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世界最大のFintechカンファレンスMoney20/20参加報告(その1)

世界最大のFintechカンファレンスMoney20/20参加報告(その1)


―新興市場・成熟市場へのFintechの挑戦―

GoogleやGrab等が、金融サービスの未開拓市場への挑戦を発表した今年のMoney20/20。
今後のFintech動向につながりそうな事例を紹介します。
2018年12月3日

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富士通総研では、毎年10月にラスベガスで開催されるMoney20/20に参加し、Fintechや決済に関する最新動向の情報収集に努めています。今年で7回目を迎えるMoney20/20では、参加者は1万1,500人を超え、世界100ヵ国以上から集まると言われています。日本からも、金融機関だけでなく、富士通や日立製作所、JSOL等の大手ICT企業も参加していました。

Money20/20は、キーノートスピーチやトラックセッションにおいて金融業界の著名人が登場し、自社の戦略や新サービスの発表を行うことでも知られています。本年は、Wells Fargoの上級副社長 Braden More氏が登壇し、相次ぐ不祥事にICTを活用して「Trust(信頼)」回復に取り組む姿勢を示し、多くの注目を集めました。また、GoogleやGrabといった異業種が今後のターゲット市場や将来構想を発表する等、Money20/20を通して金融機関・異業種におけるFintechの取り組みを掴むことができるため、全世界の金融関係者にとって見逃せないイベントになりつつあります。

以下では、今回のMoney20/20において発表された、今後のFintech動向につながりそうな事例を紹介します。

1. 新興市場に対する新たな挑戦

今回、複数のキーノートスピーチで東南アジアやインドといった地域での戦略が紹介され、また、トラックセッションのテーマとして、Unbanked/Underbankedに向けた金融サービスを検討する「Social Good」が新たに加わる等、「Emerging Economy(新興経済国)」に向けたFintechサービスの展開に注目が集まりました。

以下では、キーノートセッションから、Googleの「Next Billion Users」(注1)に係る戦略と、シンガポールを拠点とするライドシェアGrabが掲げる東南アジアでの戦略について概説します。

1.1 Googleの戦略

GoogleからはGM Payments & Next Billion UsersのCaesar Sengupta氏が登壇し、自社の決済分野におけるEmerging Economyに向けた戦略について、インドを事例に紹介を行いました。

Sengupta氏は、まずモバイルの可能性について言及しました。モバイルは、①ユーザーの生活習慣を変え、②オフライン/オンラインの融合したサービスを増加させ、③オンラインの世界を多くの人にとって当たり前のものにしつつあります。実際、Androidの月間アクティブユーザーが世界に約20億人おり、さらにユーザーがオンライン上で決済を行うことは一般化しつつあることを指摘しました。

こうした環境を踏まえ、Googleは、2017年9月に「Google Pay」(注2)をインドでローンチしました。「Google Pay」は、インド政府主導で開発された決済システム「UPI」(注3)にも対応しており、インド国内の月間アクティブユーザー数を3,000万人以上獲得し、既に10億回以上のトランザクションが行われています。

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写真.1 Googleによるキーノートスピーチ(筆者撮影写真より)

インドにおけるUPI経由のデジタル決済のトランザクション数は1年間で18倍に増加しており、特に「Google Pay」のローンチ後に急増しています。Googleとしては、今後も銀行や政府機関、小売業との連携を進めつつ、ユーザーへの浸透を図り、インドでの「Google Pay」の拡大を目指していくとしています。

このインドでの経験を踏まえ、Googleはパートナーシップを通して、他の発展途上国での「Google Pay」の更なる普及を目指しており、Money20/20の会場でも、新たな提携先となり得る企業や政府機関等との会話を望んでいることを表明しています。

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写真.2 Googleによるキーノートスピーチ(筆者撮影写真より)

1.2 Grabの戦略

GrabからはSenior Managing Director兼Head of Grab FinancialであるReuben Lai氏が登壇し、東南アジアにおけるライドシェアサービスを起点としたFintechサービスの戦略について紹介しました。

