GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. ナレッジ >
  3. ニューズレター >
  4. 社員の心理的側面から見た働き方改革(1)―ハラスメントやコンプライアンス問題を指摘できる雰囲気づくりを―

社員の心理的側面から見た働き方改革―ハラスメントやコンプライアンス問題を指摘できる雰囲気づくりを―

社員の心理的側面から見た働き方改革(1)

―ハラスメントやコンプライアンス問題を指摘できる雰囲気づくりを―

発行日:2018年10月29日

newsletter_no18-013_1280x800

要旨

  • 過労死や過労自殺を防ぐための施策の土台となる「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が7月末に変更された。2015年に作られて以来、初めての変更である。
  • 新大綱には5つのポイントがあり、勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標の設定、重点的に取り組む対策、「職場におけるハラスメント」が包括的に位置づけられ、その予防・解決のための取り組みが記載されたこと等が挙げられる。
  • 厚生労働省の調査によれば、およそ3人に1人が過去3年間にパワーハラスメント(以下パワハラ)を受けたことがあると回答している。働き方改革の一環としてパワハラ防止に取り組む企業は多く出てきているが、帝国データバンクが9月14日に公表した調査(注1) では、実際に働き方改革に取り組んでいる企業は37.5%という結果になっており、企業にはさらなる努力が求められている。
  • 本稿では、富士通総研が2018年3月に実施した「経営に関するアンケート調査」の中で明らかにした、サービス残業やハラスメントなど、社員が仕事をする上で不安に感じる要因について紹介し、分析する。

過労死防止大綱における今回の変更ポイント

  • 過労死は、Karoshiとして2002年にOxford Dictionaryにも登録され、日本国内のみならず海外でも広く注目されている。「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、2015年に過労死や過労自殺を防ぎ、健康に働くことができるための施策の土台として作成された。働き方全般に関する様々な啓発事項が書かれている。
  • 新大綱には5つのポイントがある。

(1)勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標の設定

終業から次の始業まで一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」を導入している企業の割合は、わずか1.4%にとどまっている。2020年までに10%以上とする数値目標が初めて設定された。

(2) 国が重点的に取り組む対策

労働行政機関等における対策が追加され、(a)長時間労働の削減に向けた取組の徹底、(b)過重労働による健康障害の防止対策、(c)メンタルヘルス対策・ハラスメント対策が明記された。

(3) 特別調査対象の業種

自動車運転従事者、教職員、情報通信産業、外食産業、医療を引き続き対象とするとともに、建設業、メディア業界が追加された。

(4) 若年・高齢・障がい者労働者

若年労働者、高年齢労働者、障害者である労働者等への取り組みについて新たに記載された。

(5) 職場におけるハラスメント

「職場におけるハラスメント」が包括的に位置づけられた。職場のパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントなどが明記され、その予防・解決のための取り組みが記載された。

  • 大綱は、もともと約3年を目途に、対策の推進状況等を踏まえて見直すこととなっており、今後も制度の浸透や進捗状況によって見直しが行われると考えられる。
  • 働き方改革が熱心に行われるようになった背景には、長時間労働、過労による自殺や、労働者を長時間労働させる企業やパワーハラスメントなどで労働者を精神的に追い込む企業など、いわゆる「ブラック企業」を巡る課題に対する一般の人の意識が高まったことが挙げられる。
  • しかしながら、長時間労働についてはICTの利用によって適切な労働時間管理を行う企業が増えているものの、ハラスメントについては課題が多い。厚生労働省が2017年4月に発表した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」(2016年実施)(注2) によれば、およそ3人に1人が過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答している。働き方改革の一環としてパワハラ防止に取り組む企業は多く出てきているが、帝国データバンクが9月14日に公表した調査(注3) では、実際に働き方改革に取り組んでいる企業は37.5%という結果になっており、企業にはさらなる努力が求められている。

ブラック企業に関するアンケート調査のデータ分析

  • 富士通総研では2018年3月に実施した「経営に関するアンケート調査」(注4) の中で、社員が「ブラックだ」と感じる要因16項目について回答者に聞いた。回答者のレスポンスは「非常にそう思う・どちらかといえばそう思う・どちらともいえない・どちらかといえばそう思わない・まったくそう思わない」の5段階である。ここでは、「非常にそう思う」と「どちらかといえばそう思う」の回答のみを合算し、その結果を図表1に表す。

図表1:ブラック企業に関する回答のパーセンテージ
18-13-01

(出所:富士通総研作成)

