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産学連携によるSociety5.0を牽引する人材「チェンジメーカー」育成の取り組み

これからの新しい社会変革には「チェンジメーカー」と呼ばれる人材が不可欠。
産学連携で開発したチェンジメーカー育成手法「ReBaLe(レバレ)」をご紹介する

掲載日:2019年7月18日

casestudies98

概要

Society5.0(注1)、第4次産業革命が進む現在、これからの新しい社会変革には「チェンジメーカー」と呼ばれる人材が不可欠です。富士通総研では、産学連携によりチェンジメーカーを育成する手法「ReBaLe(レバレ)」を開発しました。実証の結果、チェンジメーカーに求められる多面的な能力向上への効果が確認され、今後、大学教育だけでなく、初等中等教育のプログラミング教育・STEAM教育(注2)や社会人教育等の幅広い分野への応用を目指し、実践を展開していく予定です。

課題

1.Society5.0時代に求められる「チェンジメーカー」とは

AI・IoT、ビッグデータ等のテクノロジーによる第4次産業革命が急速に進んでいる現在、我が国は、より豊かで幸せな社会に向けてテクノロジーを活用して課題解決する、これからの時代を「超スマート社会」「Society5.0」と呼んでいます。

Society5.0の新たな社会に求められるのは「チェンジメーカー」と呼ばれる人材の存在です(経済産業省[2018](注3))。Society5.0や第4次産業革命を迎えるこれからの時代では、AIやIoT、ビッグデータ等の科学技術のテクノロジーを未知の社会課題と結びつけて新たな課題解決に自らチャレンジしていく姿勢を持ち、新たなイノベーションを起こすことができる人材(=チェンジメーカー)(注4)を育成していくことが不可欠であるとしています(【図1】)。

【図1】これからの社会に求められる人材像(文部科学省・経済産業省)
【図1】これからの社会に求められる人材像(文部科学省・経済産業省)
(※)経済産業省[2018](注3)、文部科学省[2018](注4)をもとに富士通総研作成

こうした「チェンジメーカー」は科学技術分野に限らず、社会の様々な分野においてAIやデータの力を最大限に活用しながら課題解決を牽引していくことが期待されています。

2.チェンジメーカーを生むための新たな人材育成

Society5.0のように人とテクノロジーが複雑かつ高度に関係し合う社会において、チェンジメーカーには、より良い社会の実現に向けた変化を牽引する役割が期待されています。特に、現在の社会課題は原因が複雑化しており、目の前に生じている問題に対して、単にテクノロジーによる解決を図ることでは、真の課題解決にはつながりません。

そのため、チェンジメーカーとなる人材には、これらの広範な基本的能力の中でも、AIやIoT、ビッグデータといったテクノロジーを理解して使いこなす力、そして広い視野と科学的・論理的に思考する力によって社会課題の本質的な問題・原因を見極めようとする姿勢が重要です。また、変化を生み出す人材として、複雑に絡み合う問題を紐解きながら根本原因を見つけ出す力、問題を解決するための仕組みを全体的なつながりを持ったシステムとしてデザインする力を育むことが今以上に重要になってきます。

Society5.0を牽引するチェンジメーカー人材に求められる力として、「基礎知識・スキル」「論理的な思考力」「アイデアを発想する力」「デザインし、組み立てる力」「コミュニケーション・リーダーシップ」「豊かな感性」の6つが挙げられます(【図2】)。

【図2】チェンジメーカー人材に求められる力
【図2】チェンジメーカー人材に求められる力
(※)経済産業省[2018](注3)、文部科学省[2018](注5)をもとに富士通総研作成

例えば、「基礎知識・スキル」としては語彙や数的感覚のような基礎学力、文章や情報を正確に読み解くための読解力が挙げられます。考える力としては、科学的に分析して課題を発見する力のような「論理的な思考力」、独創性を持った多くのアイデアを生み出す「アイデアを発想する力」も必要とされています。
 また、機械を使いこなすリテラシーや0から1を作る力のように、発想したアイデアを形にして課題解決を実現するための「デザインし、組み立てる力」、他者と協働しながらプロジェクトを進める「コミュニケーション・リーダーシップ」や好奇心や自信を持ちながら学ぶ「豊かな感性」といった広範な力が問われています。

しかし、こうした基礎スキルから応用に至るまでの広範な能力を育てることは簡単ではありません。基礎と応用の両面の力を育成するためには、学んだことを創造的な活動に活かすことを通じて学習者個人に応じた能力を伸ばしていくことが重要になります。

解決策

産学連携によるチェンジメーカー育成手法の開発と実践

1.チェンジメーカー育成手法「ReBaLe(レバレ)」の開発

Society5.0では時代を牽引していく「チェンジメーカー」を育成していくことが求められています。富士通総研と大阪工業大学(注6)では、「チェンジメーカー」を育成するための新たな人材育成手法「ReBaLe(レバレ)」(以下「ReBaLe」)を開発しました(注7)

