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2020年のFintech動向予測

―銀行が“見えなくなる時代”を迎えて求められる変革―

Appleによるクレジットカードの提供、Facebookによるデジタル通貨Libra構想などGAFAと呼ばれるデジタルプラットフォーマーによる金融領域への進出が相次いだ2019年。こうしたデジタルプラットフォーマーによる金融サービス提供の背景には、社会や経済構造の変化が生じていることも見逃せない。このような環境下、金融機関はどのようなサービス提供を手掛けていくべきであろうか?
2020年を迎えて、今後の金融サービス、Fintechの動向を予測したい。

2020年2月19日

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グローバル・国内双方で異業種企業の参入が相次いだ2019年

2020年を迎えて早くも1か月以上が過ぎましたが、本年はFintech分野において、どのような動きが予想されるのでしょうか? 国内ではいよいよオリンピックの開幕を7月に控え、世界各国から多くの人々が日本を訪れることが予想されます。また、昨年10月から始まった消費増税とそれに伴う大規模なキャッシュレス・ポイント還元事業は本年もマイナンバーカードを用いて継続されることが決定しています。このように2019年から始まったキャッシュレス化推進の動きは、2020年も日本国内で継続していくものと思われます。2019年の国内Fintech動向は、まさにキャッシュレスを中心として進展した感があり、多くの異業種企業がキャッシュレス決済サービスをはじめとした金融サービス提供を積極的に推進しました。加えて、金融サービス提供にあたり、メガバンクと地域金融機関、金融機関と異業種企業など、これまで以上に業容や業態の垣根を超えた連携が進んだ1年でもありました。

同様の動きはグローバルにおいても見られます。特に米国では、GAFAと大手金融機関の提携が進んだ年でもありました。Appleが米大手投資銀行Goldman Sachsと提携してクレジットカードであるApple Cardを発行したほか、GoogleがCitibankと提携して当座預金口座の提供を検討していると報道されました。こうした異業種企業と金融機関との提携は、今後ともグローバルで進展していくと予想されますが、この際、キープレーヤーとなるのはプラットフォーマーと呼ばれる自社サービスを主軸に多くの顧客基盤を抱えるプレーヤーです。これらプラットフォーマーは、自社サービスの利便性を高め、多くの利用者を惹きつけることを目的として金融サービスなど周辺サービスの提供に注力しています。GAFAをはじめ、中国のAlibabaやTencent、東南アジアのGrabやGojekなどは金融サービスに注力するプラットフォーマーであり、日本においてもLINEや楽天、Yahoo! Japan擁するZホールディングスなどが該当します。

以下では、こうしたプラットフォーマーと金融機関との関係性に焦点を絞って今後の動向予測を行っていきたいと思います。Fintechを取り巻く環境は変化が激しく、関連するプレーヤーも多岐にわたります。中でもプラットフォーマーが金融業界に及ぼす影響は他のプレーヤーと比較しても特に大きなものであることがわかります。

大手金融機関との提携が進むGAFAの金融サービス拡大

前述のように2019年は、GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)と呼ばれるデジタルプラットフォーマーが積極的に金融サービスへの関与を深めた年でした。Apple Card(2019年6月)、Googleによる当座預金提供(2020年予定)など、いずれもGAFAが大手金融機関と提携して、金融サービスの提供を推進しています。これらに加え、AmazonもまたCredit Builderと呼ばれる独自のクレジットカードを米Synchrony Bankと提携して発行しています(2019年4月)。同サービスは、クレジットスコアが低く、通常のクレジットカードが利用できない層に対してAmazon.comでの利用限定での独自クレジットカード発行を行うものです。その他には、Facebookが中心となって2020年中に発行予定とされたデジタル通貨Libraなどが挙げられます。

このように、2019年にGAFAが提供、もしくは提供予定の金融サービスの多くは、そのバックエンドにおいて大手金融機関と提携したものとなっています。背景には、GAFAのような巨大プラットフォーマーに対しては、そのサービス提供にあたり社会からの反発が予想され、それを受けて政府もまた厳格な姿勢で対応していることが挙げられます。例えば、FacebookのLibra構想は発表当初から多くの反発を呼んでいます。米国議会で開催された公聴会では多数の反対意見が寄せられ、Libra側としては当初の発行予定を延期したとも伝えられます。また、VisaやMastercard、そしてVodafoneといった当初参加予定であった有力企業も同構想から離脱しています。GAFAが大手金融機関と提携してサービスを提供する背景には、こうした社会からの反発も影響していると考えられます。大手金融機関との提携により、サービス提供にあたっての信頼性を担保できるほか、サービス提供にあたって必要となるインフラやライセンスについては金融機関のものを活用することができます。

