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知創の杜2019年Vol.1 発刊にあたり

知創の杜2019年
Vol.1 発刊にあたり

 

kagawashingo

いつも知創の杜をお読みいただき、心より御礼を申し上げます。

知創の杜は、2009年に発刊して以来、発刊10年目を迎えることができました。2014年からは冊子版も発行開始し、今号で通巻39号目になります。ひとえに皆様に支えていただいた結果であり、これからも旬なテーマに対する富士通総研のメッセージをお届けしていく所存です。本号では2019年の経済展望とともに、データ利活用のテーマを取り上げました。

私たちのビジネスや生活、社会を取り巻く環境は、ダイナミックに変化しており、VUCA(*)時代とも言われています。その大きな要因として、テクノロジーの進化を忘れるわけにはいきません。それは世界的な潮流であり、IoT、BigData、AIを筆頭にデジタルテクノロジーは日々進化を重ね、社会のデジタルイノベーションが大きなテーマになっています。FinTech、AgriTech、EdTech,など、産業と技術の融合を図る変革を表す造語が生まれ、必要な取り組みとして定着しています。

その一方で、世の中がどのように変わるのか、人は何を価値として評価しているのか、分かり難くなっています。その代表例は、Brexitが賛成多数で可決され、米朝首脳会談が開催され、潜在意識を解き放つ結果になるトランプ大統領のアンリーシュ発言が話題になったことなどに表れていると思います。このような不確実な時代をもたらした1つの要因は、スマートフォンとソーシャルメディアが爆発的に普及し、個人の発言力が強化されたことです。これはデジタルテクノロジーの進化により利便性が高まった半面、個からの新たな要求や価値形成により商品やサービスが評価され、刻々と変化を遂げるため、企業側がそれに迅速かつ柔軟に対応することが求められるようになったということです。

人の価値評価の根底には個人の絶えず移り変わる「気持ち(エモーション)」が関係しています。社会の活気を示す景気の「気」は気持ちの「気」と言われていますし、把握し難い深層部分の理解が様々な社会課題を解決するための重要なテーマになってきていると言えます。人の気持ちを形成する決め手となるのが、スマートフォンとソーシャルメディアなどから生成されるデータです。そのデータをいち早く集め、解析し、気持ちを多面的に理解すること、すなわち「データ利活用」が重要なのです。

いち早くデータ利活用に着目してきた代表的企業がGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)と呼ばれるメガプラットフォーマーです。世界のトップ10に入るその時価総額は4社共に50兆円を超え、日本企業のトップであるトヨタ自動車の倍以上です。その影響力の大きいメガプラットフォーマーの提供サービスでは、人の価値評価の深層部分である「気持ち」を定量化するために、一部では「いいね」ボタンなどが使われています。しかしながらボタンを悪用するケースも散見され、安心して利便性を享受するためにはデータの信頼性担保が克服すべき社会的課題になっています。

富士通グループは「人を幸せにする会社」を標榜しています。これは非常に重要なテーマであり、企業の存続価値を最大限に言い表した言葉です。例えば、アラブ首長国連邦(UAE)では2016年に「幸福担当大臣」を新設し、ドバイは都市開発プロジェクト「スマート・ドバイ」の中で、世界一幸福な都市を目指すことを掲げ、世界で初めて幸福度メーターの採用を行いました。政府機関やスーパーマーケットなどに幸福度メーターが設置され、3種類の顔マークを押すことで利用者満足度を調査しているようです。最近では、シンガポールなどでイミグレーション後に同じようなメーターが設置されています。この取り組みでは、IoTを駆使したメーターから集まるデータを分析して、AIで真の価値を発見し、利用者の満足度を高めることに貢献しています。

データ利活用というテーマに対しては、「何を今さら」と言われる方も多いかもしれません。情報が第4の経営資源と言われて久しいからです。今、富士通グループが取り組んでいるのは、「人の気持ちの深層部分」を対象とした、利用者の満足度向上という究極のサービスを実現するためのチャレンジです。つまり、真のエモーショナルサービスを確立することを目指しているのです。例えば、リコメンドサービス等で、個人に最適化された情報が過度に表示される場合などは不快感を与えてしまいます。利用者は適度に「心地良い」エモーショナルサービスを待ち望んでいるのです。

私たちは「人を幸せにする会社」となるべく、データ利活用の分野においても、社会やお客様の未来づくりに貢献していく所存です。

これからも知創の杜をご愛顧いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。



(*) Volatility:変動性, Uncertainty:不確実性, Complexity:複雑性, Ambiguity:曖昧性

株式会社富士通総研 代表取締役社長
香川 進吾

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