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  5. 「協調」と「競争」による新たな市場創出活動の実践 ―ローカルVPPイニシアティブ活動の取り組み―

「協調」と「競争」による新たな市場創出活動の実践 ―ローカルVPPイニシアティブ活動の取り組み―

「協調」と「競争」による新たな市場創出活動の実践

―ローカルVPPイニシアティブ活動の取り組み―

2018年8月31日

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昨今、「VUCA(注1)の時代」と言われるように、社会の変化が激しく、不確実であり複雑さを増した時代となっている中、個々の企業が、この社会の潮流を捉えた新しいサービスを、スピード感をもって開発・実行していくことが難しくなってきていると考えます。富士通総研は、このような時代だからこそ、課題・テーマを共有する複数の企業等の「協調」により市場を創出し、「競争」により成長させていく戦略が必要と考えます。本稿では、この戦略のもとに、東日本大震災以降、注目されているバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant:仮想発電所(以下、VPP))の仕組みを活用した地域エネルギーサービスの創出に向けて、複数の企業や自治体等とともに取り組んでいる「ローカルVPPイニシアティブ活動」について紹介します。

1.予測が難しいこれからのビジネスを考える

予測が難しいこれからのビジネス

昨今、国際情勢の変化、急速なグローバル化、技術の革新、価値観・ニーズの多様化等も進み、まさに「VUCAの時代」と言われるように、社会の変化が激しく、不確実であり複雑さを増した時代となっている中、ビジネスの面においても予測が難しい時代となってきました。このような時代において、個々の企業が、社会の潮流を捉え、新しいサービスを、スピード感をもって開発・実行していくことは非常に難しくなってきていると考えます。一方、我が国では、このような背景がある中、2017年、「新産業構造ビジョン」をとりまとめ、「超スマート社会~Society5.0~」の実現を目指しています。  そして、この実現に向けて、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット等の「第4次産業革命」技術によって、モノとモノ、ヒトとヒト、企業と企業等、様々なつながりにより新たな付加価値を創出していく「Connected Industries」がキーワードとなっています。

予測が難しいこれからのビジネス、そして様々なつながりにより新たな付加価値を創出していくことというのは、頭では理解できるものの、では実際のビジネスの現場において何から始めたらよいのでしょうか?それが大きな問題です。

過去の教訓を活かした戦略が必要

今、改めて振り返ると、これまでも「スマートシティ」や「スマートコミュニティ」等のコンセプトのもとに、エネルギーや交通等のインフラの効率化、生活支援サービス等、全国で様々な実証プロジェクトが立ち上げられ、自治体や民間企業事業者等の連携のもとに取り組まれてきました。ただし、その多くは、新技術の研究や開発が主な目的となり、その後、地域・社会に定着するサービスまで展開せずに終了してしまったケースも少なくありません。

富士通総研も、これらと同様の状況となったプロジェクトも経験してきました。その問題点を考察すると、1つは、プロジェクトに参画する民間事業者の多くが技術やインフラを提供するシーズ側であり、サービスを提供する主体が不在であったこと、もう1つは技術先行であったため、目指すべき市場を想定した最適規模が考慮されていなかったことが挙げられます。

当時の「スマートXX」も1つのコンセプトであり、将来実現したい社会のことです。本来、そこには、市場を捉えサービスを提供する主体が存在することによってビジネス・産業が生まれ、それを支える技術やインフラを有する主体との連携によって持続的な成長へとつなげられると考えます。

富士通総研は、過去の教訓も踏まえ、この混沌とした社会においては、課題・テーマを共有する複数の企業等の「協調」によって市場を創出していき、以降、民間事業者等の知見・ノウハウを活かした「競争」により成長させていく戦略が必要と考えます。

2. ローカルVPPイニシアティブ活動

ここでは、昨今、エネルギーシステム改革が進む中で、新たなエネルギー産業の創出も期待される「バーチャルパワープラント」に対して、前述の戦略のもとに取り組む「ローカルVPPイニシアティブ活動」について紹介します。

注目される「バーチャルパワープラント」

昨今、我が国のエネルギー供給システムのあり方は、大きく変わろうとしています。東日本大震災、福島第一原子力発電所事故に伴い電力需給がひっ迫する中、私たちは計画停電等を経験し、エネルギー供給システムは従来の大規模かつ集中型のエネルギー供給から分散型のエネルギー供給へと変化しています。また、昨今では「脱炭素社会」の潮流もある中、再生可能エネルギーが急速に普及し、安定かつ有効な活用へと変化しています。この分散型のエネルギー(蓄電池や発電設備等の分散型エネルギーリソースやディマンドリスポンス等)、天候等によって出力が変動する再生可能エネルギーを高度なエネルギーマネジメント技術により遠隔・統合制御し、あたかも1つの発電所のように機能させる仕組みがVPPです。VPPには、分散型エネルギーリソースを統合制御し、エネルギーサービスを提供する事業者である「アグリゲーションコーディネーター」や「リソースアグリゲーター」の役割が重要であり、従来のエネルギー供給システムには存在していませんでした。(【図1】)我が国では、2020年に50MW程度のVPP構築を目指して大規模な実証事業も行われています。

このVPPの構築は、我が国のエネルギー供給システムを変えていくだけでなく、その分散型エネルギーリソースを活用することによって、効率的なエネルギー利用による温室効果ガス排出量の削減(環境)、家庭等でのエネルギーコスト削減や災害時の自立電源の確保(社会)、そして地域の民間事業者が新たなエネルギーサービスとして関与することによる産業・雇用の創出(経済)等、社会に対する多様な地域価値の創出も期待されます。

