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注目される地域レベルのSDGsの取り組み

注目される地域レベルのSDGsの取り組み

発行日:2018年10月5日

no18-011

要旨

  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた地域の役割が重視されている。日本政府も、地方創生とSDGsを関連付けた地域支援策を推進しており、2018年6月には(「自治体SDGsモデル事業」10都市を含む)29の「SDGs未来都市」を選定した。
  • SDGsの推進体制の整備やSDGsを反映したビジョン・計画の策定など総合的・部局横断的な取り組みに着手する自治体や、環境や協同・男女参画、国際交流などの部局レベルでSDGsと関連付けた取り組みを行う自治体が現れている。さらにSDGsを媒介として、自治体と企業、大学、NPOなどとの連携・協働の動きも始まっている。
  • 自治体のSDGsの取り組みを地域の価値向上につなげるためには、地域の特性・実情に合わせた「SDGsのローカル化」を考慮しながら、社会課題の共通言語としてのSDGsの特性を活かして域内外の連携を深め、創意工夫ある取り組みを進めることが期待される。

政府の自治体SDGs支援

  • 国際社会における2030年目標のSDGsの達成に向けて、地域の役割が重視されている。国連によれば、SDGsが対象とする教育、健康、飲料水、衛生、廃棄物管理、交通、住宅などの各種インフラ投資やサービスへの地方自治体の関与は大きく、自治体の適切な関与がなければ、SDGsの169ターゲットの65%は達成困難とのことである。
  • 日本政府も地域のSDGsの取り組みの支援に積極的である。政府は、SDGs達成に取り組む都道府県・市区町村の割合を2020年度に30%とする目標を設定している。2018年6月に発表された「拡大版SDGsアクションプラン2018」では、日本の「SDGsモデル」を特色付ける3つの柱の一つに、自治体によるSDGsの推進を掲げている。
  • 政府の施策の特徴は、地方創生とSDGsの関連付けである。2018年6月発表の「まち・ひと・しごと創生基本方針2018」においても、地方創生の深化のために、SDGs達成のための取り組みを推進し、SDGsの主流化を図ることが明記されている。
  • 自治体支援のための枠組みも急速に整備されている。2018年1月に「自治体SDGs推進関係省庁タスクフォース」が設置されたのに続いて、同年8月には「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」が設置された。
  • 「地方創生に向けた自治体SDGs推進事業」は、成功事例の普及展開を図る施策と位置付けられている。2018年度から20年度までの3年間で毎年約30都市を「SDGs未来都市」として選定する予定で、18年度は29の「SDGs未来都市」が選定された。
  • SDGs未来都市のうち先導的な取り組みを行う事業に対して上限4千万円を補助する「自治体SDGsモデル事業」も創設された。2018年度は、神奈川県、ニセコ町、下川町、横浜市、鎌倉市、富山市、真庭市、北九州市、壱岐市、小国町の10都市が選定された。

SDGsの取り組みに着手する自治体

  • 政府の積極的な支援もあって、SDGsの取り組みに着手する自治体が現れている。2018年8月20日時点の公開情報を富士通総研が調べたところ、142自治体(13道府県、14政令指定都市、115市区町村)がSDGsと関連づけた取り組みを行っていた。都道府県・市区町村数に占める割合は約8%である。
  • このうち64自治体(6道府県、9政令指定都市、49市区町村)は、総合的・部局横断的な取り組みであった。例えば、北海道ではSDGs推進本部と推進懇談会を設置して「北海道SDGs推進ビジョン」を検討するとともに、「北海道SDGs推進ネットワーク」を設立し、道民や企業・団体、NPO、行政機関等の連携・協働を図っている。
  • 自治体の政策とSDGsの総合的な関連付けや、SDGsを反映したビジョンや総合計画の策定などに着手する自治体も現れている。例えば、京都市では「京プラン実施計画第2ステージ」の重点戦略とSDGsの目標との関連付けを行っており、尼崎市では市の政策とSDGsを関連付けた「尼崎版SDGs」を公開している。
  • 部局レベルでSDGsと関連付けた取り組みを行う自治体も多い(78自治体)。環境分野の取り組みが最も多く、環境基本計画のほか、環境教育(ESD)や食品ロス対策などでもSDGsが参照・言及されることがある。さらに、協同・男女参画分野や国際交流、消費生活、水道事業、都市計画の分野でもSDGsと関連付けした取り組みの例が見られる。
  • 地域連携も始まっている。2017年12月には、関西の企業、市民社会・NPO・NGO、大学・研究機関、自治体・政府機関が参加する「関西SDGsプラットフォーム」が設立された。関東経産局は、18年5月に長野県との連携による「地域SDGsコンソーシアム」を立ち上げ、他地域への横展開を企図している。
  • SDGsを媒介として、自治体と企業、大学、NPOなどとの連携・協働の動きも始まっている。例えば、北海道八雲町は、2018年3月に上智学院とSDGs実現の寄与に関する連携協定を締結している。美祢市が同年6月に法務省、小学館プロダクション、ヤフーと締結した再犯防止・地方創生連携協力事業も、SDGsと関連付けて説明されている。

いかにSDGsを地域の取り組みに活用するか

  • SDGsの達成は日本政府に課せられたものであり、個々の自治体の義務ではない。自治体にとって最も重要なことは、SDGsを地域レベルの取り組みにいかに活用できるかである。極論すれば、「地方創生」に直結しなくてもよいし、政府のSDGs達成に貢献する必要もないだろう。
  • 自治体にとってSDGs活用の魅力は、多様な社会課題のほとんどを網羅した包括的な共通言語としての使い勝手である。地域のビジョンや中長期計画を検討する際にも、個別の施策を検討する際にも、SDGsの169ターゲットを参照することで、様々な取り組みへの示唆を得ることができるだろうし、域内外の連携を深める際にも有効であろう。
  • 実際にSDGsを活用して地域の課題解決に寄与する取り組みを進めるためには、地域の特性・実情に合わせてSDGsの目標や指標等を設定する「SDGsのローカル化(localizing SDGs)」が望まれる。SDGsのローカル化は国際的に重視されており、OECDなどでは地域レベル指標の標準化を目指す取り組みも始まっている。
  • 自治体のSDGsの取り組みは緒についたばかりである。SDGsをいかに上手に活用して地域の価値向上につなげられるか、自治体の創意工夫が試されている。地域レベルでSDGsを活用した様々な取り組みが進むことで、結果的に2030年のSDGs達成につながることも期待できる。政府には長期的な視点で地域の取り組みを促す施策が望まれる。

図表 自治体のSDGs取り組み状況
18-11
出所:公開情報(2018年8月20日現在)を基に富士通総研作成
注:( )内の数値は比率

生田 孝史

本記事の執筆者

経済研究所 主席研究員

生田 孝史(いくた たかふみ)

専門領域:環境・エネルギー政策、環境・CSR関連事業・経営戦略、社会イノベーション、自然資源活用型地域戦略など、企業や地域の持続可能性をテーマとした研究活動

1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社

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