Lai氏は、まず東南アジア市場の実態と「Grabアプリ」の普及状況について触れました。東南アジアにおける全人口に対し、75%もの人々が未だにunbankedの状態であり、その数は4億人に上るとのことです。その一方、モバイルの普及率は、銀行口座よりも高く(注4)、そのモバイル所有者の6人に1人が「Grabアプリ」をインストールし、配車サービスを利用しているとのことです。

こうした「Grabアプリ」の普及を踏まえ、Grabは消費者、小売店、中小企業等が利用できる「Grab Pay」を提供し、東南アジア全域での決済サービスの展開を目指しています。Grabは、顧客の満足度やニーズを基に整理した日常生活で必要なサービスを、集約して1つのアプリで提供し、かつそれをキャッシュレス化しようとしています。具体的には、現在、Grabは海外送金や事業融資、保険の機能を提供する「Grab Pay Wallet」というビジョンを掲げています。

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写真.3 Grabによるキーノートスピーチ(筆者撮影写真より)

また、GrabはMoney20/20の場で、Mastercardとの提携を発表しました。同時刻に公表されたプレスリリース情報(注5)で、GrabとMastercardは1億1,000万人とも言われるGrabユーザー向けにプリペイドカードの提供を開始すると発表しており、Grabユーザーがオンライン決済を利用することを可能にします。世界的ブランドであるMastercardとの提携は、東南アジアの4億人とも言われるunbanked層の人々に金融サービスを提供する道を開くきっかけになると注目されており、Grabは東南アジアでNo.1のFintech企業になることを目指しています。

2. 成熟市場における社会課題への挑戦

上述してきたEmerging Economyに対する戦略の一方で、複数のスタートアップが成熟市場である米国国内向けのFintechサービスを紹介しました。

米国では公的年金や退職金制度が日本ほど一般的でなく、リタイア後に向けた貯蓄が社会的な課題となっています。今回、スタートアップ24社によるピッチが行われ、決勝に進出した2社は共に、リタイア後に向けた貯蓄に関わるサービスを提供しており、米国においてこの分野に高い関心が持たれていることが分かります。

以下では、ピッチで決勝に進出した、退職年金積立サービスを提供するIcon Savings Planと退職後に向けた資産運用アプリを提供するRocket Dollarの2社を紹介します。なお、決勝では、Icon Savings Planが勝ち、賞金2万5,000ドルを手に入れました。

2.1 Icon Savings Planの退職金積立サービス「Icon」

Icon Savings Planは、退職金積立サービス「Icon」を提供する米国のスタートアップです。ピッチでは、まずリタイア後に向けた貯蓄に係る制度等の課題に触れたうえで、同社サービスのメリットを説明しました。

米国の退職年金制度は年々複雑化しており、従業員に対して退職後の資産管理プランを提供できている企業は2014年時点で43%と限定的で、米国の約7,500万人もの労働者が退職年金制度を享受できない状況にあるそうです。背景に、企業年金である401(k)のコストが約120ドル/年と高く、登録に平均8-10週間かかるため、雇用主側のニーズに合致していない事情があると、Rowley氏は指摘します。

こうした中、Icon Savings Planは、大企業から中小企業まで、幅広い経営者に対して、正規従業員からパートタイマーまでに対応する退職年金サービスを導入できる「Icon」を提供しています。「Icon」は、401(k)に比べ、年間コストが48ドルと安く、登録も5分で完了でき、雇用主にとって導入ハードルの低いサービスです。なお、従業員は転職時に、「Icon」の資産を保持することができ、積立を継続することができます。

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写真.4 Icon Savings Planによるピッチ(筆者撮影写真より)

2.2 Rocket Dollarのサービス

Rocket Dollarは、退職後に向けた資産運用アプリ「Rocket Dollar」を提供する米国のスタートアップです。ピッチでは、まずミレニアル世代に投資を促す際の課題に触れたうえで、同社サービスのメリットを説明しました。

