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  5. システムズエンジニアリングとデザイン思考による地域活性化

システムズエンジニアリングとデザイン思考による地域活性化

システムズエンジニアリングとデザイン思考による地域活性化

2018年9月10日

opinion2018-9-1

「システムズエンジニアリング」とは、システムのある機能を改善するにあたり、その対象機能を単体で考えるのではなく、その機能と関係する他の機能との関係も含めた包括的な立場から検討する方法論、「デザイン思考」とは、利用するユーザーの実体験目線で利便性や使いやすさを検討する方法論のことと定義しています。

表現を変えると、抽象度を上げ、体系的に考えるのが「システムズエンジニアリング」、具体的な利用シーンに落として考えるのが「デザイン思考」です。この2つの方法論を組み合わせることは、多くの問題を考える際の強力なツールとなります。

1.地域活性化の事例から

富士通総研では様々な形で地域活性化支援を行っています。2015年には商店街とスポーツチーム、交通事業者を連携させた地域活性化イベントを、2016年には地方銀行も加えた地域活性化イベントを行いました。

地域活性化のためには、大きく分けて集客施策と購買施策が必要です。

今年、山梨県で実施したアニメ「ゆるキャン△」のイベントをもとに、それぞれの施策を見ていきましょう。



(1)集客施策

TVアニメ「ゆるキャン△」は、山梨県の美しい山々を舞台としたキャンプアニメです(TV放映2018年1月~3月)。この作品の舞台を巡るスタンプラリーを4月中旬から5月末まで実施し、1.5か月間で約5,000人の方に参加いただくことができました。

地域イベント開催の目的の1つは、地域外から多くの人を呼び込むことです。今回は山梨県のイベントのため、県内からの参加者が比較的多く、都道府県別では東京都に次いで2位となっています。しかし、他のほとんどの都道府県からも参加者がおり、比率では山梨県の地元参加者は15%しか存在しません。85%は県外からの来訪者です。地域への集客施策としては大成功と言えるでしょう。



(2)購買施策

スタンプラリーは、集客施策には効果的ですが、地域活性化においては、集客だけでなく経済的な効果を得るための購買施策が不可欠です。

今回は山梨県の中でも広範囲のスタンプラリーであり、プレゼント応募するために複数個所を回ってスタンプを集めようとすると、様々な交通手段の利用や宿泊が必要でした。

この施策の狙いには、作品の名場面を忠実に再現したスタンプラリー拠点とすることでファンの満足度を向上させる側面と、交通費や宿泊費、飲食費も含めた購買機会を増やし経済効果を大きくするという側面があります。

【図1】スタンプラリーの地理範囲
【図1】スタンプラリーの地理範囲
マップ画像: ©あfろ・芳文社/野外活動サークル

地域にお金を落とす別の仕掛けとして、販売品を地域限定とする方法や、地域でしか使えない通貨(地域通貨)を作る方法もあります。前者については、2015年の千葉市での取り組みで、商店街がそれぞれ限定アニメコラボグッズを作り販売することによって、ファンにも好評を博すことができました。後者については、近年では、スマホ決済を絡めて利便性やデータの活用性を兼ねた電子的な仕組みが複数誕生しています。データ分析も容易に行えるため、今後の地域活性化には有力な施策となるでしょう。

さて、このような地域活性化の集客施策と購買施策を考えるうえで、「システムズエンジニアリング」と「デザイン思考」はどのように有効なのか、それぞれ見ていきます。

2.システムズエンジニアリング手法

「システムズエンジニアリング」手法は、従来より機能を要素分解して個別分析する方法論として活用されてきました。しかし、1要素だけで機能改善を図っても、改善には限度があります。ここでは、むしろ要素の連鎖を重視し、各要素がどのようにつながり要素間を何が循環しているのかに着目することで、システム全体の価値を向上させることに着眼した分析手法として活用しています。

集客施策と購買施策を例に取り上げてみます。



(1)集客施策

2015年には千葉市の地域活性化として、商店街の活性化イベントを行いましたが、集客の観点から、商店街単体のイベントではなく、より大きな仕掛けを作った方が効果的だろうと考え、最終的には以下のような取り組みとなりました。

【図2】千葉市の地域活性化イベントの集客の仕組み
【図2】千葉市の地域活性化イベントの集客の仕組み

商店街単体のイベントでは集客効果に限度があるため、地域を舞台としたアニメコンテンツを用い、移動手段である交通機関や地域コンテンツでもあるプロ野球チームと連携することで、それぞれのファン層を取り込むとともに、送客し合う形で効果を大きくしました。 このように、対象をより広い観点から整理し、関連する多様な専門機能を統合し、どのように循環させるかに着目することで、目的の成功確度を高めるのがシステムズエンジニアリング手法の特徴となります。



(2)購買施策

購買においては、お金と商品の交換のほか、新たに価値を発生させる施策が一般的です。 例えば、多くのお店では、何かポイントをもらえるようになっています。店舗によっては、ポイントではなく、スタンプを提供しているケースもあります。それらが一定数たまると、何かの景品に交換できたり割引ができたりするクーポンがもらえるなどのメリットが提供されます。

