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内容重視の段階に移行する企業のSDGs -2019年版「フォーブスグローバル2000」国内企業調査から-

内容重視の段階に移行する企業のSDGs

-2019年版「フォーブスグローバル2000」国内企業調査から-

発行日:2019年9月2日

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要旨

  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の開始から3年半が経過した2019年6月末現在、フォーブスグローバル2000にランクインした国内大手企業の90%がSDGsについて言及するほど取り組みが浸透し、その内容も総合的かつ具体的になっている。
  • 中小企業のSDGsの取り組みは遅れているが、大手企業のバリューチェーン管理の強化が予想されることに加えて、政府や自治体が中小企業の取り組みを支援・促進する動きも始まっており、中小企業にとってもSDGsはヒトゴトではない。
  • 企業のSDGsの取り組みが「当たり前」になりつつある中、その内容と継続性が厳格に問われる。政府目標としてのSDGsの本質を理解したうえで、SDGsを「共通言語」とした機会創出など、取り組みの目的を明確にしながら、企業活動へのSDGsの定着を図るための創意工夫が期待される。

大手企業に着実に浸透するSDGs

  • 大手企業を中心にSDGsの取り組みが急速に浸透している。2030年までに解決すべき社会課題として17目標169ターゲットからなるSDGsの達成は、日本政府が国際社会にコミットしたもので、企業自身の義務ではない。にもかかわらず、SDGsの開始から3年半が経過して、今や国内大手企業の大多数がSDGsに言及している。
  • 2019年6月末現在、2019年版フォーブスグローバル2000にランクインした日本企業222社の90%がSDGsについて言及していた。富士通総研では、2016年12月末からフォーブスグローバル2000ランクイン日本企業のSDGs言及状況の調査を行ってきたが、2016年末時点でSDGsに言及した企業は33%に過ぎなかった。
  • 大手企業についてみれば、SDGsの取り組みが遅れていた非製造業にもSDGsが浸透してきた。例えば2017年末調査では製造業の75%と非製造業の37%がSDGsに言及していたが、今回(2019年6月末)調査では両者とも比率が90%となり、差異が見られなくなってきた。
  • 同様にランク上位(1000位以内)企業と下位(1001位~2000位)企業の差も縮小している。2017年末調査ではSDGsに言及する企業の比率は、ランク上位企業76%、ランク下位企業37%であったが、今回調査ではランク上位企業の95%に対してランク下位企業は85%にまで迫ってきた。
  • SDGsに取り組む企業の裾野が広がった要因の一つが、金融機関の関心の拡大である。2017年末調査でSDGsに言及していた金融機関はわずか6社であったが、今回調査では42社に急増していた。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資を背景として、SDGs宣言の実施や、SDGs推進のための投融資や私募債発行を行う金融機関が増えている。
  • 大手企業のSDGsの取り組みはより総合的かつ具体的になってきた。今回調査では、企業トップのメッセージの中でSDGsに言及する企業(141社)に、CSR方針や考え方などにSDGsを反映する企業(132社)やSDGsと自社事業を総合的に関連付ける企業(125社)が続いていた。SDGsに言及した企業の6割を超える比率である。
  • SDGsの17目標レベルではなく169ターゲットレベルで事業活動を詳細に説明する企業も増え始めている。2018年末調査ではターゲットレベルで自社事業との関連性を示した企業は3社に過ぎなかったが、半年後の今回調査では15社となっていた。

中小企業の取り組み支援の進行

  • 一方、中小企業のSDGsの取り組みは遅れている。2018年12月に関東経済産業局が公開したアンケート調査結果によれば、対象となった中小企業500社のうち、SDGsについて知っていると回答した企業が全体の8%、既に対応・アクションを行っているもしくは検討していると回答した企業はわずか2%であった。
  • 中小企業にとってもSDGsの取り組みはヒトゴトではない。大手企業の取り組みが進むということは、バリューチェーンを通じた管理が強化されることを意味している。大手取引先からの要請という形で、CSR調達にSDGsの視点が反映されるなど、包括的なリスク管理が求められることになろう。
  • 政府も中小企業の取り組み支援に注力している。2019年6月に公開された「拡大版SDGsアクションプラン2019」では、具体的な取り組みとして「中小企業のSDGs取組強化のための関係団体・地域、金融機関との連携を強化」が掲げられている。
  • 政府が推進する「地方創生SDGs」においても、自治体と並んで地域の中堅中小企業がメインプレーヤーとして位置づけられている。中小企業に対するインセンティブとして、SDGsに取り組む企業の登録・認証制度や、地域の金融機関によるSDGs関連投融資の促進などが検討されている。
  • 中小企業の取り組みを促すガイドラインやツールも提供されている。2018年6月に環境省が作成した「SDGs活用ガイド」は中小企業を主対象としたものである。一般財団法人エコステージ協会は、2018年7月から「SDGs見える化サービス」を開始した。
  • 長野県は2019年度から「長野県SDGs推進企業登録制度」を開始した。「SDGs達成に向けた宣言」と、県が設定した42項目ごとにSDGsの具体的な取り組みを記載した企業は、県ホームページ掲載や登録マーク使用によるPRに加え、モデル事業の支援を受けることもできる。6月末で申請企業は80社に達しており、県内企業の関心は高い。

取り組み内容と継続性が問われる

  • 現在、大手企業と中小企業とではSDGsの取り組みの進度に大きな開きがあるが、SDGsの考慮が望まれることは変わらない。政府等の働きかけもあり、中小企業の関心も高まりそうだ。大手企業にとっては、SDGsの取り組みが「当たり前」になりつつある中、株主や投資家、評価機関などから、取り組みの内容と継続性が厳格に問われ始めている。
  • SDGsの取り組みの情報開示には慎重な対応が必要となる。ターゲットレベルでの事業との関連付けが今後の主流になりそうだが、SDGs達成への貢献だけでなく、リスク情報も開示し、リスク削減の方針や取り組みを丁寧に説明することは極めて重要となる。
  • SDGsが政府目標であるという本質的な理解も欠かせない。企業がSDGsの取り組みに関する経営目標を検討する場合、政府目標の達成に貢献するかどうかについて精緻な判断が求められよう。SDGsの232指標を参照したパフォーマンス評価を考慮する際にも、企業活動に適用するには困難な指標が存在することにも留意が必要である。
  • SDGsの魅力の一つは、2030年までグローバルに使用できる社会課題解決の「共通言語」としての使い勝手である。SDGsを共通言語とすることで、課題解決に資する事業の構築を視野に、企業や自治体、大学、NPOなどとの連携・協働の動きが活発になっており、イノベーションの創発が期待されている。
  • 2030年までの長丁場を見据えれば、表層的なSDGsの取り組みは通用しない。SDGsの本質的な理解に加えて、リスク管理、事業機会創出、企業イメージ向上、経営改善など、取り組みの目的を明確にしながら、企業活動へのSDGsの定着を図るための創意工夫を行うことが、持続的な企業競争力の向上につながるのではないか。

【図表】フォーブスグローバル2000日本企業のSDGsへの言及

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(出所)フォーブスグローバル2000(2016年版・2017年版・2018年版・2019年版)と各社公開情報を基に富士通総研作成

生田 孝史

本記事の執筆者

経済研究所 主席研究員

生田 孝史(いくた たかふみ)

専門領域:環境・エネルギー政策、環境・CSR関連事業・経営戦略、社会イノベーション、自然資源活用型地域戦略など、企業や地域の持続可能性をテーマとした研究活動

1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社

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