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自治体SDGsへの注目と課題

自治体SDGsへの注目と課題

発行日:2019年10月10日

newsletter_no19-008

要旨

  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成と地方創生の観点から、政府は自治体のSDGsの取り組みを重視し、これまで60の「SDGs未来都市」(20の「自治体SDGsモデル事業」)を選定するとともに、「地方創生SDGs金融」などの施策の検討や、自治体の取り組みを促すツールの提供などを行っている。
  • 自治体のSDGsへの関心も高まっており、7月31日現在、ネットワークやパートナーシップへの参加を含めて、545自治体がSDGsに関する情報発信を行っていた。特に、都道府県・政令指定都市など規模の大きい自治体の取り組み・検討が進んでいる。
  • 自治体には、地域特性を考慮しながら、いかにSDGsを地域行政に活用できるかという発想が求められる。政府の役割は、地域の先行取り組みの成果を共有し、他地域に展開できる仕組み作りや、独力での検討が困難な地域に対する支援である。

自治体SDGsに対する政府の積極支援

  • 7月1日、内閣府は2019年度の「SDGs未来都市」として31自治体を選定し、そのうち10自治体を「自治体SDGsモデル事業」に選定した。この制度は、2018年度から3年間の予定で始まったもので、昨年度選定分と合わせて60のSDGs未来都市(20の自治体SDGsモデル事業)が誕生している(図表1)。


【図表1】SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業選定自治体
自治体名 選定年度 自治体名 選定年度 自治体名 選定年度
北海道 2018 富山県 2019 奈良県広陵町 2019
北海道札幌市 2018 富山県富山市 2018 奈良県十津川村 2018
北海道ニセコ町 2018 富山県南砺市 2019 和歌山県和歌山市 2019
北海道下川町 2018 石川県小松市 2019 鳥取県智頭町 2019
岩手県陸前高田市 2019 石川県珠洲市 2018 鳥取県日南町 2019
宮城県東松島市 2018 石川県白山市 2018 岡山県岡山市 2018
秋田県仙北市 2018 福井県鯖江市 2019 岡山県真庭市 2018
山形県飯豊町 2018 長野県 2018 岡山県西粟倉村 2019
福島県郡山市 2019 静岡県静岡市 2018 広島県 2018
茨城県つくば市 2018 静岡県浜松市 2018 山口県宇部市 2018
栃木県宇都宮市 2019 愛知県 2019 徳島県上勝町 2018
群馬県みなかみ町 2019 愛知県名古屋市 2019 福岡県北九州市 2018
埼玉県さいたま市 2019 愛知県豊橋市 2019 福岡県大牟田市 2019
東京都日野市 2019 愛知県豊田市 2018 福岡県福津市 2019
神奈川県 2018 三重県志摩市 2018 長崎県壱岐市 2018
神奈川県横浜市 2018 滋賀県 2019 熊本県熊本市 2019
神奈川県川崎市 2019 京都府舞鶴市 2019 熊本県小国町 2018
神奈川県鎌倉市 2018 大阪府堺市 2018 鹿児島県大崎町 2019
神奈川県小田原市 2019 奈良県生駒市 2019 鹿児島県徳之島町 2019
新潟県見附市 2019 奈良県三郷町 2019 沖縄県恩納村 2019

19-08-01

  • 2030年までのSDGs達成を目指す政府は、自治体のSDGsの取り組みを重視している。2017年12月の公開から半年ごとに改版されている「SDGsアクションプラン」では、「日本のSDGsモデル」の中核の3本柱の一つに、「SDGsを原動力とした地方創生、強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり」が掲げられている(注1)。
  • 自治体のSDGsの取り組みは、地方創生の観点からも重視されている。地方創生の第2期(2020年度~2024年度)の基本的な考え方を示すために、6月21日に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」においても、「地方創生SDGsの実現などの持続可能なまちづくり」が明記されている。
  • 政府は、SDGs達成に取り組む都道府県・市区町村の割合を2020年までに30%とする目標を設定している。内閣府調べでは2018年11月時点の自治体の取り組みの割合は5%に過ぎないこともあり、政府は自治体のSDGsの取り組み推進に積極的である。
  • 「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」は、自治体のSDGsの取り組みの成功事例を普及展開する施策として位置づけられている。SDGs未来都市の中で先導的な取り組みとして選定された自治体SDGsモデル事業は、事業補助を受けることができる。
  • モデル事例構築以外にも、地域のSDGs推進施策が検討されている。例えば、金融面における地方創生SDGsの施策として、資金の流れを地域事業者や地域経済に還流させる「地方創生SDGs金融」の普及・展開を図るために、多様なステークホルダーが連携する「地方創生SDGs金融フレームワーク」の構築が目指されている。
  • 自治体の取り組みを促すツールも政府から提供されている。内閣府は、2018年11月に自治体SDGsのリーフレットを公開したのに続き、2019年8月には、地方創生SDGsに関する冊子と動画、さらには自治体が取り組みを進捗管理するための「地方創生SDGsローカル指標リスト(第一版)」を公開している。

