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中国の次世代産業政策の変化 ~「中国製造2025」から「産業インターネット」へ~

中国の次世代産業政策の変化

~「中国製造2025」から「産業インターネット」へ~

発行日:2019年9月4日

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要旨

  • 近年、一時的に停滞気味であった中国製造業のプレゼンスは再び拡大する傾向にあった。世界の製造業産出(実質付加価値ベース)における中国のシェアも緩やかながら拡大した。「中国製造2025」や「一帯一路」政策が功を奏した可能性がある。
  • 「中国製造2025」政策自体は米中貿易紛争に巻き込まれて影をひそめたが、4年間で305件のモデルケースが実施され、生産性向上等の効果が検証された。このような効果は、自動化や情報化によってもたらされた可能性があり、スマート製造が実現されたわけではない。
  • ただし、中国では消費サイドのデジタル化はかなり進んでおり、デジタル技術やビジネスモデル等の蓄積もある。消費サイドから産業サイドにデジタル化の圧力がかっている。そこで「中国製造2025」に代わる次世代産業政策として「産業インターネット」が打ち出され、急速に展開されている。特に産業インターネットプラットフォームの構築がブーム(工業分野270以上)になっており、産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)進展が注目される。

製造業の重要性が再び増してきた中国

  • 数年前から、「世界の工場」になった中国の製造業は、他の途上国からのコスト競争にさらされ、他方先進国の再工業化の流れからも挑戦を受け、持続的な成長が疑問視されるようになってきている。
  • しかし、国際連合工業開発機関(UNIDO)の集計推定データを検証すると、中国経済における製造業の存在感は再び増してきている。図表1が示すように、中国のGDPにおける製造業の付加価値(実質)の対GDP比は、2010年ごろ(32%)から低下し続けてきた(2014年は28%)が、2018年には再び31%まで高まってきた。また、世界の製造業生産(2010年ドルベースの実質)における中国のシェアは、2010年の18.69%と2015年の23.84%に対して、2018年は24.9%となり、緩やかになったが、拡大している。

図表1:関係国における製造業付加価値のGDP比の変化

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データ出所:UNIDO

  • その背景には、中国が自国の製造業に危機感を抱き、「中国製造2025」などのIoTやAI等の次世代技術を利活用する産業政策を制定し、スマート製造等による製造業の効率化と高付加価値化を図ったことや「一帯一路」推進(輸出拡大)の成果が表れた可能性がある。

「中国製造2025」が影をひそめた理由:
米中紛争とスマート製造実現の難しさ

  • ところで、米国のトランプ政権が登場してからは、貿易紛争が激しくなり、「中国製造2025」も巻き込んだハイテク紛争が勃発した。米国による「一帯一路」への批判も日増しに強まっている。米国の関税引き上げや製造企業の東南アジアへの移転などで中国製造業は再び成長の停滞に陥るのではないかと懸念されている。実際、米国の圧力をかわすため、「中国製造2025」政策自体も影をひそめたのである。
  • ただ、2015年~2018年までの4年間で「中国製造2025」の枠組みの下で、305件(233社)に上るスマート製造モデル事業が実施された。これらのモデル事業では、92の業種に及び、約1千億元(約16兆円)の投資が誘発されたという。
  • 「中国製造2025」の推進官庁である中国工業信息化部によると、スマート化改造の前後を比較して、生産性は37.6%増、エネルギー利用効率は16.1%増、運営コストは21.2%減、製品開発期間は30.8%短縮、製品の不良率は25.6%減、などの効果が確認されたという。
  • ただし、「中国製造2025」のKPIに、「ブロードバンド普及率」、「デジタル化研究開発ツールの普及率」、「重要工程デジタル制御率」の三つが掲げられている。2017年のモデルケースからIIoT(Industrial Internet of Things)/AIの「新技術創新応用」の要素が付け加えられたが、KPIには盛り込まれなかった。つまり、モデルケースで見られた生産性向上等の効果は、生産工程の自働化や経営管理の情報化に由来するところがメインで、真のスマート製造の実現によってもたらされたかどうかは、疑問が残る。つまり、日米欧等の工業先進国のような自動化、情報化の歴史を歩んでこなかった中国の製造業は、ロボットの導入や情報システムの導入によっても大きな生産性向上がもたらされるのである。

