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住んだまま自宅をお金に換える方法 ─リバースモーゲージとリースバック

住んだまま自宅をお金に換える方法

─リバースモーゲージとリースバック

2018年7月31日

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リバースモーゲージ普及を阻害する要因

長寿社会において、老後資金の不足に対応する一つの方法は、自宅を担保にお金を借り入れ、死後に売却して返済する仕組みであるリバースモーゲージを活用することである。この仕組みは、商品を提供する金融機関にとって、住宅価格下落で担保価値が落ちるリスクのほか、借り手が長生きするリスク、金利上昇リスクなどが存在する。いずれも担保割れにつながるリスクであり、金融機関は担保評価額の5~6割を融資額としてきた。また、日本の中古市場では、建物価値は築20年ほどでゼロ評価になるため、担保としては通常、土地しか評価されていない。

一方、担保割れした場合は、担保以外に返済義務が生じない「ノンリコース型」の仕組みでなく、「リコース型」の仕組みであることが一般的であるため、子どもなど相続人に返済義務が及ぶ可能性がある。これらの難点は、リバースモーゲージの普及を妨げる要因となってきた。民間の金融機関がリバースモーゲージの商品を初めて提供したのは1999年のことであったが、高齢者の潜在需要に比べればこれまでの利用実績は多くない。

しかし、近年はリバースモーゲージ以外にも、住んだままで自宅をお金に換えたり、自宅を担保にお金を借りられる手法が登場している。以下では、そうしたいくつかの手法を検討した上、今後の普及可能性を考える。

セール・アンド・リースバック

新たに登場した仕組みの一つは、「セール・アンド・リースバック」と呼ばれるものである。自宅を不動産会社に売却すると同時に、不動産会社から賃借して住み続ける方法である。こうした商品を2013年から提供しているハウスドゥ(2016年12月に東証一部上場)の買い取り件数は順調に伸びており、今年6月で累計成約件数は985件に達した。買い取り価格は市場価格の7割、リース料は買い取り価格の約8%(年間)に設定されている。将来、余裕ができた時に買い戻すこともできる。

利用が想定されるケースは、(1)住宅ローン返済に窮しているが競売や任意売却は避けたい、(2)住宅ローンは完済しているが生活資金に余裕がないなどの場合である。(1)の場合、物件の売主にとっては自宅に住み続けたまま、ローン返済を免れることのできるメリットがあり、物件の買主にとっては、競売や任意売却前に優良物件を自社物件として確保できるメリットがある。リース期間としては3年の基本契約を結び、リース料支払いが続く限り期限を延長するが、逆に言えば、リース料が滞れば住めなくなることで、物件の買主にとって不良借家人に居座られるリスクはない。売主が物件を買い戻す際の価格は、買い取り価格より15%高く設定される。

一方、生活資金を確保しようとする(2)の場合は、リース料が買い取り価格の8%(年間)とすると、12年半で家賃の総支払額が買い取り価格を上回る計算となり、自宅売却しても、必ずしも生涯にわたって住むための資金を確保できるわけではない。また、前述のようにリースが打ち切れるリスクもある。リースバックは、リバースモーゲージのように最後に売るわけではなく最初に売る仕組みであるために、買主はリバースモーゲージで負うようなリスクを負わず、逆に売主は住み続けることのできないリスクなどを負うことになる。

リースバックの仕組みは、例えば、バブル期に高値でマイホームを購入した層が、ローンを払いきれなくなった場合でも競売や任意売却を避けて住み続け、買い戻せるオプションもついているという点で魅力のあるものとなっている。事業者にとっては市場価値以下で価値のある物件を手に入れることのできるメリットがあり、仮に購入金額を全額借り入れで賄ったとしても、金利以上のリース料が得られれば、十分採算がとれることになる。

自宅の資産価値を生前に最大限現金化するリバースモーゲージとは異なるが、売主にとっては競売や任意売却に比べれば高く売れ、しかも住み続けることができるため、一定の需要が発生していると考えられる。特殊な需要向けの商品であり、老後資金を得るには不向きであるが、自宅を現金化する一つの方法となっている。得られるキャッシュフローという点では、リースバックはリバースモーゲージに比べれば不利であるため、ローン破綻の可能性などがあり、どうしても自宅を手放したい場合に使われる手法であるといえる。