【図1】VPPのイメージ_360
【図1】VPPのイメージ

※アグリゲーションコーディネーター:リソースアグリゲーターが制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者
※リソースアグリゲーター:需要家等とVPPサービス契約を直接締結し、リソース制御を行う事業者

(資料:経済産業省 資源エネルギー庁HPをもとに作成。)

ローカルVPPイニシアティブ活動の開始

今後、VPPの構築を普及展開していくためには、早期の社会実装によって、持続可能なエコシステムとして地域へ定着させ、市場を広げていくことが重要と考えます。

このためには、2020年に50MWのVPP構築を目指した大規模な実証とともに、現時点から小規模でも、最適な規模を想定したVPPを構築し、いち早くその価値を、地域社会に実感してもらうことが重要と考えます。

そこで富士通総研では、民間事業者・団体と連携し、まずは地域価値の視点に立ち、住宅団地や集合住宅等,特定されたエリアや集合体を対象にした、再生可能エネルギー(太陽電池等)や小型蓄電池,IoTやブロックチェーン等の新たな技術を活用した自律分散型エネルギーサービス(ローカルVPP)の開発と、その社会実装を目指して取り組んでいます。現在、この取り組みは、「ローカルVPPイニシアティブ」(注2)活動として進めており、これを提唱している、芝浦工業大学非常勤講師中村良道氏の協力のもと、コンセプトにご賛同いただいた複数の企業や自治体等の団体とともに検討を進めています。

「協調」と「競争」によって、新たな市場を創出

ローカルVPPイニシアティブ活動は、【図2】に示すとおり、大きく「協調」(マーケット・インキュベーション)と「競争」(ビジネス・インキュベーション)の観点から進めています。

国が進めるVPPの構築は前述のとおり2020年を目途としており、現時点では、まさに市場創出の段階と言えます。前者の観点は、まず市場の創出を見据えながら、今、実現できる最適な規模のローカルVPPサービスを、関連する企業・団体とともに考え、普及展開することによって、その価値を地域に認知・実感してもらうための「協調」活動となります。

後者は、このような新しいエネルギーサービスを導入することによって、地域や資産価値を高めたいと考える自治体やディベロッパー等とのマッチングによって、ローカルVPPサービスを実装・展開していく、まさに事業化の取り組みであり、この段階では民間の知見・ノウハウを活かした「競争」活動となります。

【図2】ローカルVPPイニシアティブ活動イメージ
【図2】ローカルVPPイニシアティブ活動イメージ
~「協調」と「競争」による活動により、新たな市場を創出~

具体的なフィールドとの連携による早期社会実装に向けた活動

現在、ローカルVPPイニシアティブ活動では、メディア等媒体や関連イベント (出展・セミナー等での講演)を通じた情報発信による認知度向上とともに、環境・エネルギー政策に関わる地域の課題・ニーズの把握に取り組んでいます。また、具体的なフィールドの1つでは、横浜市住宅供給公社の「暮らし再生プロジェクト」のコンセプトに基づき、老朽化した団地やマンションの再生に向けた取り組みとしてローカルVPPサービスを検討しています。これは、団地・集合住宅の高圧一括受電内をマイクログリッドと見立てて、太陽電池や大量の小型蓄電池等の分散型エネルギーリソースを配置・統合化することにより電力融通を実現し、将来的に構築されるVPPへの接続も視野に入れて進めているものです。(【図3】)

【図3】ローカルVPPサービスイメージ
【図3】ローカルVPPサービスイメージ

3. ローカルVPPイニシアティブ活動を通じて得た実感と今後の展開

「ローカルVPPイニシアティブ」活動は、2018年1月から開始し、これまでご賛同いただいた企業・団体等のご担当者のほか、お問い合わせいただいた多くの関係企業や自治体の方々と意見交換する機会があり、関心の高さもうかがえます。一方で、「自社だけではサービスが考えられない」、「どのようにアプローチすればよいか分からない」といった声や、自治体のご担当者からも、「VPPに関する知見がない」、「資金が確保できない」、「事業の採算性の判断が難しい」等の声も多くいただきます。VPPもまだ認知されていない、まさに市場ができていない状態の中、自社のビジネスに対してどのような影響を及ぼすのか、これによって新しい市場が生まれるのであれば、どのように自社の商品・サービスを変えていく、あるいは生み出していく必要があるのか等、自身だけでは成し得ない目指すべき社会について、関わるステークホルダーとの「協調」によって考えていく必要があるのではないかと実感しています。

現在、前述の取り組み以外にも、複数の地域でローカルVPPサービスの検討が進められています。今後、例えば、庁舎等の公共施設群や小・中学校群等といった施設および設置される太陽電池等を分散型エネルギーリソースとして束ねて、施設等の利用特性に応じたローカルVPPサービスを、地元の企業等とも連携しながら提供していく等、もっと広がりをもったコミュニティエリアでの取り組みも想定しています。まだ開始したばかりの活動ですが、2020年も目前です。今後は「協調」と「競争」による市場の創出の活動を加速して、ローカルVPPサービスの早期社会実装へつなげていきたいと考えています。

注釈

  • (注1)
    VCUA : Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた造語。4つの要因により、現在の社会経済環境が極めて予測困難な状況に直面しているという時代認識を表す。
  • (注2):
上保裕典

本記事の執筆者

コンサルティング本部 行政経営グループ
プリンシパルコンサルタント

上保 裕典(うわぼ ゆうすけ)

 

1995年 建設コンサルタント入社。農業農村に関わる計画・設計業務に従事。2006年 株式会社富士通総研入社。 官公庁に対する地域振興、産業振興に関する計画策定コンサルティングに従事。近年、地域の経済成長戦略、地域における官民連携による新ビジネスの立ち上げに関するコンサルティングを中心に活動中。

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