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  4. 暴力・ハラスメント禁止の国際条約 ~批准するかどうかにかかわらず企業は誠意ある対応を~

社員の心理的側面から見た働き方改革―ハラスメントやコンプライアンス問題を指摘できる雰囲気づくりを―

暴力・ハラスメント禁止の国際条約

~批准するかどうかにかかわらず企業は誠意ある対応を~

発行日:2019年7月4日

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要旨

  • 国際労働機関(ILO)の年次総会において、職場でのハラスメントを全面的に禁止した「暴力・ハラスメント条約」が採択され、これが世界で初めての国際ルールとなることから、注目を集めている。
  • 日本政府は、まだ批准には慎重な姿勢であり明言を避けているが、批准しないという意思決定をした場合にももちろん理由が求められる。
  • しかし、「批准しないから関係ない」というものではなく、むしろハラスメントに関する社会運動や今回の国際条約などの様々な動きによって、社員一人ひとりの問題意識が高まってきているため、企業にとっては今後さらに誠意ある対応が求められる。

ルールの内容

  • ILOの第108回総会が6月10~21日にジュネーブで開催された。ILO総会は、加盟している187か国から代表者が集まり最高意思決定を行う場である。今回は最終日に職場でのハラスメントを全面的に禁止した「暴力・ハラスメント条約」が本会議で採択され、これが世界で初めての国際ルールとなることから、注目を集めている。
  • ILOが策定する国際労働基準には、条約(Convention)と勧告(Recommendation)があり、条約は批准すると決めたILO加盟国に拘束力を持つが、勧告は拘束力のない指針として位置付けられている。
  • 条約の中で、「暴力とハラスメント」は次のように定義されている。すなわち、「心身に対する危害あるいは性的・経済的に危害を与えることを目的とするか、そのような危害に帰する、あるいは帰する可能性が高い」行動様式及び行為またはその脅威であり(注1) 、ジェンダーに起因するものも含まれている。たった一回だけであろうと、繰り返して行われるものであろうと、回数は関係ない。
  • 対象となるのは、会社に所属して働いている人に限らない。職場には様々な働き方をしている人がいるが、雇用の契約形態にとらわれずあらゆる社員が対象となる。また、トレーニーやインターン、ボランティア、求人募集に応募してきた人なども含まれる。産業のセクターや居住地にも限定されず、さらに暴力とハラスメントが発生する場所についても、公的な空間であれ私的な空間であれ対象となり、例えば机について仕事をしている時だけではなく、研修中、休憩中、出張中、通勤中、また物理的空間のみならず、ICTを介した仮想空間でのコミュニケーションなども含まれる等、非常に広く定義されている。
  • 勧告のほうには、暴力とハラスメントを禁止する基本的方針や、適切な労使間交渉の機会を設けたり、未然に防ぐためのプログラム等を設置したりすることが奨励される旨が記載されている。そして、万が一、暴力やハラスメントなどが起こってしまった場合に適切な手段で保障を行うこと、その被害者が労働市場に再参入できるよう支援を行うことなども記載されている。
  • 最終的には、各国の国内法に照らし合わせて考えなければならないが、今の日本ではハラスメントに関する法律や制度などが手薄になっており、世界的にみて遅れている。5月末に、パワハラの相談窓口設置などを企業に義務づける改正労働施策総合推進法が成立したとはいえ、ハラスメントを直接禁止したり、制裁したりするルールが無い。

ハラスメントに関する社員の問題意識が高まる

  • 「何をもってハラスメントとみなすのか」「どのような行為がハラスメントに該当するのか」などは人によって感じ方が異なり、厳密に禁止行為を文章化することは難しい部分もある。その点は企業にとって非常に対応しづらいポイントであるとも言える。
  • しかし、ハラスメントに関する社会運動や今回の国際条約などの様々な動きによって、社員一人ひとりの問題意識が高まってきており、第三者への言いやすさも増してきている。そのため、インターネット上で自分と類似のケースを見つけやすくなり、「これもハラスメントなのでは?」と感じればまた自分もインターネットにも書き込みやすい。
  • 明確な制裁ルールがないことから、例えば「なんとなくパワハラが常態化している」という部署や企業も少なくない。企業にとっては、社内で暴力・ハラスメントに関する問題意識を高めたり、予防・解決策を考えたりする努力を継続的に行う等、一層誠意ある対応が求められる。

参考文献

注釈

吉田倫子

本記事の執筆者

経済研究所
主任研究員

吉田 倫子(よしだ みちこ)

 

2001年富士通総研入社。日本経済研究センター、欧州委員会(ベルギー)税関税同盟総局付加価値税局研修生を経て、現在に至る。

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