リバースモーゲージ型住宅ローン

一方、自宅を担保にお金を借りる手法として、近年利用が伸びている商品が、住宅金融支援機構が2009年度に始めたリバースモーゲージ型住宅ローン(「リ・バース60」)である。2017年度の利用申請件数は2016年度の4.5倍の174件(うち利用実績は68件)に達し、今年度に入ってからも伸びている。60歳以上が対象で、毎月の支払いは利息のみで、元本は死亡時に物件を売却することで一括返済する。機構は民間金融機関がこの商品を販売する際、住宅融資保険を付与することでサポートする。

当初は資金の使途をリフォームに限定していたが、その後、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金、新築住宅の購入や建設資金にも広げ、昨年からは担保価値が融資額を下回っても相続人の返済義務が生じない「ノンリコース型」が投入された。

本来のリバースモーゲージは、現に所有している住宅を担保にローンを借り入れるが、この商品では新たに取得する住宅を担保にできる点が特徴的で、その意味で住宅ローンの一種といえる。2017年度におけるこのローンの使途は、新築マンション購入が40%、新築戸建て建設が31%であった。一方、タイプ別では「ノンリコース型」の利用が61%であった。高齢者が購入する新築であれば、当然、売却時も築浅であり、金融機関は担保価値を高く設定できる。

この仕組みを使えば、高齢者が新たに住宅を購入しようとしたり、住み替えをしたりしようとする場合に、高齢者の収入ではなく物件の担保価値によって融資を受けられることになる。高齢者が取得する築浅で担保価値が残りやすい物件という条件の下で成り立つ仕組みであるが、借主の収入ではなく、物件の担保価値に基づいて融資が行われる商品が出たという点で画期的である。

この仕組みでは、自宅を担保に老後の生活資金が得られるというところまではいかないが、高齢者が新たな住まいに移る場合に、安心して融資を受けられる仕組みとして利用が広がりつつある。

今後普及していくための条件

本来のリバースモーゲージは、担保価値の問題やリコース型であることなどが普及のネックとなっているが、近年はそれに類似した仕組みとして、リースバックやリバースモーゲージ型住宅ローンの仕組みなど特定の需要層狙いの仕組みが登場し、注目されている。住宅所有者が自宅に住んだままで、必要な資金を調達したいとの潜在的なニーズは大きいと考えられる。

本来のリバースモーゲージについては、最近は、先行して取り組んで一定のノウハウを蓄えた金融機関(例えば東京スター銀行、リバースモーゲージ「充実人生」の累計成約件数が今年3月末で約8,300件)が、そのノウハウを活かして、新たにリバースモーゲージを提供する金融機関を支援する例も出ている。また、リースバックで実績を上げたハウスドゥは、子会社のフィナンシャルドゥを通じ、金融機関がリバースモーゲージを提供する際、不動産の担保評価などで協力しようとしている。住んだまま自宅をお金に換えるためのノウハウが結集され、また、様々な事業者の競争によって、よりよいサービスにつながっていく素地が徐々に形成されようとしている。

一方、現状は一定の年数が経つと土地だけの評価になってしまう住宅についても、将来的に、建物価値も含めて長く価値が保たれ、高齢期の資金調達にも役立つような住宅開発が行われ、かつ、実際にそうした住宅が購入されるようになれば、住宅供給面でもリバースモーゲージが利用しやすくなる環境が次第に整っていくことになる。住宅供給業者と金融機関の今後の取り組みに期待したい。

米山秀隆

本記事の執筆者

経済研究所
主席研究員

米山 秀隆(よねやま ひでたか)

 

1989年 筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了、(株)富士総合研究所を経て、1996年 (株)富士通総研入社、2007年~2010年3月 慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員

【執筆活動】
空き家対策の実務(有斐閣、2016年)
限界マンション(日本経済新聞出版社、2015年)
空き家急増の真実(日本経済新聞出版社、2012年)
ほか多数。

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