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2019年のFintech動向予測 その1


―国内におけるFintech動向―

大手IT企業によるモバイル決済アプリの提供や、金融機関による情報銀行ビジネスへの参入など、金融機関/異業種企業双方がその垣根を超えてFintechサービスの提供が活発化した2018年。一方、2019年から2020年にかけては、改元や消費税増税など様々なビッグイベントが控えている。このような中、2019年はFintechにおいてどのような動向が予測されるのであろうか?
 今回は国内・海外と2回に分けて2019年のFintech動向を予測したい。

2019年2月20日

ideatank2019-2-1

2019年を迎えて早くも1か月以上が過ぎましたが、本年はFintech分野においてどのような動きが予想されるのでしょうか? 本年5月には改元が予定され、さらに10月には消費税の引き上げが予定されるなど、日本国内においては2019年から2020年にかけて様々なイベントが控えています。改元に伴うシステム対応、消費税引き上げに伴う軽減税率への対応、そして訪日外国人の増加によるキャッシュレス決済への対応など、これらのイベントに合わせ、金融、そしてFintech分野も様々な影響を受けることとなります。翻って2018年は、日本国内においてキャッシュレス化に向けた取り組みが急速に進展した1年でした。こうした動きをけん引したのは金融機関ではなく、PayPayを提供するソフトバンク/ヤフー、楽天Payを提供する楽天、そしてLINE Payを提供するLINEといった異業種のプラットフォーマーであった点が大きな特徴です。一方、海外においては、IoTを活用した融資サービス、量子コンピュータの資産運用分野への活用など金融機関における先端技術活用が進んだ1年でもありました。筆者は毎年、年初にその年のFintech動向に関する予測記事を執筆しております。本年もこれに倣い2019年の国内外のFintechに関する動向予測を2回に分けて掲載したいと思います。1回目は国内のFintech動向に関する予測記事です。

国内動向(1) -海外有力Fintechサービスの進出による国内金融業界の変動-

2019年以降、日本に海外の有力なFintechサービスが続々と進出してくることが予想されます。これらのFintechサービスはすでに複数の国々で多数のユーザーを獲得するなどの実績があり、こうした成功モデルをもとに日本へ本格進出を果たすこととなります。

2019年中に日本でのサービス提供を検討している有力Fintech企業としては、英国の有力FintechサービスであるRevolutが挙げられます。Revolutは、多通貨決済可能なプリペイドカードを主力サービスとし、グローバルでの個人間送金や仮想通貨取引機能を提供するなど、通常の金融機関とは異なる多様なサービスを提供している点が特徴的であり、サービスを展開している英国、ならびに欧州諸国において、すでに300万人以上のユーザーを獲得しています。Revolutに先駆けて低コストでの海外送金を可能としたTransferWiseも、今後、日本市場へ参入することを予定しています。同社も主力サービスとして多通貨決済可能なプリペイドカードを欧州諸国で提供しており、時期は未定ですが、日本でも同様のサービスを提供することを検討しています。(TransferWiseの場合、海外送金サービスについては日本からも利用できます。)いずれのFintech企業も創業の地である英国において確固たる実績を築き、その後に展開した欧州諸国において多くのユーザーを獲得しています。これらサービス提供実績をもとに、今後、日本を含むアジア諸国へ積極的に進出していくことが予想されます。

この他、ゴールドマン・サックス証券が提供するデジタルバンキングサービスMarcusも日本進出が予想されています。ゴールドマン・サックス証券創業者の名前を冠した同サービスは、2016年に米国で提供が開始され、当初は個人向け融資サービスのみ提供していましたが、その後、同社の別ブランドで提供していた預金サービスとも統合し、デジタルバンキングサービスとして提供されています。Marcusは、融資、預金それぞれで他の金融機関よりも優遇された金利でサービスを提供しており、こうした点が若年層を中心に多くの支持を集め、預金サービスではわずか3年余りで米国と英国双方であわせて約3兆9,000億円もの預金を集めています。Marcusが前述のように他行よりも金利面で有利な商品の提供を可能としている背景には、完全にデジタル化されたプラットフォームで金融サービスが提供されている点が挙げられます。このため、通常の金融機関よりも低コストでの運用を可能とし、その分、金利を優遇することができます。