  • 前述の厚労省の調査と同様に、「パワハラを受けたことがある」という項目において、3人に1人が「非常にそう思う・そう思う」と回答している。また、周囲で「パワハラが行われているのを見た・聞いたことがある」という項目においては、5分の2の回答者が「非常にそう思う・そう思う」と回答していることがわかった。
  • パワハラ同様、セクハラについても、「セクハラを受けたことがある」という回答者は少ないが(10.1%)、「セクハラが行われているのを見た・聞いたことがある」(24.9%)という回答は4人に1人となっている。
  • 「残業時間を実際よりも少なく申告している」(26.0%)、「サービス残業をせざるを得ない雰囲気がある」(25.1%)は比較的に低い数字になっており、残業時間が適切に管理され、不正に低く報告したりサービス残業をさせられたりするようなプレッシャーも少なくなっているようだ。「残業代が適切に支払われている」(55.3%)は、他の項目に比べて高くなっているが、約半数の回答者は残業代が適切に支払われておらず、働き方改革のさらなる努力が求められる。
  • 昇進昇格や経営層・管理職層に関する3つの質問項目、すなわち「尊敬できない人が出世している」(49.9%)、「自分はもっと評価されてもよい」(36.0%)、「経営層や管理職に魅力がある人がいない」(38.0%)は比較的に肯定的な回答が多い。
  • 次いで多いのは「若い社員の退社が目立つ」(31.5%)、「若い社員がつらそうにしている」(30.5%)という若手社員についての項目、そして「不正や問題が発生した時に、それを指摘しにくい職場風土だと感じる」(26.3%)、「不正や、コンプライアンスの観点から問題だと思われる行為が横行している」(18.5%)という不正・コンプライアンスに関する項目となった。「ブラック企業・職場で働いていると感じる」という項目に対しては、約20%が「非常にそう思う・そう思う」と回答している。
  • 上記の質問項目間の類似性を特定するため、クラスター分析を行った(注5) 。その結果を図表2の樹状図(デンドログラム)に示す。クラスター分析を通じて、16項目がどのように分類されるのかを把握する。樹状の枝が左端から伸びて、短い距離ですぐに結びついているものほど類似性が高い。一方、長い枝となって右端まで伸びてから、他の枝と合流しているものは、連結が困難で、類似性が低い。ここでは6つのカテゴリに分類を行った。
  • その結果、以下の通りとなった。

(1)第1クラスター:残業に関する問題

「残業時間を実際よりも少なく申告している」「サービス残業をせざるを得ない雰囲気がある」

(2)第2クラスター:人生設計に関する問題

「若い社員の退社が目立つ」「若い社員がつらそうにしている」「今の職場・仕事では人生設計を描けない」

(3)第3クラスター:不正・コンプライアンス違反に関する問題

「不正や、コンプライアンスの観点から問題だと思われる行為が横行している」「ブラック企業・職場で働いていると感じる」「不正や問題が発生した時に、それを指摘しにくい職場風土だと感じる」

(4)第4クラスター:人事に関する問題

「経営層や管理職に魅力がある人がいない」「尊敬できない人が出世している」「自分はもっと評価されてもよい」

(5)第5クラスター:パワハラに関する問題

「パワハラを受けたことがある」「パワハラが行われているのを見た・聞いたことがある」

(6)第6クラスター:セクハラに関する問題(注6

「セクハラを受けたことがある」「セクハラが行われているのを見た・聞いたことがある」

図表2:ブラック企業に関するクラスター分析
18-13-02


(出所:富士通総研作成)

ハラスメントやコンプライアンス問題を指摘できる雰囲気づくりの必要性

  • 不正な行為、またはコンプライアンス違反の行為に関する項目が、ブラック企業と類似性が高いことが分かった。さらに、クラスター分析が示すように、分類(2)と(3)も類似性がある。
  • 企業が取り組んでいる働き方改革では、主に残業時間規制や効率化が主になっているが、社員にとっては、たとえ自分自身が関与していなくとも、不正などが横行している職場や、コンプライアンスの観点から問題となるような行為が行われている職場の文化や雰囲気はストレスにつながり、心理的な悪影響を与える可能性もある。
  • 問題となるような行為を指摘できるような職場風土があれば、パワハラやセクハラなども指摘しやすく、未然に防ぐことにもつながる。単に相談窓口を設けるだけではなく、社員が気づいた問題を指摘できる雰囲気づくりが求められる。
  • 引き続き、この観点から、海外メディアがブラック企業の台頭と日本の組織文化をどのように捉えているかについて、本研究の続編として次のニューズレターで述べたい。

注釈

  • (注1)
    特別企画「働き方改革に対する企業の意識調査」帝国データバンク、2018年9月
    https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p180904.pdfOpen a new window
  • (注2)
    「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」厚生労働省、2017年4月発表(調査実施は2016年)
  • (注3)
    特別企画「働き方改革に対する企業の意識調査」帝国データバンク、2018年9月
    https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p180904.pdfOpen a new window
  • (注4)
    従業員数5,000人以上の企業に勤める会社員を対象に実施し、6145人の回答を得た。
  • (注5)
    クラスター分析は、類似性を測るための多変量解析の手法であり、質問項目の階層構造を把握するのに適している。本論では、一般的に「ブラック」と感じる16項目の構造がどのようになっているのかを把握するためにこの手法を用いた。
  • (注6)
    厳密には、セクハラを実際に受けたことがあることと、それを伝聞したという項目は、樹状図上で異なっている。
ニック

本記事の執筆者

研究員

Nick Ogonek(ニック・オゴネック)

 

リバース・メンタリングやダイバーシティに関する組織的な取り組みに着目し、会社と社員の関係性、社員間の関係性などが社員の行動をどのように変えるのかについて研究している。

お客様総合窓口

入力フォーム

当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。