今後とも、GAFAをはじめとするプラットフォーマーと大手金融機関による提携はさらに促進されるものと考えます。GAFAと大手金融機関との提携関係には、一部変化の兆しも見えつつあります。2020年1月、スペインの大手金融機関BBVAはAmazonのプラットフォーム上で自社の金融商品を販売することを検討していると発表しました。BBVAではすでに自社の金融商品のうち60%がデジタル上で販売されており、Amazonのプラットフォームを活用することで、その比率はさらに高まるとしています。また、米大手投資銀行Goldman SachsもAmazonのマーケットプレイス事業者向けにローンを提供する検討に入ったと報道されています。

いずれもAmazonが有する巨大な顧客基盤を対象に自行の金融サービスの展開を目指すものであり、これまでのようにGAFAが提供意向のある金融サービスについて金融機関がそのバックエンドを担うのではなく、金融機関側がGAFAの持つプラットフォームの有効性に目をつけ、積極的に提携を持ち掛けている状態です。一方、Amazonを利用する一般のユーザー、もしくはマーケットプレイス事業者からすれば、そのサービス利用にあたり金融機関のブランドを意識する必要がなく、単にAmazonから金融サービスが購入できる、もしくは提供される状態にあります。つまり、サービス提供元である金融機関が利用者から“見えない”事態に陥る可能性があります。

独自に金融サービス拡大を図る東南アジアの“Super App”事業者

このように米国を中心にGAFAによる金融サービスへの積極的な参入が目立った2019年ですが、東南アジアのプラットフォーマーに目を向けると、自社で金融サービスのすべてをカバーしようとする動きが目立ちます。GrabやGojekといった東南アジアのデジタルプラットフォーマーは、自社が提供するアプリにおいて生活に関わるほぼすべてのサービスを提供していることが特徴的であり、こうした提供形態からしばしば”Super App”と表現されています。例えば、Grabの場合、同社の本業はライドシェアサービスですが、アプリのトップ画面に表示されているのは同社の決済サービスであるGrab Payの機能です。このほかにも旅行サービスやECサイトなど様々なサービスがGrabのアプリ上からアクセスでき、まさにSuper Appとしての利便性の高さを示しています。

こうしたSuper Appを展開する東南アジアのデジタルプラットフォーマーは、今後、各事業者が独自に金融機能を強化していくものとみられています。この際、キーワードとなるのがデジタルバンキングライセンスと呼ばれる東南アジア諸国において推進されている異業種向け金融ライセンスの存在です。例えば、シンガポールの通貨監督庁が2019年に発表したデジタルバンキングライセンスには、2019年12月31日の申し込み期限までに21の異業種企業や団体が応募したとされています。中には前述のGrab(シンガポールの通信企業SingTelとの合弁)やAnt Financialといったデジタルプラットフォーマーも含まれています。

同国のデジタルバンキングライセンスにおいて特徴的な点は、その審査要件にデジタルテクノロジーを活用することが明記されている点であり、この要件はすでに多くの顧客に対してデジタルサービスを提供している既存プラットフォーマーに有利に働くでしょう。シンガポールのデジタルバンキングライセンスは、今後、申請企業に対する審査が行われ、2020年夏頃に5社に対して第一弾のライセンスが交付される予定となっています。これを受け、Grabなどのデジタルプラットフォーマーはさらなる金融サービスの拡充を図ることが予想され、既存の金融機関にとってますます脅威となることでしょう。

このように、東南アジアではSuper Appを手掛ける事業者が多くの金融サービスを独自に提供する体制が整いつつあります。例えば、シンガポールにおいてはデジタル化推進に積極的な金融機関としてDBSなどの金融機関がありますが、これら金融機関においてもこうしたSuper App事業者に対抗することを目的に自ら異業種サービスとの融合を積極的に推進しています。DBSは、2018年のアニュアルレポートにおいて、“We're making banking invisible”と謳うなど、自らが金融機関としての存在感を“見えなく”しているのです。

BaaSの進展が金融機関の存在を“見えなく”する?