「ReBaLe」は、既存の社会システム(仕組み)の分解を通じて、アイデアを生み出す源泉である基礎知識・スキルを身につける『学ぶ』活動と、社会課題を解決するアイデアをカタチにする『創る』活動を組み合わせた新たなアクティブ・ラーニング手法です。
 この学びでは、真の問題解決に向けた変化を生み出すための「システム思考」と創造的なアイデア創出のための「デザイン思考」を組み合わせ、社会システムへの理解と、社会課題の解決を実現する新たな仕組みを創り出す活動を行います。また、新たに創り出した仕組みを、デジタルテクノロジーを活用して実際にカタチあるものとして組み立て、プロトタイプ開発や社会実装に取り組みます。

「ReBaLe」による学びは大きく分けると、基礎知識・スキルを獲得するための「リバースデザイン」とアイデアを形作る「リデザイン」の2つのフェーズに分かれています(【図3】)。

【図3】ReBaLeによる学びのプロセス
【図3】ReBaLeによる学びのプロセス

『学ぶ』-学びを深め、アイデアを生み出す「リバースデザイン」

「リバースデザイン」では、身の回りにある既存の社会システム・製品・サービスの中から学習者自身が関心を持つテーマを選び、仕組みの分解とプロトタイピングによる再現を行います。

課題解決のアイデアとして、いわゆる「思いつき」と言われるようなアイデアでは根本原因の解決につながらず、有効な解決策にならないことがあります。
 真の問題・課題解決につながるアイデアを生み出すためには、問題を俯瞰して要素のつながり(システム)を理解しながら、問題解決に向けた変化を生み出すために必要なアプローチや仕組みを考える必要があります。

そのため、「ReBaLe」では、既存の社会システムを題材とし、富士通総研の強みである『システム思考』を活かした学習を取り入れています。システム思考に基づく既存の社会システム・仕組みの分解を通じて、仕組みを構成する要素・テクノロジーのつながりや、既存の仕組みがどのように課題解決を実現しているかのアプローチを理解する活動を行います。

社会システム全体を俯瞰しながら仕組みの成り立ちを構造的に理解することで、要素技術に関する「基礎知識・スキル」や、物事を理解するための「論理的な思考力」、テクノロジーを活用して仕組みを再現する「デザインし、組み立てる力」を養います。
 また、学習者が「豊かな感性」を持ちながら学習を行えるように、身の回りにある社会システムの中から、学習者自身に関心を持つテーマを選択してもらうことで、主体的な探求を促進して学習効果を高めています。

『創る』-アイデアをカタチにする「リデザイン」

「リデザイン」では、リバースデザインフェーズで学んだ仕組みと技術を活かして、新たな課題を解決する社会システムの創造を行います。

現在、私たちの生活を取り巻く社会問題には、答えが決まっていない問題や、原因が複雑に絡みあっている問題が少なくありません。そのような問題を解決するためには、シーズとしてのテクノロジーに頼った課題解決ではなく、本質的なニーズに応えた課題解決につながる解決策をデザインすることが重要です。解決策のアイデアの精度を高めていくためには、プロトタイプとして早期にアイデアを検証して改善を繰り返すことが必要になります。

そのため、「リデザイン」では、システム思考に加え、大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部が強みとする『デザイン思考』を活かした学習を行います。
 このフェーズの活動では、課題を解決するアイデアを考えるだけでなく、IoTやロボティクス等のデジタルテクノロジーを使って、プロトタイピングにより課題解決を実現する新たな社会システムのアイデアを実際にカタチにすることで、その有効性を検証します。

これにより、新たな社会課題を実現する「アイデアを発想する力」や新たな仕組みの全体像を「デザインし、組み立てる力」を養います。

2.企業・大学の強みを生かしたチェンジメーカー育成の実践

富士通総研・大阪工業大学の両者の強みを活かした「ReBaLe」では、課題解決に十分となる基礎知識や思考力の習得と、解決を実現するために新たなシステムやサービスのプロトタイプ開発および社会実装に一体的に取り組むことを可能にしました。
 これにより、チェンジメーカーに求められる力である「基礎知識・スキル」「論理的な思考力」「アイデアを発想する力」「豊かな感性」や、新たな課題解決の仕組みを全体として「デザインし、組み立てる力」を育成しています。

「ReBaLe」を用いた人材育成の実践としては、2017年度より大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部システムデザイン工学科の授業において「ReBaLe」を用いた実証授業を展開しています。

実証授業の前後において、OECD「キー・コンピテンシー」に対応するルーブリックを用いた自己評価を行い、チェンジメーカーに求められる能力に関して、学生の自己効力感の向上が確認されています(注8)。チェンジメーカー人材に求められる力と自己評価ルーブリックの対応は【図4】のとおりです。

