  • 調査会社であるCB insightsとCrunchbaseのデータに基づき、中国情報通信研究院がまとめた上記モニタリング資料によると、全世界で独自の技術やビジネスモデルを持ち、投資家から高く評価されているAIユニコーンは41社存在する。国別では、米国が18社で中国は17社である。また、米国AIユニコーンには中国人が設立したものもある。
  • 図表3が示すように、中国のAIユニコーン企業は、AIチップ、スマートロボット、EV/自動運転、ビッグデータ、画像認識等に広がっており、様々な分野でAIの技術力を備えていると評価できよう。
図表3:中国のAIユニコーン一覧
会社名 会社名(英語) 技術分野 会社名 会社名(英語) 技術分野
1 寒武紀科技 Cambricon AIチップ 10 図森技術 TuSimple 自動運転
2 地平線ロボット Horizon Robotics AIロボット 11 愛馳汽車 AIWAYS EV/自動運転
3 優必選科技 UBTech AIロボット 12 驭驶科技 UISEE 自動運転
4 旷視科技 Face++ (Megvii) コンピューターボジョン 13 初速度 Momenta 自動運転
5 商湯科技 Sense Time コンピューターボジョン 14 碳雲智能 iCarbonX バイオ
6 雲衆科技 Cloudwalk コンピューターボジョン 15 出門問問 Mobvoi 音声認証等
7 依図科技 Yitu Technology コンピューターボジョン、AIチップ 16 松鼠AI Squirel AI Learning AI 教育
8 第四範式 4Paradigm アルゴリズム 17 特斯聯科技 Terminus AI+IoT
9 雲知声 Unisound ビッグデータ、IoT 18 今日頭条 Toutiao (Bytedance) AIメディア ゲーム

出所:CB Insights、Crunchbase、中国情報通信研究院より筆者作成

AI採用に中国の産業化や消費者はもっとも積極的である

  • AIの産業発展は、市場であるデマンドサイド、あるいは応用の受入(採用)側の態度によっても影響される。図表4が示すように、大手コンサルティング会社Boston Consulting Group(BCG)の調査によると、2018年中国企業のAI採用(Adoption)率は32%で、AI試験採用(Piloting)率は53%にそれぞれ達しており、米国を含む他の先進国をリードしている。産業別で見ても平均的に高い採用あるいは試験採用率になっている。他方、中国の消費者はもっともAIの効用を評価し受け入れる態度を取っていることもデータで示されている。
  • また、調査機関Center for DATA Innovation の調査レポート“Who is Winning the AI Race: China, the EU or the United States?”によると、AIが中国産業界や消費者に受け入れやすい背景には、①中国の政府の政策推進(ベンチャーへの投資拡大やモデルケースを通じてAIの効果を見せていることなど)、②中国社会に技術功利主義文化(techno-utilitarian culture)が存在すること(AI採用に倫理的な問題があるにもかかわらず、広範な社会福祉が認められればAIを採用したがること)、③中国企業経営者は米国など他の国より従業員を説得してAIの効用やデジタルトランスフォーメーションの戦略的意味をよく理解してもらっていること、などがあるとされている。因みに、日本企業は他の主要国と比べると、AI採用に保守的なように見て取れる。

図表4:中国の企業や消費者のAI採用状況(態度)

19-11-04_1
19-11-04_2

出所:Duranton, S., J. Erlebach, and M. Pauly (2018) "Mind the (AI) Gap: Leadership Makes the Difference", BCG GAMMA
http://image-src.bcg.com/Images/Mind_the%28AI%29Gap-Focus_tcm108-208965.pdfOpen a new window

jin

本記事の執筆者

経済研究所
主席研究員

金 堅敏(Jin Jianmin)

中国浙江大学大学院/横浜国立大学国際開発研究科修了。博士。専門は、通商政策、中国経済・産業、ニューエコノミーとIoT時代のイノベーション政策/活動。

主な著作に『図解でわかる中国有力企業と主要業界』、『華人エコノミストの見た中国の実力』(共著)、『中国 創造大国への道-ビジネス最前線に迫る-』(共著)、『米中貿易戦争と日本経済の突破口』(共著)、「中国のネットビジネスの革新と課題」、「産業の高度化を狙う中国製造2025を読む」、「IoT時代で活発化する中国のベンチャー活動は持続可能か」、“The Changing Currents of Transpacific Integration: China, the TPP, and Beyond”、ほか。

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