2019年は、プラットフォーマーによる金融事業への進出が改めて脚光を浴びたわけですが、地域によってその状況は大きく異なることがわかります。米国でのGAFAによる金融サービスの提供では、金融機関との提携が大きな役割を果たした一方、東南アジアの新興系プラットフォーマーは、自らライセンスを取得して金融サービスに進出する割合が大きくなっています。

前者の場合、金融機関がGAFAによる金融サービス提供時のバックエンドを担うもので、これは、BaaS(Banking as a Service)と呼ばれる新たなビジネスモデルの一例です。金融機関においては、これまでの垂直統合型のビジネスモデルから脱却し、自行のサービス維持のために活用していたバックエンドの機能を外部に提供することで新たな収益源へと転換することができます。一定の規模を有し、バックエンドの生産性が高い金融機関にとって、BaaSは新たな収益源を獲得するうえで有効な選択肢として機能するでしょう。しかし、顧客との関係構築に長けたプラットフォーマーがそのフロントサービスを担う場合、バックエンドを担う金融機関の存在は利用者から“見えなく”なります。

一方、規模が小さく、市場が限定される金融機関にとっては、バックエンドを他行から採用することで、そのリソースをフロントエンドでの顧客との関係性構築に集中することが可能となります。また、従来どおり、フロントエンドからバックエンドまでフルラインでのサービス提供を目指す金融機関も依然として存続すると考えます。こうしたフロントエンド特化型やフルライン型の金融機関にとっては、今後、グローバルではGAFAなどのプラットフォーマーが、国内においてもLINEやPayPayを有するZホールディングス、楽天などが競合相手となります。これら競合との顧客獲得競争において、自社としての存在感を発揮しない限り、顧客から“見えなく”なってしまう可能性があります。

プラットフォーマーと競合する中、顧客から“見える”金融機関となるためには、特定の領域に焦点を当て、そのセグメントに特化したサービスを提供して収益化を図ることが求められるのではないでしょうか。この際、金融機関自身が主体的に社会のニーズや課題を汲み取り、そこから派生する金融ニーズに対応した商品・サービスを展開することが必要であると考えます。

特定の社会ニーズにフォーカスすることで顧客から“見える”銀行へ

金融機関が率先して対処すべき領域として、デジタル化による新たな経済活動を担う人々への支援が挙げられます。例えば、サービスの利用者と提供者が直接つながるギグエコノミーと呼ばれる新たな経済活動は、現在急速な広がりを見せており、人々の生活の仕方、働き方を大きく変えつつあります。米国では、今後10年余りでギグワーカーと呼ばれる非正規の就業者数が正規雇用の就業者数を逆転すると言われています。しかしながら、こうした新たな経済活動に参加する人々へ向けた金融サービスの提供は未だに不十分な状態です。

Fintechスタートアップの中には、ギグワーカー向けサービスの提供に特化した企業も現れつつあります。こうした動きに追随し、金融機関においてもこれらの階層を対象としたサービスの開発が進みつつあります。例えば、米PNC Bankはindiと呼ばれるギグワーカー向け金融サービスを開発しており、通常のPNC Bankによるサービスとは別のラインで提供しようとしています。JPMorgan Chaseもまた、ギグエコノミー参加者を対象としたバーチャルアカウントの開発に乗り出しています。いずれのケースにおいても、デジタルサービスとして通常のサービスとは別ラインで提供されていることが特徴的です。“デジタル化”という言葉がしきりに喧伝される中、金融機関において求められているのはこうした社会的な課題・ニーズに対して、テクノロジーを活用することで最適なソリューションを提供していくことであると言えます。

日本国内においても、拡大が予想されるインバウンドもしくは在留外国人に向けた金融サービスの提供、さらには地方部においてデジタル化の潮流に取り残されつつある取引先の支援等、金融機関が取り組むべき領域が多数存在しています。2019年9月には、高島全銀協会長が講演において、Fintechが「社会的な課題の解決に寄与」することの重要性について言及しています。2020年は、社会課題解決に向けた本邦金融機関の取り組みに、より一層注目が集まることが予想されます。

Fintechが登場した背景には、2000年代後半に発生したグローバルでの金融危機に対して既存の大手金融機関では対処できず、若年層を中心に多くの人々が既存の金融サービスから排除されたことが影響しています。こうした人々に対して、低コストで利便性の高いサービスをスタートアップが中心となって提供したことがFintechの始まりです。つまり、当時の社会課題をテクノロジーで解決しようとしたことが起点になったと言えます。翻って現在もまた、環境問題や経済的格差の拡大など解決すべき社会課題が山積し、新たな金融ニーズが発生しています。金融機関においては、これら社会課題と向き合い、テクノロジーをうまく活用した新たな金融サービスの提供により、多くの人々に対して“見える”存在へと変化していくことが求められているのかもしれません。

松原義明

本記事の執筆者

金融グループ
チーフシニアコンサルタント

松原 義明(まつばら よしあき)

 

2007年富士通総研入社。入社より一貫して金融業界向けのコンサルティング、調査業務に従事。
現在は海外金融機関における先進サービスに関する調査業務、国内金融機関におけるソーシャルメディア、スマートデバイス活用に関するコンサルティングを実施。
2016年4月 富士通研究所アメリカにてFintechならびに金融サービスの最新動向に関する調査活動に従事。2017年4月帰任。

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