これら有力Fintechサービスが日本市場に進出することにより、日本の金融業界はどのような影響を受けるのでしょうか? 利用者にとっては、金融サービスの選択肢が増えるといったメリットが挙げられますが、日本の金融機関にとってもそのビジネスモデルを変革させ、新たな収益機会を得られる機会となる可能性があります。上記の有力Fintech企業はいずれも日本国内での銀行免許を有していません。(ゴールドマン・サックスは日本においては証券会社として登録されています。)日本において新規で銀行業免許を取得するに当たっては、その審査にかなりのコストを要することとなります。このため、海外から日本への進出を検討するFintech企業が短期間で事業の立ち上げを図る場合、日本国内の金融機関との提携を進めていくことが予想されます。提携先の国内金融機関は、これら海外の有力Fintech企業と提携することで、自行のサービスラインナップを強化できるばかりでなく、これら有力企業が日本でサービスを展開するに当たって必要となるシステムや業務プロセスといったバックエンド機能を国内金融機関が提供していくことも考えられます。海外のFintech企業が事業展開を行うに当たり、金融機関がそのバックエンド機能を提供することは、Banking as a Service(BaaS)と呼ばれるデジタル時代の新たな金融ビジネスモデルを切り拓くものとなります。

国内動向(2) -欧米諸国と異なる道を歩む日本のキャッシュレス化推進-

欧米諸国や中国におけるキャッシュレス化動向がメディアで逐一伝えられる中、昨年には経済産業省が中心となり、「キャッシュレス・ビジョン」(2018年4月)が策定されました。同ビジョンでは、2025年の大阪万博開催に合わせて国内のキャッシュレス決済比率を40%にまで引き上げることを目標としています。中でも目玉となっているのはキャッシュレス推進協議会と呼ばれる官民共同での協議会の開催であり、金融機関やカード会社、流通業をはじめとして数百に上る企業が参加しています。

同協議会において目下、議論が進められているのがQRコード決済規格の統一であり、これは中国におけるQRコード決済の急速な普及を意識しているものと思われます。QRコード決済は、加盟店にとっても導入に当たっての障壁が少ない決済手段であると言われ、中国では露店などで紙に印刷されたQRコードをスマートフォンで読み取るだけで決済が可能となるといった利便性が支持され、短期間で急速に普及することとなりました。

一方、欧米諸国におけるキャッシュレス化では、その普及動向が大きく異なります。英国では、2012年を機にキャッシュレス決済環境整備に向けた本格的な取り組みが始まり、特にNFC(Near Field Communication)を用いた非接触決済端末やプラスチックカードの導入が推進されることとなりました。現在では、都市部であれば小規模な店舗においてもNFCによる非接触決済に対応しています。2018年の統計では、イギリスにおけるキャッシュレス決済の比率は50%を超えており、そのうちの約半数がNFCによる非接触決済となっています。また、日本のメディアでたびたびキャッシュレス決済の“先進国”として取り上げられるスウェーデンでも同様に、街中ではNFCによる非接触決済が普及しつつあるほか、それに先駆けて街中の至る所でカード決済が利用できる環境が整備され、今では公園にある公衆トイレでもカード決済が利用できます。(欧米諸国では公衆トイレの利用に当たって少額の手数料を徴収することが一般的です。)このように、中国ではQRコード決済によるキャッシュレス化が進んだのに対し、欧州諸国ではNFCによる非接触決済もしくはクレジット/デビットカードによる決済が普及しており、一口にキャッシュレス化といっても、その実現方式は国や地域によって大きく異なります。

一般に、キャッシュレス決済が社会に浸透していくには、いくつかのステップを経る必要があります。まず、街中において現金を利用する、もしくは現金を必要とする機会が減少することが必要です。これは、前述のとおり、小規模店舗においてもカード決済が可能となると同時に、街中からATMが減少するなど現金そのものが目に触れる機会が減少していくことが重要です。続いて、個人間における様々なお金のやり取りについても現金以外の手段が用いられることが必要です。前述のイギリスやスウェーデンといった“キャッシュレス先進国”では、2010年代半ばから個人間で携帯電話番号やメールアドレスなどの簡単な方法で送金できるモバイルアプリが主要銀行共同で開発・導入されています。また、モバイルアプリ提供に先立ち、リアルタイムかつ無料での送金を可能とする小口決済基盤の整備も必要です。同決済基盤を利用して、利便性の高いモバイル送金アプリが主要銀行共同で提供されることで、一般利用者が積極的に活用する環境が生まれています。英国では、小口資金のリアルタイム決済基盤Faster Payments Schemeが2008年より稼働し、2014年から同決済基盤を用いた個人間送金サービスPaymが主要銀行協調の下で提供を開始しました。スウェーデンでも2012年に銀行間決済システムであるBankgirotがリアルタイム化し、主要銀行が共同開発した個人間送金アプリSwishが利用可能となりました。このように、キャッシュレス決済が社会に受容されるプロセスは先進国において共通化しており、数十年もの間、安定的に提供されてきた既存の決済システムに取って代わるには、いくつかのステップを社会が徐々に経験していく必要があります。これは、既存の決済システムが先進国と比較して未発達であった中国のような新興国におけるキャッシュレス決済の受容プロセスとは大きく異なるものです。

