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  4. 社員の心理的側面から見た働き方改革(2)―海外から日本のブラック企業をみる―

社員の心理的側面から見た働き方改革(1)―ハラスメントやコンプライアンス問題を指摘できる雰囲気づくりを―

社員の心理的側面から見た働き方改革(2)

―海外から日本のブラック企業をみる―

発行日:2019年5月15日

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要旨

  • 日本の社会において広く議論されている「働き方改革」の問題は、ブラック企業と過労死を象徴として海外メディアでもよく扱われている。過労死はdeath by overwork、またはそのままkaroshiという単語になり、ブラック企業はblack companyとして、日本企業の中の悪しき慣習であると懸念されている。
  • 数年前までは、組織的または文化的なレンズからみた取り組みの充実を求めるものが目立っていた。例えば、単に長時間労働を規制するだけではなく、社内のメンタル・ヘルスケアを充実させたり、自由闊達な風土を大事にしたりすることで、改めて働き方を見直すことができるという指摘が多かった。
  • 最近の論調は、2019年4月に始まった働き方改革関連法案の施行を受け、スティーヴン・ヴォーゲル教授らのように、正規社員と非正規社員との間の格差が是正されたり、長時間労働が是正されたりすることによる生産性向上への効果に期待する声が出てきている一方で、依然としてダイバーシティへの取り組みの遅れが指摘されており、企業は大きな課題として受け止め、対策を急ぐべきである。

日本文化の一環としてのブラック企業

  • 2016年ごろから、海外のメディアは、2015年12月に新入社員の女性が自殺した電通を代表的な例として、長時間労働、上司からのプレッシャーやハラスメントなど、筆者が前号(注1) で述べたようないわゆる「ブラック企業要因」と「過労死」が、日本の企業文化の根本的な要素の一つであると強調するようになった。つまり、それらの現象を日本だけのもとして扱って、日本の文化や社会に基づいているものであるとする見方である。
  • 例えば、The Daily Beastでは、「日本国外の多くの人々は、日本人がなぜ仕事を辞めるより死ぬまで働くのか疑問を思うだろう。しかし、それほど簡単に済む話ではない。日本では「我慢」は美徳とみなされ、部下が上司より先に退職することは失礼と考えられる。」(注2) と述べ、根本的な文化が変わらない限り状況は変わらないことが指摘されている。
  • さらに、ファイナンシャル・タイムズでは、過労死について「日本の仕事文化の中には、優秀であるということよりも疲労しているということのほうが優良であるという考えが込められている。過労死は新しい現象ではない。」(注3)とし、働き過ぎが古くから日本企業にある根本的な問題であることが指摘されている。
  • このように、ブラック企業要因や過労死を、昔から日本社会に内在している文化的な特徴であるとして提示することが、英語メディアの典型的なアプローチである。しかし、実際には、ブラックな要因は全ての日本企業に当てはまる文化的特徴というものではない。

多様性とメンタルヘルス

  • 海外メディアは、2016~17年頃は、ブラック企業要因やその帰結としての過労死が、日本で働く限りは避けられないものであると指摘していたが、最近の論調では、企業文化、多様性やメンタルヘルスに関連づけて取り上げるものが目立つようになった。
  • その1つが、日本企業の「男性優位経営」の短所を指摘する記事である。日本では、上場企業における女性取締役の比率は、わずか4.1%(2018年)にとどまっており(注4)、人数という点から平等になっていない現状がある。
  • これは、世界の他の地域の動向と矛盾しているように見える。ファイナンシャル・タイムズではこれを問題視し、2012年に比べて労働人口では女性の数が200万人程度増加したが、その多くは契約社員やパートで、日本の女性社長がわずか3.7%であることもあわせて指摘した(注5)。
  • フィナンシャル・タイムズは、これは日本の働き方改革における女性差別の問題として取り上げている。例えば、政府の女性活躍推進の動きに対しては、「性的平等ではなく、女性の参加を歓迎するという意味においての「女性活用」である」(注6)と指摘している。つまり、本格的な性的平等がないと、限定された「活躍」しか実現できない。また、女性が家事と子育てを行い男性は行わない、という今までの“ジェンダー・モデル”を変えることも期待されている。より多くの幼稚園を建設することだけではなく、男性の育児休暇を奨励したり、働く女性が職場で直面する構造的または文化的な壁を取り除いたりすることが必要であると強調されている。すなわち、パワハラとセクハラに加えて、マタハラに取り組む必要もあることが示されている。
  • カリフォルニア大学バークレー校のスティーヴン・ヴォーゲル教授は、働き方改革における日本の取り組みを評価しつつも、「半面、労働市場ではっきり見られる男女格差の風潮は日本の弱みだ。グローバルに比較すると、日本の男性偏重ぶりは極端だ。日本企業が経営層や従業員の多様性拡大に取り組めばイノベーションも発展する」と述べている (注7)。
  • メンタル・ヘルスについては、例えば、2018年9月10日付の日経アジアレビュー(注8)では、労働時間の短縮とセットにして、それまでの長時間労働がもたらしたうつ病などの精神障害の改善に取り組まなければならないことが指摘されている。社員がこのような問題について専門家と相談でき、治療などを受けるための仕組みが重要であり、同時に、オープンかつ相互にサポートできる企業文化を醸成することも大事である。職場の心理的安全性を保ち、一人ひとりの社員が何で悩んでいるのかをみんなで気にかけたりする雰囲気や、ハラスメント行為やコンプライアンス違反の行為に気付いたときに、主張できる自信や問題を指摘して意見を言い合える自由闊達な風土をつくることが重要である。

まとめ

  • これまで見てきたような論調の変化は、ブラック企業要因によって起こる様々な組織的弊害が、根本的には多様性や柔軟性を持った働き方改革を軽視するような職場文化に根ざしているという理解からであると考えることができる。
  • 前述の通り、ブラック企業要因が日本の文化や習慣に基づいているという海外メディアの主張は不適切である。仮に根強い文化的な問題であるならば、日本企業が要因の改善に取り組むことができないとの意味が含まれている。しかし、現に日本の中にはブラックではない企業も多く存在しており、また、改善も見られている。この動きを止めることなく、さらに積極的に取り組んでいくことが日本企業に求められている。

注釈

ニック

本記事の執筆者

研究員

Nick Ogonek(ニック・オゴネック)

 

リバース・メンタリングやダイバーシティに関する組織的な取り組みに着目し、会社と社員の関係性、社員間の関係性などが社員の行動をどのように変えるのかについて研究している。

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