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  4. EUの「デジタル経済・社会インデックス 2019」より ~人的資本と“ビジネスのデジタル化”が鍵~

EUの「デジタル経済・社会インデックス 2019」より ~人的資本と“ビジネスのデジタル化”が鍵~

EUの「デジタル経済・社会インデックス 2019」より

~人的資本と“ビジネスのデジタル化”が鍵~

発行日:2019年7月31日

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要旨

  • 先月EUが発表した「デジタル経済・社会インデックス(Digital Economy and Society Index: DESI)」(注1)の総合ランキングでは、フィンランドが昨年上位のスウェーデンとオランダを抜き、トップになった。
  • このインデックスは、①Connectivity、②Human Capital、③Use of Internet services、④Integration of digital technology、⑤Digital public servicesの五大指標とそれらを構成する合計44項目の詳細な指標から計算された複合的なスコアである。
  • 一般的に、エストニアの躍進や、伝統的に公的サービスのデジタル化を実現すべく努力を重ねてきたデンマークが注目されることが多いが、各指標の詳細を見ると、総合ランキングでトップ5に入っていなくとも、アイルランドやベルギーのようにビジネスのデジタル化が進んでいる国々や、ルクセンブルクのようにICT高度人材が豊富な国もあり、個別の取り組みは参考になる。
  • 加盟国間で最もスコアの高低差がみられた項目は、②Human Capitalと④Integration of digital technologyであった。デジタル化の競争力を高める人材の成熟度と企業の活用が問われている。

EU加盟国のデジタル化レベルを示す指標

  • 欧州委員会が2019年6月末に「デジタル経済・社会インデックス(Digital Economy and Society Index: DESI)」を発表し、EU加盟国のデジタル化ランキングを示した。このインデックスは、5つの大きな指標から成り立っており、それらを総合したスコアが算出されている。①Connectivity(コネクティビティ、接続性)においてはブロードバンドの浸透度、②Human Capital(ヒューマン・キャピタル、人的資本)においてはデジタル/ICT分野における高度人材、③Use of Internet services(インターネットサービスの利用)においては国民によるインターネットサービスの利用、④Integration of digital technology(デジタル技術のインテグレーション)においてはビジネスにおけるデジタル化とeコマース(EC)、⑤Digital public services(デジタル・パブリック・サービス)においてはeガバメントやeヘルスケアといった公的サービスのデジタル化が計測されている。これら5つの指標の背後には、さらにそれらを構成する合計44項目の複合的指標がある。
  • 図表1は、2017年から2019年までの3年間の総合スコアである(注2)。2019年のトップ3は、1位フィンランド、2位スウェーデン、3位オランダとなっている。2017年ではトップだったデンマークは、ここ2年間は4位になっているものの、傾向としては「北欧+オランダ」が連続で上位にきている。非加盟国であるノルウェーはランキングには参加しておらず参考値となるが、スコアで見ればだいたいルクセンブルグや英国と同等程度で、3年連続で5位に入るレベルである。

図表1:2017~19年のDESIスコアとランキング
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出典:European Commission Digital Economy and Society Index 2019 - Country Reportingの各国資料より作成

  • 本論で注目したいのは、5つの指標である。それらを個別に見ると、総合ランキングで上位の国々が必ずしも全ての項目において上位になっているわけではない。図表2は、2019年のDESIにおける5つの指標の各スコアとランキングを示している。
  • 5つの指標について、最も高いスコアの国と最も低いスコアの国を比較すると、ブロードバンドの普及や価格、高速インターネットなどの指標から構成されている①Connectivityは高低差が小さい。一方で、差が開いたのは、企業によるビッグデータ解析やクラウド利用、オンライン取引などといった、ビジネスのデジタル化を表す④Integration of digital technologyと、デジタルスキルやICT分野の高度人材が豊かかどうか、そしてICT分野における女性スペシャリストの比率など、スキルの成熟度を見る②Human Capitalである。これらの2つの指標においては、最も高いスコアの国と最も低いスコアの国との間には、約50ポイントの差がみられる。

図表2:2019年のDESIにおける5つの指標
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出典:European Commission Digital Economy and Society Index 2019 - Country Reportingの各国資料より作成

  • 図表1で見た総合ランキングではトップ5に入っていなくとも、アイルランドやベルギーのようにビジネスのデジタル化が進んでいる国々や、ルクセンブルクのようにICT高度人材が豊富な国もあることがわかり、各国別の取り組みは参考になる。
  • ④に関して、例えばアイルランドでは、中小企業のECを奨励する施策や、DeeptechとFintechに力点を置いたスタートアップ企業への投資が進められており、企業が積極的にデジタル化へ向けた取り組みを展開できる(注3)。ベルギー企業では、ERPが進んでおり(注4)、また公的支援付きの産業主導型イニシアチブにより、企業がデジタルトランスフォーメーションを促進したり、シナジー効果を高めるためにその産業団体が企業へサポートしたりする点等が特徴的である(注5)。
  • ②に関しては、調査対象が16~74歳(項目によっては15歳~)になっているため、社会人のみならず若年者と高齢者のデジタルないしICTレベルも問われる。例えばルクセンブルグでは、政府主導で「Digital(4)Education」というデジタル教育戦略がとられており、「デジタル教育」と「教育のためのデジタル」という2本の柱のもと、小学生からデジタル能力を高めるプログラムが展開されている(注6)。

人的資本と企業のデジタル化が課題

  • 一般的に、エストニアの躍進や、伝統的に公的サービスのデジタル化を実現すべく努力を重ねてきたデンマークが注目されることが多いが、各指標の詳細を見ると、進展しているといわれている国々でも特にICT高度人材の育成や、ビジネスのデジタル化においては必ずしも一筋縄ではいかない。
  • エストニアでは、⑤公的サービスのデジタル化は2位になっており(2017~18年は1位)、②ヒューマン・キャピタルも上位にくるが、④ビジネスのデジタル化においては16位まで順位が下がり、特に中小企業の取り組みが課題となっている。中小企業に関していえば、一方でデンマークは成長プランともいえる「SMEs: Digital」の中で、中小企業のデジタル化を促進し、それを成長にもつなげようという取り組みを行っている(注7)。
  • 人的資本とビジネスのデジタル化は、企業が今後デジタルトランスフォーメーションを推し進めていくうえでも重要な項目であり、先進事例を参考に日本でも様々な取り組みが期待される。

注釈

  • (注1)
    DESIは欧州委員会のホームページで閲覧可能
    https://ec.europa.eu/digital-single-market/en/desiOpen a new window
  • (注2)
    ただし、2019年の報告書で用いられているデータは2017と2018年のもの。
  • (注3)
    DESI 2019, Country Report Ireland p.10-11
  • (注4)
    4a1 Electronic information sharingより。社員数10人以上の企業が対象。ただし金融機関は含まれていない。
  • (注5)
    DESI 2019, Country Report Belgium p.10
  • (注6)
    DESI 2019, Country Report Luxemburg p. 7
  • (注7)
    DESI 2019, Country Report Denmark p. 11
吉田倫子

本記事の執筆者

経済研究所
主任研究員

吉田 倫子(よしだ みちこ)

 

2001年富士通総研入社。日本経済研究センター、欧州委員会(ベルギー)税関税同盟総局付加価値税局研修生を経て、現在に至る。

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