2018年現在、米国のミレニアル世代が保有する金融資産の合計は4.5兆ドルとなり、2030年にはそれが約5倍になると予想されています。こうしたミレニアル世代に対して退職後の資産形成に向けた投資を促すには、従来の株式と債券のみにポートフォリオを絞った運用ではなく、様々な資産に分散投資ができ、また、運用収益ができるだけ税金として引かれないサービスが求められていたと、Yoshida氏は指摘します。

こうしたニーズを踏まえて、Rocket Dollarは企業年金や個人年金の選択肢を提供します。まず、資産運用アプリ「Rocket Dollar」で、企業年金である401(k)または個人年金であるIRA(Individual Retirement Accounts)を開設し、既存の401(k)またはIRAの資産を移行すると、「Rocket Dollar」上で運用ができるようになります。「Rocket Dollar」では、APIを用いて、株式や債券はもちろんのこと、不動産やベンチャー投資、P2Pレンディング、仮想通貨等、多様な資産に分散投資する選択肢を提供、かつ、年金制度上の運用なので税控除のメリットを受けられます。同サービスの登録料は360ドルで、月間料金15ドルの費用がかかるものの、税控除のメリットによって相殺できるとYoshida氏は主張します。

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写真.5 Rocket Dollarによるピッチ(筆者撮影写真より)

おわりに

本稿では、Money20/20で注目を集めたEmerging Economyに向けた戦略について、GoogleとGrabのキーノートスピーチと、成熟市場である米国国内向けサービスを提供するIcon Savings PlanとRocket Dollarのピッチを紹介しました。今回のMoney20/20は、市場の関心が新興国市場へ向く一方で、米国のような成熟市場において、リタイア後のための資金運用等、既存の金融サービスが十分に対応しきれていなかった領域への展開が進んでいることが示され、金融業界における未開拓市場への挑戦が印象的でした。

注釈

  • (注1):
    「Next Billion Users」は、Googleが行っているEmerging Economyを主な対象に、次の10億人に  向けたサービス展開を目指すイニシアチブ。
  • (注2):
    インドでのローンチ当初の名称は「Tez」。
  • (注3):
    「Unified Payments Interface」の略。
  • (注4):
    「世界情報通信事情」(総務省)によると、2016年時点で、東南アジア10ヵ国の内、携帯電話普及率(人口に対する携帯電話加入者数)で100%を切るのは、ミャンマーとラオスのみになります。なお、日本の携帯電話普及率は129.8%になります。
  • (注5):
    「Grab and Mastercard to launch prepaid cards for Southeast Asia’s 400 million unbanked」https://www.grab.com/sg/press/others/grab-and-mastercard-to-launch-prepaid-cards-for-southeast-asias-400-million-unbanked/

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朝倉隆道

本記事の執筆者

コンサルティング本部 金融グループ
シニアコンサルタント

朝倉 隆道(あさくら たかみち)

 

2010年富士通総研入社。入社以来、新たな技術を実社会に適用するための社会的/制度的課題の解決に向けた受託調査研究やコンサルティングに従事。
近年では、データ利活用を促進するための諸外国の制度動向調査や国内の制度検討、海外金融機関における先進サービスに関する調査を実施。
2016年6月から2017年6月には、米国富士通研究所にてプラットフォーム・ビジネスの事業戦略や事業展開に伴う社会および制度上の課題に対する調査活動に従事。

佐藤 新

本記事の執筆者

コンサルティング本部 金融グループ
アシスタントコンサルタント

佐藤 新(さとう あらた)

 

2017年某大手都市銀行入行。入行以来法人営業、融資業務を経験。
2018年に富士通総研入社。
富士通総研入社以後は、主に海外の金融機関やFintech企業の経営戦略や先進的な商品・サービス等の調査に従事。

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