【図4】「ReBaLe」による授業前後でのコンピテンシー自己評価点の変化
【図4】「ReBaLe」による授業前後でのコンピテンシー自己評価点の変化

実証授業の結果として、基礎知識・スキルとしての「言語、シンボル、テクストを活用する能力」、論理的な思考力やアイデアを発想する力としての「知識や情報を活用する能力」、デザインし組み立てる力としての「テクノロジーを活用する能力」、豊かな感性としての「大局的に行動する能力」について能力観の向上が確認されています。

成果

今回の「ReBaLe」の実践結果については、一般社団法人情報処理学会 情報処理教育委員会 情報システム教育委員会が開催している第11回情報システム教育コンテスト(ISECON2018)において、多面的な能力向上が見られた点について評価を頂き、最優秀賞を受賞しています。
 現在のPBL(注9)が抱える問題点の解決も視野に入れて実践成果を出している点や、本実践を受講した学生のキー・コンピテンシー自己評価から多面的な能力向上が見られた点について評価を頂くとともに、今後「ReBaLe」の実践を支援するツール・教材の整備や工学系学生以外を対象とした実践の展開を期待されています。

また、2019年2月には「ReBaLe」手法に基づいて、学生によるAIビジネスプランの創出を行い、大阪商工会議所が主催する「AIビジネスプラン創出アイデアコンテスト」で入賞する等、社会実装に向けたアイデア創出手法としての本手法の有効性が期待されます。

今後の取り組み

Society5.0時代では、従来の文系・理系といった学問分野に限らず、私たち一人ひとりがチェンジメーカーとして、テクノロジーを活用して新たな課題を解決できる人材となることが求められています。そのため、本手法も工学系学生だけではなく、文系・理系を問わず幅広い分野へ応用していくことを予定しています。
 今後、大阪工業大学および富士通総研では「ReBaLe」の手法を大学生だけでなく、小中学生・高校生向けのプログラミング教育・STEAM教育や社会人教育等の幅広い分野へ応用することを目指し、実践を展開していく予定です。

富士通総研では富士通グループの一員として、AI・IoT等のICTの急速な進展による第4次産業革命や超スマート社会Society5.0時代に向けて、学校や企業等での「ReBaLe」手法の導入や運用のご支援をすることで、お客様や社会の変革を牽引するチェンジメーカー育成のための人材育成の「場」づくりに取り組んでまいります。

注釈

  • (注1):
    Society5.0 : IoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータ等のデジタルテクノロジー技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、一人一人のニーズに合わせる形で社会的課題を解決する新たな社会。
  • (注2):
    STEAM教育はScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(モノづくり)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の5つの領域を重視する教育で、現実の問題を解決する力や新たな価値を生み出す力を育成することを目的としている。AI・IoT等のテクノロジーの発展を背景にして、近年、日本を含め欧米やアジア等、各国で注目される教育の考え方となっている。
  • (注3):
    経済産業省「『未来の教室』とEdTech研究会 第1次提言」(2018)
  • (注4):
    経済産業省では、これからの社会に求められる人材を「チェンジ・メイカー」という言葉で説明している。本稿では、経済産業省だけでなく文部科学省の考えを踏まえた人材像を指しているため、経済産業省の表現とは区別するために「チェンジメーカー」という表現を用いている。
  • (注5):
    文部科学省「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」(2018)
  • (注6):
    大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部システムデザイン工学科 井上明教授
  • (注7):
    「ReBaLe(レバレ)」は、Reverse & Redesign-Based Learningの略。学びにレバレッジ(てこ)を効かせることで、社会システムの分解と理解に基づいた小さな学びが、社会を変えるための新たなシステム・サービスをデザインする力の獲得という大きな学習成果につながる本手法の特長を表した名称。
  • (注8):
    井上明、坂倉康平、橋本尚志「社会システムの分解と理解で学ぶ教育手法『ReBaLe』の提案」(ISECON2018 [2019.3.23])
    https://www.slideshare.net/isecom-cms/ss-152647666(2019.7.8確認)
  • (注9):
    PBL :Project-Based Learning(課題解決型学習)やProblem-Based-Learning(問題解決型学習)。いわゆる「座学」と呼ばれる知識暗記型の学習ではなく、学習者が自ら問題を見つけ出し、問題を解決していく過程で必要な経験や知識を身に着けていくことを重視する学習のこと。
坂倉 康平

本記事の執筆者

コンサルティング本部 行政情報化グループ
コンサルタント

坂倉 康平(さかくら こうへい)

 

2015年4月、株式会社富士通総研入社。
これまで官公庁・自治体向けにオープンイノベーションや地方創生等、公共分野の新規領域に関するコンサルティング業務に従事。近年は、大学向けに地域・社会と連携した教育・研究推進に関するコンサルティングに従事。「第11回情報システム教育コンテスト最優秀賞」受賞。情報通信学会 正会員。

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