ここで、通貨、ポイント、スタンプ、クーポンといったものを体系的に整理してみます。 【図3】はその1つの例です。

【図3】購買施策で発生させる価値の例
【図3】購買施策で発生させる価値の例

このように整理すると、もし、スマホ決済の仕組みを作るのであれば、通貨だけでなく、スタンプ、クーポン、ポイントなどを取り込んだ方が、購買活動の実態に沿ったものが作れることに気づかされます。

また、このようなデータを1店舗や系列店だけでなく、地域として共有することによって、ある店舗の購買活動で生み出されたポイントが別の店舗でどのように使われたかという地域における顧客の動線を把握することができ、プロモーションや誘導施策などのマーケティングに活用することができます。

3.デザイン思考の融合

次に、「デザイン思考」を見ていきましょう。ここでは、購買施策を取り上げます。 まず、何か購入する時を具体的に思い起こしてください。現金を使うケース、電子マネーを使うケースなど様々だと思います。併せて、お財布の中には店舗ごとにポイントカードがあるかもしれません。そして、自分のパンパンに膨らんだ財布を見ながら、「これらのカードが1枚になったら楽なのに」と思うかもしれません。あるいは、「スマホだけですべて完結したら楽なのに」と思うかもしれません。購入時に現金しか使えないと、近くのATMを探さなくてはなりません。

どのようにスタンプ、ポイント、通貨などを融合させれば、利便性が向上するのか、さらに具体的に考えてみましょう。



(1)スタンプとポイントの融合

まず、スタンプとポイントの融合を考えてみましょう。 スタンプとポイントの違いは、ポイントは「数」であるのに対し、スタンプは「絵」であることです。より本質的には、ポイントは定量的なものであるのに対し、スタンプは定性的なものであると言えるでしょう。

この違いは一見些細なものですが、実は大きな違いがあります。ポイントは最終的に獲得した数値でしかありませんが、スタンプは購入品や購入店舗、購入日ごとにデザインを変えた場合、ビジュアルな購入履歴のエビデンスとなるのです。タイムスタンプと合わせることによって様々な分析が可能となります。(例:顧客の動線分析など)

ポイントでも取得時のデータを見れば分析は可能ですが、ユーザーからは自分の取引履歴が見えたところで面白くも楽しくもありません。

特に、スマホ時代でビジュアル要素の重要性が増してくると、電子カードの定量的なポイント管理は味気なく感じてきます。

では、定量的なポイントシステムと定性的なビジュアルスタンプの融合はどのように行えばよいでしょうか?

例えば、【図4】は2015年CEATECHのイベント時のものですが、スタンプとポイントを同時に管理しています。スタンプを獲得するごとにポイントが加算されていき、また、スタンプを取る順序によって、ポイントの増え方も異なるという、ゲーミフィケーションの要素も加えています。

【図4】2015年CEATECHにおけるスタンプとポイントの融合例
【図4】2015年CEATECHにおけるスタンプとポイントの融合例

【図5】は別の方式でスタンプとポイントを融合させた2016年の千葉市の地域活性化事例のものです。スタンプごとに、1枚、2枚と貯めたり、消費したりすることができるようになっており、スタンプの絵という定性的な面と、ポイントの数という定量的な面を融合させています。好きなキャラクターのスタンプを獲得するためには、そのキャラクターの等身大パネルの設置店舗に行く必要があるため、ゲーミフィケーションと購買施策も兼ねています。

【図5】千葉市の地域活性化事例におけるスタンプとポイントの融合例
【図5】千葉市の地域活性化事例におけるスタンプとポイントの融合例
©渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。続



(2)通貨の融合

では、さらに地域通貨を融合させるとどのようになるのでしょうか?

現在、画像付きの地域通貨というものを検討しています。例えば、法定通貨でも、五円玉、十円玉などに、それぞれ絵のデザインがあります。日本では貨幣の絵はあまり変わりませんが、英国ではエリザベス女王の顔が、発行年とともに年をとったりします。スマホを用いれば、変化していく画像付きの貨幣を表現することも簡単になります。

このようにユーザー体験を中心として仕組みを考え直すことが「デザイン思考」です。

4.終わりに

以上、「システムズエンジニアリング」と「デザイン思考」について地域活性化をテーマに紹介してきましたが、これを一般化すると、【図6】のように整理できます。

【図6】システムズエンジニアリングとデザイン思考の位置づけ
【図2】千葉市の地域活性化イベントの集客の仕組み

このように、「システムズエンジニアリング」と「デザイン思考」を組み合わせる方法論は、どのようなテーマにも適用できるため、皆様の身近な話題にも適用してみてはいかがでしょう。決して対立する手法ではなく、相互に融合させることで効果が高まると考えます。

松本 泰明

本記事の執筆者

株式会社富士通総研 ビジネスサイエンスグループ チーフシニアコンサルタント

松本 泰明(まつもと やすあき)

 

富士通株式会社にてFM-TOWNS、FM-V等のコンシューマービジネス向けのサービスを開発・運用した後、株式会社富士通総研に出向。
専門分野はスポーツやアニメなどのコンテンツを軸としたデジタルマーケティング、ブロックチェーンを用いた異業種連携、地域活性化施策立案など。

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