Photo 1. Cashless settlement landscape in European countries
写真1. 欧州諸国におけるキャッシュレス決済風景(筆者撮影写真より)
(※左からスウェーデンの券売機、公衆トイレ入り口、イギリスの自動販売機。
いずれもクレジット/デビットカードで利用でき、公衆トイレ、自動販売機はNFC決済にも対応する)

翻って日本国内では、キャッシュレス決済において様々な規格が乱立しつつあります。QRコード決済では、大手ネット企業各社が積極的なキャンペーンにより利用者の囲い込みを図ろうとするほか、今後は金融機関が独自にQR決済サービスを提供していくことが予想されます。また、銀行間送金ネットワーク(全銀ネット)については2018年10月よりリアルタイム化への対応が行われましたが、主要銀行共同での個人間送金サービスについては開発が中止されています。様々な国際的イベントの開催を間近に控える中、今後は訪日外国人がさらに増加していくことが期待されます。この際、日常的に使い慣れた決済手段がそのまま日本国内で利用できれば、キャッシュレス決済がさらに普及することは言うまでもありません。英国では、すでに7割以上のプラスチックカードにNFCチップが標準搭載されており、米国においてもChase銀行などの主要行がNFCチップの搭載を決定するなど、今後はNFCチップを搭載したクレジット/デビットカードがグローバルでより一層普及すると予想されます。今後、欧米諸国から日本に訪れる人々の中では、NFCによる非接触決済が一般化していくことが予想され、日本でも同様の手段で決済ができることは訴求価値が高いと言えます。中国では、他国から来た観光客がAlipayなどの決済サービスを利用できないためにキャッシュレス化の恩恵にあずかることができないといった問題が指摘されています。今後は、これら訪日外国人が日常的に使い慣れた決済手段で日本でもキャッシュレス決済が行えるよう環境整備を進めていくことが重要と考えます。

Photo 2. Cashless scenery in China
写真2. 中国におけるキャッシュレス風景
(※北京の観光地の入場口。チケット売り場であった場所が閉鎖され、
代わりに決済用のQRコードが貼り出されている。)

おわりに

日本国内においては、来る2020年に向けて、キャッシュレスのみならず金融の様々な分野で利便性の高いFintechサービスが登場していくこととなるでしょう。これまで日本におけるFintechサービスの展開では米国や欧州において先行するFintechのビジネスモデルを参考として、日本の市場にカスタマイズされたサービスが提供されてきました。しかし、デジタル化に伴い、サービスの提供コストが下がったことにより、短期間で複数の国々で同時にFintechサービスを提供することが可能となりました。例えば、シンガポールの大手金融機関DBSでは、Digibankと呼ばれるブランドで短期間のうちにインドやインドネシアなどの国々においてデジタルバンキングサービスを展開し、多くの利用者を集めています。今後、日本のFintech企業/金融機関にとっては、こうした海外の有力Fintech企業も競合として浮上することとなります。一方、日本からもアジアやヨーロッパ等に進出するFintech企業が誕生することを願ってやみません。

次回は、グローバルでのFintech動向についてご紹介したいと思います。

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参考リンク

松原義明

本記事の執筆者

コンサルティング本部 金融グループ
チーフシニアコンサルタント

松原 義明(まつばら よしあき)

 

2007年富士通総研入社。入社より一貫して金融業界向けのコンサルティング、調査業務に従事。 現在は海外金融機関における先進サービスに関する調査業務、国内金融機関におけるソーシャルメディア、スマートデバイス活用に関するコンサルティングを実施。 2016年4月 富士通研究所アメリカにてFintechならびに金融サービスの最新動向に関する調査活動に従事。2017年4月帰任。

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