次世代デジタル産業政策:
「中国製造2025」から「産業インターネット」へ

  • スイスの国際経営開発研究所(IMD)が継続的に発表している「Digital Vortex」レポートによると、デジタル化によるインパクトの度合い(14産業分野)で製造業(Manufacturing)の順位はずっと後退している。つまり、モノづくり現場のDX(デジタルトランスフォーメンション)の緊迫性が他の分野(小売、物流、金融決済など)と比べて薄れているのは、世界共通の現象といえるかもしれない。
  • 実際、中国消費者のデジタル化は日米欧先進国並みか、一部分野(例:スマホ決済、ネットショッピング等)では世界最高水準にあり、消費者関連のDXもかなり先行している。このような消費サイドのデジタル化は、産業サイドのデジタル化の圧力にもなっており、そのような圧力は産業界にも伝わり、製造業のDXの必要性は日増しに高まっている。
  • 図表2が示すように、消費サイドのデジタル化を上手く利用・誘導し、EC帝国を築き上げたネット巨人アリババは、次世代デジタル技術を活かしてニューリテールだけでなく、新サプライチェーン、新製造まで取り組み始めている。ここで取り上げているキーワードが「産業インターネット」(GEが提起したIIoTに近い概念)である。

図表2:今後10年間の中国産業のDX方向性

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出所:筆者によるアリババへのヒアリングなど

  • 実際、中国政府も、優位に立つ消費サイドのデジタル化に着目して、「インターネット+」政策(IoT政策)などを推進してきたが、2017年には「中国製造2025」に代わる産業政策として「産業インターネット」政策を打ち出しており、製造業に関しては「工業インターネット」として政策推進が行われている。
  • また、伝統的なITアーキテクチャーに基づく自動化、情報化/デジタル化、ネットワーク化、スマート化という漸進的なアプローチ(中国では、DX1.0 という)ではなく、クラウドコンピューティングアーキテクチャーに基づくDX(同DX2.0という)を進めようとしている。中国がDX2.0にこだわる背景には、クラウドコンピューティング技術の普及というグローバルな流れに沿ったものであるということともに、消費サイドのデジタル化で巨大化したプラットフォーム(PF)企業(例:BATH(アリババ、テンセント、百度、華為)等)が成功して、クラウドコンピューティング技術を自主的に有しているからだと推察できる。
  • また、消費者向けインターネットの成功経験を踏まえて、中国企業は、産業インターネットを推進するべく、核心となる産業インターネットプラットフォーム(企業向けのPaaSに近い概念)を構築してエコシステム経営を目指している。そのために、中国政府は、自社用産業インターネットPFを構築する企業、あるいは他社にサービスを提供する産業インターネットPF提供企業に補助金を含めた支援を行っている。
  • 産業インターネットPF構築数は急速に拡大している。因みに、IT調査会社iResearchによると、製造業関連産業インターネットPFだけで、2014年には50社弱だったが2018年3月末には268社に達している。268社の産業インターネットPF構築の主体は、製造企業46%、工業用ソフトベンダー27%、工業設備企業19%、ICT企業8%である。
  • このように、産業分野、特に製造業分野のDXにおいて、政策推進による後押しとBATH等巨大ICT企業の力によって、消費サイドのDXのような成功が再現されるのかが注目されよう。
jin

本記事の執筆者

経済研究所
主席研究員

金 堅敏(Jin Jianmin)

中国浙江大学大学院/横浜国立大学国際開発研究科修了。博士。専門は、通商政策、中国経済・産業、ニューエコノミーとIoT時代のイノベーション政策/活動。

主な著作に『図解でわかる中国有力企業と主要業界』、『華人エコノミストの見た中国の実力』(共著)、『中国 創造大国への道-ビジネス最前線に迫る-』(共著)、『米中貿易戦争と日本経済の突破口』(共著)、「中国のネットビジネスの革新と課題」、「産業の高度化を狙う中国製造2025を読む」、「IoT時代で活発化する中国のベンチャー活動は持続可能か」、“The Changing Currents of Transpacific Integration: China, the TPP, and Beyond”、ほか。

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