自治体の関心の高まりと取り組みの進展

  • SDGsへの自治体の関心も高まっている。政府が2018年12月に公開した自治体向けアンケートでは、回答1,020自治体のうち、SDGsを認知している自治体が95%、取り組みを推進している・予定している・推進の検討を予定している自治体が51%であった。
  • SDGs実施に向けたネットワークやパートナーシップに関心を示す自治体も増えている。2018年8月には、地方創生の実現と官民連携による先駆的な取り組みの創出を目指して「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」が設置されたが、参加自治体数は、2019年3月末現在の254から同年6月末現在には338に増加している。
  • 2019年1月に開催された「SDGs全国フォーラム2019」では、自治体主導の官民連携パートナーシップとして「SDGs日本モデル宣言」が採択された。この宣言に賛同する自治体数も、採択当初の93から7月末現在で148に増加している。
  • 富士通総研が2019年7月31日時点での1,788自治体の公開情報を調査した結果、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」への参加と「SDGs日本モデル宣言」への賛同を含めて、545自治体がSDGsに関する情報発信を行っていた(図表2)。前回(1月31日時点)調査で同項目に該当した自治体数243と比べると2倍以上の増加である。


【図表2】自治体のSDGs取り組み状況
地方自治体 SDGsに関する取り組みに着手・検討している自治体
種類 総数 総合的 組織レベル 合計
都道府県 47 39 (83%) 8 (17%) 47 (100%)
政令指定都市 20 18 (90%) 2 (10%) 20 (100%)
市区町村 1,721 210 (12%) 268 (16%) 478 (28%)
合計 1,788 267 (15%) 278 (16%) 545 (30%)

出所:公開情報(2019年7月31日現在)を基に富士通総研作成
注:「SDGsに関する取り組みに着手・検討している自治体」は、SDGsに関する情報発信を行っている(「地方
創生SDGs官民連携プラットフォーム」への参加、「SDGs日本モデル宣言」への賛同を含める)自治体の数
注:( )内の数値は、自治体の種類別総数に占める比率



  • これら545自治体のうち全庁レベルで総合的な取り組みに着手あるいは検討を行っていたのは267自治体であった。このうち109自治体は、SDGsを反映したビジョンや総合計画等の策定や、事業とSDGsとの総合的な関連付けなどの取り組みに、着手あるいは検討を行っている。
  • 残りの278自治体は一部の組織レベルの取り組みにとどまっている。環境分野の部署が関与するケースが多いが、協働・男女参画や国際交流、産業振興、教育などの分野でも、SDGsの紹介や、基本計画や取り組みなどとSDGsの関連づけの取り組みが見られる。
  • 規模の大きい自治体の方が、SDGsへの取り組みに着手・検討が進んでいる傾向がある。今回調査では、すべての都道府県と政令指定都市においてSDGsに関する何らかの取り組み・情報発信が確認された。総合的な取り組みに着手・検討している比率も高く、39都道府県、18政令指定都市が該当した。
  • 市区町村では、478自治体が取り組みに着手・検討しているが、全市区町村数(1,721)に占める比率は3割に満たない。総合的な取り組みに該当するのは210自治体で、組織レベルの取り組みの268自治体を下回っている。市区町村別数に占める比率は、市が45%、区が87%、町が14%、村が5%となり、町村より市区の取り組みが進んでいる。

地域特性を考慮したSDGsの活用と
取り組みの裾野の拡大がカギ

  • 自治体にとって、SDGsに取り組む義務はないとはいえ、SDGsに無関心ではいられない。政府の積極支援に加えて、自治体と企業、大学などがSDGsに関連した連携協定を結ぶ事例も増えている。SDGsに関する議会での質問もあるようだ。いかにSDGsを地域行政に活用して、地域の変革や価値向上につなげられるかという発想が重要となろう。
  • 地域の特性を考慮すれば、自治体のSDGsの取り組みは多様かつ独自のものとなろう。国際目標であるSDGsをそのまま適用するというよりは、SDGsを参考としながら、地域課題の解決に向けた取り組みや目標設定さらには進捗管理の指標などについて、地域の実情に合わせて検討することが望ましい。
  • 自治体のSDGsへの関心の急速な高まりは、先行取り組みを通じた地域間競争を生み出す面があるかもしれない。創意工夫の地域間競争は歓迎すべきだが、先行地域の取り組みが地域間格差につながれば、「誰一人取り残さない」社会をつくるというSDGsの理念と相容れないともいえる。
  • 地域のSDGsの取り組みの裾野を広げるのは、政府の役割である。都道府県、さらには広域行政や広域連携なども活用しながら、先行取り組みの成果を共有し、他地域に展開できる仕組みづくりが求められる。独力での検討が困難な地域に対して、民間や研究機関、金融機関、NPOなどが協働しながら支援する仕組みも重要となろう。
  • 2030年のSDGs達成、地方創生の推進を鑑みれば、地域のSDGsの取り組みは一過性ではありえない。自治体SDGsのあり方を巡る試行錯誤がしばらく続くだろうが、地域の価値向上、さらには国際的な社会課題解決への貢献につなげるために、政府、自治体、地域のステークホルダーの協働が進むことが望まれる。

注釈

  • (注1)
    「日本のSDGsモデル」の中核を構成する他の二つの柱は、「SDGsと連動する「Society 5.0」の推進」と「SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメント」。
生田 孝史

本記事の執筆者

経済研究所 主席研究員

生田 孝史(いくた たかふみ)

専門領域:環境・エネルギー政策、環境・CSR関連事業・経営戦略、社会イノベーション、自然資源活用型地域戦略など、企業や地域の持続可能性をテーマとした研究活動

1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社

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